第87話 首都モルドスの攻防
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あらすじです。
エニグマ、マッドハッターの強襲に揺れるロマリア帝国首都モルドス、マッドハッターの策略にディオスは、苦戦する。追い詰められるディオスとモルドスの人々、絶望が覆い被さった時、空に…
ディオスは、自分を囲む特製のメカニカルドラゴン達に怒りをぶつける。
「クソッタレ! クソッタレ! クソッタレーーーーーー」
持っている六属性全ての魔力の放つ攻撃を繰り出す。
強大な業火、全てを凍てつかせる冷気の光線、暴風の竜巻、地属性の雷の嵐、強烈な光線、超重力のエネルギーの塊。
その強力な魔力の攻撃を的確に盾のメカニカルドラゴンは防御する。
ディオスは眉間を焦りで寄せる。
マッドハッターが従えているメカニカルドラゴンは、ご丁寧にも、魔法を弾く金属を外皮としている。
魔法耐性があるドラゴンの、耐性を遙かに凌ぐスペック。
さらに、戦略的に動く知性までも持っている。
ディオスが攻撃を繰り出していると、盾のメカニカルドラゴン達が、その攻撃を弾きながら、攻撃専用のメカニカルドラゴン達がディオスに攻撃を加える。
攻守ともに優れた戦術で攻めてくる。
クソ! 魔法陣さえ使えれば…!
ディオスは焦燥する。
体内生成魔法で幾らかは、魔法が使えるも、それは放つが専門で、収束や結合、合成、相乗効果の発揮、そして、威力の限定も不可である。
これ程までに、魔法陣を使えない事に、苛立つディオス。
それ程までにマッドハッターはディオスの事を調べているのだ。
マッドハッターの後ろにある巨大、魔法陣阻害結晶の飛行装置だけでも破壊しようと、ディオスは疾走するも、それをメカニカルドラゴン達が防ぎ、魔法陣阻害結晶装置は、首都の方へ向かい遠くなる。
「どけ―――――― クソ共がーーーーー」
もうなり振り構わず、破壊しようとするディオスだが…別のメカニカルドラゴンがディオスを掴み、地面へ墜落させる。
上空で戦っていたディオスは、メカニカルドラゴンの巨手に掴まれ落とされながら、掴んでいるメカニカルドラゴンを巨大な光線の魔力で消滅させるも、攻撃型の頭部が剣のように出ているメカニカルドラゴン達に群がれ、地面に落とされてしまった。
地面に着地するディオス。
その周囲を盾のメカニカルドラゴン達が囲む。
そして、その正面にマッドハッターを乗せるメカニカルドラゴンが降り立ち
「さあ…アーリシアの大英雄の英雄譚もここで終わりですなぁ…」
マッドハッターが嘲笑う。
ディオスは、額の汗を拭い
「どうかなぁ…オレはしぶといぞ…」
睨み返す。
ふふ…とマッドハッターは苦笑して
「お前一人で何が出来る。所詮、世界は変わらない。何故だか…分かるか? 人は、欲望に忠実な存在だ」
マッドハッターは天に両手を伸ばし
「人の欲は際限ない。金を稼ぎたい、誰かに認められたい、誰よりも上に立ちたい、そして…誰よりも幸せでいたい、誰よりも人を救いたい…。誰よりも素晴らしい存在でいたい。みんな、みんな、みんな、みーーーーんな、欲望なのさ!」
マッドハッターはディオスに右手を向け握り閉め
「お前も、家族が幸せであって欲しいという欲望の信徒だ」
ディオスは眉間を寄せて
「それがどうした。それが何の答えになる!」
マッドハッターは
「我らは、そういう欲に付け入って、この世界を操作して来た…。これからも、明日からも、ずーっとだ。ディオス・グレンテル。キサマは、この世界の欲望に負けた。この世界の醜さに潰されるのだ。大英雄、所詮、世界を変える事、あたわずして、死ぬ」
ディオスはフッと笑み
「キサマ、その言葉を憶えて置けよ」
マッドハッターは肩を竦め
「死んでしまう輩の戯言なぞ、憶えるにあたわず。さようなら…」
メカニカルドラゴン達がディオスを始末しようと包囲した。
メカニカルドラゴン達が首都モルドスに降り立つ。
それに首都と皇帝の軍隊が対処する。
魔導操車と重装備の魔導騎士装甲が、巨大な砲身を装備してメカニカルドラゴン達に砲撃する。
その合間に、切断の巨大ブレードを持った魔導騎士装甲が、メカニカルドラゴンに斬り掛かる。
一応、砲撃で動きは鈍るも、巨大ブレードでの斬撃は、硬い金属の外皮で、上手く斬れない。
