星光 第106話 修学旅行 その四
次話を読んでいただきありがとうございます。
修学旅行中のティリオ達、様々な人達から話を聞いて…
ティリオは、滞在先のコロニーの天井を見上げていた。
ティリオがクリスタルの手すりに腕を置く場所は、そのコロニーのホテルで用意されたティリオ達だけが占有している宿泊の階層だ。
ホテルの階層一つがティリオ達の為に用意されていた。
その階層は最上階のスィートだ。
ティリオはスィートの階層にある庭園のそこから空を見上げて考えていた。
そこへ、ジュリアが来て
「何を考えているの?」
ティリオがジュリアに
「オルスって人が…どうして、ここから出て行ったのか…って」
ジュリアが隣に並んで
「アナスタシア皇女様の話だと、ある日、突然に消えたって…」
ティリオが
「その前に、自分が消えたとしても問題ないようにして置いたって事は…それを予定していたって事だと思う」
ジュリアが
「そうね。ここにいれば…その地位や立場から、ずっと安泰だったでしょうけど。それ以上に大事な事があった」
ティリオが頭を掻いて
「オージン様から、オルスと関わった話を聞いても、良く分からないんだよね」
ジュリアが
「名前も変えていた…アマツミカホシって」
ティリオが指先から魔方陣を展開する光を出して
「漢字って文字で書くと…天津甕星…」
と、天津甕星を書いた光が灯る。
ジュリアが
「その名前に…もしかして、理由があるのかもしれないわね」
ティリオが難しい顔で
「もしかして、転生する前の時代って父さんが生きていた時代かもしれない」
ジュリアが
「お義父さんに聞いてみる?」
ティリオが
「その方が早いかも」
「あ、ティリオ、ジュリア」とグランナが声を掛ける。
ティリオとジュリアが振り向き、ティリオが
「どうしたの?」
グランナが後ろを指さして
「お客さんが来ているぞ」
ティリオが「お客?」と首を傾げる。
グランナが難しい顔で
「例のオルスを断罪した貴族の連中の一人がな」
「ええ…」とティリオが嫌そうな顔をして
「なんで、ボク達の所に来たの?」
グランナが
「協力をお願いしたいってさ」
◇◇◇◇◇
ティリオ達は、応接室にいた。
応接のソファーには、ティリオが真ん中で左右のソファー、右にグランナと左にファクドのティリオ達三人が応対する人物。
「どうも」
と、お辞儀する紳士の青年。
ティリオが難しい顔で
「あの…どういう協力を求めに?」
ティリオ達が対面する紳士の青年、かつて…高等部卒業生のパーティーでオルスを断罪した貴族達の纏め役でもあるカイラルドが
「オルス様を…この時空へ戻していただけるようにする協力です」
ティリオ達は視線を交差させて、ファクドが
「申し訳ないが…それに応じるのは…」
カイラルドが
「別に、ムリにとは、お願いしません。もし…協力していただけるのでしたら…それ相応の対価も用意いたします」
グランナが
「どうして、我々にそれが出来ると?」
カイラルドは少し目を細め
「皆様は…若き超越存在だ。強大な力は、同じ力を引き寄せる。否応なしに惹かれ合う。それはきっと…オルス様に通じているはず。我々…万人には…絶対にムリなのですから」
ティリオが
「万人、多くの普通の人達に出来ない事は、自分達にも出来ません。それに…そうなる保証は、どこにもない。むしろ…避けられるかもしれませんよ」
カイラルドは手を組み渋い顔で
「私達の一派は、タルコシアス連合宇宙帝国の皇帝陛下の妻であります。レアス妃の親族…いえ、本家の者です。オルス様のあの事件は…レアス様とアルヴァート陛下と話し合って…決めた事です。お話は…色々と伺っていると思われますが。まあ、だいたいの概要は同じです」
ファクドが
「オルスを断罪する事で、皇族としての地位から下ろして…」
カイラルドは頷き
「はい、そうして…我々の方へ入れる予定でした」
グランナが
「それを当の本人には…」
カイラルドは
「伝えた所で…無視するでしょうし。元から卒業生のパーティーに参加するつもりはありませんでした。それを…色々と無理矢理に仕込んで…」
ティリオが
