星光 第43話 黄金棺
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予定通りの長期航行訓練をするティリオ達だが…
長期航行訓練の航海は順調だった。
宇宙戦艦デュランダルは予定通りの航路を進み、艦内も…
「ちょっと、アンタ達、もう少し…会話をしなさいよ」
と、シュルメルム宇宙工業学園の生徒と、千華達カレイドの生徒の少しだけの衝突はあるが…。
カレイドの生徒達とシュルメルム宇宙工業学園の生徒達との距離を、シュルメルム宇宙工業学園の生徒が話し掛ける事で埋めようとしている。
カレイドの生徒達は必要最小限にしているが、千華は
「やっほおおおお!」
と、ノリ良くシュルメルム宇宙工業学園の生徒の中へ飛び込み、それに紫苑が
「千華! 止めてください!」
と、巻き込まれて、それに他のカレイドの生徒達も加わり、少しづつだが…関係が近づいている。
ファクドやルビシャルにレリスは、カレイドの生徒達の正体を知っているので、距離はあるのは当然だったが。
千華の引っかき回しに、秘匿機関なのに大胆不敵すぎて、笑うしかない。
ティリオは、なるようにしかならない…という感じだ。
◇◇◇◇◇
ティリオは、何時も…長期航行訓練中だが、宇宙戦艦デュランダルのエネルギーの状態を見ていた。
宇宙戦艦デュランダルは、停泊した惑星から別の星系へ向かっている途中の通常航行中だった。
ティリオは艦橋の右側にあるオペレータ席で、宇宙戦艦デュランダルのエネルギー分布を見ていると、そこへエアリナが来て
「デュランダルの調子はどう?」
と、ティリオの席の隣に空いている席に座る。
ティリオは淡々とオペレータ席のキーボードを操作しながら
「問題ない。エネルギーの余裕も十分だ」
エアリナが
「アンタ…とんでもない宇宙戦艦を作ったわね…」
ティリオが「どこか?」と訝しい顔をエアリナに向ける。
エアリナが呆れ笑みで
「だって、このデュランダルの出力…私達の学園、シュルメルム宇宙工業学園と同レベルなんでしょう」
ティリオが首を傾げて
「この位…少ない方だが…」
エアリナが
「じゃあ、ティリオにとって、どのくらいが普通なの?」
ティリオが思い出しながら
「父さんが持っている機神型要塞時空戦艦エルディオンが基準だから、それと比べたら…遙かに低い」
エアリナが困惑気味に
「いやいや、聖帝の旗艦が基準って、どんだけ超過剰スペックなのよ…銀河規模の軍団と戦争でもするつもり?」
ティリオが困り気味に
「そうなのか? だいたい、そのくらいの戦艦が身近にあって、まあ、要求に応じて作ったりする以外の自分アレンジなら…その程度が…」
エアリナがティリオに近づき
「ちょっと待って。じゃあ、アンタ達が乗ってきた時空戦艦って…それぐらいの力があるって事?」
ティリオが考え気味に
「まあ、エルディオンより小ぶりの二百メートルだから、四分の一くらいだけど」
エアリナが後頭部を掻く。
ティリオが持っている技術レベルの高さに驚きつつ、呆れ気味に
「いい、それってもの凄い力があるって事よ。変な気を起こして学園を破壊しないでね」
ティリオが首を傾げつつ
「そうか…まあ、分かったよ」
この時空と、自分の時空とでは技術差がある…だから宇宙戦艦の出力差もあるのだろう…と
エアリナがティリオを見つめる。
ティリオは、ちょっとした差と勘違いしているのを見抜いてしまう。
ちょっとした差ではなく、相当に差があるのだ。
エアリナは話題を変える。
ティリオは、エネルギーの分布を見ながらエアリナと適当に会話する。
最近、エアリナはティリオに強く当たる事をしなくなった。
その代わり、こうして話す事が多くなった。
ティリオにとっては、大した事を言っているつもりはない。
エアリナは、ティリオが最近、見せた心の傷の一件からティリオについて色々と話して知ろうするようになった。
ほんの少しでもいい。ティリオの気持ちの一端にエアリナは触れたくなっていた。
◇◇◇◇◇
艦橋のレーダー席では、エアリナとティリオが話している姿をレーダー担当の生徒達が見つめて
「あの二人…付き合っているの?」
と、右席の男子生徒が
「そうなのか? 確か、ティリオ・グレンテルには嫁さん達がいる筈だけど…」
と、左席の男子生徒が
「マジ、じゃあ…他にも…」
と、右席の男子生徒が
「話だと、ティリオ・グレンテルの父親も重婚らしいから、そういう文化の時空なのかも」
と、左席の男子生徒が
「すごいねぇ…オレ等にはムリだよ」
と、右席の男子生徒
「まあ、別にそこをマネする必要もないでしょう」
と、左席の男子生徒
「羨ましいとかじゃなくて、ん?」
と、右席の男子生徒が操作をする。
「どうした?」
と、左席の男子生徒が気付く。
「なんだコレ?」
と、右席の男子生徒が遠方にある何かを捉えた。
それは、何かの物体であるのは間違いないが…
「どういう事だ? エネルギーがマイナス? ええ?」
左席の男子生徒が同じく操作して、捉えたモノを解析して
「何かの中継器とか、観測機器? いや、宇宙艦でも、施設でもない」
右席の男子生徒が
「識別信号もない」
右席の男子生徒と左席の男子生徒が顔を見合わせて、艦橋の最上部にある艦長席のファクドに連絡する。
艦長のファクドと、その隣に副艦長としてファクドの傍人のアルドが連絡を受けて、下部のレーダー席へ向かう。
ファクドとアルドが来て、ファクドが担当する生徒に
「どういう事だ?」
担当の生徒が
「それが…おかしいんです」
アルドが
「どうおかしいのだ?」
担当の生徒は
「普通なら、識別信号、コードが発信されていて、それを互いに受信して航行の邪魔にならないように回避し合うのですが…コードがないんです」
担当の生徒
「ただの隕石や、流星といった物理的な破片なら、こんなエネルギーのマイナスなんて発生させない。しかも、エネルギー分布に乱れがない。これは、明らかに人工的な物体です」
ファクドが怪しむ顔で「距離は?」と
担当の生徒が
「約二万キロ前方です」
ファクドが
「よし、ルートを変えて離れよう」
アルドが
「いいんですか?」
ファクドが
「この程度、誤差範囲だ。怪しい何かで問題なるより、離れて安全に航行した方がいい。オレ達は、学生なんだ。対処は…」
アルドが頷き
「話は学園の方に連絡して置きます」
ファクドは頷き「頼む」と。
そこへ、エアリナが来て
「何? 問題?」
ファクドが
「ああ…遠方に怪しい何かがあってな。だが、問題ない。我々は離れて安全に航行する。問題は学園に報告して任せるさ」
エアリナがレーダー担当に
「何があったの?」
レーダー担当が操作して
「これ何ですけど…」
と、問題の何かを捉えた映像をエアリナに見せる。
その立体画面にあったのは黄金の石碑だ。
中央にクリスタルのような物体を備えた黄金の石碑を見たエアリナが、レーダー担当の端末を操作して、その物体のエネルギー分布を見た瞬間
「急いで! ここから離れて! 空間転移して!」
ファクドとアルドが驚き、ファクドが
「どうしたんだ? 何か心当たりでも」
エアリナが驚きの顔で
「ゾロアス・エミュレーターよ! これ!」
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次回、ゾロアス・エミュレーター