星光 第130話 後日談の終わり
次話を読んでいただきありがとうございます。
ティリオは、オージンと共に、あの前代未聞のテロ事件の事を話し合って
ティリオのホームにオージンが遊びに来た。
ティリオは楽しげに
「オージン様!」
と、オージンをシュルメルム宇宙工業学園の宇宙港へ迎えに行く。
オージンは時空戦艦から下りて
「おお、元気だったか?」
ティリオはオージンの背中に触れて
「ええ…。さあ、こっちですよ」
自分のホームに連れてくると、そこにはクロエラもいて
「オージンお爺様」
と、迎えてくれる。
オージンは微笑み
「元気だったか? クロエラ…」
クロエラは頷き
「はい。オージンお爺様は?」
オージンが笑み
「まあ、色々とあったが…何とかやっているさ」
他愛もない学園での生活をクロエラは話して、オージンは頷きながら聞いている。
偶にティリオも話に加わり、ノンビリとした談笑の会は過ぎていく。
オージンは、クロエラがどうして過ごしているのか?を聞きたいのだ。
オージンにとって、クロエラは遠い孫娘、玄孫になるのだから。
そうして、クロエラの学園での生活や内容を聞いてオージンは満足して
「クロエラ、何かあったら…気軽に言いなさい。何時でもワシは…待っているから」
クロエラが嬉しげに笑み
「うん、ありがとう。オージンお爺様」
チラッとオージンはティリオを見て
「クロエラ…少しティリオと…」
クロエラは察して
「うん、分かったわ。また後でね」
と、クロエラが話をしていたホールから出る。
ティリオとオージンだけになった場。
オージンがティリオが注いでくれた紅茶を口にして
「ティリオが受け取ったとされる…連中の時空戦艦の中央、コアにあったエネルギー結晶演算器の中身が分かったぞ」
ティリオが厳しい顔で
「中身は…何ですか?」
オージンが渋い顔で
「ネオシウス時空で起こったリンク・ハイパーグレートを作る技術データと、そのリンク・ハイパーグレートを作る事が可能な装置だった」
ティリオが少し俯き加減で
「事件が起こる前、オルスが…ミカボシが使っていた星艦に残されていた惑星サイズのエネルギー結晶装置を調査した事がありました。それと似たような感じがしたので…」
オージンが冷静に
「そうか…」
ティリオがオージンを見つめて
「もし…使えば…リンク・ハイパーグレートを作る事が…」
オージンが渋い顔で
「可能だが…必要な物資、資材が…なければ、無限にエネルギーを生み出す装置程度でしかない。まあ、それでも利用価値はあると言えばある」
ティリオが両手を見つめて
「なんで、そんなモノをボクに? ボクには…」
ティリオには必要ない。
超越存在の資質を見極めて覚醒できるティリオには、意味の無い技術と装置だ。
オージンがティリオを心配して
「大丈夫じゃ。渡された事に関しては、ティリオの父君達と共に極秘にしておる。どこかに情報が漏れる心配はない。だから、無用な不安を感じる事はないぞ」
ティリオが更に真剣な目で
「オージン様、疑問に思っている事があるんです」
オージンが頷き
「何じゃ?」
ティリオが鋭い目で
「ボクは…ワザと呼ばれたのですか?」
オージンが沈黙する。
ティリオが淡々と
「連中は、ボクの事を…聖櫃を呼び寄せる体質のボクをバックアッププランって言っていた」
オージンは答えられない。
ティリオが口にする。
「オージン様がネオシウス時空の時空艦隊に襲われた事、そして…それによって、ボクがネオシウス時空へ修学旅行に行く事になった。全部、仕組まれた事なんですか?」
オージンは
「ティリオ、それは…ワシ等にも…ティリオの父親達でも分からない。結果として、そうなった。それ以外の方法があったかもしれない。偶々、ティリオが来て…そうなれた。世の中には、即興でやって上手く行く場合もあるのだぞ」
ティリオが暫し黙ってしまう。
オージンが
「ティリオ、お前は…巻き込まれた側だ。要らぬ不安を思う必要は無い」
ティリオが暫し考えた後
「分かりました。あと…ネオシウス時空は…どう?」
オージンはティリオの問いに答えてくれた。
◇◇◇◇◇
ティリオは、オージンをクロエラのホームへ届けて、オージンはクロエラのホームで一晩を過ごす事になった。
ティリオは自分のホームの居間で静かに考えていた。
事件後にネオシウス時空、新たに誕生した超越存在アマテラスを中心にネオシウス時空は動き出した。
二千年前にあった繁栄が戻って来た…とネオシウス時空は喜び勇んでいるらしいが、肝心のアマテラスは、平静だと…。
アマテラスは、覇気もなく、静かにネオシウス時空で超越存在を宇宙王を淡々と熟している…と。
アマテラスの目的は、かつての双極であったミカボシを手に入れる事だった。
それが叶わず、残されたアマテラスは…まるで、全てに興味が無いかのような振る舞いらしい。