無理矢理に腕や、首を切断して、倒したかのように思えたが…、切断された頭部と腕が生えて再生する。
胴体に攻撃を集中して破壊すると、再生されず魔導石化して倒せるも、膨大な労力が必要とする。
五万の軍隊に、ドラゴンの十万の軍勢、ドラゴンを一体倒すには十数台の魔導操車が必要だ。
そのドラゴンの標準を上回るメカニカルドラゴン達に、軍隊は後退していく。
そして、住民が避難するシェルターにメカニカルドラゴンが迫る。
シェルターには、アルミリアスとその親衛隊の乙女達、ディオスと過ごしていた子供達と、その周囲の住人達千人近くが収容されていた。
首都モルドスの地下には、二千万の首都民を収容出来るシェルター群がある。
もしもの場合に備えての強固なシェルターだが…。
何度も激震が襲い、シェルターの天井が破られる。
そう、メカニカルドラゴンが住民を探し出し攻撃しようとしていた。
アルミリアスは、右手を上げる。その上に青い光の粒子が集まって巨大な四十メータ近い青く輝く龍を出現させる。
ロマリア皇家の血筋に伝わる神獣技を発動、攻撃しようとするメカニカルドラゴンに巻き付き消滅させる。
アルミリアスは飛翔して、空いたシェルターの穴から飛び出し、シェルターに群がるメカニカルドラゴン達に悠然と立ち向かう。
「我が民を屠ろうとする愚か者よ! 鉄槌を受けるがいい!」
神獣技の青き龍が、メカニカルドラゴン達を呑み込んで消滅させるも、メカニカルドラゴン達の数が圧倒的で、その隙間を縫ってシェルターへ向かうも、シェルターから七つの人影が飛び出した。
そう、ラハトアと親衛隊の乙女達だ。
親衛隊の乙女達は、エンテマイトの超震動によって動きを封じて、ラハトアが神獣技を発動させて倒す。
なんとか、その場は凌いだが…メカニカルドラゴン達は、咆吼の攻撃に変えて、集中砲火を放つ。
それに、アルミリアスは神獣技で防護するも押さえる。
押さえている間に、別のメカニカルドラゴン達が迫る。
それに対応する親衛隊の乙女達とラハトアだが…数に押さえて、ラハトアがメカニカルドラゴンの手に弾かれた。
地面に転がるラハトア、ケガをして額から血が出ていた。
そこへ、友の子供達が駆け付ける。
ズンと、ラハトア達の前にメカニカルドラゴンの巨体が…。
モルドス近郊にある二キロサイズの巨大な皇帝城では、その上にライドルは発動させた神獣技の青い龍がいた。
神獣技の青い龍は、皇帝城を防護する結界を構築して、皇帝城を守っている。
皇帝城には、沢山の人々がなだれ込む。
メカニカルドラゴンにシェルターを破壊され、逃げて来たのだ。
それを結界の空いている四方から入れて、その四方の門を皇帝軍が必死に守っている。
ライドルは、皇帝城の一番高い所にいて、神獣技を発動している。
ライドルの目に、蹂躙されるモルドスが見える。
「おのれ…」
悔しさを噛み締めるライドル。
その背に仕官が来て
「皇帝陛下! お逃げください! ここはもうダメです」
ライドルは怒りを仕官に向け
「キサマは! 民を見捨てて逃げろと! このロマリア皇帝ライドルに、言うのかーーー」
「皇帝陛下が、死んでしまったら。ロマリアは終わりです!」
そう、国を纏める統治者が、こんな事態で死ねば、確実にロマリアは終わる。
「皇帝陛下ーーーー」
仕官が必死に叫ぶ。
ライドルは無視して
「ここで、民を守れない皇帝が! 皇帝と、名乗れるかーーーーー」
首都及び皇帝城周辺を任されている司令部の施設は大混乱だった。
短距離の魔導通信しか使えず、遠方に応援の要請が出来ない。
しかも、首都を覆い尽くしてもまだ、広がる魔法陣阻害の力で、飛翔の魔法が使えず、助けが呼べない。
空港にある飛空艇は、メカニカルドラゴンによって破壊。
戦艦飛空艇達は、メカニカルドラゴン達の防戦で手一杯。
じりじりと確実に、メカニカルドラゴン達は首都を破壊する。
そして、あろう事か…人のいる場所に集中して襲ってくる。
完全に、虐殺をしに掛かっている。
首都総司令の魔族の女性は、大混乱の怒声が飛び交う司令センターで、机を叩いた。
もう…絶望しかない。
そんな中、魔導レーダー手が
「総司令! 大変です。こっちに向かって超音速の群体が迫っています!」
総司令は顔を上げ
「所属は?」
「魔導通信が飛ばないので全く分かりません!」
総司令の魔族の女性の顔に悔恨が滲む。
新手の敵か!
