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星光 第92話 最後の言葉

次話を読んでいただきありがとうございます。

ティリオは選択して、最後の言葉をオージンへ語る。



 聖櫃が出現した。

 それによって全てが動き出す。

 魔導時空戦艦ダガーノートのブリッジの様子を見ていた千華は鋭い顔で

「そうかい…小僧…お前も敵か…」

と、その口調は普段の軽い感じでは無い。

 

 千華のバトロイドに併走するバトロイドにいる紫苑が

「千華…もしかして…ティリオさんが…」


 千華が全域のバトロイドに

「クィーンの通信だ。聖帝のご子息が裏切った。邪魔をするなら殺せ!」

 何時もの軽い感じの千華ではない、鋭く手段を選ばない戦いの女王がそこにいた。


 紫苑は黙るしかなかった。


 ◇◇◇◇◇


 聖櫃が出現をグレイスは、レッドリのコロニー宇宙戦艦のビルで確認して、隣にいるホワイトに

「ホワイト…この宇宙、全域に…拡散する通信を開いてくれ」


 ホワイトは頷き

「父上…」


 移動式のシステム・ベッドで横になるだけの老人グレイスが

「我らの思いだけでも伝えなければ…」


 この時空全域に開放された通信に、グレイスが出る。

 その映像をこの時空の民達全員が見ていた。

「ワシは、レッドリを創設したグレイス・レッドリ。アサの民よ。いや…オージン様…どうか、私の通信に出てくれないでしょうか?」


 その呼びかけから数分後。


 オージンが答える。

 この時空の民達がグレイスとオージンが並ぶ映像を見る。


 オージンは無言だ。


 グレイスが

「お久しぶりでございます。我が主様」


 オージンが皮肉に笑み

「はて…ワシの子や妻を、我らアサの民を残酷に虐殺した者達を臣下に持った憶えが無いのだが…」


 グレイスが

「その通りでございます。この時空で超空間ネットワークを扱う利益を持つ全ての者達が、アナタ様達、アサの民を虐殺して奪い取った者達です」


 オージンが

「ああ…そうだ。我らの新たな宇宙の部品として、この時空の超空間ネットワークを持っていこうとしたが…必要なくなった。これが…手に入ったからな」

と、オージンの隣にスカイギアとオメガデウスの映像が並ぶ。

「これによって、聖櫃の力と、このスカイギアに、この時空の超空間ネットワークのコアに封印されたサタンヴァルデットを使って、我らの新たな時空を作る事が可能になった。技術の進歩とは素晴らしいモノだ。これも聖帝のご子息様のお陰ぞ」

 オージンが笑みながら

「故にお前達が奪った超空間ネットワークは、残してやる。いらんわ。キサマ等の長年の渡って使った血の染みたシステムなんぞな、要らん」


 グレイスが

「我らの思いをお伝えします。我らが主、我らの王よ。王の帰還を、王の民達が帰ってくるのを終末までお待ちします。我らは愚かだった。アナタ様達を殺して…そして、自分の愚かさを…嘆き、間違いを認めます。申し訳ありませんでした」


 オージンが溜息を漏らして

「それで? 何かが変わるのか? 変わらんだろう。新たな道を作ろうと復活した弟を襲撃し、そして…五百年前の間違いである事実をもってしても、否定したであろう。所詮、愚か者は、骨の髄まで愚か者という事だ。もう、全てが手遅れだ」


 グレイスが

「それでも、我らはお待ちします。陛下とアサの民達の帰還を…」


 オージンが

「執着と妄執、ここに極まり。虐殺され復活した我らが復讐しない。自ら去るとしているだけでも感謝して欲しいわ」


 グレイスが

「何と言われましても。我らはお待ちします。この時空が終わる最後まで…」


 オージンが

「そんなの未来永劫ない。だから、騙され、この始末なのだ。では、永劫の別れぞ。永遠に我らに構わんでくれ。さようなら…愚かな者達」


 グレイスがベッドから降りて震える足で立ち、その場に騎士の如く片膝で

「王よ。何時でも…お待ちします」


 それはかつて、遙かな昔に、間違いが起こる前の時にオージンに忠義を尽くした騎士グレイスの姿があった。

 違うのは、忠義の騎士グレイスに微笑む過去のオージンではなく、裏切りグレイスに背を向けて去って行く今の古き王オージンの背中だ。


 この宇宙に広がる通信が終了した。

 立体画面が閉じた後、傅いたグレイスがその場に倒れた。

「父上!」

と、ホワイトが駆けつけてグレイスを抱えると、枯れた老木のようになった父親は意識を…崩御していた。

 最後の最後に自分が貫きたかった忠義を見せて終わったグレイスだが。

 思いだけでは、何も変わる事はなかった。


 そこへアズサワが姿を見せる。

「おや、最後は本来の自分に戻って死んだか…」


 無くなった父親をベッドに寝かせてホワイトがアズサワを睨み

「キサマ等が…」


 アズサワがフッと嘲笑い

「おや、責任転嫁は、祖先から続くんだね。狂ったのはお前達の責任だろうが! 人に罪を押し付けるな!」


 ホワイトが悔しそうに

「何しに来た…」


 アズサワがとあるプレートを取り出して、無くなったグレイスのベットのテーブルに置いて

「これを返しに来た。それだけさ」

 古びたプレートから、若きオージンとヴァーリスにグレイス、そして…祖先の愚か者達が楽しそうに飲み食いしている麗しく優しい過去の失いたくなった情景の立体画面が出てきた。