「結果、今のザマですか…」
カイラルドは
「後々にオルス様には謝罪をしましたが…受け入れて貰えず。そして…消えた。我々は自らのやった行いが浅はかで愚かだったと、反省しています。もう一度、やり直す機会が欲しいのです。無論、そちらのご迷惑になる事には、一切関与も組もしません。可能性が低い話であるのも承知です。ですが…我々より遙かに、アナタ方の方が可能性が高い」
と、告げてカイラルドは座っていたソファーから立ち上がり頭を下げ
「お願いします。どうか…我々に協力を、今一度…オルス様とやり直す機会を…もう、アナタ方、いえ、ティリオ様しか頼る方がいないのです」
正面のティリオに頭を下げ続けるカイラルド。
それをグランナとファクドは見て、ティリオを見る。
もし…ティリオが…了承するなら…
ティリオが目を閉じて開き、立ち上がって
「申し訳ありません。ご期待には添えません。どうか…ここまでの話という事で…」
と、カイラルドに頭を下げる。
拒否の謝罪だ。
カイラルドが肩を落として落ち込むも
「そうですか。もし、お気持ちがお変わりのようでしたら…」
と、連絡先のプレートを残して去った。
◇◇◇◇◇
カイラルドが去った後、ティリオにファクドが
「よく断ったな」
グランナが
「もしかして、了承するんじゃないかって」
ティリオが
「もう、オージン様の事件の時のようにはしない。そう…約束したからね」
と、誓いを思い出しつつ
「とにかく、ボク達の目的は修学旅行だ。それ以外は、無用って事さ」
そう、彼らの問題は、彼らで片付けるべき。
◇◇◇◇◇
そして、オージンの所にも同じくカイラルドの仲間が説得に言っていたが、オージンは断った。
オージンは「やれやれ…」と溜息を漏らす。
千華が近づき
「ずいぶん、連中はオルスにご執心ね」
オージンがフッと笑み
「オルスだったか…。ワシが初めて対峙した時は、天津甕星と名乗っていた。それが…前世の…まあ、能力的には超越存在と同等なのは間違いないが」
千華が
「能力的には、同等ねぇ…って事は、誰かが与えた力なの?」
オージンが座っていた席を立ち
「その話は、おいおい、してやる」
千華がオージンが座っていたソファーの背もたれに腰を乗せて座り
「ねぇ…聖櫃の中にいる彼が…何処かに出ている可能性があるって…アンタは言ったけど。どうして、それが分かるの?」
オージンは、窓から見えるコロニー都市の夜景を見て
「人間、死にかけると色々と見えるのだよ」
「ふ…ん」と千華は立って部屋から出ようとドアを開けると、クロエラがいた。
クロエラが
「お爺様は?」
千華がオージンがいる窓を指さして
「あそこで外を見ているわよ」
クロエラがオージンに近づき
「お爺様」
オージンが
「おお…どうした? クロエラ…」
クロエラがオージンに近づき
「ティリオが与えてくれた訓練装置で訓練していたら…こんな事が」
と、両手を差し出すと両手から黄金の粒子が出てくる。
それを見てオージンが
「ティリオが。本当に小僧は凄いなぁ…」
千華が部屋に戻ってクロエラが両手から出す黄金の粒子のエネルギーを見て
「本当に凄いわ。幾ら素養がある者だからって、超越存在に成れるのは、遙かに難しいのに」
クロエラが
「では、私は近づいているのですか? その目的の超越存在に…」
オージンが微笑み
「クロエラ、焦る必要はない。ゆっくりと確実にやりなさい」
「はい」とクロエラが返事をする。
千華は、オージンの言葉、聖櫃の中の彼が具現化しているかもしれないとい話を信じられてきた。
聖帝の息子ティリオは、聖帝ディオスと同じ大きな運命を背負っているのだから。
その巨大な運命は、多くの巡り合わせ、運命の糸を引き寄せるのだから。
だからこそ、オルスを求める彼らが近づくのかもしれない。
万人の運命では、オルスのような凄まじい運命を引き寄せられない。
オルスの運命とは?
ここまで読んで頂きありがとうございます。
続きを読みたい、面白いと思っていただけたなら
ブックマークと☆の評価をお願いします。
次話を出すがんばりになります。
次回、オルスの過去