星光 第124話 アマテラスの願いと
次話を読んでいただきありがとうございます。
かつてのアマツミカボシとアマテラスの願い…それは…
アマテラスであるアナスタシアは、遠くから観測でルシアの裏切りに気付いていた。
アナスタシアは自分のいる宇宙コロニーの書斎で鋭い顔をしていた。
アナスタシアを中心に光輪が幾つも出現して、その光輪がこのネオシウス時空の全てと繋がってルシアの裏切りを見せていた。
ルシアは裏切った。
「あの女…やはり、こうなったか…」
と、アナスタシアは鋭く呟く。
ルシアには、最高の条件を出してやったのにも関わらず、この始末。
ルシアは地位も資産も手に入れて、残るは名誉だけ。
名誉を欲しているのは分かっていた。
絶対的な唯一の名誉、それを…
「まあ、いい…これも予測通りよ」
アナスタシア、二千年前にネオシウス時空に出現した超越存在であるアマツミカボシの対であり、かつて…超越存在だった転生体だ。
アナスタシアは座っているソファーから立ち上がり夜景の外を見る。
「全ては…もう後戻りできない。それだけ…後は…」
残り二日、アナスタシアが視覚を別の存在に繋げる。
その視界は…アルマティスの五人だ。
五人のネオニスの彼女達の視界全てとアナスタシアはリンクしていた。
それはネオニスの彼女達が知らない事。
全ての用意は終わった。
オルスが、ミカボシが失踪して、数年。
アナスタシアは、ネオシウス時空の全てと繋がる超空間ネットワークに仕掛けを仕込んでいた。
ミカボシの反応があった場合、直ぐにアナスタシアに知らせるように…。
そして、ミカボシが一年前に帰って来た。
だが、直ぐに…手を出さなかった。
ミカボシがやろうとしていた事を知っていた。
自分以外の新たな超越存在の覚醒。
何時の時代もそうだ。ミカボシは、天津甕星は…天を、上を見ている。先を見ている。
ミカボシではなく、オルスとして色んな時空を渡り知恵を付けて
アナスタシアは、アマテラスの過去を…思い出す。
アマテラスとして、ネオシウス時空の天上に昇り詰める日々、その隣にはアマツミカボシがいた。
双極の二対、アマテラスという太陽の象徴、アマツミカボシという雷…力の象徴
その二つが揃ってこそのネオシウス時空の超越存在だった。
でも、アマツミカボシは…別の事を考えていた。
新たな領域への到達。
支配の拡大ではない、新たな場所、領域へ立つ。
その為には、自分以外の超越存在を創造する事が必要だった。
ネオシウス時空の双極としての象徴は、互いに気持ちが離れて行った。
アマテラスは、ネオシウス時空の安寧と平和、アマツミカボシとの平穏な日々を求めた。
アマツミカボシは、新たな領域への挑戦、安寧は…そこに置いて…前に…先へ
二人はぶつかった。
アマテラスがアマツミカボシを叱咤して、アマツミカボシが…分かったと納得してくれたと、アマテラスは思っていた。
だが、アマツミカボシは密かに何かと接触して。
アマツミカボシは、アマテラスを自分と同じ超越存在にすると…
それをアマテラスは受け入れた。
対等な双極、それはネオシウス時空の象徴として素晴らしい事だと…アマテラスは喜んだ。
だが、違っていた。
アマツミカボシは全ての力を、自分の超越存在の力をトリガーとしてアマテラスを超越存在へ押し上げたが、その代償でアマツミカボシは…瀕死となり、何とか命を取り留めたが…生ける死体となり、短い命だった
アマテラスは、原因を調べて分かった。
自分とトリガーとしてアマテラスを超越存在にしつつ、自分を更なる領域への到達を目論んでいた。
アマテラスは、裏切られたと…失意で半身たるアマツミカボシを呪った。
だから、アガラシアの中に転輪呪樹を作り、その中へアマツミカボシの魂を封入した。
アマテラス自身の魂もアガラシアに縛った。
アガラシアというネオシウス時空の輪廻転生を司るシステムは、アマテラスとアマツミカボシの魂と同調する魂達を拾い上げて輪廻転生させる。