 アズサワが

「お前達も噛みしめるんだな。失ってはいけない者達の重さを後になってね」

と、告げて出口から出て行くと、そのドアの向こうの壁に腕組みして背中を壁に預ける一莵がいた。


 アズサワが一莵と対峙して

「お前達は…どうする?」


 一莵が

「やる事は変わらない。だが…」


 アズサワが別の方向へ歩み

「ゾロアスに伝えて置け、聖帝が関わると予測不可能だ。それは血族も同じだ」


 一莵も背を壁から離して

「分かっているさ。だから…ゾロアスは…」


 ◇◇◇◇◇


 ティリオは、全速力でゼウスリオンを走らせる。

 操縦席には、グレイスから受け取ったキーブレードがある。

 ティリオが向かう先、それは…聖櫃だ。


 亜光速から超光速航行へ移行、超光速で遙か遠方に現れた聖櫃がある宙域へ向かう。


 超光速航行を解除して、聖櫃まで数百万キロと宇宙では近くになった場所に出た瞬間、無数の攻撃がティリオのゼウスリオンへ襲いかかる。


「小僧!」

と、怒気を帯びた千華のバトロイドと、その仲間のバトロイドの大軍勢がティリオのゼウスリオンへ向かって攻撃する。


 無数の光線の雨を抜けていくティリオのゼウスリオン。


 そこへ千華のバトロイドが来て

「邪魔をするなら容赦しない」

と、バトロイドから切断のエネルギーブレードを伸ばして、ティリオのゼウスリオンを両断しようとしたが。


「悪いね!」

と、千華のバトロイドの脇にケリを放つ青い人型機体、マキナ。

 それは…アイツだった。

「よう! スペシャル」

と、言うのはスラッシャーだ。スラッシャーのアシェルがティリオのゼウスリオンに併走する。


 ティリオが

「なんで!」

と、驚きを口にする。


 スラッシャーが笑みの通信で

「察しろ」


 ティリオがハッとする。

 一莵だ! 一莵がティリオを守る為に… 


 前方を埋め尽くすバトロイド達がエネルギーブレードを伸ばしてティリオとスラッシャーのマキナに襲いかかる。


 だが…別の黄金の機体が出現する。

 それは…

「どうも…」

と、告げて無数の空間相転移砲でバトロイド達を払い除ける。

 黄金の機体、それはオメガデウスだ。

 そのオメガデウスに乗るのは、ゾディファル教団の教皇マリアンナだ。

 

「テメェ!」とスラッシャーが声を荒げる。


 マリアンナが

「あら、私は…ゾディファル教団の教皇マリアンナではありませんよ。ゾディファル教団一般僧兵のマリアンナですから」


 マリアンナがスラッシャーのアシェル上にオメガデウスを位置させ

「さて、わたくし一般僧兵のマリアンナと、一般参加者のアオイくんの二人で彼の道を開いて上げましょう」


 スラッシャーが舌打ちして

「分かったよ」

と、スラッシャーとマリアンナが先行して、ティリオが行く道を開く。


 スラッシャーのアシェルのエネルギー砲が前方近縁を、マリアンナのオメガデウスが遠距離を空間相転移砲で、バトロイド達を弾き飛ばす。

 無論、バトロイド達にはダメージが入るも、機体や操縦者が傷つく事は無い。行動不能にするだけ。


「お前等ぁぁぁぁぁぁぁ!」

と、語気を荒げる千華がバトロイドで駆けつける。

 千華のクィーンとしての力が発動する。

 空間転移から二百メートル級の巨大な存在が出現する。

 背中から無数の手を広げる手の平のような巨大機体と千華が乗るバトロイドがドッキングすると、七色の光の豪雨をティリオ達に向ける。


 それにマリアンナとスラッシャーが

「マリアンナ!」

「ええ! アオイ!」

 二人の機体が手を繋ぐと、二人の機体が螺旋を描いて流星になる。

 黄金と青の螺旋の流星がティリオの道を開く。


「いけぇぇぇぇ! スペシャル!」

と、スラッシャーのアシェルがティリオのゼウスリオンを押して先へ。


 ティリオは「ありがとう」と告げて、目的地近郊の二万キロまで来た。


 だが、そこにスカイギアが出現する。

「小僧…傍観するか、帰れと…言ったはずだ」

と、スカイギアからオージンの声が放たれる。


 百キロの大陸級の存在が縦に浮かび上がり、亀裂が入ると…そこから人型の鎧へ変貌する。

 百キロ越えの機神がそこに出現する。

 その機神スカイギアのコアにいるオメガデウスにはオージンが乗っていた。


 機神スカイギアから、強者であるオージンの威圧が放たれる。


 ティリオは操縦席でそれをヒシヒシと感じるも笑み

「オージン様、やっぱダメだ! アナタのやろうとしている事は、何の解決にもならない」


 機神スカイギアのオージンが

「ほう…では、どうする? 世の中には解決不能な問題があるのだぞ」


 ティリオが優しいワガママを言い放つ

「解決できないなら、解決できるまで、つき合わせる! そういう方法だってあるはずだぁぁぁぁ」

と、ティリオはキーブレードを発動させる。


 聖櫃の上に、数億光年単位の存在が出現する。

 それは、グレイス達が集めて作った超高次元多結晶体の超空間ネットワークモドキだ。

 

 オージンが呆れた顔をして

「これ程、愚かとはなぁ…聖帝の息子よ!」


 ティリオが毅然として

「そうさ、ボクは…ティリオ・グレンテル、聖帝の息子で、大甘な子供だ! だから…ワガママを通させて貰う!」



ここまで読んで頂きありがとうございます。

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次話を出すがんばりになります。

次回 若き王と古き王

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