星光 第102話 パーティー会場で
次話を読んでいただきありがとうございます。
パーティー会場で舞い込んできた問題、それにティリオ達は…
ティリオ達は、ヴァイオレットの邸宅ビルに荷物やら色々と運び、とある社交の場へ行く事になった。
無論、ヴァイオレットが付き添っての事だ。
ヴァイオレットは、アルヴァート陛下の兄弟、弟が父親なので、アルヴァートとは伯父と姪の間柄だ。
母親は、とある公爵家の令嬢で、父親と一緒に仕事をしていた事を見初められて…ヴァイオレットを始め、姉と妹に弟がいる。
典型的な王と繋がりがある貴族家だ。
そのヴァイオレットの付き添いがある中でも、社交の場、パーティー会場でもティリオ達に向けられる視線は…ちょっと鋭い。
礼服を着たティリオを先頭に、同じく礼装のグランナとファクド、レリスが続き、その後ろにドレスを纏ったエアリナ、ジュリア、アリル、ナリル、ルビシャルと一団が動き、先頭を行くティリオの隣にドレスのヴァイオレットが付いている。
ティリオは、居心地の悪さを感じていると、アルヴァート陛下がレアス妃を伴って近づき
「ティリオ殿、どうだね? 楽しんでいるかね」
と、微笑む。
ティリオがお辞儀して
「ご招待、ありがとうございます」
これは、周囲に敵ではないというアルヴァートのアピールだ。
アルヴァートの客人であるという事実は、他の貴族達に対する警戒を解くと同時に良からぬ事を企む貴族達の牽制にもなる。
アルヴァートが
「もし、何か不便な事があるなら…私の方に伝えてくれ。ここでの君達の快適な生活を約束しよう」
ティリオ達は、その言葉の真意を理解できない程、愚かではない。
アルヴァート陛下の客人であると共に、アルヴァート陛下の一派と通じている。
その証明にもなる。
ティリオが
「はい。陛下…よろしくお願いいたします」
と、頭を下げる。
無用な争いを避けたいティリオ達にとって、好都合な縛りである。
アルヴァートもティリオの聡明さを知っている。
ティリオは、超越存在の力を持ちつつ理性が強い。それは他の周囲の仲間達も同じだ。
ティリオの真意を理解しているし、それを止める者達もいない。
自分達の立場を重々承知という事だ。
暴走する事をしない保証でもある。
アルヴァートが微笑み
「楽しんでいってくれ給え」
ティリオ達が一斉にお辞儀する。
アルヴァート達が去り、ファクドがティリオに耳打ちする。
「これで、この国でオレ達を面倒に巻き込もうとする奴らの牽制になったな」
ティリオが頷き
「ああ…争いの種をまきに来た訳じゃあない。見聞を広める為の修学旅行だ」
グランナが耳打ちで
「謹慎延長って名目だけどな」
ティリオが苦笑いする。
これで、変な問題に巻き込まれない安心を得たティリオ達に
「これはこれは、タルコシアスの時空艦隊を壊滅させた方ではないですか…」
ええええ…とティリオ達は青ざめる。
ケンカをふっかけて来た金髪の礼装の男性に、ティリオ達は困惑する。
ティリオ達の案内をしているヴァイオレットが
「ああ…ルークス皇太子様…」
と、名前を呼ぶ。
グラス片手に金髪の青年、ルークス皇太子が
「初めまして、タルコシアス連合宇宙帝国の隣国、ルークスシアス共和宇宙王国の皇太子だ」
と、明らかなケンカ腰だ。
その扱いにティリオ達が困ってしまう。
◇◇◇◇◇
ルークス皇太子とティリオ達が対峙するパーティー会場。
ルークス皇太子が…ティリオを達を凝視…というには鋭い顔で睨んでいる。
ティリオは、どうしよう…と固まっていると、ファクドが
「いやいや、皇太子様。お会い出来て光栄の極みです」
と、営業スマイルのファクドが前に出る。
グランナも続いて
「初めまして、このようなパーティーにお招きいただき、感謝しております」
と、グランナも営業スマイルでファクドの隣に立つ。
グランナとファクドの二人して、ティリオのガードをする。
ガードしている二人にお願いして、ティリオが静かに去ろうとするが
「待て!」
と、ルークス皇太子が
「話は終わっていない」
ティリオを止めようとするが、ティリオが
「申し訳ない。急ぎの用事ができましたので…自分はここで」
と、去ろうとした腕をルークス皇太子が掴もうとするが、ファクドとグランナの壁二人が営業スマイルのカードで防ぐ。
ルークス皇太子が苛立ち
「お前は、我が時空の国々に宣戦布告に来たのか!」
ティリオ達全員が青ざめる。
何言ってんだ? コイツ…
揉め事の種をまきに来たとしか思えない態度に、ティリオ達が困っていると…
「何をしているのです! ルークス!」
と、金髪でドレスの女性が来る。
ルークスが
「姉上…私は、この者達が我が時空に争いの種をまこうとするのを止める為に」
姉上と呼ばれた女性がルークス皇太子の頬を叩き
「いい加減にしなさい!」
ルークス皇太子が呆然としていると、姉上と言われた女性が頭を下げ
「申し訳ありません。弟の浅慮な行い。お許しください」
ファクドが
「どちら様でしょうか…?」
姉上と呼ばれた女性は、顔を上げ
