星光 第63話 ファクドの事
次話を読んでいただきありがとうございます。
アリアナ銀河については、一応の一区切りがついた。
そして、日常が戻り、その中でファクドの…
ティリオは一人、高台の公園でシュルメルム学園の全体を見つめて考えていた。
あのスカイギアで遭遇したゾディファル教団のオメガデウスにサタンヴァルデットを取り込む技術を与えたのは、サタンヴァルデットの上位種サタンヴァルデウスが集まるシンイラではなかった。
父ディオスが作成した、公表された資料にそれが記されている。
その衝撃は、どれ程の波紋を宇宙王達に波及させるのだろうか…。
つまり、サタンヴァルデットが何処かで出現した際、その技術を使ってサタンヴァルデットを捕縛して…そして、それを兵器として運用可能という。
審判の大虐殺兵器の誕生を意味していた。
かつて、制御不能の破壊をもたらす天災のような、超常の災害、エヴォリューション・インパクトは、その制御と活用が不可能が故に、誰も手を付けようとはしなかった。
それが…誰にでも手を付けられる技術となった衝撃は、絶大である。
この二十一世紀の現代風に言えば、絶対に不可能であろうとする、都市伝説レベルの叶わない兵器、気象兵器が誕生したレベルなのだ。
無論、ティリオがいる世界では、その程度の兵器は当たり前に存在し、時空規模の世界になったので、気象兵器は、だたの手榴弾程度の感覚である。
時空級文明にとって一個の時空を破壊する天災が…兵器になった事実は、他の宇宙王や超越存在を持たない時空、宇宙達に…
ティリオは頭を掻いて苛立ちを顕わにする。
これ以上、考えても意味は無い。
「はぁ…」とティリオは溜息を漏らして、公園を後にする。
最悪が起こった時は、その時でしかない。
解決できない問題がある。
それは、ティリオ達のような時空文明の世界でも同じだ。
ティリオは、ミニバイクに乗って帰る最中、ファクドがいるのが見えた。
「おーーい」
と、歩いているファクドに近づく。
ファクドが反応して
「やあ…ティリオ」
ティリオがファクドの隣に止まって
「帰りか?」
ファクドが肩をすくめて
「資料を届ける途中さ」
と、片手にあるデータ端末を見せる。
ティリオが
「手伝おうか? 後ろに乗れよ」
ファクドが
「悪いね」
と、ティリオの後ろに乗る。
ティリオは、ファクドを連れてミニバイクを運転する。
「学園の事務所か?」
ファクドが頷き
「ああ…そうさ」
ティリオが
「デュエロタクト関係?」
ファクドが
「それもあるし、例の長期航行訓練のヤツも」
ティリオは微笑み
「色々と訓練の時は大変だったからなぁ…」
ファクドも頷き
「これを届ければ、最後の長期航行訓練の資料の提出になる。色々とあったから、報告書も分厚いさね」
ティリオが
「じゃあ、一区切りが付くんだな」
ファクドが頷き
「ああ…そうだよ」
ティリオが
「いつ、やるんだ?」
「え?」とファクドが疑問の顔になる。
ティリオが当然の如く
「向こうも、早くしろって、催促しているんだよ」
ファクドが「ああ…うん、その」と濁した。
◇◇◇◇◇
ファクドがティリオと遭遇する前、ファクドのホームでグランナとレリス、ルビシャルと共に長期航行訓練の最後の資料を纏めていると…
「ファクド、何時にするんだ?」
と、グランナが尋ねる。
ファクドが
「え? 何を…」
グランナが、こいつ…何言っているんだ?という顔で
「いや、お前の…ハイパーグレートの儀式」
ファクドは固まる。
その後ろにいるファクドの傍人の彼女達の視線がファクドの背中に集中する。
ファクドは、サルヴァード・フォーミュラリオンの時に、次元上昇する際の遙か上の極天の一つ、ファクドのゴールドジェネシスの総代アヌビスと繋がる極天がファクドを見て微笑んだのをファクドは見てしまった。
そう、ファクドは超越存在へ成れる切符を手にした。
そして、ティリオの超越存在の儀式を通じて新たなハイパーグレートに…。
ファクドは、グランナの問いかけに
「ちょっと、ティリオの方を聞いてから…」
グランナが腕組みして
「まあ、確かに…儀式をやるにはティリオの力が必要だからな。早めに言って置けよ」
ファクドは「う、うん…」と濁した。
◇◇◇◇◇
ファクドが最後の資料を纏める今日の朝、通信で父親のオシリスと会話していた。
父オシリスが
「本当に大変だったな。色々と…」
ファクドが
「仕方ないさ。それが聖帝の息子と絡むって事なんだよ。父さん」
父オシリスが
「無茶はするな…。あと、それと…アヌビス様からなんだが…」
ファクドが真剣な顔で
「アヌビス様から…」
父オシリスが不思議そうな顔で
「アヌビス様がこう言えば分かる…として、そのまま伝えるが…彼の方から、はよ来い…と」
ファクドが少し青ざめ
「ああ…う、うん。なるほど…」
父オシリスは首を傾げて
「どういう意味なんだ?」
ファクドは引きつり笑みで
「ああ…何となく分かったから…大丈夫だよ。父さん…」
◇◇◇◇◇
ティリオに乗せて貰った帰り、ファクドは自分のホームにある大きなテーブルソファー席で項垂れて座っている。
その前のテーブルには、紅茶が置かれて、その液面をファクドは見つめている。
その顔は、落ち込んでいるような感じだ。
そこへファクドの傍人達の一人アルドが来て
「ファクド…その…話なんだが」
ファクドが頭を抱えて
「なんで、色々と巡らせたのに、こうも簡単に成れちゃうんだろなぁ! あああああ!」
アルドは項垂れる、ファクドの悪い部分が出た。
ファクドは昔から色んな策略を練ったり実行したりするのが好きだ。
しかしだ、それによって目的を達成する時になると、何時もこうなる。
策略をする事が楽しくて、達成しようとするなら、冷める。
アルドは「はぁ…」と、またか…と呆れた溜息を漏らす。
ファクド、念願の超越存在に成れそうなのに…悩んでしまう。
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次回、面倒くさいヤツ