星光 第48話 ゾディファル教団
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アリアナ銀河が発見されて動き出す者達、その者達の思惑は…
スラッシャーが早足で白銀に輝く廊下を進んでいた。
その形相は、鋭く…明らかに苛立っていた。
スラッシャーが目的の人物の前に来て
「おい! アルファティヴァ!」
アルファティヴァがスラッシャーの荒れように呆れつつ
「なんだね…いきなり怒鳴りつけるなんて」
スラッシャーがアルファティヴァの全身ローブの襟首を掴み
「どういうつもりだ? なんで…ティリオ・グレンテルが! アリアナ銀河にいる!」
アルファティヴァがスラッシャーの手をほどき
「それは初耳だ。どうやって見つけたんだ? 聖帝のご子息は…」
スラッシャーとアルファティヴァが話している現場は、別時空ヴァラスアルヴァだ。
スラッシャーが苛立ち気味に
「お前の差し金か? シュルメルム時空の事は、オレが担当している。それを…」
アルファティヴァがデウスマギウスの手を前に向けて
「落ち着け、私は何もやっていない。ゾロアスに誓ってもいい」
スラッシャーが苛立ちで組んだ腕の指先を動かして
「事故だって言うのか?」
アルファティヴァが考えつつ
「もしくは、我々以外の思惑か…」
スラッシャーは
「アリアナ銀河は、お前が昔、実験に使った場所だろう」
アルファティヴァが
「ああ…ちょっと待て、思い出す。長生きしていると忘れる事も多いからな」
と、アルファティヴァは自分の長大な記憶を検索して
「あああ…そうだった。そうそう」
スラッシャーが
「何の実験をしていた?」
アルファティヴァが
「聖ゾロアスの覚醒の為に必要な七つの黄金叡智書の実験をしていた。そして、とある実験の失敗を証明する為にもね」
スラッシャーが
「なんの失敗の証明だ?」
アルファティヴァは肩をくすめて
「簡単な事だ。二兎を追う者は一兎をも得ず。アヌンナキ・ホモデウスとハイパーグレートの合いの子なぞ、作れない。失敗するというね」
スラッシャーが眉間を寄せて
「だがよ。アリアナ銀河が見つかった事で…ゾディファル教団が動き出した」
アルファティヴァが鼻で笑い
「ああ…まだいたのか…あの時代遅れのゴミが…」
スラッシャーが
「ゾディファル教団が動き出した。オレはそれに手を入れていないから、操作ができねぇ」
アルファティヴァが
「じゃあ、今回ばかりは協力すれば、いいじゃないか。聖帝のご子息に」
スラッシャーが黙る。
アルファティヴァが
「じゃあ、ゾディファル教団を殲滅するかね? ディストショナーさん」
スラッシャーが黙ったままだ。
アルファティヴァが
「まあ、ともかくだ。アリアナ銀河には、とある爆弾が仕掛けてあるから…問題ない。それが発動して…綺麗に消してくれる」
スラッシャーが
「自爆装置付きとは、恐れ入ったよ」
アルファティヴァが薄ら笑みで
「その爆弾はね…〇〇〇〇〇〇」
スラッシャーが青ざめて
「お前ぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
アルファティヴァが嘲笑しながら
「その巨大な花火を見るのも悪くないさ」
◇◇◇◇◇
ゾディファル教団本拠地、移動する三千キロ級の宇宙戦艦で一人の女性が純白の修道士の様相で祈りを捧げていた。
彼女の名は、マリアンナ
このゾディファル教団の法王である。
マリアンナ教皇は、静かに祈りを捧げているのは、光のオブジェだ。
円形と十字が重なった神秘的な光の象徴に祈り続けていると、その後ろに人影が近づく。
人影は三つ、頭から全身を一色の外套で身を包む。
一人は女性、二人は男性、その三人は仮面を被り眼光が鋭い。
マリアンナ教皇は、祈りから帰ってきて
「報告は聞いています。テスタメントよ」
白い外套の女性テスタメントは跪き
「アリアナ銀河が…」
黒い外套の男性テスタメントは跪き
「そこに…エアリナお嬢様も…」
赤き外套の男性テスタメントは跪き
「我らも向かうべきか…と」
マリアンナ教皇は穏やかな笑みで
「各地区へ散らばった教徒達は?」
黒き外套の男性テスタメントが
