星光 第40話 ティリオの立場
次話を読んでいただきありがとうございます。
ティリオが宇宙戦艦を建造中に現れたクロスト、それはティリオのアースガイヤとしての
聖帝ディオスの息子としての宿命を告げに来た。
ティリオは、宇宙戦艦の建造中に感じた。
手が止まったティリオにグランナが
「どうしたんだ?」
ティリオが微妙な顔で
「面倒くさいのが…また…」
グランナが首を傾げ
「え? 本当にどうしたんだ?」
ティリオがとある部分に視線を向けると、足場のカーゴに乗って降りて来るクロストの姿があった。
グランナがクロストを見つめて
「アイツが…何か?」
クロストがティリオとグランナのいるオペレーションポッドに来て
「やっと帰ってきたんだな…」
と、クロストは腕を組んで答える。
ティリオが難しい顔で
「クロスト…話は後で…」
グランナはティリオとクロストを交互に見つめる。
クロストが厳しい顔で
「何時まで、遊んでいるつもりだ。ティリオは自分の立場を分かっているのか!」
と、剣呑な雰囲気になる。
それに別のオペレーションポッドに乗っているファクドとレリスも気付き、ティリオ達の元へ来る。
ファクドが
「ティリオ…彼は…なんだい?」
クロストがファクドにグランナとレリスを見つめると同時に、自身のシンギラリティの渦の感覚を使って、三人を調べる。
それにファクドとグランナにレリスが気付き、レリスが
「いきなり覗くなんて…失礼じゃあないか?」
そこへ、資材生産をしていたラドとシェルテの五人も来て
「どうしたんですかぁぁぁ」
と、五人が乗ったオペレーションポッドも来た。
クロストが
「なるほど、ティリオが覚醒させたハイパーグレートとアヌビス様の眷属、そして…ルビードラゴンさんの系譜か…」
グランナとファクドにレリスはアイコンタクトする。
グランナが
「どういうつもりだ…アンタ…」
クロストが
「どういうつもりも…自分は」
そこへ「クロスト」と上から呼びかける声がした。
その主は、同じ足場のカーゴに乗るジュリアとナリルだ。
アリルにエアリナを任せて、アーヴィングから連絡が届いて、ここへ来た。
いや、クロストが行くと知って駆けつけた。
ジュリアがクロストに
「クロスト、ティリオは用件があって帰還したから、話は…」
クロストが
「ジュリアお嬢様の言葉でも、引けません」
ナリルが
「クロスト…みんなの話し合いで納得して」
クロストが
「ナリル、自分は納得していない。親同士の話し合いで決まった事で、自分には関係ない」
ジュリアとナリルが呆れる。
ファクドが
「あの…こちらの方は…?」
その問いにジュリアが
「彼は、クロスト・セカンド・ヴォルドル。私の分家の子で」
ナリルが
「私の父さんの妹が母親の親戚なの」
グランナとファクドは、内心でうわぁ…と親戚の濃さを感じた。
ティリオが
「で、ぼくの幼年部から中等部にかけての同級生、幼馴染みの一人」
うわぁ…とグランナとファクドは納得する。
クロストがティリオに近づき
「なぁ…いい加減にしろ。ティリオ、自分の立場を分かっているのか…」
ティリオが呆れ気味に
「分かっているだから」
クロストが
「分かってない!」
ファクドとグランナの仲間達が間に入り、ファクドが微笑みながら
「まあまあ、とにかく…積もる話が多そうなので、ちょっと休憩して…ね。話し合いという事で」
グランナも
「ティリオ、とにかく、一旦は作業を休止でいいな」
ティリオが面倒で頭を掻いた。
◇◇◇◇◇
大きなカフェエリアがあるコロニーで、コロニーないの自然風景を前にカフェ休憩をするティリオ達。
その一団から少し離れた席で、クロストとティリオにジュリアとナリルが見合う。
直ぐ隣の席にファクドとグランナにレリスが見つめる席と、ちょっと離れた位置にラドとシェルテ達五人の席がある。
シェルテが飲み物を吸いながら
「ラド…なんか似ているよね」
ラドが頷き
「ああ…」
グランナの仲間達はクロストの感じに憶えがあった。
◇◇◇◇◇
腕を組みティリオを見つめるクロスト
そのクロストを説得しようと悩むティリオ。
ジュリアとナリルは、相変わらず暴走気味のクロストに手を焼く。
クロストが
「ティリオ、お前は…将来、ディオス様と同じく我らセイントセイバー部隊を率いる使命がある。それを忘れてはいないだろうなぁ…」
ティリオが
「忘れてないよ。だから、勉強の為に」
クロストが
「この時空でも、問題ないだろうが」
ティリオが
「それじゃあ、勉強にならないだろうが。別の場所、自分の立場が通じない所に行って初めて、色々と分かる事があって…」
クロストが
「こんな、お遊びみたいな事が勉強なのか!」
