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星光 第94話 葬送の彼ら

次話を読んでいただきありがとうございます。

色々な思い、願い、贖罪、罪過、そして…

その決着が…


 ティリオのゼノディオスと、オージンの機神スカイギアが激突して、その宙域が大混乱の中をティリオのゼノディオスは飛び出す。

 その向かう先は、聖櫃であり、その聖櫃を収める惑星戦艦のリングだ。


 それをオージンは追跡しない。無駄だと分かっている。

「もう、全ての準備は整った」

と、オージンが静かに目を閉じると、機神スカイギアが黄金の光に包まれる。

 始まった。

 オージンが微笑み

「最後に、優しい若人と遊べて楽しかったさ」

 オージンをトリガーとして、全てが始まった。


 ティリオのゼノディオスは走る。超光速で聖櫃に到達して、オメガデウス・ゼノディオスが聖櫃を掴もうとするが、聖櫃が鮮烈に輝きゼノディオスを弾く。

「ダメだぁぁぁぁぁぁぁ!」

 全てが始まったのをティリオは…


 超越存在の手前まで来ていたオージンが機神スカイギアの高次元領域接続システムと共に、聖櫃に取り込まれて…。

 高次元領域にある、この時空の超空間ネットワークのコアに封印されたサタンヴァルデットを呼び出して、そのサタンヴァルデットは、元となったアサの民の高次元領域のリンクと融合しつつ、本来の形、リンク・ハイパーグレードになった。


 リンク・ハイパーグレードが、新たな超空間ネットワークと宇宙の創造を始める。

 それは、オージンが超高次元の接続元となり、必要な力を呼び出し続ける。


 それにティリオは

「ダメだ! それじゃあ!」

 自分の超越存在の力、ハイパーグレードと託されたキーブレードと超高次元多結晶体の塊であるこの時空の贖罪の証を使うが、全く歯が立たない。


 オージンが

「聖帝のご子息、ティリオ・グレンテルくん。悪いの…そして、最後の最後に楽しかったぞ」

と微笑む。


 ティリオの両腕にある聖帝の証と機神の証、キーブレードの超高次元多結晶体、ティリオのハイパーグレードの力を乗せても足りない。

 もし、ここにアリアナ銀河の時のようにフォーミュラリオンがあれば、余裕だったろう。

 だが、それはない。

 ならば…

「ゾロアス!」

と、ティリオは背中にあるゾロアスの加護の力を使う。

「手伝えぇぇぇぇ!」


 ティリオの肩にゾロアスの光の幻影が手を置いて

”手伝え…は傲慢な。だが…嫌いではないぞ。お前なら…”

