星光 第104話 修学旅行 その二
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オルスの話を聞くために、かつてのパートナーだった女性に…
ティリオ達がルシアからオルスの話を聞いた第一声は
「失礼で最低なヤツでしたよ!」
と、苛立った顔のルシアだった。
色々と端折ると、オルスはタルコシアス連合宇宙帝国の第一皇太子だった。
でも、次期皇帝ではなかった。
その理由は、タルコシアス連合宇宙帝国の皇帝は代々タルコシアス連合宇宙帝国の軍事を支える超越存在の遺産、星艦タルコシアスを継承しているからだ。
オルスには、その継承する力がなかった。
だから、オルスの下にいる次男、第二皇太子のアルスが次期皇帝になる予定になっていた。
オルスは、何もしないでいれば…ルークスシアス共和宇宙王国のアナスタシア皇女と…。
ネオシウス時空の王族や皇族達の繋がりの為の政略結婚の…。
でも、それさえもオルスには許されなかった。
超越存在の遺産の適合値がどんな王族や皇族とも低いというのが理由だった。
適合値が低い相手との婚姻によって、生まれる子供の適合値が低くなる。
超越存在の遺産によって維持される世界のトップとしては許される事ではなかったのだ。
だから、飼い殺しの状態にされた。
王族と皇族との繋がりもなく、オルスは孤立させられた。
オルスに残された未来は、廃嫡か…何かの優秀さを認めさせる。
そんな未来しかなかった。それがないなら…静かに消えろ…そんな無言の圧力がオルスの周囲に渦巻いていた。
ルシアが
「そんなヒドい状況、普通ならねじ曲がって悪人になってしまい…。実際、過去にそうなった皇族や王族もいて、討伐された事なんて…幾らでも、この時空にはありますわ」
ルシアが上を見上げて
「それでも、オルスは孤高で崇高だった。ねじ曲がるどこか…人として…あまりにも崇光で歪だったわ」
ルシアの話を聞いているティリオ達、ティリオ、エアリナ、ジュリア、ナリル、アリルにグランナ、ファクド、ルビシャル、レリスとオージン、千華、紫苑。
そして…ルークス皇太子も
「だから、私は…オルス様に憧れた。その強さに…」
と、感慨深く呟く。
ルシアが呆れ気味に
「嫌なヤツよ。オルスは…本当の事を言うんだから。人に嫌われる恐怖がないのよ。いいえ…もしかして、達観しているからこそ、ダメな事はダメだ!って。同じ年齢の子供なのに…誰よりも大人で…そして…」
ルークス皇太子が
「姉上が生徒会長をして、副会長としてオルス様は…ぼくと、ルシア様は書記と補佐で…」
ルシアが
「その当時、私は…庶民に近い貴族で、誰の派閥にも属せなかった。だからこそ、孤独で孤高でしかないオルスと組む事が出来た」
ルークス皇太子は
「その当時、オルス様は、姉上の許婚候補だった。正式な許婚ではなくね」
グランナが渋い顔で
「許婚候補ねぇ…」
ルシアが
「そのぐらい、オルスは見下されていたって事よ」
ティリオが渋い顔をする。生かされているだけありがたいと思え…という圧力があった。その中でもオルスは、悪人になる事はなかった事実に、とある考えがよぎる。
ファクドが
「でも、その見下しが変わった」
ルシアが
「高等部の卒業パーティーの時よ。どこかのバカ貴族がオルスを断罪したのよ。皇族として相応しくないってね」
ルークス皇太子が嫌そうな顔で
「オルス様を皇族として認めない愚かな連中がけしかけたのさ。そこで、オルス様が宣言したのさ。ネオシウス時空の中でも、だれも手にできていない星艦オルボスを手にするって」
ルシアが
「星艦オルボスは、絶大な戦闘力を持つ星艦で、銀河を滅ぼせる程の力を持っていたわ。無論、星艦オルボスは自分のいる銀河の場所から動かないから、被害は拡大しなかったけど…それを手にしようと、多くの犠牲者が連なっていたわ」
ルークス皇太子が嬉しそうな顔で
「自死に向かうと、誰しもが嘲笑っていたさ」
ルシアが
「私も巻き込むなって、拒絶しちゃったのよね」
ルークス皇太子が
