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星光 第35話 帰亡の星

次話を読んでいただきありがとうございます。


エアリナが悪夢で目覚める。それは母が消えた、あの日だった。

そして、夢から醒めて何時もの日常が…

 

 一人の女性が娘を抱えて走り、辿り着いた場所には、一隻の宇宙艦があった。

 その入口に

「こっちだ!」

 若いヴィルガメスが手を伸ばしていた。


 女性の名は、エリドナ…エアリナの母親であり、エアリナと同じ光の反射で色が変わる髪を持っていた。

 エリドナが抱えている娘はエアリナだ。


 エアリナが

「ママ…」

と、母親のエリドナを見つめる。


 エリドナからヴィルガメスがエアリナを抱きかかえて

「さあ、エリドナも」


 エリドナが首を横に振り

「私は…あそこへ戻るわ…」

と、後ろにある暗闇で七色に光るオベリスクのビルを見つめる。


 ヴィルガメスがエリドナの手を握り

「無駄だ! ここはディスガードに汚染されて終わる。時空消滅爆弾で」


 エリドナが

「アナタ…それをすれば、巨大な時空の穴が開いて…この宇宙は大変な事になる。なら…」


 ヴィルガメスが

「そうかもしれない。だが…これしか…」


 エリドナが微笑み

「アナタ…エアリナを…お願い」

と、ヴィルガメスの手を振りほどいて、走って行った。


 ヴィルガメスがエリドナを連れ戻そうとするが、宇宙艦にいる乗員がヴィルガメスを必死に止めて、ヴィルガメスとエアリナを乗せて宇宙艦は飛翔した。

 凄まじい速度で惑星を離れるヴィルガメスとエアリナが乗る宇宙艦。


 エアリナの眼には、金色に輝くディスガード達が惑星から飛び立とうとする姿が見えた。


 だが、そうなる前に、惑星の各所にあるオベリスクのビルが輝き惑星を包む。


 その輝きが広がり、それを背にしてエアリナ達を乗せる宇宙艦が、この星系を離れる。

 

