星光 第74話 オメガデウスの賢者
次話を読んでいただきありがとうございます。
案内された先で出会った長老バルタザール。その話とは?
ティリオ達は、長老バルタザールの家で話を聞く事になった。
テーブルを囲むティリオ達と長老バルタザール。
メイドロボがティリオ達にお茶を持ってくる。
ティリオがメイドロボにお辞儀すると、メイドロボは微笑み
「ごゆっくり」
ティリオがお茶を口にして
「ええ…バルタザールさんは…」
バルタザールが微笑み
「彼女と一緒に暮らしておるよ」
ティリオの左右、右にはエアリナとジュリア、左にはナリルにアリルと五人が座り、対面にバルタザールがいる。
ジュリアが周囲を見て
「奥様が…」
バルタザールは笑みながら
「さっきの彼女が共に暮らすパートナーさ」
え?とジュリア、ナリル、アリルは驚きを見せる。
エアリナとティリオは平然としている。
バルタザールが
「そちらの…ワシ等の世界とは違う雰囲気がお嬢さん方は…驚きだったか…」
ジュリアが
「不快に思いでしたら、謝罪します」
バルタザールが首を横に振り
「良いんじゃよ。知らん事も多い。知らん事を知って謝罪できるなら、良い事じゃ。自分の考えや価値観に合わんとして否定、拒絶、潰そうとする。それは…」
バルタザールが「いかん、いかん」と呼吸を整え
「年を取ると説教が多くなる。良くない事じゃ」
ティリオが
「あの…すみません。ぼく達は…」
バルタザールが
「アオイに、ここへ来るように呼ばれたんじゃろう。分かっておる」
ティリオが
「では、ぼく達が聞きたい事を…」
バルタザールが遠くを見るように
「お前さん達が、見た…アリアナ銀河の件で使われたオメガデウス、アレは…ワシが作ったオメガデウスじゃ」
ティリオ達は驚きを向ける。
ティリオは
「オメガデウスを作る事が出来るのですね」
バルタザールは頷き
「ワシは、その技術を継承する者、MW銀河が滅ぶ前の時代より…それを建造する方法を会得し続けておる」
ティリオが
「では、サタンヴァルデットを内包する技術を…」
バルタザールが真剣な目で
「それは別の者達が…付け加えた。その者達は…自らをゲヘノムヴァと名乗っている。おそらく、この時空の者達ではない」
アリルが
「どうしてそれが分かるのですか?」
バルタザールが
「様々な時空を行き交うようになると、その時空独特のエネルギーの匂いがある。この世界の時空で生きる者は、その時空のエネルギーが染みていく。悪い事ではない。別の時空の者も長く、その時空にいれば、そういう風に馴染むという事じゃ」
ティリオが
「時空の力を感じる事ができる。それがオメガデウスを作るセンスに…」
バルタザールが
「話が早くて助かる。アレは…一年前じゃ。久方ぶりにマリアンナがテスタメント達を連れて顔を見せてくれた。だが…その一団に別の一団もいた。顔をバイザーのようなサングラスで隠す一団、最初は…SPだと思っていたが」
エアリナが
「バルタザール様の感覚が…違うと…」
バルタザールが頷き
「ああ…纏っている時空のエネルギーの匂いが違った。何というか…まるで沈んだ水面のように重い時空の匂いじゃった」
ティリオが
「そのゲヘノムヴァが…」
バルタザールが
「その者達がとある装置を持ち込んで、これをオメガデウスに組み込んで欲しいと…。マリアンナの説明では、オメガデウスを遠距離操縦するシステムと…だが、直ぐに違うと…分かった」
バルタザールが隠して捉えた、その装置の映像がある端末プレートをティリオ達に見せる。
そこには、赤い結晶が浮かぶ液柱を抱える鎧のようなデザインで、大きさ的に二メートル半だろう。
その赤い結晶の液柱を抱える鎧をティリオが凝視する。
この赤い結晶…とティリオの顔が鋭くなる。
バルタザールが
「ワシは、この赤い結晶が…アオイの機体アシェルのコアである超高次元多結晶体と同じ存在ではないか…と思う」
ティリオが
「なんですか? その超高次元多結晶体…とは?」
バルタザールが
「アムザクの遺産…というのは知っておるか?」
エアリナがティリオを見つめる。
ティリオが
