星光 第50話 テスタメント
次話を読んでいただきありがとうございます。
次々と空間転移して出現する艦隊達、それにティリオ達は、そして…迫り来る追っ手が!
ティリオ達は、必死に転移し続ける膨大な数の艦隊の合間を縫って疾走していた。
マキナを運搬する四つの戦闘宇宙艦が、空間転移で現れ続ける宇宙戦艦や時空戦艦を避けて、目的の惑星アリアドネへ向かう。
だが…
ファクドが
「ティリオ! オレ達の後方から迫る三つがある!」
ティリオが急いで解析して
「なんだコイツ?」
亜光速に近い速度でティリオ達は移動しているのに、それに余裕で追いつく三つの何か。
グランナが
「この空間転移の最中で超光速で移動する物体なんて…不可能だ!」
ティリオ達が持っている移動手段は三つ
空間を飛び越える空間転移、それは時空間移動も同じだ。
もう一つが、空間のエネルギー密度を変えて進む超光速航行。
そして、基本的な光速不変の法則による亜光速航行。
空間転移と超光速航行は、現在の大規模な空間転移の影響を受けて使えない。
使ったとして、大規模な空間転移の影響でとんでもない場所に出てしまう。
だから、基本である光速不変の亜光速航行でしか移動できない。
ティリオ達が亜光速で移動している。
光速不変の基本航行は、光速に近づけばちかづくほど、光速から飛び越える事は出来ない。同じ光速同士で移動した場合、その差は埋まらない。
なのに、追跡する相手は、光速を超えてティリオ達に迫る。
ティリオは、後方から迫る三つをロックして
「来るぞ!」
ティリオ達の前に追いついた三つが現れる。
中心部に甲冑型のマキナを持つ巨大なクラゲのような機体、赤、黒、白の三つの不明機。
その不明機達から、光線が放たれる。
「クソ!」とグランナは叫び回避、ティリオ、ファクド、レリス、ルビシャルも回避行動をする。
三つの不明機は、超光速航法も使わずに超光速で移動する。
ティリオが「な、バカな!」と驚愕する。
短距離を超光速で移動する不明機に困惑する。
有り得ない現象だ。
超光速で移動した場合、その減速も含めて光年単位の移動が原則だ。
それを短距離で繰り返している。
有り得ない現象で移動する不明機に、ファクドが攻撃する。
ファクドの戦闘宇宙艦は、ゴールドジェネシスの技術が使われている。
空間を操作するゴールドジェネシスで、無限方向からの光線が三つの不明機に迫る。
だが、その全てを不明機達は回避する。
まるで、その攻撃の全てが、どのように来るのかを知っていたかのように。
ファクドが鋭い顔で
「まさか、未来予知能力?」
三つの不明機は、ティリオの戦闘宇宙艦達の前に位置し進路を塞ぐと、ティリオの戦闘宇宙艦達が何かの力に掴まれて捕縛される。
エアリナが
「どうしたの?」
ティリオが渋い顔で
「何かの力で…捕縛された。有り得ない」
亜光速で移動していた艦が、慣性の反作用もなしに止められたのだ。
ティリオは、その理由を考える。
答えが出なければ…この不明機達には勝てない。
ティリオの戦闘宇宙艦へ通信が入る。
それは三機の不明機の一つ、白い方だ。
「エアリナお嬢様、お久しぶりでございます」
テスタメントのホロイエルだ。
ホロイエルが仮面を外して、微笑む顔は、どことなく優しい白髪の女性だ。
この不明機の三つは、テスタメントの機体だった。
エアリナが難しい顔で
「久しぶりですね。ホー姉さん」
ホロイエルは嬉しげに
「そう、呼んでいただけるのですね。嬉しいです。素晴らしいご学友をお持ちですね。我々の攻撃をこうも避けられる。どうでしょう…教皇様が、エアリナお嬢様と会いたいと…」
エアリナは黙ってしまう。
そこへ、ジュリアとナリルとアリルが来て
「ティリオ、何が?」とジュリアが
ティリオがシーと静かにと指を立てる。
エアリナが
「ごめん、ホー姉さん。マリアンナおばさまには、こう…伝えて、私は母さんを取り戻したいだけなの。だから…」
ホロイエルが頷き
「そうですか。ですが、一時的に身柄の方は拘束させて貰います。我々の計画の妨げに」
と、続きを言う前に、別の空間転移から出現した戦闘機のような機体がホロイエルの機体にミサイルを発射する。
それをホロイエルは防護する。
ミサイルは見えない何かのシールドに当たって、それを顕わにする。
ミサイルを発射した新たな機体
「やっほーい、お助けに来たよーーー」
千華の声と共に戦闘機宇宙艦、バトロイドには千華と紫苑が乗っていた。
空間を震わせるようなシールドにティリオが
「ああ…そういう事か…」
と、ティリオは理解した。なぜ、テスタメントの機体達が超光速で動けたのか…を
ティリオは、急いで装備しているダブルDSを発動させる。