 ゾロアスの力が加わる。


 ゾロアス、聖帝、機神、ハイパーグレード。

 その幾つもの力が積層して、この時空が残した贖罪の対価、膨大な数の超高次元多結晶体を呑み込み、オージンがやろうとしている事へ介入した。


 オージンは超高次元の接続元となり消える。


 それと同時にアサの民の宇宙が誕生したが、それは、この時空の上位システムとして組み込まれる。

 時空を操作管理する充座となるアサの民の新たな宇宙、そして超空間ネットワークは新たに一新されてアサの民の充座と共にあるシステムとなった。


 だが、それでもオージンは…

 ティリオは、手を伸ばす。

 オージンへ



 ◇◇◇◇◇


 オージンが目を開けると…そこは…草原だ。

 反射的に、ここが黄泉だとオージンは気付き

「そうか…終わったが。残りは後々の者達に任せるかな…」

と、草原の先を歩もうとしたが、目の前にオージンへ騎士の膝をつく者達がいた。


 オージンがそれを一瞥して

「お前等の迎えなんぞ、欲しくない」

と、別の方向へ歩み出す。


 その一団は、あの裏切った者達の全員だった。

 その裏切った者達の姿は、若く、あの最悪を起こした時のままだ。


「陛下…」

と、呼びかけるのはグレイスだった。


 オージンが無視して進もうとすると、その目の前に老婆と共に亡き妻がいた。

 オージンの妻はアサの民ではない。グレイス達から来た。


 オージンが老婆を見つめて

「まさか…娘のクロリアが生きていたとは…」


 老婆である娘のクロリアは微笑み

「ええ…何とか生き残って…僅かに残った民達と共に…隠れ潜んで…」


 オージンが溜息を漏らして

「そうか…生きて寿命を迎えたなら…それも良しだろう」


 亡き妻が

「アナタがやろうとした事は…」

と、その背後にティリオがやった情景が現れる。

 時空の上位次元にアサの民の宇宙が元になった充座が接続され、ブローチのようになった時空にオージンが呆れて

「あの小僧…トンデモナイことをしおって。まあ良い。後は残った者達がやる事だ」


 グレイスが

「いいえ、陛下には…戻っていただきます」


 オージンがグレイス達を睨み

「キサマ等に指示される憶えは無い。全ては終わった事だ。もう…終わったんだ」


 クロリアが

「お父さん、あれを見て」

と、指さした方向に、漆黒の太陽が昇っている。

 それは不気味に黒い光を放ち、九つの方向に光の柱を伸ばし、その黒い太陽の根元には黒い太陽に力を送る人物が睨み上げている姿があった。


 亡き妻が

「アレの正体をアナタは知っている。アレをあのまま放置すれば…クロエラや…ヴァーリスだって」


 オージンが

「まさか、あの姫が…ひ孫だとは…。まあ…もしかしては…とは思っていたが」


 クロリアが

「お父さん、クロエラは覚醒するわ。その時に、お父さんがいなければ…アレに呑み込まれるわ。だから…それまで…」


 オージンが

「知らん。後は、聖帝のご子息達が」

と、言おうとした後ろから無数の手に掴まれた。

「な!」


 掴んだのはグレイス達、亡き裏切り者達だった。

「申し訳ありません。陛下」

「陛下、どうか…私達の子や孫、子供達の為に」

「本当に、申し訳ありません。陛下しか…」

「陛下だけしか」


 オージンが掲げ上げられる。

「お前達! また! 裏切るのかぁぁぁ!」


 オージンを掲げ上げる、かつての部下達、裏切って奪った者達、本当に大切な事を守れなかった者達、その全員が

「来世では、必ず…共に…」


 オージンが掲げ上げられながら

「来世でも、御免被りたいわ!」


 

 ◇◇◇◇◇


 オージンが目を覚ますと、そこは…

「兄上…」

と、心配げに見つめるルジェル、クロエラ。

 そして、ティリオ達にアサの民がいた。


 オージンがいる場所は惑星戦艦の医務室のベッドだった。


 オージンが不機嫌そうな顔で

「全く…」

と、上半身を起こす。


 ティリオはバツが悪そうな顔で

「あの…」


 その額にオージンは、デコピンをして

「このバカタレが! トンデモナイことをしおって…」


 ティリオは額を摩って俯く。

 オージンは微笑んでティリオの頭を撫でて

「仕方ない。残りの寿命をお主のやった事につき合うか…」


 ティリオはそれを聞いて笑み

「はい。お願いします」


 クロエラの頼みから始まった事件は、解決ではないが…別の形で続く事になった。


 ◇◇◇◇◇


 アズサワは、ヘオスポロスのエグゼクティブ達のホールで、オージンからの対価の話をしていた。


 エグゼクティブ達が驚きの顔で

「それは、本当のなのか…エヴォリューション・インパクターよ」


 アズサワは頷き

「ああ…」


 エグゼクティブ887が

「なるほど、だから、量子化保管庫が襲撃されたのも納得した」


 アズサワが

「光あれば闇がある。その逆もしかり、闇があれば光がある…そういう事だ」



 ◇◇◇◇◇


 ゾディファル教団本拠地の宇宙戦艦の礼拝堂で祈りをしているマリアンナの背にホロイエルが来て

「マリアンナ様…」


 マリアンナは祈りを止めて

「どうでしたか?」

 