首都モルドルへ向かい先行する二つの超音速の物体。
その一つが、併走する超音速に呼び掛ける。
「兄上、もうすぐ、モルドル上空に到達します」
もう一つに乗る青年は目を開ける。
「アウグ…行くぞ」
「はい! 兄上!」
そう、超音速で迫る物体に乗るのは、アウグストスとヴェルオルムの、フランドイル王家の兄弟である。
モルドスの前に到着した超音速は、その身を包んでいた魔法陣を解除した。
二体の輝くゴーレム。
いや…ゴーレムではない。
有機的で、滑らかなフォルムの白銀と、紫真珠の人型機体。
滑らかな甲冑の人型機体は、眼光を輝かせる。
そして、背面の翼が広がる。
剣の根元を持つ光を放つ翼を広げたそれは…。
シン・ゴーレムを更に進化させた、フランドイル王家のジン専用機。
ゼウスリオン!
首都の司令センターに二機のゼウスリオンから通信が届く!
「総司令! 通信です! 我、援軍なり、援軍なり、これより、交戦に参加する!」
超音速に再加速して、光の粒子を纏うアウグストスの白銀のゼウスリオンが、首都の上空にある、魔法陣阻害結晶装置に突進、その衝撃と衝撃波によって崩壊、首都の外れへ落ちた。
ヴェルオルムの紫真珠のゼウスリオンが、首都の真ん中の上空に止まり、両手を広げた瞬間、全身から万雷が降り注ぎ、首都上空を覆うメカニカルドラゴン達を蒸発させて倒す。
一瞬で数千頭のメカニカルドラゴン達が消えた。
アウグストスの白銀のゼウスリオンが、首都を低空飛行で走る。
その通過した場所のメカニカルドラゴン達が白銀のゼウスリオンの稲妻によって消滅する。
総司令が呆然とする。
「何なんだ? これは…」
通信が回復した途端、一斉に司令センターへ通信が入る。
通信手が涙する。
「総司令! 現在向かっている超音速の全てが援軍です!」
首都に無数に迫っていた超音速達が、首都の周囲へ着地する。
それは、大軍勢だった。
首都を完全に包囲する程の、膨大な数の軍団。
一つは、フランドイル軍と、アーリシア統合軍だった。
アーリシア統合軍の戦艦飛空艇の旗艦に乗るのはレディアンだった。
「全軍前進ーーーー 目標、ロマリア首都モルドスを襲撃するドラゴン! かかれーーー」
首都司令センターに軍団の規模が伝えられる。
通信手達が叫ぶ
「フランドイル、アーリシア統合軍、合同の三十万の軍団が参戦します!」
「同じくロマリア西方軍十万が!」
「南側! ウソだろう…そんな…」
総司令が「どうした!」と聞く。
通信手が涙して
「南方から、トルキア共和国軍十万と、ロマリア南方軍十万の…合同軍が来ます」
総司令が驚愕した。
「そんなトルキアが…」
トルキアとロマリアは国境問題で度々、争ってきた。
敵が…自分達のピンチの為に駆け付けてくれた。
ザザザ…
通信が入る。
「こちらは、トルキア共和国軍。汝達を助ける為に援軍としてはせ参じた。情報を共有したい」
六十万の大援軍が、首都の外環から駆け付ける。
通信を聞いていた首都の部隊は驚愕する。
「そんな…こんな奇跡…あり得るのかよ」
兵士達は心が震えた。
ラハトア達を殺そうと、メカニカルドラゴンがその巨大な手を降り下ろしたが、逆にそのメカニカルドラゴンが潰れた。
「え…」
事態が分からず混乱するラハトアの前に、メカニカルドラゴンを潰した男が立ち上がる。
黒い軍服を纏い、胸には青白黒の柄に二体のドラゴンが向き合っている紋を付けている赤髪の男。
ラハトアにはそれに憶えがあった。
