第90話 政争に巻き込まれた。
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あらすじです。
ディオスの元にトンでもない凶報が響く、ソフィアのキングトロイヤルの時にあったゼリティアとの契約がおかしな事にされ、バルストランの政争の道具にされた。それに対してディオスは…
だが、その混乱に紛れて動く者達がいた。
ディオスはゼリティアの城邸に来て、ソファーにてゼティアを抱いて隣にゼリティアが座っていた。
ここはゼリティアの自室だ。
ベッドの寝室には、ゼティアのベビーベッドがある。
ゼリティアは何時でも、ゼティアの相手が出来る準備がしてある。
ディオスは、ゼティアを抱っこしてあやしながら
「なぁ…ゼリティア…オレ…評議員になった方が、ゼリティアを助けられるかなぁ…」
それを聞いてゼリティアは驚き
「ディオス…どうしたんじゃ?」
「実は…」
ディオスは素直にギレンに、評議員になってゆくゆくは評議会議長へ…と誘われたのだ。
それにゼリティアはフ…と溜息を漏らし
「そうか…のぉ…夫殿はどうしたい?」
「それが、ゼリティアの助けになるなら、いいかなぁ…って」
「そうじゃのぉ…そうなれば、きっとオルディナイトの者達や、いいや…多くの者達が喜び、きっと前王のように、ソフィアの後、王になるしかなくなり…そして、夫殿と一緒に政治をする。悪くない未来かも…。じゃがのぉ…夫殿…今での妾は十分過ぎる程、幸せじゃ。だから、夫殿のしたいようにすればいい」
ディオスは天井を見上げて考え
「そうだなぁ…。将来は…もっと自由で…色々と動ける組織でも作って世界平和でも目指すかなぁ…。なぁ…ゼティア。そうなれば、もっと世界が平和になって、安心して、お前やゼリティアママが幸せに暮らせるなぁ…」
それを聞いてゼリティアが
「レディアンが聞いたら喜びそうな事を言う」
ディオスは
「ソフィアの方は?」
ゼリティアはホホ…と笑い
「きっと頭を抱えるだろう。厄介事を増やして!となぁ」
「うあわ…怒っている顔が目に浮かぶよ」
それは、何時もの朝だった。
屋敷でみんなで朝食を取って、午前の訓練を始めようとしたら、ユーリが突然、飛び出して
「旦那様ーーーーー」
「どうしたんだ?」
ディオスが首を傾げる。
ユーリがディオスの前に新聞を持って来て
「これを…」
「はぁ…」とディオスはクリシュナ、クレティアと一緒にユーリの持って来た新聞を見ると、見出しに
ソフィア陛下のキングトロイヤルの時に、オルディナイトを買収する動きがあったという疑いあり、買収を持ちかけたのは、アーリシアの大英雄、ディオス・グレンテル
「ああ…」とディオスは困惑する。
クリシュナが
「アナタ、王宮に行きなさい!」
「ああ…分かった」
と、ディオスは急いで王宮へ向かう。
王宮の王執務室に飛び込んだディオス。
「ソフィア! とんでもない事になっているぞ!」
そこには、ソフィアとゼリティアにレディアン、ナトゥムラにスーギィ、マフィーリアにカメリアがいた。
ソフィアは額を抱え
「どういう事…」
レディアンが
「まさか…キングトロイヤルの時に、ソフィアとゼリティアに交わされた約束が露見したのか?」
ナトゥムラが腕を組み
「それだとしても問題ないだろう。前王だって当時、敵対側だった候補の女性、後に妻を取り込んで王になったんだ」
ゼリティアが
「ああ…その通りじゃ。約束であって、実際…施行されたのは、ソフィアが正式に王となって妾が仕えた後じゃ。なのに…」
マフィーリアが
「まるで、キングトロイヤルの時に買収されたと…」
スーギィが
「何でも、今日の評議会で野党の民主新進党が説明するらしいぞ」
カメリアが
「それを見てからでも、遅くわありません」
王執務室で、立体画面を前に評議会の中継を見る。
野党、民主新進党の、今回の説明をする評議員の人族の男性が出て
「では、ここにかの、アーリシアの大英雄が、ソフィア殿を王にする為の、オルディナイトを買収した事実を公表します」
評議員の男が高らかと、透明な保管袋に入った書面を掲げる。
「これが、証拠です。この書類は、ディオス・グレンテル氏と当時、ゼリティア・オルディナイト氏が、交わした魔導石の販売契約書です。この契約書には公正証書による印鑑もあります。日付は、キングトロイヤル最中の二月の十五日! ディオス・グレンテル氏の署名も入っています」
この契約書を持ってディオスが、莫大な利益を生む高純度魔導石をオルディナイトに格安に売るとして、その条件としてソフィアを王にするという条件を付けたのを証明する。
そう説明した。
それを見たゼリティアは
「はぁぁぁぁぁ 夫殿の契約書は全て、妾が管理している。盗まれたという報告もない。それ以前に、そんな時に契約なんぞしておらんし、その契約書を持っているという事は、盗んだという事じゃぞ」
王執務室にいる皆は一斉に首を傾げる。
ディオスはジーと立体画面に映る、その契約書というヤツを見つめる。
あれ…あの署名…。えええ?
