星光 第66話 お祭りの準備
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こうして決着を付けたファクドは、自分の超越存在になる儀式を大規模な祭典とする事を提案して…
ファクドとグランナのデュエロタクトが終わって数日後。
「だから! なんでもかんでも呼ぶな!」
と、ファクドが叫んでいる。
「良いだろうが! 経費とか諸々は、持ってくれるんだろう!」
と、グランナが声を張る。
二人が言い合っているのは、デュエロタクトのラウンジだ。
言い合っている二人の間にティリオが入って
「はいはい、お互いに言い合ったなら、呼んでしまったモノは仕方ない。後で父さん達に報告してから、色々と対策を練ろう」
ファクドが
「この八方美人が!」
グランナが
「この偏屈言い訳が!」
仲良くグランナとファクドは、ケンカしていた。
あのデュエロタクトの後、ファクドは自分が超越存在になる儀式をティリオに頼むと同時に
「あのさぁ…自分の超越存在にする儀式をお祭りの一環にしたいんだけど…」
と、ファクドが。
ティリオが首を傾げて
「ああ…別に良いけど。経費とか準備とか、警護とか…どうするんだ?」
ファクドが微笑み
「大丈夫だよ。ウチの方で色々と出来るから」
ティリオが渋い顔で
「ええ…大丈夫なの?」
ファクドが
「大丈夫、大丈夫」
こうして、ファクドは父オシリスに自分が超越存在になる事を告げて、それをお祭りにしたいとも相談した。
その後、ティリオのホームに父ディオスが来て
「という事でアヌビスが、ファクドの超越存在の儀式をメインにして、祭典にしたいそうだ」
自分のホームのフロアで父ディオスを前にするティリオが
「いいの? そんな大きい事態にして」
ディオスが
「アヌビス以来の二人目のゴールドジェネシスの民の超越存在なんだ。お祭り騒ぎにしたい気分なんだろう。彼らも…」
ティリオが
「警備とかは?」
ディオスは
「ゴールドジェネシスの民とセイントセイバー達との合同で行う事に決まった」
ティリオが訝しい顔で
「本当に祝いたいだけなの?」
ディオスが肩をすくめて苦笑いして
「実の所…この祭典を利用して、色んな所の超越存在や宇宙王達も呼んで結束やら、諸々のアピールとかも…」
ティリオが、うわぁ…政治的な事…と嫌そうな顔をして
「そういう面倒な事が含まれているんだ。なるほど、ファクドなら考えそうな事だ」
ディオスが溜息交じりに
「そして、ティリオを合わせてグランナ君やファクド君の三人を合わせた次世代の超越存在のアピールと、色んな所の諸々のね…」
ティリオが溜息交じりで
「そう…分かったよ。父さん…まあ、とにかく、儀式の準備はチャンとするから、その他の事の手配を…」
ディオスが頷き
「ああ…やって置くから、ティリオは儀式に集中してくれ」
◇◇◇◇◇
ティリオは、翌日、儀式用の装置の仮組立をしていた。
父ディオスに頼んで、持って来て貰った装置の仮組立をする重機にはエアリナのマキナ・エンリルを使っている。
エアリナはエンリルを六機のマキナに分割して、軽々とマルチタスクでティリオの指示通りに装置を持ってくる。
「ああ…そこ」
と、ティリオは自分が小さい頃から使っている製造機、デウスメーカーという三メートルの多腕式製造機に乗って、エアリナのエンリル達が固定する装置達を繋げていく。
装置の形は独特で、円錐形の中空の建物と、その下部を支える円形の台座。
その姿は、円錐形の何かの式場に見えて、宗教的な雰囲気もあるが。
その装置の全体を走る電子回路のような模様は、明らかに機械的な事を示している。
独特の雰囲気を放つ儀式用の装置の仮組立をティリオとエアリナは終えて
「エアリナ、ありがとう。終わったよ」
と、ティリオが告げる。
エアリナはエンリル達の六機中、自分が乗るコア機のマキナから降りて
「ねぇ…これって、どんな装置なの?」
ティリオは儀式用の装置の傍にあるパネル台座に触れて操作しながら
「まあ、あっち側とこっちの次元を繋げる簡易的な装置なのさ。基本、ジェネレーターとしては優秀な装置だよ」
