星光 第105話 修学旅行 その三
次話を読んでいただきありがとうございます。
ティリオ達は、修学旅行の最中に様々な人達の話を聞く。
その一人、アナスタシア皇女と…
ティリオ達は、ルークス皇太子と共にアナスタシア皇女がいる宇宙コロニー会社へ向かった。
コロニーの中心にある、コロニーのコアでもあり、支えでもある巨大なビル柱の中にアナスタシア皇女がいる居住区がある。
特別な重力制御で、直径五キロ前後の球体のコロニー内は、ビル柱を中心に外壁に都市と工場と住居と娯楽施設と区切られて存在している。
重力を自在に操作して維持される宇宙コロニー会社、それは…超越存在の遺産である事実を物語っていた。
ティリオ達、ティリオ、エアリナ、ジュリア、アリル、ナリルの五人、グランナ、ファクド、レリス、ルビシャル、クロエラの学友、オージンに千華と紫苑の外部、そして…案内のルークス皇太子。
その大人数でもアナスタシア皇女は、喜んで出迎えてくれた。
アナスタシア皇女には…アナスタシア皇女なりにティリオに聞きたい事もあったからだ。
外壁に存在する都市達を見下ろせるアナスタシア皇女の居住区で、ティリオは外壁内側にある円形大地の都市達を見つめていると、アナスタシア皇女が
「これも…過去に、この時空で生まれた超越存在の遺産ですわ」
ティリオが
「多く遺産が残っているんですね」
アナスタシア皇女が
「多く残さなければ、ならなかった…そういう事です」
アナスタシア皇女が全員を前にソファーに座り
「ルークスから話は聞いています。オルスの話ですよね」
アナスタシア皇女と対面のソファーにいるオージンが頷き
「話して貰えるかな?」
アナスタシア皇女は溜息交じりで
「大方は、ルシアと同じですよ。ヒドい男ですよ」
ファクドとルビシャルが少し眉間を寄せる。
でした…という過去ではなく、ですよ…の。
アナスタシア皇女は口にする。
「超越存在の遺産の中でも王家や皇家が継承する星艦への適合値が低かった。でも…それは王家や皇家の基準であって、他の諸侯達、星艦より下の超越存在の遺産を継承する貴族達には、十分すぎる程の適合値はありました」
と、話が始まる。
アナスタシア皇女の話では、皇家や王家で、適合値が低い者を天下りとして、他の貴族や王家に嫁がせる慣習はあったらしいが…。
その慣習の成功率は、低い。
この時空の皇家や王家にとっては、星艦を継げない劣等だが、それはそこだけの基準であって、他の貴族達にとっては十分すぎるが故に、欲されていたが。
様々な貴族派閥や、王家や皇家の権力関係に縛られて、獲得に動く事が難しかった。
それで、手に入れる算段として…昔にあった高等部卒業生のパーティーでの、断罪があるらしい。
本人が、皇族や王族として相応しくないとして、その籍から外すべき…と断罪して、皇族や王族の籍外した後、多くの貴族達が水面下で接触、そして…獲得する。
だが、それも皇族や王族は良しとしていない部分がある。
でも、建前としては、正式に王族や皇族同士で許婚という事もネオシウス時空の皇族や王族としては、面目が立たない。
このネオシウス時空には、三十くらいの皇族や王族がいる。
その皇族や王族の王や皇帝は、必ず超越存在の遺産の星艦を継承している。
他にも主がいない待機状態の星艦は幾つも残っているも、それは…継承する適合値が高い王族や皇族達が手にして独占している。
オルスが手にした戦闘状態の星艦は、手に入れられないので無視、放置されているが、その数は片手程度。
つまり、星艦はネオシウス時空の王族や皇族が独占している。
その独占を壊す事は、ネオシウス時空の統治の破壊でもあり、時空内大戦争に勃発しかねない。
現に、そういう過去をネオシウス時空は幾つも経験している。
正に、毒になるなら薬にもなる。
ネオシウス時空の皇族や王族による超越存在の遺産の独占という毒は問題だが、それによって多くの勢力や力のバランスと平安が保たれている薬という事だ。
稀に、貴族や王族、皇族以外の民達から、適合値が高い者も出てくるが。
それは数千兆分の一という、有り得ないという確率だ。
二千年という長い歴史で、それが出たのは一人だけ。
それは初代の超越存在のみ。
ありもしない事よりも、今ある事で問題を解決する事が正しいし現実なのだ。
そういう説明を聞いたティリオ達、ティリオが
「その断罪をして他の貴族達に貰われる例として成功した確率は?」
アナスタシア皇女が渋い顔をして
「一つだけ」
ティリオが
「一つだけの事例という事ですか…」
アナスタシア皇女が首を横に振り
「百ほど、ありましたが。成功したのは、一回だけです」
オージンが呆れた顔で
「つまり、成功しなかった者達は、皆…屍という事か…」
アナスタシア皇女が
「年々、貴族達の中では、代を経る事に適合値が下がっていっています」
ファクドが
「なるほど、ネオシウス時空の皇族や王族の力を守る為にも、おいそれとは外に血族を嫁がせて高められない。だが、貴族としては、下がる適合値を何とかしたいが、大手を振ってそれが出来ない」
レリスが
「もしかして、そちらの皇族や王族の中には、適合者がいない貴族の遺産を…」
適合者がいない遺産を手にしたい、王族や皇族達が…
アナスタシア皇女が
「私は、そうは考えていませんが。いるかもしれませんね」
ルビシャルが
「あの…そのオルス様に関して、どうして…アナスタシア皇女様や、オルス様の父上、タルコシアス連合宇宙帝国の皇帝陛下に、ヴァイオレット様はこだわるのですか?」
紫苑が
「ええ、そういう権力のバランスを考えれば、オルスの事は、大問題では?」
ルークス皇太子が
「オルス様のやった事は、我々、ネオシウス時空のこのような事態に風穴を」
アナスタシア皇女が「ルークス!」と語り出しそうなルークスを止める。
ルークスが「はい」と勢いづいたルークスは下がる。
アナスタシア皇女が
「我々も、このような状態を良しとはしていません。なので、かつての初代の超越存在のような方を…その研究や努力もしてきましたが…一向に成果もなく。そんな時にオルスのような事例が現れました。もしかしたら…と」
と、告げた次にオージンをアナスタシア皇女は見つめて
「オージン様。貴方様は、オルスと…」
オージンが
「ああ…一時、共に仕事をした事がある」
アナスタシア皇女が
「オルスは、超越存在なのでしょうか?」
オージンが「んん…」と唸り
「残念だが、それはワシには分からん。それを分かるのは、この小僧達だけじゃ」
と、ティリオ達を見る。
アナスタシア皇女が
「ティリオ様、私達の話を聞いて、どう…」
ティリオは腕を組んで考える。
ファクドとグランナがティリオの考える顔を見つめる。
ティリオが
「正直、会ってみないと分かりませんが…オルス様と同じように転生で超越存在であったという、似た事例は知っています。なので、ぼくが知っている、その方の事例と照らし合わせると…そうではないか…とは思えますが…」
アナスタシア皇女が
「思えますが…」
ティリオが頭を振り
「やっぱり、本人と対面しないと分かりませんね」
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次話を出すがんばりになります。
次回、修学旅行 その四