「ルシア様は、冗談じゃあない。死にたいなら、勝手に死ねってね」
ルシアがルークス皇太子を睨んで
「ルークス!」
ルークス皇太子がおどけて
「怖い怖い。ともかく、そのぐらい無謀だった」
ルシアは溜息を漏らして
「でも、アイツは…オルスは…やり遂げたわ。たった一人で…」
ルビシャルが
「あらら…そんな事になったら、手の平返しが…」
ルークス皇太子が自慢げに
「そんなを認める程、オルス様は穢れていない。手の平返しした連中の全てを信用が置けないとして…」
レリスが
「話から察するに、全てのパワーバランスが一撃で崩れたのか…」
ルシアが頷き
「大変だったわ。オルスを墜とそうとあれやこれをやる勢力が多かったけど」
ルークス皇太子がフンと鼻で笑い
「その誰の勢力にもオルス様は屈しなかったし、誘惑にも負けなかった」
ティリオが鋭い顔で
「よく、それで戦争が起こらなかったね」
ルシアが呆れた顔で
「起こる訳ないわ。だって、星艦オルボスを通じて、ネオシウス時空の全ての超越存在の遺産を自分の制御下に置けたのよ」
オージンが
「この時空に誕生した超越存在の再臨…という事に…」
ルシアは
「私は、そう思っていたけど、アイツは…オルスは否定したわ。でも…その力、権能は…超越存在のソレと同じか同等だったわ」
オージンは顎を摩って考えていると、ティリオが
「オージン様、もしかして…」
オージンもティリオを見つめて
「ティリオも思ったか?」
千華が
「何を思ったのよ? 言いなさいよ」
オージンとティリオが千華を見つめて、オージンが
「お主と同じだったかも…とな」
千華が自分を指さして
「アタシと同じ?」
紫苑が捕捉するように
「千華と同じく、前世の記憶がある転生体…リンカーネーション」
ティリオが
「聞いた話の節々、そして…エリザス宇宙学園に残されていた画像の雰囲気…もしかしてと思ってね」
ルシアが
「その当たりは私もそうだと思うわ。私も転生体だから」
『え!』とティリオ達が驚きの声を漏らす。
ルシアが自分を指さして
「私は、普通の若い女性の前世持ちだから、貴族に生まれた時は、ラッキーと思ったけど。まさか、貴族社会がこんなに面倒なんて…次は、前世なしで生まれたいわ」
ルークス皇太子が
「ボク達のネオシウス時空には、稀なパターンとして、そういう方が存在しますので」
ティリオが
「特殊な処理や処置もなく…ですか?」
ルシアが頷き
「ええ…原理は分かっているんだけど。どうして、それに選ばれるのか? 基準が分からないのよね」
オージンが
「それも超越存在の遺産が…」
ルシアが頷き
「ネオシウス時空の高次元にある集合意識観測で知性体の記憶の蓄積をする装置?なのかしら…そういう存在、アガラシアっていうのがあるの」
ルークス皇太子が
「このネオシウス時空の転生体達が、光る王冠のような存在、アガラシアを必ず見るし、そこを経由して転生するのは分かっているから」
ルシアが
「もしかして、この時空の超越存在が権力者によって歴史が改変させられるのを嫌って、そういう存在を、システムを残したのかもね」
ティリオが
「じゃあ、オルスは…そのアガラシアからの転生体…」
ルシアが
「いいえ、違うわ。同じアガラシアの転生体なら、何となく分かるんだけど。でも…違うのよね。何か…もっと別の…そんな感じだったわ」
オージンが
「そして、そのオルスは…この時空から消えた…出奔した…と」
ルシアが
「私は、消えたその場にいなかったわ。アナスタシアの方が詳しいわよ」
ティリオ達が話を聞き終えると、ルークス皇太子が
「さあ、今度は、我が姉上に話を聞くだろう!」
と、自慢げだ。
別に…どうでも良いんだけどなぁ…ルシアからの話で色々と分かった事もあるし…とティリオ達は思いつつも、どや顔のルークス皇太子を断るのは面倒だなぁ…と思い。
「そ、そうだね…」
と、ティリオが了承の返事をした。
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次話を出すがんばりになります。
次回、修学旅行 その三