「確か…PDSIの天臨丞王のジョウドおじさんや、収天螺王のトオルおじさんが…回収している。超高次元のエネルギーが使われた危険性の高い遺産の総称で…」
バルタザールが頷き
「そうじゃ。おそらく…それに繋がっているような気がする。アムザクの遺産をワシは…触った事がある。その経験と知恵から、それと似たような系統の技術だと…それが超高次元多結晶体…」
ナリルがティリオを見て
「ティリオ…アムザクの遺産まで…どんどん話が…」
ティリオが渋い顔をして
「ああ…ある程度は大きくなるとは覚悟していたけど…アムザクの遺産まで…」
バルタザールが
「これは、あくまでもワシの仮説じゃが…ゲヘノムヴァは、アムザクの遺産を踏み台にして発展した連中かもしれん。それ程の力と叡智をアムザクの遺産は持っておるからな」
バルタザールは脇からもう一枚の端末プレートを取り出してティリオ達に差し向け
「これは、ワシが取る事が出来た。そのゲヘノムヴァの装置のデータじゃ。持って行くがいい」
ティリオが厳しい顔で
「このデータから、アナタの元へ…危害が」
バルタザールが笑み
「ゲヘノムヴァの連中の一人が言っておったわい。ワシがどう、データを取っても…自分達の元へ辿り着ける者はいない…と笑っていたわ」
ティリオが懐から連絡のデータプレートを取り出してバルタザールに渡して
「何かあったら…連絡を」
バルタザールが
「気にするな、若い宇宙王よ。ワシ等はワシ等で身を守る力を持っておる」
ティリオが「それでも」とバルタザールに連絡のデータプレートを渡した。
バルタザールが
「全く…なら、ここでお主達の場所で勉強したい…という者が出てきた時に、その紹介先と持っておっても構わんか?」
ティリオが微笑み
「ええ…」
こうして、新たな手がかりを得たティリオ達。
その帰りの宇宙戦艦で、ティリオはバルタザールから受け取ったデータを解析していた。
ティリオ達が使う宇宙戦艦は特別で、アースガイヤの技術が使われた時空魔導戦艦でもある。
そのデータを魔導エネルギーのエネルギー体として取り出し組み合わせていくティリオ。
そして…分かった事は
「なるほど、やはり…この結晶が…」
あの装置に収められた結晶が重要であると…
「やっぱり、ヘオスポロスから少量でもいいから、サンプルが欲しかったなぁ…」
でも、見えない何かより、見える何かになったのは、大きかった。
ティリオ達はシュルメルム宇宙工学学園へ帰還して、この事を早速、ファクドとグランナ、レリス、ルビシャルに伝えると同時に、ヴィルガメス理事長や、父ディオス達にも伝えた。
そして…裏口であるレッドリCEOのホワイトから連絡が来て、早急に食事会という感じで得たデータの話をした。
ホワイトは、連絡から三日後に時間を空けて、ティリオ達へレリスを通じて自分達の時空へ招待する事になった。
◇◇◇◇◇
ゾロアスの王座、神座があるヴァラスアルヴァの時空。
ゾロアスは無表情だ。
時空の王座、神座の座に腰掛けるゾロアスの目の前に、一莵が来て
「ティリオ達が、手がかりを…」
ゾロアスが溜息を漏らして
「ああ…先程、ティリオの波動から知った」
ティリオにはゾロアスの加護がある。
多少なりとも、ゾロアスはティリオのプライバシーに配慮している。
なので、何かの重要情報を得た時のシグナルや、危機に瀕した時の信号だけは受け取るようにしている。
意外と受け身なのだ。
一莵が
「で、どうするの?」
ゾロアスが天を仰ぐ。そこには、ヴァラスアルヴァの時空の全域を投影した時空図がある。
「一莵、お前が…今、関わっている事にティリオが関わるかもしれん」
一莵が厳しい顔で
「そう…」
ゾロアスが
「そして、あの連中も…」
一莵が
「ティリオと協調する?」
ゾロアスが
「共同戦線を張る…という事だ。それをスラッシャーにも言って置け」
一莵が手を上げて
「分かったよ」
一莵が目的に為に出て行く姿をゾロアスが見つめて
「全く、世界とは神さえ思い通りにならん…という事だな」
ここまで読んで頂きありがとうございます。
続きを読みたい、面白いと思っていただけたなら
ブックマークと☆の評価をお願いします。
次話を出すがんばりになります。
次回、新章