「ふ…ん」とエアリナは仮組立した儀式用の装置を見上げる。
そこへ
「やあ、どんな感じだい?」
と、ファクドとグランナが来る。
グランナが
「儀式用のヤツがどんなのか、見に来たが…」
ファクドとグランナが仮組立した儀式用の装置を見上げて
「これが…例の儀式用の…」
とファクドが外部に触れる。
グランナが腕を組み
「独特な装置なんだなぁ…」
ティリオは、パネル台座でチェックをしながら
「本来は、こんな姿じゃあなくて、儀式用に改造してあるからね…」
グランナがティリオの所へ来て
「本来は、どんな姿だ?」
ティリオが腰にある小型端末を手にして、本来ある姿を立体映像で浮かべる。
「これが本来の姿さ」
ティリオが投影した立体映像には、円柱型で円の面の中央には水晶がハマったモノと、円錐を二つ組み合わせているモノ、その二つがあった。
ティリオが説明する。
「本来は、超越存在の源にある超高次元と接続してエネルギーを取り出す装置なんだよ。だから、動力を取り出すに適した形にしてある」
グランナが
「じゃあ、これがあれば…オレ達のような超越存在は、必要ないんじゃないのか?」
ティリオがフッと笑み
「あくまで、超高次元と接続でエネルギーを取り出すだけであって、それが使えるエネルギーなのか? そうでないのか? は分けられない。あらゆる世界のあらゆる法則のエネルギーが流れ込む。だから、使えるエネルギーを抽出する装置が必要なんだけど。それが巨大になってね」
グランナが
「じゃあ、オレとティリオのように、任意に好きなだけ超高次元から欲しいエネルギーを取り出せる超越存在は…」
ティリオが頷き
「その時空や宇宙に必要なエネルギーだけを無限に取り出せる超越存在ってのは、それくらい便利だって事さ」
ファクドが装置の中に入り
「へぇ…中はこうなっているんだ…」
と、天井を見上げた。
円錐の中のような天井、その天井の一部が黄金色に染まり
「んん? なんだ? 装置が動いて」
ティリオが突然、飛び出してファクドを抱えて瞬時に外へ出した。
そして、轟音と共にファクドが入った円錐天井の場が黄金に包まれた。
ファクドが「えええ…」と困惑する。
ファクドを抱えて外に出したティリオが
「ファクド…不用意に中に入らないでくれ」
ファクドが
「すまない。まさか…動いているなんて、思わなくて…」
ティリオがファクドを離して
「いや、動いていなかった。ファクドが入った瞬間、勝手に起動したんだよ」
ファクドが
「ええ…なんで?」
ティリオが頭を掻きながら
「この装置は、一時的に超越存在の超高次元と近い状態が保存されている。ファクドは、もう向こう側から来るように急かされているんだから、近い状態の場所に行けば、強制的に超越存在になっちゃうんだよ」
ファクドが驚きで
「マジで、それじゃあ、お祭りのメインイベントがここで…」
ティリオが呆れ気味に
「先に終わらして、メインイベントをやった風にしたいなら構わないけど」
ファクドが微妙な顔で
「それは困る」
ティリオが
「なら、装置には近づかないでね」
ファクドが装置を指さして
「でも…動いているけど…」
と、装置の開いている部分を包む黄金の光を示す。
ティリオがグランナを見て
「グランナ、いい?」
グランナが
「任せろ」
と、黄金の光に包まれている場所に近づき、その黄金の光の中へ手を入れた瞬間、黄金の光が消えて装置が停止した。
「えええ…」とファクドが驚きと困惑を見せる。
装置を止めたグランナが
「オレとティリオは、ハイパーグレートだ。そっちとこっちを繋げるのを止めたり、出したりなんて自在だ」
ティリオが
「ファクドもそうなるから」
ファクドは「ああ…うん」としか言えなかった。
これが、超越存在とは何なのか?を改めて知った。
そして、順調にファクドの超越存在にする学園のお祭りの準備が進んでいた。
その最中、ティリオはレリスに…
「レリスにお願いがあるんだ」
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次回、レリスへの頼み