それによって、アマツミカボシとのリンクを構築して、相応のエネルギーを蓄積させて、アマツミカボシの転生を行う。
更に、アガラシアによって繋げられたリンクは、アマツミカボシをネオシウス時空に縛る。
これは、アマテラスの怒りだった。
自分との絆や安寧を捨てたアマツミカボシへの復讐であり
アマテラスの望み、共に永劫とあり続けたいという願いでもあった。
そして、現在
アマテラスの転生であるアナスタシアが
「やっと、願いが叶う。オルス…いえ、ミカボシ…貴方がどんなに望んでも結果通りにはならない」
家族を捨て、繋がりを捨て、自分勝手に生きるオルス、ミカボシへの…
もし、転生した今世で、共にあろうと…したのなら、こんな事にならなかった。
だが、やはり、死んでもアマツミカボシはミカボシのままだった。
◇◇◇◇◇
ミカボシは、超空間ネットワーク内に浮かぶアルマティスの拠点である宇宙戦艦でジョカ達五人を見つめていた。
宇宙戦艦の艦橋で、テーブル式のデータ机を囲んで話すジョカ、ブリジット、シャヴァ、イナンナ、ケインナを見つめているミカボシ。
シャヴァがその視線に気付き
「どうしたのミカボシ?」
ミカボシは首を横に振って
「いいや、何でも無い」
ミカボシは、感じていた。
ネオニスに彼女達全員に、自分が良く知る過去の、あの女の雰囲気と匂いを感じていた。
彼女達は、新たな超越存在を創造する方法を模索する為に作られた存在。
おそらく、ベースとなっているのは、転生前の半身であったアマテラスであろう。
それは予測通りだし、現に彼女達の遺伝子や因子データからも分かっている。
それでもだ。何かしら…アマテラスと共通しているような感じがする。
いや、アマテラスの転生体であるアナスタシアと似ている感じが…
ミカボシが考えを振り払う。
そもそも、アガラシアのシステムを作ったのは自分であり、新たにシステムを組み込める隙もないし、現に…ネオシウス時空をハッキングして支配した時に、超空間ネットワークやアガラシアを調べても変わっていなかった。
「考えすぎか…」
その言葉を隣にいるハジュンが聞いて
「どうした?」
ミカボシが
「計画の妨げになるような、新たな因子を想定していたが…考えすぎかもしれん」
ハジュンがコメカミを叩くと、ミカボシがハジュンとの脳内における秘匿通信に切り替えて
”ハジュン、スクナからの連絡は?”
ハジュンが
”まだ…だ。”
ミカボシが
”そうか…聖櫃が現れる兆候は、ない…という事か…”
ハジュンが
”聖櫃がなくても、遂行はできるだろう”
ミカボシが
”ああ…可能だ。だが…”
ハジュンが
”何の不安要素を考えている?”
ミカボシが
”聖帝側の動きだ。聖帝ディオスと聖帝の子息ティリオがいる。こちら側のやろうとしている事を予測しているはずだ。だから…”
ハジュンが
”聖帝側が妨害を…”
ミカボシが
”いや、この時空の者達は…新たな超越存在を欲している。ならば…手柄は自分達のモノにしたいはずだ。聖帝ディオスは、無用な争いを嫌う。あくまで救援者に徹するはずだ。だが…”
ハジュンが
”何が問題なのだ?”
ミカボシが鋭い顔をして
”いささか、こちらの予定通りすぎる。それに…聖帝ディオスの時空連合艦隊もこちらを伺うような動きをして、占拠された領域を取り戻している。こちらに手の内が分かっているなら…もっと早く動くはずだが…”
ハジュンが鋭い顔をして
”意図しない力が働いていると…”
ミカボシが眉間を寄せて
”ああ…”
ジョカとイナンナが、自然と秘匿通信して会話しているミカボシとハジュンを見る。
それは二人にとっては無意識と処理されたが、主であるアナスタシアが
「あら…これは、計画を早めないとね」
ミカボシの転生体の半身であるアマテラス、アナスタシアには手に取るようにオルスの気持ちが分かる。
上手く行きすぎて怪しい…と。
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次話を出すがんばりになります。
次回、艦隊派遣と強引な