そう、契約書には憶えがないが…書面の署名の筆記には憶えがある。
そうだよねぇ…アレ、あの時に書いたモノだよねぇ…。
立体画面に映る評議会は、野党が攻める。
これによって、ソフィアの王位の正当性が崩れ、王弾劾裁判が起こせると、そして、この責任を取って王の罷免、そして…評議会解散と、声高々に告げる。
与党、自由国民党も負けてはいない。
それは、個人の契約であって、全くの関係ないと…。
その書類が本当なら、それを証明するべきだと。
野党は民主新進党と共和王道党と共に、この書類の契約は正式なモノだとして、論理を展開、そして…与党を攻める。
さらに、ここに、ソフィア陛下と、その本人であるディオス・グレンテルを呼ぶべきだと…。
与党からは
そんな事が、出来るのかーーーー
声が飛ぶ。
それをするには、ソフィアが王を罷免されるしかない。
評議会は大荒れだった。
王執務室でゼリティアが
「暫し、確認してくる」
執務室を出て連絡を入れる。
残された面々、レディアンが
「ディオス、本当に憶えはないんだな…」
ディオスに全員の視線が集中する。
ディオスは力強く「はい。全くです…ですが…書かれている署名には憶えがあります」
『はぁ?』と全員が首を傾げた次に、仕官達がドアを開けて
「大変です陛下!」
「どうしたの?」
と、ソフィアが
「フランドイル王ヴィルヘルム様より、連絡が」
別の仕官が
「ロマリアの皇帝ライドル様より、通信が」
また、仕官が入り
「アリストス共和帝国より、アインデウス様が…」
王執務室に、膨大な数の魔導通信機が並ぶ。
それに繋がっているのは十二国の王達と、ロマリアとアリストスの皇帝達だ。
ソフィアが、王達と通信を繋ぎながら
「ディオス、本当に憶えがないのよね」
「はい」とディオスは答えた。
ヴィルヘルムの通信機が
『なら、何故…そんな事が…』
そこへ、ゼリティアが戻って来て
「確認した。夫殿の契約や様々に関する書類は、全くオルディナイトから動いておらん。あの野党共が掲げる契約書は、偽物だぞ」
ディオスは額を抱え
「ですが…契約書の書面にある署名には憶えがあります」
ナトゥムラが
「どういう事だ?」
「実は…」とディオスが理由を告げると、カメリアが急いで執務室にある書類を探り、一枚の書面を取り出す。
それにはディオスの署名が入っている。
今日の荒れた評議会の中継が収まった動画を再生、その掲げられた書類の署名と、その書面の署名を重ねた瞬間
「あああ…一致しました」
ロマリアのライドルに繋がる通信機が
『おいおい…という事は…』
凄く鋭い空気が周囲を包む。
スーギィが
「だが、どう証明する。評議会では、それを立証しようにも、刑法が余程の事がないかぎり及ばないという法律がある。それにディオスは王の臣下だ。前に出てそれを証明するにしても…法律の壁が…」
ディオスが手を上げ
「確か…憲法にある刑法に関する事に、犯罪を抑止する為に、国民は犯罪捜査に協力しなくてはならないと…ありましたよね」
マフィーリアが
「ああ…成る程…確かに犯罪となれば、貴族も王の臣下とて関係ないからなぁ…」
ソフィアが
「もし、それで証明されたなら…アレを発動させるわ」
ゴクンと周囲が唾を飲み込んだ。
そう…とある強力な権限がバルストラン王にはある。
レディアンが視線を鋭くさせ
「ウチの…ヴォルドル家の一門の中に、確実な物的証拠を持って論理詰めにして捜査を解決する骨切りレイピアの乙女という捜査官がいる。彼女を使おう」
ソフィアが
「いいの? 民主新進党には、ヴォルドル家の息が掛かった評議員もいるのよ」
レディアンはフッと嘲笑い
「こんな、愚かな事をする輩なんぞ。切り捨ててくれるわ」
レディアンは静かに怒っていた。
その夜、ニュースが騒がしかった。
アーリシアの大英雄による、王位買収騒ぎに沸いていた。
そんな中、各国、アーリシア十二国の王達がそれぞれ、この事件に関するコメントを発表する。
