星光 第126話 釈迦の手の内
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全てが決まっている終わりに向かう筈だったが…
無数の時空戦艦達、エメラルドグリーンの時空戦艦、機神型の百キロの巨大な存在、その他の多種多様が時空戦艦達が、ネオシウス時空をハッキングした惑星兵器を取り押さえていく。
この時空戦艦の大連合艦隊は、ディオス達…他の時空の宇宙王や超越存在達が連合を組んだ巨大艦隊だ。
それが、あっという間に時空を占拠した兵器達を圧倒して取り押さえるのに一日と掛からない。
ネオシウス時空で大規模テロを行ったアルマティス達は、発起から一週間で終わりを迎える。
アルマティスの彼女達は…残り僅かの領域である極小さな星系に籠もる。
そこには、ネオシウス時空で最大の超空間ネットワークの接続を担う高次元接続装置が設置されている。
その規模は惑星サイズだ。
一個の銀河の周囲に無数の時空戦艦の連合艦隊が群がって包囲している。
圧倒的な力を誇るディオス達、時空連合艦隊は、アルマティスが籠もる星系がある、たった一つの銀河を完全包囲していた。
そして、その銀河へ降り立つネオシウス時空の部隊達。
その様子をディオスは、セイントセイバー号の巨大艦橋にある天上全面の画面から見つめていた。
圧倒的な大差で、負けが確定のアルマティスにディオスが
「理性があるなら…ここで白旗を」
艦橋のオペレーター達が騒がしくなる。
「目標の銀河に巨大なエネルギー反応!」
アルマティスが占拠する最後の銀河から全長三十万光年サイズの存在が出現する。
ハジュンがコアであるラージャハラアーダーが出現する。
ハジュンが
「やれやれ、こうなっては仕方ないか…」
と、ラージャハラアーダーの六腕を広げて宇宙を塗り替える曼荼羅を広げる。
それにディオスが
「予定通りか…」
隣にいるアーヴィングが頷き
「ええ…北斗くんの出番ですね」
ラージャアラハーダーが広げる宇宙曼荼羅を砕き裂く光の鯨であるメガデウス達。
光を放つ鯨型時空戦艦の先頭に北斗が腕組みして立ち、向かう先はラージャハラアーダーだ。
北斗は光の鯨型時空戦艦の先端で、無数の銃達を召喚生成しつつ、ラージャアラハーダーへ突貫する。
ラージャハラアーダーの中に入った北斗。
その内部は、曼荼羅が機械のように組み合わさった世界だった。
北斗は召喚した銃をとある方向に向かって発射すると、その弾丸が曼荼羅の機械世界を切り裂くが、その銃弾を握り止めた人物がいた。
ハジュンである。
「やれやれ、お客様を招いたつもりは無かったのになぁ…」
北斗が鋭い顔をして次の召喚生成した銃を握り
「悪いな。お前を捕らえさせて貰う。事情は捕らえた後で聞くとしよう」
ハジュンが溜息を漏らして
「せめて、自己紹介だけは…させて貰うぞ。我が名は第六天波旬。ハジュンである」
北斗が銃口を向けたまま
「人が語る神を語るか…」
ハジュンが笑み
「傲慢と思うかね?」
北斗が一瞬で光となってハジュンとの距離を詰めて
「いいや、それに見合う力を持っているから、別に…」
ハジュンの至近距離で額を狙う。
ハジュンは仰け反って避けた次に、曼荼羅の波動を北斗に浴びせる。
曼荼羅に飲まれる北斗だが、その曼荼羅を弾丸で切り裂き脱出、その間にハジュンは再び北斗と距離を置いて
「流石、神越存在、極天の自己自決の半身…」
と、ハジュンは世界を塗り替える曼荼羅を放つ。
それを北斗は神越存在の力を込めた神起源弾で粉砕消滅させる。
北斗はチィと舌打ちする。
相性が悪い。ミカボシなら自分は最高だが。
このハジュンという超越存在、世界の法則を塗り替える世界改変型なのだ。
神起源弾は、北斗の神越存在の力が入った弾丸であり、それは自己の起源へ干渉する力がある。
ハジュンの放つ曼荼羅の力は、世界の法則を改変する力を持つが故に起源に至れない。
起源、元に干渉する力は、世界の法則を変更する力との相性は最悪。
これも、アルマティスが勝つ為に…
だが、今は目的が変わった。
時間稼ぎでいい。後は見えた結果だ。
北斗は、予定取りに時間稼ぎの戦いを開始した。
◇◇◇◇◇
