星光 第117話 バケモノの戯れ
次話を読んでいただきありがとうございます。
超越存在の二柱と対峙したティリオ達、どう足掻いても勝てない実力差に…
この世に存在する全てに例外は存在しない。
この事実を告げると、アレやコレは?と主張する人がいるが。
その主張は、言い訳でしかない。
特例はあるが、それは遙か彼方の話であって現実でも事実でもない。
9999回の内に起こった1回の成功事例ほど、無意味な事は無い。
むしろ、9999回の内に起こった1回の失敗の方が意味があるし、それを調べて対策を取る事は、有意義である。
理屈、道理、事実。
これに直面すると人は、否定したくなる。
でも否定はできない。正論で殴られた!と泣きわめく人達もいるが。
それは、意味の無い行動だ。
それは超越存在とて同じだ。
超高次元の力を際限なく召喚できる超越存在は、何でもできる神のような存在に見えるだろうが、限界がある。
超越存在の個人では、惑星の大陸程度の広さしか、その権能を発揮できない。
むやみやたらにエネルギーだけを発生させるなら、数億光年規模を消失させるエネルギーは生成できるが、それは所詮…爆弾でしかない。
だが、それ以上の権能、全能の力を広げる方法がある。
それは、人との繋がりだ。
人の質にもよるが、多くの人々の繋がりを構築する事で超越存在は、その権能の領域や深度を上げる事が出来る。
その例として、聖帝ディオスや、黄金創世民のアヌビスがある。
ディオスは惑星アースガイヤと根深く繋がっている。それは、アースガイヤの人々もだ。
ディオスが今まで行ってきたアースガイヤの活動は、ディオスに莫大な人との繋がりをもたらした。
多くのディオスの家族や仲間、友人、知人、親族と…ディオスは多くの人々の、アースガイヤの民達との繋がりを構築できた。
それのお陰で、ディオスは聖帝と呼ばれる程の超越存在の権能を獲得した。
黄金創世民のアヌビスも同じだ。
アヌビスも多くの黄金創世民の繋がりがあるからこそ、宇宙規模の権能を発揮できる。
人にとって多くの人との繋がりは、利益でもあるし足枷だが。
超越存在にとっては違う。
多くの人々との絆、繋がりがあるからこそ、その権能が発揮できる規模が大きくなり、全能の度合いも深くなる。
それは、人々との繋がりが足枷ではなく、安全弁として機能しているからだ。
際限なく、超越存在の個人が超高次元から力を呼び出し続ければ、その個人の存在が消失すると共に、制御を失った超高次元の穴は巨大な爆発となる。それは時空が消し飛ぶ程の威力を発揮する。
つまり、超越存在の個人という人が消えなければ、無限でかつ便利な権能が引き出し続ける。その超越存在の個人を守る安全弁が人々との繋がり、絆なのだ。
これに、例外はない。全ての超越存在が巨大な権能を発揮するには、それ相応の人々の繋がり、絆が必要なのだ。
例外はない、特例はあるも、それは特例であって例の一つである。
だが、ティリオ達が今…遭遇しているそれは、例外中の例外だった。
超越存在の機神人類の充人、ティリオのオジさんであり、機神人類の祖でもある充人も例外に外れていない。機神人類として多くの時空を渡り歩き、繋がりと人々の思いを受け取ってアヌビスと同じ権能のレベルになっている。
何度でも言おう、例外はない。
超越存在の権能を上げるには、人々の繋がりが必要なのだ。
その絆の累積が必要なのに…ティリオ達の目の前には、たった一人で圧倒的な超越存在の権能を発揮する、超越存在のバケモノがいた。
深紅に染まる宇宙で、悠然と立つ全長三十万光年の存在。
ラージャハラアーダーとエーシェントルドの二柱。
ティリオの超越存在の知覚が、そのコアであるミカボシとハジュンの恐ろしさを伝えている。
たった一人、その個人が、超越存在の根源である超高次元からの力を際限なく呼び出して、ティリオ達が不可能な権能を発揮している。
超越存在が時空で超越存在の力を上げすぎると、時空排他作用によって時空から追い出されて超高次元へ転移する。
それが超越存在の当然だ。
だが、この二柱だけは違った。
際限なく超高次元から超越存在の力を噴出させているのに、現時空でその存在を確固たるモノとしている。
例えて言うなら、アリの脳で、巨大な象の体を操作するのと同じ、むちゃくちゃがそこにあって、それを可能としているのだ。
ティリオがどんなに努力しても、手に届かないレベルの事を、ミカボシとハジュンがやっていた。
「そんな…バカな…」
と、ティリオが驚愕してしまう。
遙か原子サイズになるティリオ達を、ミカボシがエーシェントルドから見下ろして
「さあ…聖帝の子にして、神ゾロアスに愛されし者よ。汝達の力…見せて貰おう」
と、笑みながらティリオ達を力で包む。
それはお膳立てだ。
ティリオ、グランナ、ファクド、クロスト、グラドス、ガオス、ラグス
アリエス、エアリス、サラナ、マーリル、ナーリス
ジュリア、アリル、ナリル
十五人の彼ら彼女らが乗るゼウスリオンとマキナを包み込む程のエネルギーの球体。
ファクドが
「これは…どういう事だ?」
ティリオが
「お膳立てだ」
クロストが
「まさか! 同じ事をやってみろって! やめろ! 挑発だぞ!」
グランナが
「でも、どうする? オレ達がここで…やらないと…」
ジュリアが
「ティリオ…」
ティリオは意を決して
「やろう。やるしかない!」
ティリオの言葉に覚悟を決める仲間達。
ティリオ達は、力を合わせる。
ティリオ達十五人はリンクする。
ティリオ、グランナ、ファクドが超越存在の力を発動させて三つの黄金の光柱、三位一体を構築して、それにセイントセイバーの卵である十二名がリンクして、超越存在の魔方陣を構築する。
超越存在の権能を発揮する魔方陣が発動される。
そこに出現した存在は…全長が十万光年サイズの黄金の鎧龍ドラグラーだ。
そのサイズの権能だけでも凄い事だ。
銀河サイズの超越存在の超龍、ドラグラーを発動させた。
ティリオ達がコアとしている黄金の超龍、ゴルドルドラグラーを見下ろすミカボシのエーシェントルド。
エーシェントルドのコアであるミカボシが笑み
「なるほど、これ程の力を発動できるとは…確かに…未来ある子達だ」
余裕があって当然だ。
銀河サイズのゴルドルドラグラーのコアでティリオが渋い顔をして、遙か巨大なエーシェントルドとラージャハラアーダーを睨み上げる。
自分達が力を発動させるお膳立てを貰っても、ミカボシ達には届かない。
ミカボシがエーシェントルドを動かし
「さて…どれ程に耐えられるか…撫でてやろう」
動き出したエーシェントルドより早くゴルドルドラグラーが動く。
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次回、畏怖の超越存在達