今回の事件に際して、直接、ディオス・グレンテルに確認を取った。
グレンテルは、全くの身に覚えがないと…。
確かな言葉で告げた。
誤解が広がっている。冷静な見地に立って見て欲しいと…。
そう、アーリシア十二国の王達はコメントした。
ロマリアの皇帝ライドルがコメントする。
今回のグレンテルに関する事件。
事実なら、ロマリアにとって大きな事だ。
アーリシアの大英雄がアーリシアから追い出されれば、ロマリアは堂々とグレンテルと手に入れられるチャンスだったが…。
悲しいかな…本人に直接確認すると、完全に否定された。
安易に事態を大きくするのは、良くない。
それに、我はアーリシアの大英雄がどいう人物か、良く知っている。
こういう事をする愚か者ではないとなぁ…。
アリストスのアインデウスが告げる。
アーリシアで、大きな動きがあった。
その元凶たる本人に確認すると、事実無根であると。
故に直ぐに解決するだろう。
冷静な対応を頼むよ諸君。
大きく世界で報道され、揺れている。
そして、この混乱の最中、動く者達がいる。
特別な姿を隠す魔法を飛空艇にかけバルストランに密入国する一団。
彼らは、クレティアを奴隷にしたダージーのいた組織、ゾルトリアである。
その船の倉庫に、子供達がいる。
集まって肩を寄せ合い、ただ、ジッと待っている。
子供達や腹部、額には、あのクレティアにされていた、忌まわしき奴隷の呪印がある。
その子供達の中に、女の子がいた。
年は六歳で、ピンクの髪、名前はアイカ…。
アイカはただ、必死に耐えていた。
そんな子供達のいる倉庫へ、ゾルトリアの汚い大人が食料を投げる。
袋にある食料は…カロリーと栄養だけが取れるマズイ保存食だ。
子供達は、それを手にしてみんなで分け合い。
必死に生きていた。
アイカは強く思っていた。
生きなければならない。約束だから…。殺されたパパやママと約束した。
生きてって
ゾルトリアの連中は、上で豪華な食事をする。
今度ある、仕事の成功を願っての前哨パーティーだ。
ゾルトリア…
アフーリアを拠点として、金さえ貰えばなんでもやる最低な犯罪集団である。
殺し、強姦、惨殺、鏖殺、強奪、誘拐
正にやっていない犯罪はないという外道集団が、とある仕事で、全員来る事になった。
コードネーム…ヘラクレスの首狩り
その額は金貨三百万枚『三百億円』だ。
このディオス達を揺さぶる政争は、この一団を入れる為の布石だ。
ゾルトリアに、この金額を提示したのは…アズナブルとゴルドだった。
そう、エニグマからの依頼であった。
その為に特別な子供達を奪い攫って集めたのだ。
アイカもその一人だ。この依頼をするために使われる捨て駒だ。
同時刻、バルストランの夜、ディオスの屋敷ではフェニックス町の人々が集まっていた。
今回の事でディオスから直接言葉が聞きたかった。
「皆さん。心配をお掛けして申し訳ない」
と、謝るディオス。
ヒロキと数名が近付き
「ディオスさん」
ディオスは
「全く、今回の事は、憶えがありません。ですので安心してください。明日になれば、解決する方法があるので」
フェニックス町の人々が
よっしゃあああああああああああ!
大きな歓声を上げる。
さあ、その時の前哨パーティーだ!
屋敷が賑やかになった。
その言葉を聞きたくて、フェニックス町の人々は集まっていたのだ。
彼らのディオスに対する信頼は厚い。
ディオスは
ありがたい事だなぁ…
そう、強く思ったのだ。
屋敷では、フェニックス町の人々がディオスを、アーリシアの大英雄を讃える歌を大合唱しながら、場を大いに盛り上げた
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次話は完成次第あげます。
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