その話し合いをファクドは見つめていて、クロストの雰囲気にどこか…似た人を横見する。
それはレリスも同じだ。
二人に横見されるのはグランナだ。
グランナは頭を抱える。
そう、クロストの雰囲気が自身と似ているのだ。
グランナはティリオと付き合い易い理由が分かった。
こういう事だ。
自分と似た、仲間思いで郷土愛が強いタイプが近くにいたからだ。
グランナは、ティリオとクロストの会話を聞いても平行線な状態だ。
多分、ティリオが折れないとムリな感じだが…ティリオは折れないだろう。
グランナが席を立つ。
「お…」とファクドが声を出す。グランナがファクドを見て、ファクドは席から立ち上がりそうなのを止めて座る。任せる事にした。
ティリオと平行線状態のクロストにグランナが
「なぁ…クロストさん」
クロストが鋭くグランナを見る。
入ってくるな!と無言の圧だ。
グランナは頭を掻いて
「約束するよ。必ずティリオは、規定通りの勉学日数で勉学を終わらせて、アンタ達の元へ帰すから」
クロストが驚きの顔だ。
クロストは、ティリオがなんだかんだ言って、外で勉強する日数を伸ばさせるだろうと思っていたからだ。
それにシャナリアの事件の話も聞いて心配もしていた。
ティリオが、えええ…と困惑を見せる。
グランナが
「アンタが…クロストさんが、心配して色々と言う理由も分かるけど、ティリオはチャンと勉強している。ここにいる面子を見ても分かるだろう」
クロストが渋い顔をする。
もし、ティリオが適当な相手と組んでいるなら、無理矢理でも戻すつもりだった。
だが、違う。ティリオが共に連れてきた者達に関しても事前に調べている。
なにより、グランナだからこそ通じる。
グランナは、ティリオによって超越存在になった。
そして、今もだが、将来に渡って自分の時空を支える仕事をしている。
その信頼は強い。そして、グランナもティリオの家族、桜花の親族でもある。
クロストが
「本当に約束してくれるのか…?」
グランナが
「クロストさん。ティリオの事が大切なんだろう。分かるよ。だから」
と、グランナは自分の端末を取り出して
「オレの直通の連絡先を教えるから、心配ならオレを通じて来ればいいさ」
クロストは静かに頷いた。
何とかクロストとの話し合いに説得を取り込む事が出来て、終えた。
◇◇◇◇◇
ティリオ達は宇宙戦艦建造に戻り、ティリオがグランナに
「ありがとう。グランナ」
隣で操作するグランナが
「いいさ。お前、大事にされているって分かるよ」
ティリオが苦い顔で
「色々と昔にあったから」
と、自分の背中を…あの呪いを無意識に触れる。
グランナが
「大切に思っている人達がたくさんいるんだから、変な事をするなよ」
ティリオが
「ああ…」
グランナがポツリ
「オレも、その一人だけどな」
◇◇◇◇◇
グランナ達が手伝ってくれたお陰で宇宙戦艦の建造が早くに終わりそうだった。
建造後半になると、ほとんどが自動作業となり、ティリオに暇が出来た。
ティリオは、その暇な時間の時に宇宙国家戦艦セイントセイバーへ向かった。
ティリオは、セイントセイバー部隊の顔馴染み達の元へ向かい、ティリオが来た事で、セイントセイバー部隊の中が活気づいた。
ティリオは色々とセイントセイバー部隊の仲間から質問攻めにされるも、悪い気分ではない。彼ら彼女らは、ティリオの事を心配しているのが分かる。
そして、ティリオ達はシュルメルム宇宙工業学園へ戻る事になり、後で検査を終えた長期航海訓練の宇宙戦艦が到着する。
シュルメルム宇宙工業学園へ戻る時空戦艦内でルビシャルが
「色々と楽しめたし、また…夏期休暇の時に来たいなぁ…」
ティリオが
「また、この面子でアースガイヤに帰還するのか?」
ルビシャルがイタズラな笑みで
「問題ある?」
ティリオは
「別に…問題ないけど」
と、他の学友達を見る。
ファクドは笑み、レリスは淡々として、グランナが
「オレは、一向に構わないぜ。そっちは?」
ファクドが
「ぼくも問題ない」
レリスも
「自分も」
ティリオが頷き
「分かったよ。また…」
「当然、私も入っているわよね」
と、エアリナがティリオの肩を掴む。
ティリオは溜息交じりで
「はいはい。分かりましたよ」
こうして、また…この面子をアースガイヤに呼ぶ約束が出来てしまった。
ティリオはフッと笑ってしまう。
嬉しいような、呆れるような不思議な感情をティリオは感じるのであった。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
続きを読みたい、面白いと思っていただけたなら
ブックマークと☆の評価をお願いします。
次話を出すがんばりになります。
次回、宇宙戦艦デュランダル