 ホロイエルが

「はい、我らとゲヘノムヴァ以外に…動いている者達がいました」


 マリアンナがホロイエルへ

「その者達が力を貸さなければ、多時空輸送組織レッドリが、アレほどの超高次元多結晶体を集める事など…不可能でしたでしょうね」


 ホロイエルが

「はい、その者達は一体…」


 マリアンナが難しい顔で

「どうやら…我々は我々の神を求めている場合ではないのかもしれませんね」



 ◇◇◇◇◇


 ヴァルスアルヴァで、アルファティヴァがゾロアスを前に

「ありがとう。ゾロアス」

と、お礼を告げていた。


 ゾロアスが笑み

「別に良い。面白い事になったしな」


 アルファティヴァが

「オージンとは、古い友人だ…このような事で死んで欲しくなった。こうなってくれて良かったと思っている」


 ゾロアスが表情を固くさせ

「だが、分かった事もある。あの時空のアレほどの超高次元多結晶体…」


 アルファティヴァが

「ああ…あれは、アムザクの遺産ではないモノが多く含まれていた…」



 ◇◇◇◇◇


 ゲヘノムヴァ。

 暖炉の前で本を読んでいる老婆の前に、オージンの時に姿を見せたゲヘノムヴァの男女が来て、男性が

「大母様…オージンの計画は…失敗でしたが…」


 大母と呼ばれた老婆は本を閉じて

「ですが…充座というモノのデータが手に入ったのは僥倖です。お疲れ様です。暫し休んだ後に…」


 女性が

「しかし、ティリオ・グレンテルが持ち出した超高次元多結晶体について」


 大母の老婆が

「今は、休む時です。いいですね子供達よ」


 男女がお辞儀して下がる。


 大母の老婆が読んでいた本を触り

「まさか…お伽噺の存在と思っていたのが…」

と、触れた本の表紙に黒い太陽の紋様があった。



 ◇◇◇◇◇


 ティリオの父ディオス、聖帝ディオスは頭を抱えていた。

 ディオスがいる場所は、宇宙国家戦艦セイントセイバー号だ。

 その内部コロニーにあるビルの執務室で、ディオスは頭を抱えて

「全く、ティリオは…」

と、息子ティリオがやった事に呆れと驚きに、どうしよう…と悩んでいた。


 そこへ

「ディオス様、天臨丞王様が…」

と、女性隊員が天臨丞王を連れてくる。


 ディオスが

「ああ…良かった。こっちから色々とご意見が欲しくて出向こうと思っていた所なんですよ」


 天臨丞王が顔を見せて

「元気か?の前に…色々と大変だな」


 ディオスが客用のソファーに天臨丞王を

「いやぁ…色々と…それで相談を…」


 天臨丞王が

「そうか…なら丁度よかった」


 ディオスが対面に座って、ドローン台車を呼び出してお茶菓子を運ばせて

「ティリオが…使ってしまった。アムザクの遺産から構築された莫大な超高次元多結晶体の超空間ネットワークモドキのヤツですが…」


 天臨丞王が

「うむ。その事についてだが…」


 やっぱり…とディオスは予感が的中して苦笑いをして

「その…使ってしまった…事で、天臨丞王様の方に…どうすれば…」


 アムザクの遺産は、天臨丞王が集めて一括管理、封印、運用している。

 その膨大なアムザクの遺産を消費してしまった。

 それでディオスは悩んでいた。

 どうしよう…と。


 ディオスが用意してくれたお茶を口にしながら天臨丞王は

「実はな。反応から分かったのだが…その超空間ネットワークモドキに使われた超高次元多結晶体達、アムザクの遺産…と彼ら言っていたが。どうやら、違うようだ」


「はぁ?」とディオスは驚きのあまり飲もうとしたお茶のカップを置いた。


 天臨丞王が真剣な顔で

「アムザクの遺産でしか得られなかった超高次元多結晶体を、作り出す存在がいるようだ」


「ははぁぁぁぁぁ!」

と、ディオスは目が点になる程に驚く。


 天臨丞王が渋い顔で

「まさか…お伽噺の話程度くらいの眉唾と思っていた存在が…いるかもしれん」


 超高次元多結晶体

 それは、宇宙そのモノを犠牲にしないと構築できない物質であり、宇宙創造や高次元領域に様々な機構を組み込める神級材料である。

 それを作れるのは超越存在だけで、超越存在でも大量には生成できないが、作る事は可能だ。

 アムザクの遺産は、その超高次元多結晶体を超越存在以外で生成は可能にする遺産なので、アムザクの遺産は、まさに宝を生み出す金のニワトリだ。

 その金のニワトリ以外で、超高次元多結晶体を生み出す存在が…いる事が判明した。

 超越存在を超えたバケモノがいる…そういう事だ。

 

ここまで読んで頂きありがとうございます。

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次話を出すがんばりになります。

次回から新章が始まります。

よろしくお願いします。

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