北斗の相手をしているハジュンに、ミカボシは
「すまんな…」
と、ハジュンに謝罪を告げている場所は、超空間ネットワークに浮かぶ時空戦艦のとあるホールであり、そのホールの中心に浮かんで、目的の遂行を始める。
ミカボシを乗せた時空戦艦は、超空間ネットワークを進み、コアであるアガラシアへ到達する。
そして、アガラシアに接続して
「さあ、始めよう。新たな超越存在の創造を…」
当初の目的である自分の力をトリガーとして、新たな超越存在、リンク・ハイパーグレートとしてアルマティスの五人を押し上げる作戦を開始する。
アルマティスの五人には機神スカイギアでコアであるオメガデウスにいる。
五機の機神スカイギアが光を放ち、リンク・ハイパーグレートへの神化を始める。
五つの立ち上る光の柱を見るディオスが
「これも予定通りか…」
と、全てがアマテラスの転生体の思うままに動いている。
このリンク・ハイパーグレートへの作業中にジックリとタイミングを待つかのようにネオシウス時空の艦隊、アマテラスの転生体アナスタシアが乗る時空戦艦が、全てが行われる星系の外縁で待っている。
アナスタシアが怪しく笑み
「そうそう。順調にやれば良いのよ」
◇◇◇◇◇
セイントセイバー号の厳重なセキュリティに守られた来客用の小規模コロニーにある、とあるホテルの広いホール、ベッドのように大きなソファーに座り、ホールの壁百インチ以上の巨大画面に映るのは、ネオシウス時空の現状だ。
その内容は、ディオスが大艦橋で見ているのと同じだ。
それを見つめるのは、オージンとクロエラ、千華
その別のソファー席にはグランナ、ファクド、レリス
ベッドのように寝そべるにしたソファーのは、エアリナ、ジュリア、アリル、ナリル、ルビシャル
三つの観覧ソファーがあった。
オージンが鋭い顔で、ネオシウス時空の超空間ネットワークのコア、羽化前のサナギのようなアガラシアに
「よいよ…か」
オージンと同じ席の紫苑が
「これが…新たな超越の始まり…」
別席にいるファクドが
「こうも簡単に超越存在がバンバンと出てくると貴重性が下がって良くないと思うけど」
オージンが
「ワシの技術だけでは、こうはいかん。ティリオの…お主達の技術、フォーミュラリオンがあったからこその事だ。これをマネしようとしても誰もできまい」
グランナが
「でも、彼らは…アルマティスはやろうとしている」
オージンが
「これは、あくまでも実験だろう。成功するもよし、失敗しても糧になる。それに…結末は決まっているだろう」
結末は決まっているという言葉に、全員が沈黙で応える。
エアリナが
「そういえば、ティリオは?」
紫苑が手を上げて
「千華と一緒に、外が見える場所で話していますよ」
クロエラが
「千華さんの事、分かるんですか?」
紫苑が頷き
「はい、私は千華と精神リンクを構築しているので、ある程度の事は…」
クロエラが
「前々から思っていたのだけど、千華さんと紫苑さんってどんな関係?」
その質問に紫苑は平然と
「私は千華をベースとした次世代型なんです」
ルビシャルが
「へぇ…じゃあ、遺伝的には親子みたいなもん?」
紫苑は首を傾げて
「どちらかと言えば…姉妹みたいな感じですね。一号機、二号機みたいなものですね」
◇◇◇◇◇
千華はティリオと並んで、問題が起こっている星系の光を見ていた。
星系から立ち上る五つの光の柱、それは、アルマティスの五人…彼女達が乗る機神スカイギアだ。
千華は、五つの光を伸ばす星系と機神スカイギアしか見えないが、ティリオは聖帝の血族としての高次元観測力を持って詳細に観測していた。
千華がティリオに
「どうよ? 現状は…」
ティリオが冷静に
「予定通り、リンク・ハイパーグレートを構築する作業に入っている。ネオシウス時空の超空間ネットワークのコア…アガラシアを使ってフォーミュラリオンの時のようにサルヴァードを構築している。おそらく…一時間後には…」
千華が皮肉に笑み
「なるほど、全部は…アナスタシアっていう転生体の予定通りか…」
ティリオが頷き
「アルマティスがリンク・ハイパーグレートないし、まあ、超越存在に至りそうになったら…アマテラスの転生体アナスタシアが繋がって、全てを持って行く。それだけだ」
