星光 第127話 神の不確定さ
次話を読んでいただきありがとうございます。
全ては、アマテラスの予定調和の筈だったが…
父ディオスは、セイントセイバー号の奥深くに封印保管されている封印庫の厳重な超魔導鋼鉄結晶の大扉を開いて内部へ入る。
その後に続くアーヴィングが
「ま、待ってください! ディオスさん!」
それを無視してディオスは、厳重封印されている装備を手にしていく。
一撃で星を破壊する魔導砲、超質量のブラックホール弾のカートリッジ、惑星級兵器を一撃粉砕する破壊魔方陣無限展開装置、そして…デウスバベルの…照準トリガー、更に奥にある、デウスマギウスを更に兵器として神化させた、デウスオメガウスの機神装甲を起動させる。
アーヴィングとそれに付いてきたセイントセイバーのメンバーは青ざめて、一人が
「でぃ、ディオス様…この時空を滅ぼすつもりですか?」
無言で準備を続けるディオスは、背中に装備したカートリッジ鎧に取り出した武器達を接続して行く。
アーヴィングが
「ディオスさん。ティリオくんが誘拐されて…焦る気持ちは、分かりますが…ここは、対策を」
「あ!」とディオスが黙ってろ!という怒りの顔を向ける。
全員が引いて下がる。
聖帝ディオス、普段は頼りがいと優しい、本当に最高の上司だが、自分の子供が誘拐された瞬間、鬼へ変貌する。
誘拐された子供を取り返すなら、他以外…些末、邪魔する全てを破壊するだけの破壊神へ変貌する。
「どけ」
と、ブチ切れている声のディオスに、全員が固まってしまう。
ディオスは、額のサードアイの高次元観測でティリオが誘拐されて運ばれた場所を分かっている。
ディオスは、機神デウスオメガウスの胸部コアへ入る。
全長が五メートル前後、左右に黄金の鎧翼を伸ばす、高次元エネルギーを破壊に特化させた高次元兵器に乗り込み、セイントセイバー号の端末を操作して、出撃した。
青ざめたセイントセイバーの全員だが、アーヴィングが
「急いで、ディオスさんを追跡するぞ!」
「はい!」とセイントセイバー達はディオスの追跡を開始する。
子供を取り戻す鬼になったディオスは、一切の容赦がないのを全員が知っていた。
ディオスはデウスオメガウスの機神を走らせる。
向かう先は、ネオシウス時空の高次元、超空間ネットワークのコアがある場所だ。
そこにティリオは誘拐された。
◇◇◇◇◇
新たな超越存在を創造する作業が行われる。
ネオシウス時空の超空間ネットワークのコアから超越存在の新たな権能、サルヴァートが出現する。
それは、青く輝く鎧巨人で、龍の鎧を纏う青き機神だった。
そして、その青き龍の鎧のサルヴァートの前に、ミカボシをコアとするサルヴァートのエーシェントルドが現れる。
二つは同じ身長であり、同期するように波動を放っている。
エーシェントルドのコアにいるミカボシが息を吐き
「よし、安定した。後は…」
アルマティスの五人が乗るスカイギア達をここへ召喚する。
新たな超越存在のサルヴァートとアルマティス五人のスカイギアがリンクするように波動を同期させる。
順調だ。
ミカボシは順調にリンク・ハイパーグレートを構築する。
アルマティスの彼女達と繋がった新たな超越存在を創造する。
膨大なデータがミカボシの時空戦艦へ転送される。創造する際に得られるデータは次に行かせる。
この現象が起こっている超空間ネットワークに浮かぶミカボシの時空戦艦のエネルギー結晶型演算器が、全てのデータを記録する。
ミカボシの超越存在としての力も加わる。大半が持って行かれるも、後で時間を掛けて復活させれば…それに…アレも…少量だが超高次元多結晶体も…
ミカボシはエーシェントルドのエネルギーを使い果たしてしまった。
超空間ネットワークに浮かぶだけのミカボシ。
目の前に、新たな超越存在、リンク・ハイパーグレートが完成した。
新たな超越存在、アルマティスエルを前にミカボシは満足だった。
「やった」
疲れ切ったミカボシの下からミカボシの時空戦艦が来て、その甲板に膝を落とすミカボシ。
やり切った。
「聞こえているか? 五人とも…」
と、ミカボシは新たな超越存在となったアルマティスの彼女達に呼びかける。
「んん?」
返事がない。
ミカボシが膝を付いて、どうしたんだ?と思っていると
「これは…貰っておくわね」
と、ミカボシの背後から手が伸びてミカボシのポケットにある結晶の小瓶、超高次元多結晶体が入った入れ物を抜いた。