「私は、ルークスの姉、アナスタシア・ルークスシアスです」
ヴァイオレットがグランナとファクドに
「ルークス皇太子の姉君、アナスタシア皇女様です」
ティリオとグランナにファクド、レリスの四人がアイコンタクトして、ティリオが出て
「初めまして、アナスタシア皇女様。我々は後学の為にここへ訪れたのであって、争いなぞ起こすつもりは毛頭にありません。それだけは、お約束できます」
アナスタシアが溜息を漏らして
「分かっております。しかし、弟の無礼…どうか、こちらで…何かの贖罪を…」
ティリオ達が更に困る。
それはそれで、困る。自分達はアルヴァートの庇護下にいるのに、他の王族からの何かを受けるのも問題になる。
かといって、ここで断るのも問題になる。
困り果てていると…
「元気な若造だのう…」
と、礼装のオージンが上段の階から三人の少女を伴って下りてくる。
両脇にいるのは、ドレス姿の千華と紫苑、オージンの後ろにクロエラだ。
オージンがティリオ達に近づき
「ここに来て、怒鳴り声の元を辿れば…何やら、元気な若造の声が聞こえて華やかだったというか」
ティリオ達とルークスの姉弟がオージンを見つめると、ルークスが
「何者だ!」
オージンが
「オージン・オールディオン。別の時空…アルファイド時空の古き王をやっている老人じゃ」
ルークスがハッとする。
ティリオ達の事を知っているなら、オージンの一件を分かっているはずだ。
オージンがルークスの前に来て
「元気な若造じゃ。どうじゃ…その元気良さ、ここでのワシの滞在の護衛という事で…生かさんか?」
突然の妥協案…
オージン…古の王の護衛をする皇太子というなら、その面目も保たれるし、何よりオージンはティリオの関係者でもあり、アナスタシアの提案である贖罪にもなる。
更に、王族は古い王を敬う。
オージンは、古い王、アルヴァートより上の年齢の王だ。
アルヴァートにも角が立たない。
ルークスが戸惑っていると、オージンが
「若造。いちいち、誰かの言った何かに振り回されているようでは、王族として恥ぞ。その恥をかかない為にも、老人の王につき合うのも悪くないぞ」
アナスタシアが
「ルークス、罰としてオージン様の滞在中の護衛をしなさい」
ルークスがしおらしく
「はい、姉上…」
オージンがティリオにウィンクした。
どうにかしてトラブルは回避できた。
◇◇◇◇◇
パーティー会場のテラス側へ移動するティリオ達とオージン達。
ティリオがオージンに
「オージン様、どうしてここに?」
その問いにオージンが微笑み
「ワシが知っている情報の提供を…とな」
と、ヴァイオレットを見る。
ヴァイオレットは静かに頷く。
オージンが
「それと…まあ、老人の暇つぶしにティリオの事に関わる事にしただけさ」
ティリオが少し眉間を寄せる。
ウソだ。多分、父ディオスが…でも
「そうですか…。じゃあ、今後ともよろしくお願いします」
オージンと共に来たカレイドの千華が
「やあ! 元気!」
ティリオが笑み
「ああ…元気だよ」
千華がティリオの胸元に急接近して
「もしかして…あの事、怒っている?」
ティリオが平然と
「あの事って何?」
千華が
「もう、私から言わせないで」
と、ティリオを軽く叩く。
千華の隣にいた紫苑が
「アルファイド時空での千華の暴走、代わりに謝罪します」
千華が
「おい! せっかく、誤魔化してやり過ごそうとしたのに!」
紫苑は「はいはい」と流してティリオに
「再び、あのような暴走を起こさせないと誓いますし、私が防ぎます。なので…また、協力関係を…」
ティリオが溜息を漏らして
「別にいいよ。ぼくだって…自分だって…誰か一人に固執して…」
と、一莵の事が過るも
「まあ、いいさ。今回の事は…今後、何度か流して協力関係を結ぶか、分からないけど。また、よろしく頼むよ」
と、ティリオは紫苑に手を伸ばし。
「はい、ありがとうございます」
と、紫苑は握手する。
上手く紫苑が纏めた事が気に入らない千華が「ねぇ…」とティリオの胸に寄りかかり
「怒って欲求不満だったらお姉さんが、慰めてあげるよ」
ティリオは紫苑の握手から外した右手で、千華の額をアイアンクローする。
「いいたいたいたいたいたい」
と、千華はティリオのアイアンクローの激痛に襲われる。
身長百八十五近いティリオと、身長が百六十位の千華の戯れは、ほのぼのである。
それを紫苑が見て、クスクスと笑う。
千華がティリオのアイアンクローを外して
「お前、アタシは可憐な乙女なんだぞ! それをアイアンクローとか…正気か!」
ティリオが冷たい目で
「数百年生きた時空の女王の転生体のクセに…実質は、数百歳の良い大人だろう」
千華はポーズを決めて
「肉体さえ新たに生まれ変われば! 若いと同じなのよ!」
「はいはい」とティリオは流して、それを紫苑が見て笑う。
パーティー会場であった緊張が、この茶番で消えた。
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次話を出すがんばりになります。
次回 修学旅行、その一