星光 第123話 暗躍と深謀遠慮
次話を読んでいただきありがとうございます。
判明したミカボシの目的をティリオ達は、ネオシウス時空の者達に説明して…
父ディオスと息子ティリオは、とある会議の面々の前にいた。
ネオシウス時空の統治者達や、その皇族や王族の面々。
遠くで、まだ…領土奪還途中の皇族や王族に統治者達は、秘匿通信で参加している。
現在、ネオシウス時空は四日で占拠された半分が奪還された。
あと二日、たった二日でネオシウス時空を占拠した、このアルマティスの事案が終わる算段がついている。
だが、その前に…アルマティスが行おうとしている事。
その背後にいるオルス…ミカボシやハジュンが行おうとしている事の説明をティリオがしていた。
ティリオが様々なデータ立体映像を会議に出ている全員に転送して、説明して
「以上が…アルマティスが行おうとしている。リンク・ハイパーグレートの構築の概要です」
説明された全員が信じられないと…という顔をしている。
王族の一人が
「これが…本当に行われようとしているのですか?」
ティリオが答えにくそうにしていると、隣の父ディオスが
「ほぼ…いえ…確定しています」
会議に出ている全員が言葉を詰まらせる。
ネオシウス時空は、次の超越存在を欲して二千年も研究してきた。
それが…自分達の研究成果ではなく、全く別の者達が行おうとしている。
その事実に理解が及ばない。
ディオスが
「皆さんが困惑するのも理解できます。皆さんがどれ程の努力をして来たのかも…分かります。ですが…このオルス…とされるミカボシは…」
と、ディオスがティリオを見る。
ティリオが頷き
「おそらくですが。二千年前に出現したネオシウス時空の超越存在の転生体の可能性が高い…いえ、おそらくは…」
アルヴァートが
「そうか…だから…息子はオルスは…」
そして、会議の場にセイントセイバーの士官が入り「ディオス様…」と耳打ちする。
ディオスが渋い顔をして
「分かった。ありがとう」
伝えた士官が下がった後、ディオスへデータが転送されて、ディオスが
「皆さん。新たな情報です」
と、新たに得られたデータを会議のメンバーへ転送する。
”これは…”
と、会議のメンバー達全員に驚きが走る。
ディオスが
「ネオシウス時空の超空間ネットワークのコアであろうアガラシアには、二千年前に出現した超越存在のエネルギーが封印されているそうです」
ティリオが苦しそうな顔で
「全てが繋がります。リンク・ハイパーグレートは、超空間ネットワークが必要である事、トリガーとなる超越存在ないし近い存在のエネルギーが必要な事。このアガラシアに封印された超越存在のエネルギーは、トリガーとなりつつ、新たな転生体を作る力にもなる」
ルクセウスが
「情報元は、ルシア嬢…オルスのパートナーだった女性か…」
ティリオが
「あの…ぼくは…自分は、このネオシウス時空の過去の話を存じ上げていませんので…。なぜ、このような、アガラシアのようなシステムが残っているのでしょうか?」
他の皇族で、一番に年齢が高い女王アルテマス。
宇宙を統一した時空文明では寿命が五百年を超えている。アルテマスは七百年近い超高齢だ。
アルテマスが
「このネオシウス時空には、二人の超越存在がいました。まあ、正確には、その伴侶であり女王であったアマテラスと、夫で超越存在のアマツミカボシによって、こんにちまでの世界を支える遺産達が誕生しました。ですが、その代償は大きかった。このネオシウス時空を満たす遺産を作る為に夫であるアマツミカボシ様の命が削られた。妻であり女王アマテラスは、何とか夫アマツミカボシの延命を…ですが…」
ディオスが溜息を漏らして
「つまり、亡き夫の復活の為に…ですか…」
アルテマスが
「今でもそうですが。完全な形での復活は、不可能であっても…転生体という形なら…多少は違うも、復活は可能なはずです。ネオシウス時空でもアガラシアの力によって転生体となる方達は多数、報告はされていますので…」
ルクセウスが
「復活したアマツミカボシ様は、自分と同じではなく。別を…か」