一応は、父ディオス達のような超越存在や宇宙王が繋がりを維持している連合には、入ってくれたようだが…。
どちらにせよ、今後は…どう動くか?は分からない状態だ。
そして、ネオシウス時空で起こった…事件の余波は、他の時空達に伝播している。
時空を、宇宙を、瞬く間に占拠するテロリストの存在は、超越存在や宇宙王がいる時空達にとっても脅威だが、それがいない時空達にとっては、もっと脅威だ。
もし…自分達の宇宙で、時空で起こったら…
対処できる者と、できない者
この二者が完全に出来上がる。
対処できる者は、今回の事件を解決に導いたディオス達、超越存在や宇宙王達の連合と繋がる者達。
つまり、同じ超越存在を有する者達。
対処できない者は、超越存在や宇宙王といった存在を一切持たない者達だ。
対処できない者達は、頼る先として必然的にヘオスポロスや…それ相応の力を持つ者達を…。
簡単な見方になってしまうが…分断という現象を起こしている。
超越存在を持つ者達と、持たざる者達との分断。
超越存在や宇宙王を持つ者達が、争いを欲していないとどんなに言っても、持たない者にとって、持つ者の気持ちは分からない。
疑心暗鬼が、持たない者の心の奥底にへばりつき、最悪な結果を…
「はぁ…」とティリオは、考えれば考える程に悩みのループへ入ってしまう。
そこへ
「どうしたの?」
と、ジュリアが来た。
ティリオがハッとして
「ああ…ちょっと色々と考えていて…」
ティリオとジュリアのつき合いは一番長い。
ティリオが悩む理由をジュリアは、何となく察している。だからこそ…いうべき言葉が決まっている。
「ティリオ、色々と悩む事はあるけど。ティリオは一人じゃあないよ。私や、アリル、ナリル、エアリナも、クロスト達やグランナやファクド達、お義父さん達もいるわ」
ティリオは、その言葉を聞いて安心する。
昔から、ジュリアはティリオが悩んでいる時に必要としている言葉をくれる。
「そうだな。ボク一人、悩んでもしかたないよね」
ジュリアは頷き
「そうだよ。物事は一人で解決できないでしょう。それはお義父さん達もそうでしょう」
ティリオは頷き
「そうだね。みんなが力を貸してくれたから…解決できた。何かあっても…みんなで…」と、ティリオは自分の手を見つめる。
自分の手を取ってくる多くの友人や人々の顔がよぎり、手を握り締める。
その手にジュリアは手を重ねて
「そうだよ。そうして…何時も前に進んできたじゃあない」
ティリオが頷き、手を重ねてくれたジュリアに頬を寄せて
「ありがとう。少し気が紛れたよ」
ジュリアがティリオの手を引っ張り
「明日も学校があるんだから、もう…休みましょう」
ティリオは導かれるまま立ち上がって
「そうだね。もう、休もうか…」
ティリオは一人ではない。
多くの仲間、友人、家族がいる。
あのミカボシ達のように個々ではない。
どんな事があってもティリオ達なら乗り越えられるだろう。
そう…どんな事があっても…
◇◇◇◇◇
ヴァルスアルヴァでは…
聖ゾロアスの王座の前にスラッシャーが立ち
「あのバケモノ共は、なんだ?」
聖ゾロアスは王座に座って沈黙している。
スラッシャーが笑み
「お前は、神なんだろう。全能が見通せないのか?」
聖ゾロアスが笑み
「全能で完璧でも、それを越える極限には…太刀打ちできない。それが神だ」
スラッシャーが嘲笑い
「言葉の綾を使うなんて、お手上げか…」
聖ゾロアスは淡々と
「いや、狙う先は分かっているが…」
スラッシャーが
「先回りするか?」
聖ゾロアスが
「あまり面白くないが、受け身の方が楽だ」
スラッシャーがフンと鼻で笑い
「狙う先の見当は?」
聖ゾロアスが視線を落として
「いずれ分かる。それまで待て…」
スラッシャーが
「オレを呼んだのは無駄話をさせる為か?」
聖ゾロアスが冷静な視線で
「ゾディファル教団…接触できたか?」
スラッシャーが嫌みな顔で
「オレは、教団を潰したい側だぜ。見つけたなら…」
聖ゾロアスが
「アオイ、お前にとって潰したいのは、ゾディファル教団の汚点だけであって、教団の人々を滅ぼしたいとは思っていない。それを知らない程、我は愚かではないぞ」
スラッシャーが黙る。
聖ゾロアスが鋭い視線で
「ゾディファル教団は、ゲヘノムヴァと接触を継続しているなら…今後、動きが複雑になって…最悪は…」
スラッシャーが顔を引きつらせ
「オレが教団の人間なんか気にすると思うのか?」
聖ゾロアスが
「事はかなり予測不可能になる。立ち位置や先を見誤るな。よいな…エンキド」
スラッシャーが…アオイとして受け継いだ名前を告げられて、顔を渋くさせた。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
続きを読みたい、面白いと思っていただけたなら
ブックマークと☆の評価をお願いします。
次話を出すがんばりになります。
次回より、新章が始まります。