「あ…アインデウス皇帝の部隊…」
赤髪の軍服の青年は、ラハトアに近付き
「よく、がんばったなぁ…」
微笑む。
そして、周囲を防戦しているアルミリアスの神獣技の青い龍の周囲に黄金に輝くドラゴンのオーラが立ち上り、そのドラゴンのオーラがメカニカルドラゴン達を一蹴する。
アルミリアスは呆然とする。
浮かぶアルミリアスの元へ、一人の黒髪のポニテールでアインデウス皇帝の部隊ドラゴニックフォースの軍服を纏う女性が来た。
「久しいなぁ…アルミリアス」
そう、その女性には憶えがある。
「まさか…お主が来るとは…リュート」
アルミリアスがフッと微笑む。
そう、リュート、彼女はアインデウス皇帝の長女で、ドラゴニックフォース部隊右翼軍団に所属している。
そこへ、ゴルートスが来て
「リュート様。まだ…敵がおります。気を抜かずに…」
「分かった」とリュートは肯き、ラハトアの傍にいる次男に「ヴァハ行くぞ!」
「へーい」とラハトアの傍にいる赤髪の男、ヴァハは空へ昇りながら
「後は、お兄ちゃんに任せておけ!」
ラハトアに微笑む。
リュートの両側にヴァハとゴルートスが並び。
「いざ! 行くぞ!」
三人は、ドラゴンのオーラを纏ってメカニカルドラゴンを殲滅する。
そして、皇帝城の上に空間の穴が出現する。
そこから、アインデウスの所有する巨城式飛空艇が出現する。
巨城式飛空艇の上に巨大な魔法陣が展開、そこから、周囲のメカニカルドラゴン達を殲滅する光線が降り注ぐ。
その魔法を発動させているのは、巨城式飛空艇の上部テラスにいるアインデウスの妻の一人、白姫だった。
そして、皇帝城に残る細かなメカニカルドラゴン達に向かって紅蓮の光線が走り、消滅させる。
それをしたのは、紅蓮に輝くゼウスリオンだ。
それに乗っているのは、これも同じくアインデウス皇帝の妻の一人、赤姫だ。
ライドルは事態を一変させた巨城式飛空艇を見上げる。
そこへ、赤姫のデウスリオンが近づき、胸部の宝石部分にいる赤姫が
「久しぶりだなぁ…ロマリア皇帝」
ライドルが赤姫を見つめ
「まさか…お主達…」
赤姫はフッと笑み
「そうだ。助けにきたぞ。我ら以外にもいるぞ。アーリシア統合軍、フランドイル、そして…トルキアもだ」
「どうして…」
「ふ…ある男にほだされたんだよ。確かにロマリアには色々あるが、決してロマリアが滅びていいなんて、誰も思ってもいない筈だと…。まあ…その男が我らのエルギアの技術を高めて作ったゼウスリオンのテストもしたいという思惑もあるが…。これは、ロマリアに滅んで欲しくないという善意だ」
ライドルは俯き
「すまん…」
「ふ…」と赤姫は笑った後、紅蓮のゼウスリオンを翔る。
背中の砲身の翼から、紅蓮の光線を唸らせ、メカニカルドラゴン達を殲滅させる。
首都の情勢が変貌した。
国々の大援軍と、ゼウスリオン達、ドラゴニックフォース部隊の参戦に、士気がうなぎ登りだ。
首都軍は、援軍達を友にメカニカルドラゴン達へ立ち向かう。
フランドイル軍とアーリシア統合軍に飛行魔導操車軍団と戦艦飛空艇の大艦隊
トルキア共和国の魔導操車と戦艦飛空艇の艦隊。
ロマリアの軍隊。
その全てが手を取り合って戦う。
お互いに殺し合うでない、お互いに助け合う事に、相乗効果は増して、圧倒的力を誇るメカニカルドラゴン達は敗走する。
助け合い、お互いに敬礼して、鼓舞し合う。
それは、黒が白に変わるように、絶望的状況がひっくり返る。