アルテマスが
「アマツミカボシ様は先を見ている方…とアマツミカボシ様が存命だった頃を知る亡き曾祖父や曾祖母から聞いておりますから」
色々と会議が外れそうだったので、本題に戻す為にディオスが
「では、今回の議題であります。今後について…ですが。これを踏まえて皆様の決議は…どう、変更なさいますか?」
ディオスの問いに暫し会議室が静かになる。
そう、これは…この時空にとっての待ち望んだ事。
新たな超越存在。
それを…
このまま対処してしまえば、ディオス達は超越存在を誕生させる事なく、問題を早期に解決するだろう。
だが、アルマティスの目的が達成された後に…
待ち望んでいた新たな超越存在、だが…それは…自分達側ではない。
それが、自分達と共にある保証は、どこにも無い。
ルクセウスが
「もし、このまま事態が解決した…として、アルマティスがやろうとした事をこちらでも再現可能でしょうか? 聖帝ディオス様」
ディオスがティリオを見ると、ティリオが
「ムリではありませんが…解析に時間が…」
アルヴァートが
「聖帝ディオス様。とても厚かましい提案になってしまいますが。聖帝様は、ネオシウス時空の…奪還だけで、後の、この超越存在の事については…」
ティリオは父ディオスを見る。
手柄を寄越せという感じだ。
ディオスが溜息を漏らして
「我々は、あくまでも、ネオシウス時空の救援です。諸々の事は、そちらで採決するべきだと思っています」
アルヴァートが頭を下げ
「ありがとうございます」
ティリオは、まあ…そうか…という感じだ。
◇◇◇◇◇
その後、ディオスはセイントセイバーへ戻り、作戦会議室で北斗とメガデウス人類部隊、セイントセイバー部隊、他の時空連合艦隊の者達と連絡を繋げながら
「という、事の顛末だ」
北斗が「無難でしょうね」と告げてその両脇にいる北斗の時空のメガデウス人類達が北斗を横見する。
北斗が
「我々は、征服者ではない救援者だ。その立場を忘れてはダメですから」
他の時空連合艦隊を纏める士官の黄金創世民の司令が
「私も北斗様と同意見です」
ディオスが頷き
「では、我々は救援者として動き、この時空で誕生する超越存在の問題は、この時空に任せるという事で、一致だな」
会議に出席している全員が頷いた。
◇◇◇◇◇
会議が終わってディオスは、息子ティリオとセイントセイバー達と共に会議室を出て、通路を共に歩きながら
「全く、面倒事ばかりだ」
セイントセイバーの総長アーヴィングは
「事が複雑ですね」
ディオスが呆れ気味に
「権力闘争なら、放置で知らんぷりだが…今回も厄介でトンデモナイ事ばかりだ」
アーヴィングが
「ですが。領分を間違えると…後々に大きな問題になる。ネオシウス時空の救援部隊で十分でしょう。もし、後々に協力を欲されたら、その時はその時で…」
ディオスが厳しい顔で立ち止まる。
ティリオが
「どうしたの? 父さん?」
と、皆が止まる。
ディオスが厳しい顔で
「いや…ネオシウス時空の者達との会議なんだが…荒れると思っていた」
アーヴィングといったセイントセイバー達に、ティリオ達が視線を戸惑いで合わせる。
そんな中、ディオスが
「待ち望んでいた超越存在を前に、やけに冷静だなぁ…と」
と、疑問を口にした。
ティリオがハッとして
「確かに、そういえば…何も荒れるような感じではなく。まるで…」
アーヴィングが青ざめて
「まさか…まだ、裏が…」
立ち止まっている一団に「ティリオ」とエアリナ、ジュリア、アリル、ナリルの四人と
ティリオが四人と顔をフードに被る五人目を見て
「え? 貴女は…」
女性がフードをしたまま顔を見せ
「ごめんなさい。認識阻害の装備を纏っての顔見せ…失礼します」
と、ルシアの隠れる顔があった。
ディオスが更に厳しい顔をして、ティリオが戸惑っていると、ルシアが近づき
「事実を…伝えに来ました」
ルシアの裏切りだった。
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次回、アマテラスの願いと