 次には、エアリナ達がいた星系が七色の輝き、この世界、時空から消失した。


 それから数年後。


 ◇◇◇◇◇


 エアリナは、最悪な目覚めで起き上がる。

 大きめのベットから苛立つように飛び起きると、髪の毛を乱暴になで回しながら、朝食が置かれた部屋のテーブルについて、黙々と取る。


 エアリナが不意に視線を棚に向けると、そこには小さい頃のエアリナと若い父親のヴィルガメスに母親のエリドナの三人が映る立体映像のスタンドがある。


 エアリナは苦虫を噛むように食事を急いでかき込むと、身だしなみを整えてシュルメルム宇宙工業学園の施設へ向かった。


 エアリナが最初に来たのは、ティリオのホームだ。


 エアリナが何度も何度もインターフォンの立体映像ボタンを連打して

「なんだよ。一回で十分だろう」

と、ティリオが顔を見せる。


 エアリナが偉そうな態度で

「私が迎えに来ているのに、玄関にいないなんて…失礼!」


 ティリオが頭を抱えて

「エアリナの認証はホームに入れてあるんだから、入れば良いじゃないか…」


 エアリナが

「私を待たせるって言うの!」


 ティリオは困惑する。

 今までも振り回されているが、今日はヒドい。

「んん…何かあったのか?」


 エアリナがティリオの手を取って

「とにかく! 早く行くわよ!」

と、ティリオを引っ張って行こうとするが、エアリナとティリオでは圧倒的にティリオの方に膂力がある。

 エアリナは巨大な岩を引っ張るようにティリオに立ち向かうが、ティリオは全く動かない。

 駄々っ子につき合っているようなティリオの後ろから

「ティリオ、準備できたわよ」

と、ジュリアと共にアリルとナリルも来た。


 ティリオは溜息を漏らして「行くよ」と動き出すと、唐突な反応にエアリナは対処できず前に突き出るが、ティリオが素早く動いて飛び出したエアリナを優しく抱えて

「大丈夫か?」


 ティリオの両手に軽々と胸部から腹部にかけて抱えられたエアリナが

「大丈夫よ」

と、ティリオの顔面を掴んで立ち上がる。


 エアリナは胸を腕に抱えられた事で恥ずかしくなるが、ティリオは平然としている。

 それが余計に苛立ち、ティリオへ掴みかかるがティリオはその手を握り、軽々と組み合う。

「んんんん!」とエアリナが一方的にティリオを掴もうと組み合う両手を、ティリオが組み合って握り、ティリオは平然とエアリナの力をあしらう。

 圧倒的な体力差がそこにある。


 そんなじゃれ合いにティリオは、今日は…どうしたんだ?と思うのであった。



 ◇◇◇◇◇


 ティリオ達とエアリナの五人が何時ものようにリニアに乗って学園施設の前に到着すると、そこに

「よう」

と、グランナ達がいた。


 グランナが

「おはよう、ティリオ」

と呼びかけて色々と話す。

 その会話は

「三日前のアレだけど」

と、グランナ


「ティリオがああ…アレね」とティリオが答える。


 アレ、それ、アレ、アレという短縮会話で話すティリオとグランナ。

 二人は日に何度も顔を見合わせて、超越存在の訓練をしているので、いつの間にか長い付き合いの友人のようになっていった。

 ティリオとグランナの馬が合うのも大きい。


 そんな風景にエアリナが

「アレ、ソレで、会話するな! お前等、長年も付き合ったカップルか!」


 不機嫌なエアリナにグランナが

「どうしたんだ? やけに噛みつくじゃあねぇか…」


 ジュリアがグランナに耳打ちで

「朝からこうなのよ」


 グランナが渋い顔で

「あれか? 今日はデリケートな日だったら…休んでも問題ない」

 その腹へエアリナがパンチを入れる。

 デリケートな日とは、女の子の日の隠語だ。


 グランナもティリオと一緒に体を鍛えているので、エアリナの弱々パンチなんて平気だ。

 それがエアリナの苛立ちを加速させ、ティリオへパンチする。

 エアリナは無言の苛立ちパンチでティリオを殴るが、端から見れば駄々っ子が暴れているかわいらしい姿でしかない。


 ティリオが首を傾げつつエアリナの弱々駄々っ子パンチを受けていると、エアリナが

「ねぇ…もし、母さんを…助けたいって私がお願いしたら…アンタは、助けてくれる?」

と、弱々しい小声が漏れる。


 その声はティリオの耳に届いていて

「ああ…助けるよ。エリドナ・エア・シュメルムは、助ける」


 それを聞いたグランナも

「オレも協力するぜ」


 エアリナが

「私、何も返せるモノがない」


 ティリオが

「それは、おいおいで良いよ。まあ…それに…エアリナのお母さんを助ける事は、自分の…」

と、ティリオは自分の背中を触る。

 そう、この背中に刻まれた聖ゾロアスの呪いが…。


 エアリナがティリオの腹部に額を当て「ありがとう」と小さな声で返事をする。


 ティリオがボソッと「そのぐらい普段から…素直だとねぇ」


 エアリナがムッとしてティリオに掴み掛かり、それにティリオが応えて、エアリナと両手と両手を組み合う。一方的にエアリナが力を入れて、ティリオはエアリナより膂力があるので平然としている。

 そんなじゃれ合い風景に


「朝から元気だね」とファクド達。


「お姫様、何やってのよ」とルビシャル達。


「そんな無駄な体力を消耗すると、授業中に眠くなるよ」とレリスが。


 ティリオ達の学園生活が何時ものように流れて行く。


 ◇◇◇◇◇


 シュルメルム宇宙工業学園の理事長室では、理事長のヴィルガメスがとある端末資料を職員から受け取り

「そうか…また、この時期か…」


 それは生徒に関する、とある教育プランである。

 その教育プランとは、長期航行訓練と…。




ここまで読んで頂きありがとうございます。

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次回、長期航行訓練

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