超高次元多結晶体が入ったケース瓶を持って、ミカボシの前にアナスタシアが来る。
ミカボシは驚愕で見つめて
「お前…アナスタシア…なぜ」
アナスタシアが笑み、ミカボシから奪った超高次元多結晶体のケース瓶を開いて、超高次元多結晶体を呑み込み
「アナタは…相変わらず、そういう所が鈍感ね」
アナスタシアの金髪が七色の光を放ち、背にアマテラスの転生体である光輪が出現する。
ミカボシは立てない。全ての力を使い果たして動けない。
「まさか…そうか…アマテラスの転生だったとは…」
アマテラスであるアナスタシアが妖艶に笑み
「ホント、いつ気付いてくれるか…待っていたのに…」
ミカボシが忌々しい顔で
「気付いたとて、オレのやる事に変わりは無い」
アマテラスが指を鳴らすと、アマテラスの周囲に空間接続のゲートが開き、五つのゲートには、スカイギアのコアにいるアルマティスの彼女達がいた。
アルマティスの五人は、ゲートから下りて、アマテラスの周囲に立つと、光を放って繋がり、大本、分裂した先であるアマテラスと融合して元に戻った。
ミカボシが乾いた笑いをして
「全部、仕組まれていたとは…」
アマテラスは淡々と
「アナタの敗因は、相手の気持ちを理解しても、相手と共にあろうとしない事よ」
新たな超越存在のサルヴァートであるアルマティスエルが青から黄金に変貌して、その背に電子回路模様の光輪を広げる。
アマテラスのサルヴァートへ変わったアルマティスエル。
アマテラスがミカボシの元へ近づき
「ねぇ…今度こそ…私達は共にある双極へ。これからも未来もずっとずっと、私とアナタは双極であり続けるの。心配しないで」
ミカボシが上から見下ろす天照女神、アマテラスを睨み上げ
「オレは自由だ。自由という選択肢を作る為に生きている。誰のモノでもないし、お前のトロフィーでもない。お前の望む双極とは、寄生したい誰かだろう。昔から変わらないなぁ…力があるクセに、何かに寄生したがる」
アマテラスは動けないミカボシを抱えて、その首筋を舐めて吸い付き
「ええ…理解しているわ。自分のどうしようもないサガをね。どんなに力を得ようとも、どんなに光り輝いても、ずっとずっと飢えていた。その飢えを満たしてくれるのは…アナタだけなの。こうして、アナタの生き血を、寄生している時だけが、私の飢えが満ちて幸せなの…」
アマテラスは、ミカボシの首筋を噛んで少しキズを入れると、僅かに滴る血を舐めて
「アナタの全てが…美味しい…満ちる」
と、ミカボシを甲板に寝かせて、その上に覆い被さり、唇に付着したミカボシの血を舐めて飲み
「私の飢えが、乾きが…癒やされる。ずっと永遠にアナタを愛し続けられる」
と、犬歯の牙が見える口元を見せ、その目は恍惚として…吸血鬼のように怪しく眼光が光る。
そこには、女神というより、妖艶で美しい獣がいた。
黄金の妖艶な獣のアマテラスは次のミカボシの体液を求める。
それは、男と女としての体液だ。生命を生み出す男だけが持つ体液を求めて…
ミカボシが呆れた感じで
「お前は、何も…変わらないのだなぁ…残念だよ」
突如、ミカボシに覆い被さっていたアマテラスが弾かれる。
アマテラスは体勢を直して着地して、ミカボシを見ると
「大丈夫か?」
ミカボシを起こすスクナがいた。
ミカボシが
「ああ…何とかな」
スクナが左腕に抱えるティリオを下ろして、自分のポケットから超高次元多結晶体のケース瓶を取り出してミカボシに与える。
ミカボシが僅かでも力を戻して立ち上がり
「さて…これから…」
離れた場所にいるアマテラスが
「無駄よ。アナタの力は全て私の元にある。どう足掻いても、アナタは私から逃れられないのよ」
ミカボシとスクナは冷徹な目で黄金の妖艶な獣であるアマテラスを見つめる。
スクナがディオスに破壊された右腕を再生させながら
「美しい女神も、その中身を剥けば…ただの獣とは…」
ミカボシが
「アマテラス、勘違いするなよ。確かにオレは…もう力が無い。だが、無いなら…再び作り直せばいい」
アマテラスが笑み
「ムリよ。不可能よ!」
スクナが
「ミカボシ、来るぞ」
ミカボシがとある天蓋を見つめて
「予測通りという事か…」
ミカボシが見つめる超空間ネットワークの上部から、超空間に穴を開けて聖櫃が出現した。
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次回、再臨と遠い遠い記憶