千華が嫌みな笑みで
「全部、手の平の上ってか…かぁぁぁぁ。嫌みだね…」
ティリオが淡々と
「事態が悪化しないだけ、マシでしょう」
そう、全ては…アマテラスの転生体アナスタシアの目論見通りになるはずだった。
セイントセイバー号の多くの乗員が背筋に悪寒を感じる。
大艦橋にいるディオスが席を立ち上がると、アーヴィングと他に気付いたオペレーターがざわめく
アーヴィングが
「ディオスさん、この感覚…」
ディオスの父親としての本能が
「ティリオ達は、どこにいる?」
オージン達がいる来客用コロニーのホテル
オージン達が事態を映す巨大画面を見ていると、オージンを始め、高次元領域を感じられる感覚を持つ者達全員が
「なんだこれ」とファクドが
「おい、これは…」とグランナが
オージンが鋭い顔をして
「どういう事だ」
と、告げていると脇にいるクロエラが不安でオージンの腕を掴んでしまう。
エアリナ、ジュリア、アリル、ナリルが即座にベッドソファーから飛び立ち警戒に顔を変えて
「ティリオは?」
と、ジュリアとエアリナが同時に口にした。
そして、「え?」と紫苑が立ち上がって
「今、突然…千華とのリンクが切れました」
一斉に彼女達四人、ジュリア、アリル、ナリル、エアリナのティリオの伴侶達が飛び出した。
向かう先は、ティリオがいるであろう展望区だ。
千華と共に展望区で情景を見ていたティリオだが、左から感じる悪寒に振り向いてしまう。
同時に千華も鋭い顔をして銃を抜いていた。
左にある影からゆっくりと男が現れる。
「やれやれ、穏便に接触したかったのになぁ…」
と、姿を見せた男は、金髪の短髪で身長は百八十センチのティリオより少し低い百七十くらいだが、顔にくの字の入れ墨が幾つもある。
額、目の上、頬、首、喉仏
まるで、閉じた瞳のようだ。
ティリオと千華が警戒で睨んでいると、男は微笑みながら
「初めまして、両面宿儺…スクナと申します。以後、お見知り置き…ね。聖櫃と繋がる聖帝のご子息ティリオ殿、そして…かつて、数多の時空を支配した破壊の女王様…」
と、告げた瞬間、スクナが消えた。
一瞬でティリオの背後を取り、スクナの両肩から伸びる無数の腕がティリオの口、腕、背中、足を押さえてしまう。
ティリオは、振りほどこうとしたが、力が吸われて動けなくなる。
千華は迷い無く発砲して蹴りを放つが、スクナの両肩から伸びる別の腕がそれを受け止めて蹴りを放った足を掴んで投げ飛ばした。
だが、スクナの背後にバケモノが出現する。
スクナの左腕達を一瞬で粉砕、爆発して血煙を放つ左腕達を犠牲にスクナは脱出しティリオを奪取して離れる。
スクナは苦笑いをする。
一瞬で自分の左腕達を吹き飛ばしたバケモノ
幾つもの鎧の龍腕を持ち、赤く輝く三ツ目の黒い鎧のバケモノ
神格鎧、神格の全能を全て顕在化させるゴットディオンアーマーを纏うディオスがいた。
しかも、その纏っている神格鎧は、全てを闇の暴力でねじ伏せる最悪の神格、ダークオブ・ビースト、つまり闇の破壊神の神格鎧だ。
完全にディオスは、相手を殺しても息子を奪還する事しか考えていない。
後の結果より、今のティリオ救出が最優先なのだ。
スクナは痛感する。これはマズい、やられる…と直感した瞬間、ディオスがスクナに迫っていた。スクナの目の前にもう、ディオスはあり、完璧にディオスの間合い、射程だ。
スクナは、それに追いつけない。確実にやられる…未来が見えた。
だが、そのディオスを押さえつける存在がディオスの上に叩き被さる。
黒き軽装備鎧を纏う男が、闇の破壊神と同等の力をあるディオスを押さえて
「早くしろ! スクナ」
スクナが
「すまん、アテルイ!」
と、ティリオを連れて急いで空間転移して消えた。
ディオスは雄叫び、スクナの仲間、アテルイを消そうとしたが。
アテルイがディオスの腹部を蹴り飛ばして離して、直ぐに脱出の空間転移をして消えた。
ティリオが誘拐されてしまった。
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次話を出すがんばりになります。
次回、神の不確定さ