星光 第107話 オルスの過去
次話を読んでいただきありがとうございます。
例の人物、オルスの育った過去とは?
オルスの過去。
オルスがエリザス宇宙学園の生徒だった頃。
オルスは、宇宙学園の庭園のベンチで寝ていると
「先輩」
と、ルークスが呼びかける。
高等部二回生の幼さが混じる十六歳のルークスがベンチで横になるオルスに呼びかける。
オルスは体を起こして
「どうしたんだ? ルークス」
ルークスが苦笑して
「姉さんが、先輩を呼んでいるよ」
オルスがベンチから立ち上がる。
その身長は180を越えて眼光が鋭く、身に纏っている雰囲気が十七歳の学生とは思えない貫禄を放っている。
オルスが
「用事は終わったはずだぞ」
ルークスが呆れ気味に
「姉さんは、まだ、用事が終わっていないってさ」
オルスとアナスタシアは、生徒会の副会長と、生徒会長という関係だ。
アナスタシアが生徒会長、オルスが副会長、ルシアが書記、ルークスが書記補佐
そうして、生徒会長を回している。
生徒会の主な仕事は、学園で行われる行事の様々な許可書や予算計画書の作成といった生徒の許可書類を作る事だ。
偶に、奉仕活動のリーダーもやらされるので…生徒会長が何処かの王族や皇族であるのは慣例だ。
そうでなければ、誰も貴族の子息や子女達は従わないだろう。
オルスが面倒臭そうに頭を掻いて
「何の用事だ? 今日の生徒会の仕事は、全部…終わったろうが」
ルークスが
「王族や皇族としての心構えを勉強するんだって」
オルスがフッと吹いて
「アホか、オレは…王族とか皇族の未来なんてないぞ…」
ルークスが
「それでも、姉さんにとっては、許婚候補だから。立派になって欲しいのだと」
オルスがルークスに肩を回して
「サボるか…ルークス」
ルークスが嫌そうな顔で
「姉さん、怒ると怖いんだから…ヤダよ」
オルスが溜息を漏らして
「そうか、仕方ない。その心構えの勉強が終わったら、何処かに遊びに行こうぜ!」
ルークスは渋々
「怒られるのは、先輩だけにしてね」
オルスが笑み
「ああ…大丈夫さ。何時も通り、ルークスがオレの世話をしていたって事にするからよ」
こうして、ルークスに連れられてオルスは、王族や皇族としての心構えという説教をアナスタシアから二時間も受けて、ルークスと遊びに行った。
夜の九時前にルークスを学園のあるコロニーの屋敷に送り届けると、玄関先で腕を組み仁王立ちしているアナスタシアがいた。
ルークスが困惑で
「姉さん、これは…その…」
オルスが
「悪いな、オレがムリを言ってルークスをつき合わせた。ルークスに怒るなんてお門違いだぜ」
アナスタシアがオルスの腕を掴み
「ねぇ…自分の立場…分かってる!」
と、怒った顔だ。
オルスが掴んだアナスタシアの腕を外して握る。
か細いアナスタシアの腕が強く締められて、握りつぶされそうに見えるが、オルスは手加減している。
「分かっているさ。分かっているからの行動なんだが…」
アナスタシアが握られる腕の痛みがあるも
「このままだと、アナタは…皇族から…」
オルスが手を離して
「分かっている。皇族から除籍だろう。それがどうした?」
アナスタシアが外した手で、オルスを叩こうとするが、その手をオルスはガードした。
それが余計にアナスタシアを苛立たせ
「そう! 勝手に皇族から外されて! 野垂れ死ね!」
それを聞いたオルスが優しく笑み
「そうさせて貰うぜ…」
アナスタシアが苛立って屋敷に戻り、玄関を荒く閉めた。
全てを見ていたルークスが恐る恐る
「先輩、姉さんの気持ちも…考えてくれた方が…」
オルスがルークスに微笑み
「ルークス、この世には、どうしようもない事があるんだ。解決できない問題ってあるんだ。オレは…皇族を継承できない。それがそうさ」
ルークスが
「ボクは、オルス兄さんがいなくなるのは…寂しい」
オルスが
「ルークス、あと一年だ。卒業と同時にオレは…旅に出る。気長に遺産ハンターでもしながら細々と暮らすさ。その日々の中で、偶にでいい。顔を見せてくれよ」
ルークスが渋い顔で
「じゃあ、ルシア先輩と一緒に何処かへ行くの?」
プッとオルスは噴いて笑い
「あんな、マスコット…つれて行くだけ、足手まといだ。オレ一人さ」
ルークスが苦笑いで
「オルス兄さん。最後のモテ期かもしれないよ。姉さんやルシア先輩の二人の女性に好かれている。今後、ないかもよ」
オルスが呆れた顔で
「勘弁してくれよ。ヒステリックブルーの暴走お姫と、何でも自分の為に利用する、サイコパスなマスコット嬢が、最後のモテ期なんて…。全力で拒否だわ」
ルークスは苦笑いでしかない。
オルスは、遠くを見るように空を、コロニーの天井を見上げて
「それに、オレには…やらなければならない事がある…」
ルークスは、ルシア先輩からオルスが、ルシア先輩と同じ転生体である事を聞いている。
ルシア先輩は、どこかの一般人の転生体だけど。オルスだけは教えてくれない。
ルークスが
「そのやらなければならない事が終わったら…また、こんな平和な感じで暮らそうよ。オルス兄さん」
オルスがルークスを見る。その顔に僅かな悲しみが過った後、オルスは笑み
「そうだな…」
と、一言だけだ。
それだけでルークスには伝わる。
そんな事にはならない…というオルスの気持ちが…。
こんな感じでオルスの日々は過ぎていった。
そして…あの卒業生のパーティーで…
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次回、断罪の卒業生パーティー