後々に、モルドスの奇跡と呼ばれる事となった。
マッドハッターは、状況が一変した首都を見て、驚愕の顔をする。
その前にいるディオスは、魔法陣が展開出来るとして、メカニカルドラゴン達を圧殺する超重力魔法を発動。
メカニカルドラゴン達に頭上に魔法陣が展開、自分の中心に圧し潰れる超重力魔法によって殲滅された。
ディオスは指を鳴らして浮かび上がる。
「言ったよなぁ…憶えて置けって…」
ディオスの目が威圧で輝く。
マッドハッターは混乱で震えながら
どうしてだ? どうして…こんな大軍隊が、一斉に…。
混乱するマッドハッターが透けて見えたディオスは
「なんでこんな大軍隊が来れたか…種明かしをしてやるぜ。転送魔法レド・ルーダ」
マッドハッターは、息を飲んだ。
そうか…確か、あのサルガッソーの戦艦の時に…。
そう、大規模での転送魔法を使っている。
アーリシアとトルキアにはグランスヴァイン級魔法運用者がいる。
その者達が、大規模での転送魔法を使ってこんな短時間で大軍団を送ったのだ。
「く…」
マッドハッターは渋い顔をして、背後にいるメカニカルドラゴン達を放つ。だが…。
メカニカルドラゴン達は稲妻や、走る流星に殲滅される。
頭上から、青と白のトリコロールカラーのゼウスリオンが降臨する。
「全く、お前というヤツは…」
そのゼウスリオンからはマリウスの声がする。
そして、ディオスの隣に、流星だったアルヴァルドが来る。
「よくやったぞ、褒めてやる。婿よ」
マリウスは、アインデウス下のゼウスリオンの使い手として引っ張られたのだ。
アルヴァルドは、転送されたトルキアの部隊と共に来たのだ。
マッドハッターは、ディオスを正面に、左にアルヴァルド、右にマリウスのゼウスリオンに挟まれる。
そして、背後に空間が大きく円形に切れて黒いゼウスリオンが出現する。
そう、それに乗っているのは…黒姫アルディルだ。
四方を完全に封鎖されたマッドハッター。
アルヴァルドが、パキパキと首をならして
「各々、取り分は分かっておろう…」
アルディルが
「ええ…ちゃんとコイツから抜き取った情報は、提供するわ」
マリウスが
「無駄な抵抗は、得策ではないぞ」
ディオスは、背後に膨大な魔法陣を展開して、魔法で最強とされる魔王クラスの威光と威圧を纏って
「おい、覚悟は出来ているだろうなぁ…。言ったろう…憶えて置け…と」
マッドハッターは身構えなが考える。
どうして、こんな事が…。
今までのこの世界の国家間の常識が通じない。
こんな助け合うに纏まるなぞ…。
なんだ? これは…我らのしている事に対する逆風。
こんな事が…我らが長年、生み出してきた状態が…こうも…一変するなぞ…。
誰だ。誰が…。
マッドハッターが視線を左右に動かしていると、それは感じた。
大きな逆風を背負う、追い風にしている者が…。
目の前にいた。
コイツだーーーーーーーー
ディオスだった。
大きな輝く追い風を背負うディオスが見えた。
マッドハッターは決死の覚悟をする。
今、ここでコイツを…殺さないと…我々の悲願が…。
そう、自分の命と引き替えにしても…。
ディオスは、マッドハッターの鋭い視線を感じた。
こいつ…まだ、何か隠し持っているのか?
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次話があります。よろしくお願いします。
ありがとうございました。




