星光 第136話 またしても潜入
次話を読んでいただきありがとうございます。
再び偽装の潜入を…だが…
ディーエ時空連合のとあるビルで、アズサワはソファーに座って、目の前に広がるデータの立体映像の球体を見つめる。
その球体は、様々な模様が絡み合い複雑な動きをしている。
複雑な模様が絡み合う立体映像の球体をアズサワは睨み見ていると、その模様群の球体映像に別の模様が絡む。
それで動きが…
アズサワが鋭い顔で
「どうやら…大きな力が加わったな」
と、告げる後ろには、アズサワと同じエヴォリューション・インパクターのシグマがいる。
シグマが
「何の力が入り込んだ?」
アズサワが呆れた笑みで
「聖帝のご子息様だろう」
シグマがアズサワの左に来て
「排除するか?」
アズサワが頷き
「ああ…このディーエ時空連合が管理しているシステムを壊したくないし、それを維持するのが仕事だからね」
シグマが背を向けて歩き出し
「では、行ってくるぞ」
アズサワがシグマの背中を
「お願いね」
と、見送った後
「全く、聖帝の坊ちゃん達は…」
◇◇◇◇◇
ティリオ達は、身分を偽装して入り込んだ。
手配はレリスとファクドが行った。
グランナ、ティリオ、ファクド、レリスの四人だけが先行して来た。
偽った身分は、傭兵だ。
ディーエ時空連合で争っている勢力に取り込む為に傭兵として入り込む算段だ。
ティリオ達を乗せた円錐型の時空戦艦が、ディーエ時空連合の一つアシャン時空の時空港へ到着した。
そして、そこから許可を得て入り込もうする。
ティリオ達四人を審査する入国管理官がティリオ達を見つめて
「傭兵?」
サングラスをして軽い男を演じるファクドが
「そう、稼がせて貰おうと…ね」
入国管理官がティリオ達の時空戦艦をスキャンするが、何も問題が出てこない。
データに記された身分を調べる。
実績は、ヘオスポロスと繋がりがある時空で、ヘオスポロスに所属しつつの装備を獲得して傭兵をしている。
その繋がりのある時空の実験的な要素を持つ傭兵、フリーランスだ。
入国管理官が
「どこの勢力と…繋がりを持つのだ?」
ファクドが笑み入国管理官のデスクに腕をのせて
「金払いが良い勢力と…ね」
と、入国管理官にウィンクする。
入国管理官は女性だ。
ファクドの嘘くさい感じが納得できない。
レリスが
「おい、お前が話をするとうさんくさいんだから、ボクがやるよ」
ファクドと後退するレリス
「自分はレリス・レーイリスです」
入国管理官がレリスを見つめる。
レリスが
「勢力は、ディーエ時空連合の中でホルス時空にするつもりです。ヘオスポロスとの繋がりがあるので、装備や修理品をヘオスポロスに依頼するに楽なので」
入国管理官が「んんん…」と唸る。
彼らは自分達を傭兵と…それにしては、雰囲気が上品すぎる。
無論、彼らのように傭兵としてディーエ時空連合へ入るのは、幾つも見ている。
色んな勢力が使い勝手がいい傭兵を欲しているのを知っている。
今までの傭兵を見てきた入国管理官がティリオ達に
「君達は、傭兵という割には…上品すぎる。まるで良家の…」
グランナとティリオが緊張するが、ファクドが
「あら、バレました?」
と、入国管理官へ近づき
「オレ達、親とケンカして追い出された身なんですよ。やっぱり育ちの良さ、出ちゃいます」
レリスが合わせる。
「まあ、その親のツテを使ってヘオスポロスから装備を買って、傭兵をしています。生きて行くには資金が必要ですから」
グランナとティリオは、感心する。
口から口にウソを平然と出てくるファクドとレリスの二人に。
自分達では絶対にムリだろう。
入国管理官が突っ込んだ事にも直ぐに答えた。
多少の怪しさはあるも、書類や持っているモノに違法性はない。
止める理由もない。
