星光 第44話 ゾロアス・エミュレーター
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突如、現れた最悪な存在、そこから逃れようとするが…
「ゾロアス・エミュレーターよ! これ!」
と、エアリナが叫ぶように声を張った。
それを聞いて、その場にいた全員が青ざめた。
エアリナの大声にティリオが来て
「どうしたんだ?」
ファクドが急いで
「艦内全域に通達、本艦は、緊急回避行動に入る! 全速力で逃げるから! とにかく、何かのモノに掴まれ!」
アルドが
「操舵手! 百八十度反転して、エネルギーフル出力で、ここから離脱!」
ファクドがティリオに
「ティリオ! デュランダルのエネルギーの内、必要最小限以外は供給を確保して、他は推力へ回してくれ!」
ティリオが困惑気味に
「ええ…何が起こった?」
ファクドが
「最悪だ。こんな事…ゾロアス・エミュレーターに遭遇するなんて…」
ティリオが微妙な顔で
「ゾロアス・エミュレーターって、何か嫌な響きだけど」
エアリナがティリオを引いて
「ゾロアス・エミュレーター! ディオートンを召喚して放出する装置よ!」
それを聞いて、ティリオは急いでオペレータ席に戻り、艦内維持に必要なエネルギー分布は残して、残りを全推力へ回した。
◇◇◇◇◇
宇宙戦艦デュランダルは急速回転して、その慣性で艦内が荒れる。
「なんだ?」とグランナは困惑して急いで艦橋へ向かう。
そこには…
「早く! この宙域から退避しろ!」
と、声を張るファクド。
操舵手が急いで舵を切り、全長四千メートルのデュランダルが凄まじい速度で反転する。
ティリオは急いで、必要最小限以外のエネルギーを除いた全てのエネルギーを推力に回す。
「でぇぇぇぇ!」
と、ティリオはオーバードライブのスイッチを強制発動させる。
グランナは体が浮き上がり背中を押される感覚を感じる。
デュランダル艦内の重力操作が切られて、代わりに前方から来る慣性負荷を消す力が加わる。
宇宙戦艦デュランダルは、前方の空間を湾曲させて推力を最大化して、数秒後程度で光速を超えた速度へ…
ガクンとデュランダル全体が何かに掴まれたように止まった。
ティリオの元へファクドが来て
「ティリオ、推力を!」
ティリオが青ざめて
「マズい、こっちの推力以上の引力が後方に働いていて…」
レーダー担当が
「ゾロアス・エミュレーター 本艦の後方より迫っています」
そこへエアリナとグランナも来て、エアリナが
「空間転移とか、出来ない?」
ティリオが
「ムリだ! そんな直ぐには出来ない! この艦には、それ程の空間転移エネルギーを発生させる力は無い!」
グランナが
「おい、何が起こったんだ?」
ファクドが
「ゾロアス・エミュレーターが現れた」
グランナが驚きの顔で
「はぁ? なんでそんな物騒なモンと遭遇しているんだよ!」
ティリオが
「グランナ、最悪…あの…装備をダブルDSを…」
グランナが顔をしかめて
「マジかよ。分かった」
と、グランナは無重力を蹴って、艦橋から去って行く。
ファクドが
「とにかく、急いでここから逃げる算段を」
レーダー担当が
「ゾロアス・エミュレーターが消えました。あ、いえ……」
レーダー担当が青ざめて
「本艦の正面に…」
全員が正面を向くと、空間転移の跡と黄金に輝く十メートルの石版がデュランダルの正面にあった。
宇宙戦艦デュランダルの正面に出現したゾロアス・エミュレーターは、七色の光を放って宇宙戦艦デュランダルを包み込む。
何かのエネルギーに包まれる宇宙戦艦デュランダルだが、ティリオは推力を強力なバリアに変換して、強大な防壁エネルギーで宇宙戦艦デュランダルを包む。
宇宙戦艦デュランダルがゾロアス・エミュレーターからのエネルギーに包まれた。
ティリオは急いで、そのエネルギーの正体を検索して、ファクドがソレを知って
「何をやろうとしているか、分かるか?」
ティリオが解析を続けて
「これは…マイナス? ええ…空間転移エネルギーと似ている」
と、言った次の瞬間、宇宙戦艦デュランダルの周囲を覆うエネルギーが消えて、デュランダルが重力に包まれる。
そして、下向きの重力を感じた後に、宇宙戦艦デュランダルが海にダイブした。
宇宙戦艦デュランダルは何処かの惑星に着水していた。
レーダー担当が
「海です。多分、どこかの…惑星だと…」
ゾロアス・エミュレーターの姿は無く、宇宙戦艦デュランダルが海に浮かんでいた。
ファクドが
「一体、何が…」
エアリナもティリオを掴んで困惑していると、耳元で
”エアリナ…お願い…”
と、声が聞こえて周囲を見回す。
「今の声…」
ティリオは、デュランダルの状態をチェックして
「艦内もデュランダルも問題ない。でも…ここは?」
艦橋の星図担当が
「ええ…そんな、ここは…」
ファクドが
「ここが、どこだか判明したのか?」
星図担当が驚きの顔で
「ここは…アリアナ銀河です」
エアリナがそれを聞いて
「ここは…母さんの…」
ティリオ達は、エアリナが母を失った事件の場となり、シュルメルム時空から消失した銀河に来ていた。
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次回、母の星