ディスガードやディオートンを固着化させるエネルギー波動が広がると同時に、捕縛していた力も消えた。
解放されたティリオ達の戦闘宇宙艦は、再び走り出して、それに紫苑と千華のバトロイドも続く。
ティリオの戦闘宇宙艦にグランナの戦闘宇宙艦が併走して、グランナがティリオに
「ティリオ、マジか…アイツらの力って、オレ達が作ったダブルDSと」
ティリオが頷き
「ああ…そうだ。それの応用だろう。空間を特定の波動で操作する」
グランナが
「似たような事をゾディファル教団も…」
エアリナが
「同じような事をしていても不思議じゃあないわ。だって…ゾロアスの再創成をしようとしていたから…」
テスタメント達、クワイエルトが
「ほう…なかなか、賢い」
アクレイトが
「流石、聖帝のご子息でヴァナルガンドの英雄だ」
ホロイエルが
「感心してないで追うわよ。あの扉は…エアリナお嬢様でしか開けられないの」
テスタメント達が再び追跡を開始する。
ティリオ達の戦闘宇宙艦の一団は、早く…この空間転移している艦隊の現場を抜けようと急ぐ。
この空間転移の場を抜ければ…超光速航行で惑星アリアドネへ。
だが、その前にテスタメント達が超光速を短距離で使える理由、そして、未来予知能力のような力を見せた理由それは…
ルビシャルが
「ねぇ、どうして、ダブルDSで捕縛から逃れられたの?」
その答えにティリオが
「あの三つの機体は、特定の広範囲の空間のエネルギー密度を自在に変えられるんだよ」
ファクドが
「なるほど、こっちの攻撃が未来予知能力みたいな感じで避けられたのは、空間のエネルギー密度を変えて時間の早さを遅くしている。相手が早いんじゃなくて」
グランナが
「オレ達の周囲の広範囲の空間のエネルギー密度を変えて、オレ達が遅くなっていた。そういう事だ。だから、ダブルDSが有効だった。ダブルDSは空間のエネルギー状態を固定化させる作用もあるからな」
レリスが
「なるほど、ディスガードやディオートンと似ているって事か。そして、コレがダブルDSの有効性を証明したのか…」
ルビシャルが「なるほど!」と声を上げた。
その頃には、やっと空間転移してくる艦隊から脱出できそうになった寸前に、再びテスタメントの機体が
「邪魔!」と千華がバトロイドのミサイルを放つ。
ミサイルがテスタメントへ向かうも、テスタメントの目の前で消えて、消えたミサイルがティリオ達の後方に空間転移した。
テスタメントのホロイエルが
「こういう事もできるのですよ」
「ウソだろう!」とグランナが叫んだ頃に、ミサイルがティリオ達の戦闘宇宙艦の後部に被弾して、航行不能になった。
「え? マジ」と千華が焦り、千華の前の席にいる紫苑が「全く…」と額を抱えた。
ティリオは急いで損傷状態を確認して
「まだ、いけ」
ガクンと何かに捕まった。
テスタメント達の力に再び捕縛され、テスタメントのアクレイトが
「今度は、先程のようには…行きませんぞ」
万事休すのティリオ達。
だが、別の空間転移から青い人型の機体が飛び出し、その人型の両手にあるガトリングがテスタメント達を攻撃する。
クワイエルトが
「無駄な事を…」
そのガトリング弾が届く前に、青い人型機体から波動が放たれて、テスタメント達の力が相殺されて、ガトリング弾に被弾する。
ダメージを受けるテスタメント達。
それにホロイエルが
「ああ…裏切り者がぁぁぁぁぁ!」
青い人型機体は、ティリオ達の戦闘宇宙艦の四つと紫苑と千華のバトロイドに接続ケーブルを伸ばして引っ張って牽引して、艦隊から抜け出ると、超光速航行を発動。
超光速航行のシールドを大きく張って、ティリオ達五つの艦を包み込み、超光速航行で惑星アリアドネへ向かった。
ホロイエルが軋むテスタメントの機体を引きずり
「今更、キサマが…来たとて…」
◇◇◇◇◇
超光速でティリオの戦闘宇宙艦達を牽引した青い人型機体は、そのシールドを維持して惑星アリアドネへ突入、大気圏を抜けて、シールドを減速の力に変えて、ティリオの戦闘宇宙艦達を惑星の宇宙港に軟着陸させた。
無事に着陸したティリオ達、ティリオが通信画面を開き
「助かりました」
と、通信画面にいるヘルメットを被った人物に呼びかける。
青い人型機体に乗る人物はヘルメットを外して
「そうか…」
と、顔を見せた瞬間
「はああああああ!」
ティリオ達は驚きを放つ。
青い人型機体を操縦していたのは、スラッシャーだった。
スラッシャーが
「ティリオ・グレンテル。取引だ!」
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次回より、新章が始まります。