「連絡がついております。後は…我らの、マリアンナ様の号令で…」
マリアンナは天井を見上げ
「八年前…我々は、新たな神を手に入れる寸前に失いました。ですが、その命運…尽きてはいなかったようです。ゾロアスに…感謝しなければ…」
と、告げた後
「アクレイト、クワイエルト、ホロイエル」
赤き外套の男性テスタメント、アクレイトが
黒き外套の男性テスタメント、クワイエルトが
白い外套の女性テスタメント、ホロイエルが
「は!」
と、三人が同時にかけ声を放ち。
マリアンナが
「参りましょう。我らが…主のお迎えに…」
◇◇◇◇◇
シュルメルム宇宙工業学園の理事長室でヴィルガメスは、エアリナから連絡を受けていた。
「そうか…対処をしてくれるのか…」
と、ヴィルガメスは娘エアリナの報告に頷いていた。
通信の立体映像の向こうにいるエアリナが
「うん。聖帝ディオスの部隊が明日には来るから、その後…宇宙戦艦デュランダルは、戻されて…私とティリオ達が母さんのいる惑星アリアドネの中枢へ向かうわ」
ヴィルガメスが
「すまんな。本当は、私がやらなければいけない事なのに…」
エアリナが
「いいわよ。父さんは、私と母さんが帰ってきた時の出迎えを用意して置いてね」
ヴィルガメスは微笑み
「ああ…待っている」
エアリナが
「もう、そろそろ、通信不能になるから…じゃあ、また」
「ああ…」とヴィルガメスが微笑みで答えて通信が終わった。
アリアナ銀河の信号は、ある程度の時空達の範囲内をランダムに移動しているので、そのランダム範囲の所に探査システムを簡易的に設置し始めている。
明日には、全てのランダム範囲内をカバーできるだろう。
そうなれば、安定した通信が可能になり、消失したアリアナ銀河への時空移動が可能になる。
ヴィルガメスは、凄く待ち遠しい。
一日なのに、これほど長く感じるのは久しぶりだ。
だが、不安はない。聖帝ディオスと、その息子にしてヴァナルガンドの英雄であるティリオの二人がいる。不安要素など皆無だ。
確実な吉報を待てばいい。妻エリドナが帰ってくるという吉報を。
ヴィルガメスは、娘エアリナと帰ってくる妻エリドナのお帰りをどう、迎えれば良いか、楽しい準備を考えていると、理事長室に急ぎで入る者がいた。
「理事長! 大変な事に!」
と、入ってきたのはシュルメルム宇宙工業学園の警備隊の者だ。
ヴィルガメスが警備隊の者の焦る顔に
「どうしたんだ?」
警備隊の者がヴィルガメスの傍に来て
「ゾディファル教団が大規模な活動を開始しました」
ヴィルガメスが驚き
「な、まさか…アリアナ銀河の事を嗅ぎつけたのか! だが…」
アリアナ銀河との時空転移は不可能だ。その航路データは聖帝ディオスの者達が管理している。
警備隊の者が
「我々の時空の評議会に…信徒が紛れ込んでいたらしく、そのデータを流出させたようです」
ヴィルガメスが驚きで立ち上がり
「まさか、ランダム移動の範囲や…その信号受信の方法も!」
警備隊の者が青ざめた顔で
「全て…です。ランダム移動の確率計算は、非常に簡単ですから。おそらく、数時間後以内には、ゾディファル教団の軍勢がアリアナ銀河へ時空転移してしまいます」
ヴィルガメスが
「なんという事態だ! 止めなければ…評議会は!」
警備隊の者が
「造反者がいた事で、大混乱におちいり…まともに…」
ヴィルガメスが
「ならば、今から向かう聖帝の部隊に、この事を!」
ガクンと震動がシュルメルム宇宙工業学園を包む。
シュルメルム宇宙工業学園内の動力が停止した。
ヴィルガメスが非常通信を開き
「何が起こった! メインルーム!」
メインルームの通信画面で
「何者かが! 当学園の動力システムを停止したようで、復旧に時間が!」
ヴィルガメスが机を叩き
「ここにも…信徒が…いたのか…」
これで、聖帝ディオスのセイントセイバー部隊への連絡が遅れる事になった。
そして…セイントセイバー部隊の宇宙国家戦艦セイントセイバーがアリアナ銀河へ転移するのに合わせてゾディファル教団が…。
同時にとある者も、アリアナ銀河へ向かった。
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次回、故郷へ帰る娘