星光 第84話 誘拐された先で
次話を読んでいただきありがとうございます。
誘拐されたティリオとクロエラ、その二人の前に来たオージンが伝える事実とは?
オージンはティリオとクロエラの二人を連れて宇宙戦艦内を進み、そして、宇宙戦艦が内部港に停泊する更に巨大な宇宙戦艦の橋を渡る。
オージンは微笑みながら
「さて…何から話せば良いかなぁ…聖帝のご子息様、そして…我らを皆殺しにした一族の姫様?」
ティリオが
「目的を教えて欲しい」
オージンが
「本当は、聖帝のご子息様だけを誘拐するだけだったが…どうしても、クロエラ嬢がいないと説得できない。頑固者がいてなぁ…一緒に来て貰った」
ティリオが
「どうして、ぼくが誘拐されないといけない理由は?」
オージンがティリオを見つめて
「お主は、昔…聖櫃と融合した事がある。聖櫃が…この時空に現れる。じゃが、その位置はランダムだ。だが…かつて…聖櫃と融合した者がその時空におれば、そこへ引き寄せられる。聖帝のご子息殿、我らの計画が発動する時に居てくれればいい。それだけさ。その後は…好きに帰るもよし、観光して終わるもよし」
ティリオが
「ぼくが逃げるかもしれない」
オージンが確信を持ってティリオに
「逃げないさね。ワザと我らに捕まり、そしてここにいる。お主は…頭が良い。そして、強い意志を持っている。そういう人物は…見極めたいとする思いが強い。お主は我らから逃げない。最後まで…そして、そうする理由がある」
オージンと共に歩む道の先にサングラスを掛けた男女が立っていた。
その男女のいる先にオージンが来ると、二人が
「どういう事ですか?」
と、男が尋ねる。
オージンが男に
「計画の為には必要だからさ。ゲヘノムヴァ」
ティリオがサングラスで黒い装束の男女を凝視する。
ゲヘノムヴァの男女は、サングラスからだが…鋭い視線をティリオに向けていた。
ティリオとゲヘノムヴァの視線がぶつかる。
オージンが
「聖帝のご子息殿、バルタザールは元気だったか?」
ティリオがオージンに向いて
「バルタザール様を…知っているのですか?」
オージンが笑み
「ゲヘノムヴァにバルタザールを使うよう…助言したのは、ワシだからな」
と、歩み出して
「では、聖帝のご子息殿…汝が求めている答えを見せようぞ」
ゲヘノムヴァが苛立つ息づかいをする。
その前にオージンが仲間に連絡して
「ああ…ヴァーリスのご執心な乙女が来た。会わせてやれ」
と、別のアサの民、アームズヒューマンが現れてクロエラを連れていった。
それにティリオは鋭い顔をするも、オージンが
「大丈夫じゃ。探していたアイツに会えるだけさ。後は…」
と、ティリオを導く
「こっちへ」
◇◇◇◇◇
ルナリスがいる軍事コロニー、ルナリスの司令室で、グランナとファクドがルナリスに詰め寄っていた。
グランナが苛立ち
「どういう事だ? あああ!」
ファクドも苛立ち気味に
「事と次第によっては、こちらにも考えがあるぞ」
二人に詰め寄られるルナリスが焦り
「待ってくれ、こんな事…予測不可能で…」
千華がルナリスが座る机を叩き
「ねぇ…なのつもりだったの? この子達を呼んで?」
と、威圧する後ろに黙って見つめる紫苑がいる。
ルナリスが渋い顔で
「巻き込んだのは悪かった。でも、こうするしかなかったんだ…」
グランナが怒りで
「巻き込んだ! どういう事だ!」
ルナリスが項垂れながら
「クロエラ嬢を君達に会うように装備や手配を…したのは、私だ。クロエラ嬢の装備にヴァルスアルヴァの装備を紛れ込ませてね。そうすれば…ティリオ・グレンテルが関わってくれると…」
この司令の部屋にいる全員の視線が部屋のすみで腕を組み黙る一莵に集中する。
一莵が静かに
「全て、話した方が…楽に進むぞ」
ルナリスが項垂れて
「アサの民については…祖父母から…聞いていた。私達の一族もそれに加担した…」
一莵の前にジュリアとアリルにナリルが来て、ナリルが
