星光 第90話 選択された結果
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動き出す者達、そして…ティリオが
カレイドの星艦がアルファイド時空へ到着して、多くのカレイドの戦闘機宇宙艦、バトロイドが発進して行く。
そのバトロイド達の中に千華が乗るバトロイドも
「行くよ」
と、告げて発進する千華の口調は鋭い。
何時ものふざけた態度は一切無い。
それに紫苑のバトロイドも続き
「出ます」
と、千華を追って発進する。
千華は、カレイドの星艦とセンサーをリンクさせて数億光年単位の範囲に聖櫃が現れたら駆けつけるように空間転移のエネルギーをチャージさせる。
千華が操縦桿を握り締め
「やっと迎えに行ける」
そこへハッキングによる通信が割り込み、千華が鋭い顔で
「誰?」
その口調は、重く鋭い。
ハッキングをしたのはアズサワだった。
「久しぶりだね。クィーンエンフェル」
それを聞いて千華が不機嫌そうに
「何の用? この人を騙す詐欺師コウモリ」
アズサワが笑み
「コウモリとは心外だね」
千華が冷たい笑みで
「人を騙す詐欺師ってのは自覚あるんだ…」
アズサワも冷たい笑みで
「芸術的な詐欺師として自覚している。その芸術派詐欺師から、とある話をしようか…」
と、千華がアズサワから話を聞いて
千華が鋭い目で
「それを信じろっての?」
アズサワが
「信じようと信じまいと、君達には聖櫃がどこに現れるのか? それを予測する力は無い。今回の事もチャンスだが。このチャンスを逃した場合は、その次を考えない…とね。その為の保険はあった方がいいだろう」
千華は
「別に、この時空がどうなろうと構わないわ。私達は私達のやる事をするだけ。その後は好きにさせて貰う」
アズサワが手を振り
「そうしてくれるなら、約束は守られるよ。我々は一晩で信頼が築けると勘違いしている詐欺師ではないからね」
千華が苦い顔で
「人をハメル策士がよく言う」
アズサワが笑み
「では、後は…頼むよ」
アズサワとの通信を終えた千華が吐き捨てるように
「今度は、何を得るんだよ。進化のピエロ、エヴォリューション・インパクターさん」
◇◇◇◇◇
ティリオはグレイスといたホールから出て行った。
グレイスが
「そのキーブレードと我々の概要を持っていて欲しい。それをアナタのお父上に」
と、キーブレードとグレイスが作っていた超空間ネットワークモドキのデータを空間収納に入れて外に出て、直ぐにナビでジュリア達の反応を追跡して走る。
そして、ジュリア達が会議をしていたビルの玄関に出た所でティリオが合流する。
「みんな、無事」
と、ティリオは全員を見る。
グランナとファクド、ジュリアとアリルにナリルの五人だけで五人にケガの様子はない。
だが、ティリオは、ルジェルとクロエラにテスタメントの二人がいない事で
「交渉は…」
アリルが
「ルジェルが重傷で、テスタメントの人達に空間転移をお願いして…」
ティリオは項垂れて
「そうか…」
グランナが
「そっちは?」
ティリオが空間収納からキーブレードを取り出して
「これを父さん達に渡してくれって、頼まれた」
ファクドとグランナがキーブレードを凝視して、ファクドが
「それってもしかして…あの時の超高次元多結晶体と同じ…」
ティリオがキーブレードを空間収納にしまって
「後で説明する。それより」
「元気そうだな」
と、ティリオ達に近づくエピオンとウィングゼロの二人。
エピオンは深紅の鎧に幾つもの蛇腹関節腕を伸ばし、ウィングゼロも白を貴重とした翼を背負う鎧を装備した武装形態だ。
ティリオがエピオンとウィングゼロを見つめて
「お久しぶりですね。エピオンさん」
グランナが「知り合いか?」とティリオに耳打ちする。
ティリオが頷き「うん」と
「ちょっとね。ヘオスポロスの人達…」
ファクドとグランナが警戒の顔をする。
エピオンが警戒しているティリオ達に
「今回の狙撃だが。オレ達が担当した」
「な…」とファクドは驚き、グランナが鋭い顔をする。
ティリオ達は静かだ。
エピオンが淡々と
「本来なら、アサの民のヴァーリスは暗殺されるはずだったが…別の依頼が差し込み、重傷にさせて撤退へ追い込む…そういう作戦になった」
それを聞いてファクドとグランナは驚きの顔で、ティリオは厳しい顔をして、その横顔をジュリアとアリルが見てナリルが少し悲しげだ。
エピオンが淡々と
「ヴァーリス…そちらではルジェルか…暗殺を依頼したのは、この時空の連中だ。結局、どんな事になろうとも…事態は変わらないという事だ」
ティリオが
「それでも他に道は…」
「ない!」とエピオンが切り捨て
「ないんだよ。ティリオ・グレンテル。もう…この時空は末期だ。どんな事をしても結果は変わらない。変えられない。それは…アサの民が虐殺された事で確定したんだよ」
ティリオ達が黙る。
エピオンが
「この時空は、アサの民が消える事で、長い長い内戦を繰り返し…大幅に人口を自分達で激減させて、外部からの力を借りて…内戦が終わる。その時には支配体制もこの時空の内情も様変わりしているだろう。オレ達、ヘオスポロスはそういう時空達を幾つも見たし、関わっても来た。だから、言う。ティリオ・グレンテル、お前のやるべき事はない。帰れ」
ティリオが悔しそうな顔して黙っている。
エピオンが
「お前は託されたモノがあるはずだ。それを父親、聖帝ディオスに渡す為に帰る。それで終わりだ。お前達には解決できない。どんな巨大な力を持っていようとも、所詮は、十七歳のガキだ! 責任者は、問題を解決する力がある者を責任者と呼ぶ。お前達に、この問題を解決できる能力も力もない!」
ティリオ達がエピオンからの正論を言われて黙ってしまう。
エピオンが背を向けて
「そういう事だ。お前はルビードラゴンのお気に入りだ。こういう事もあるのを糧にして、成長しろ」
と、去って行くとそれにウィングゼロが続く。
エピオンとウィングゼロは去って行った。
ティリオは俯いていると、ナリルがその肩に手を置いて
「ティリオ、今は…」
ティリオは頷き
「分かった」
ティリオ達は、ここからの脱出を開始した。
◇◇◇◇◇
テスタメントの二人の空間転移で無事にオージンの惑星戦艦へ帰って来たルジェルとクロエラ、ルジェルは治療を受けながら、オージンの説明を聞いて愕然としていた。
クロエラも同じだった。
オージンが
「ワシが、そのように手配しなければ…お前は死んでいたのだぞ」
ベッドにいるルジェルが
「しかし、兄上…この時空の方々は、我々と」
オージンが悲しい顔で
「上の連中が、どう唱えようとも…それに従う者達が納得していないなら、それはムリだ。同じ事の繰り返しになる。復活した民達を再び虐殺させるのか?」
クロエラがオージンに
「私達はどうすれば良かったのでしょうか?」
オージンが首を横に振り
「残念だが。全てはアサの民達を虐殺した五百年前から決まってしまっている。どう…変える事もできん。世の中には、どれを選択しても最悪でしかない結果ばかりという現実があるのだよ。お嬢さん」
どうしようもない…現実がそこにあった。
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