「分かった。では」
「全く、何時から…そんなイタズラなガキになったんだ」
と、ティリオ達四人に声を掛ける。
それはエヴォリューション・インパクターのアルファとベータの二人だ。
入国管理官がアルファとベータを見ると、アルファとベータが入国管理官へ身分の立体映像を提示させる。
戦争シェアリング管理局の職員だ。
ティリオ達が戸惑っていると、アルファとベータが四人の前に立ち鋭い顔で
「聖帝のご子息殿、分かりますな」
ティリオが「う…」と下がる。
グランナが
「頼む、オレ達をここで」
ベータが
「黙れ、それを決めるのはお前達ではない。我々だ」
◇◇◇◇◇
時空港に黄金創世民の巨大時空戦艦が到着する。
ティリオ達を迎えに来たのだ。
時空港の部屋で待機しているティリオ達に、ディオスが顔を見せる。
ティリオは父ディオスに
「ああ…父さん」
ディオスが溜息を漏らして
「どうして、こんな事をした?」
この計画は完全にディオス達に黙ってやった事だ。
グランナが前に出て
「すいません。オレが…原因なんです」
ディオスが額を抱えて
「ともかく、帰るぞ」
と、ディオスはティリオ達を連れていく途中にアルファとベータが待ち構えている。
アルファが
「子供の管理くらい、しっかりして欲しいモノだ」
ベータは
「その子達は、将来の超越存在の次世代なのだろう。こんな無茶をしていると…後々に遺恨を残して…」
ディオスが少し鋭い顔になるも
「迷惑を掛けて申し訳ない。謝罪する」
と、アルファとベータに頭を下げる。
アルファが
「このディーエ時空連合の事は、我々が管理している。無用な問題は起こしたくない。それだけは…理解してくれ」
ティリオ達は、アヌビスが出してくれた巨大時空戦艦に乗せられて帰る。
巨大時空戦艦の客間ホールのソファーに座るティリオ達
天井を見つめるファクドが
「ああ…あと、ちょっとだったのに…」
レリスが考えながら
「どうしてバレたんだ? 偽装は完璧だったはず…」
ティリオが渋い顔で
「エヴォリューション・インパクターのアズサワ達が関係しているかもしれない」
ファクドがティリオを見つめて
「そのエヴォリューション・インパクターって何?」
ティリオが
「時空や、時空間の様々な出来事に干渉、または…手を貸して暗躍している人達なんだ。目的は、分からないけど。依頼内容と対価によって力を貸してくれるらしい。そのエヴォリューション・インパクターの中で、アズサワはプロセアー、仕立屋って言われているらしい」
ファクドが天井を見上げて
「仕立屋ねぇぇぇぇぇ! はぁ! そいつの活躍のお陰で失敗って事かい」
グランナは両手を握り締めて震えている。
レリスが
「グランナ、まだ、他に方法はある。だから」
グランナが握り締めた両手を額に当て
「どんな方法があるんだよ」
ティリオが
「父さんに事情を説明したんだ。きっと…」
ディオスが入ってくる。
ティリオが立ち上がって父ディオスへ
「父さん…」
ディオスが渋い顔をして
「みんな、ちょっと来てくれ…」
と、四人をとある場所に連れて行く。
ディオスに続いて四人が来た場所は、遠距離との通信を繋げる立体映像の会議室だった。
その会議室には、アヌビスを一番奥に左右に五人づつの宇宙王達が並んでいる。
その立体映像自体が通信だ。
アヌビスが
「グランナくん、キミの話はディオスから聞いた」
グランナが頭を下げて
「お願いです。彼女を…助けたいんです」
左右にいる宇宙王達が視線を合わせた後、アヌビスが
「残念ながら、キミの望み通りには出来ない」
グランナは、それを聞いて衝撃の顔をした。
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次回、不文律