「アンタが…計画したの?」
一莵が面倒な感じで
「オレから喋ると色々と語弊をはらむが、それでも聞きたいか?」
ファクドが一莵の右壁にドンと壁ドンして
「是非、聞きたいね」
一莵が呆れ気味に
「要するに、祖先の汚点の尻拭いを…して欲しかったのさ。アサの民が復活しているのを知った、この時空の上層部は…アサの民が復讐すると勘違いしていた」
グランナが
「復讐すると勘違いしていた?」
一莵がルナリスを見ると、ルナリスが苦しい顔で伏せるが、口を開き
「アサの民は…復讐するつもりはないのが分かった。復活しているアサの民達は集結して、この時空から出て、自分達が新たに作る時空へ行くつもりだ」
一莵が
「この時空は、アサの民が作った超空間ネットワークによって生かされている。それを根こそぎ、アサの民は新しく作った時空へ持って行く」
ルナリスが
「そんな事をされたら…この時空は…エネルギー、インフラ、技術開発、通信、この時空を支える全てが…消える」
ジュリアがルナリスへ
「そうなる前に、私達にアサの民を殺させようとしたのね」
「違う!」とルナリスは否定して
「それを止めて欲しいのと、新たな道を…この時空へ留まって貰い、我々と共に歩める道を…」
千華が苛立ち気味に髪を掻き上げて
「アンタ達が、やらないといけない事を! 全部、この子達に押し付けたのか!」
ルナリスが震えながら
「ああ…そうだよ。私達には、どうやってもムリなんだ! だから…」
呆れて言葉を失う全員。
千華が
「紫苑、行くよ」
紫苑が
「どうするつもりですか? 千華…」
千華が
「ティリオが誘拐されたって事は、聖櫃を呼び寄せる餌に使うつもりなのよ。そこを私達は狙う」
紫苑が
「聖櫃がここへ、その場所へ来た時に…」
千華が
「そう、だから…本部へ部隊派遣をしてもらうわ」
ルナリスが
「待ってくれ! 外時空からの部隊派遣は、侵略行為として」
千華がドンと机に脚をのせ
「うるせぇわ。アタシ達は、アタシ達の勝手にやらせてもらう。邪魔するなら」
と、次に一莵を睨む。
一莵も鼻息を荒げて睨む。
ファクドは呆れる。
事態が完全に悪化して手に負えなくなった。
「グランナ」とグランナの肩を持つ
グランナが頷き「ああ…」と
ファクドは
「ジュリア、ナリル、アリル。もうダメだ。ムリだ」
彼女達三人は頷いた。
ルナリスがいる司令室から全員が去って行く。
「待ってくれ! まだ…」
と、ルナリスが止めようとするが、その声は虚しく響くだけ。
司令室から出たファクドはグランナに
「聖帝ディオス様に連絡しよう」
グランナが
「どう、説明する?」
ファクドが
「緊急事態だってな」
◇◇◇◇◇
ティリオは、オージンと共に超空間ネットワークと繋がるマルチバーストジョイントシステムのドームにいた。
黄金の石版型の電子回路が全面に走る装置、マルチバーストジョイントシステム。
それが、この時空に繋がる超空間ネットワークのコアの状態を映像にする。
オージンが
「これを見るのは初めてじゃろう」
ティリオが驚きで見つめる。
「そんな、これって…」
オージンが笑み
「お主の父親は一回、対処した事があるはずだ。そう資料にあったのを読んだ事がある」
ティリオが見つめる超空間ネットワークのコアには、黄金の電子回路が広がる超空間ネットワークのコアの部分に封印された漆黒の巨大な炎が目を幾つも浮かばせている。
それは…
「サタンヴァルデット…」
と、ティリオは封印された正体を告げる。
オージンが
「そう、これは…コアがないサタンヴァルデットじゃ。お主達がシュルメルム時空のアリアナ銀河のスカイギアに封印されておった、サタンヴァルデットと同じだ」
ここまで読んで頂きありがとうございます。
続きを読みたい、面白いと思っていただけたなら
ブックマークと☆の評価をお願いします。
次話を出すがんばりになります。
次回、流転悪化




