星光 第31話 超越存在の光
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再臨したシャナリア、その力が暴走して、消滅させるしかない現状にティリオは…
記憶の繋がりを全て取り戻したシャナリアの再臨は、とある訓練大地の空に浮かんでいた。
そこは、かつて自分が死んだ場所の訓練大地だ。
シャナリアは背中から電子回路の翼を広げて、その訓練大地の空に浮かびながら
「どうして…こうなったんだろう?」
と、涙して
アアアアアアアア!
融合しているディオートンの力を放つ。
空間が歪む。
シャナリアを中心に黄金の円環のような存在が出現し、そこから縦横無尽に光の雨が降り注ぎ、訓練大地の内部を蹂躙する。
その衝撃は、百キロもあるシュルメルム宇宙工業学園の全体を震撼させる。
連続する地震の震動が百キロの巨大なコロニーを揺さぶる。
シャナリアがデタラメに攻撃を放つそこへ、紫苑と千華を乗せた宇宙艦が到着して、操縦席で千華が
「ああ…何て事を…」
隣で操縦する紫苑が
「このまま力を暴走させ続ければ…このコロニーが…」
千華が苛立ち気味に爪をかみ
「仕方ない。私達で…」
その二人が乗る宇宙艦の脇をティリオとグランナが乗るゼウスリオンが通過した。
ティリオのゼウスリオンの操縦席、四つの席がある中央にティリオ、その右にグランナが座り、シャナリアの元へ向かっていた。
ディオートンの力を暴走させるシャナリアへ、ゼウスリオンが迫る。
ティリオは、ゼウスリオンの防壁エネルギーを全力にさせて、先端を尖らせる。
それによって、放たれる暴走の力をかき分けてシャナリアに迫ろうと…
「シャナリアさん!」
悲鳴のような叫びを上げてシャナリアは、力を放ち続ける。
そのディオートンの力の斥力にゼウスリオンは弾かれて止まった。
更に暴走するシャナリアの力が増加して変化を起こす。
シャナリアと、その周囲を包む黄金の円環を中心にコアを形成、そして、そこから存在の構築を開始する。
黄金の人型のディオートンが出現する。
光を放ち翼を持つディオートンの体が歪に膨らむ。
二十メートルくらいのディオートンが、その数倍、十倍も膨れて、巨大な翼を伸ばす石像のようになった。
白銀に輝く不気味な数百メートルの存在、幾つもの翼を伸ばし、その頭部には天使の輪のような円環を幾つも伸ばす、その姿は獣のようであって天使でもあった。
巨大な獣天使となったディオートンが、四方八方へエネルギーの触手を伸ばす。
周囲を呑み込もうとしている。
ゼウスリオンの操縦席の複座にいるグランナが
「ティリオ! このままだと!」
ゼウスリオンの操縦席の中央にいるティリオが
「分かっている!」
このままでは、このシュルメルム宇宙工業学園が…。
ティリオとグランナの脳裏に呼びかける声がある。
それはティリオが最も憶えがある声だ。
”元気かい? 聖帝の息子くん”
どこか…人とは離れているようで、人のような声色の主は、聖ゾロアスだ。
”どうだね? 私のプレゼントは?”
ティリオが苛立ち
「何が! プレゼントだ! 人を弄びやがって!」
聖ゾロアスが
”当然だ。私は神人ぞ。命を弄んで何が悪い? 所詮、神から見れば、人なぞ…蟻と同じ。人という群体でしかない。その内の極少数の数匹程度を弄んで何が悪い。人とて、己の利益の為に人以外の命を弄ぶではないか…”
グランナが
「ふざけんなよ。弄ばれる者の気持ちを考えた事があるか!」
聖ゾロアスが
”考える必要なぞ、私にはない。その者の意識から記憶、魂まで私は視る、観測が出来る。故に、命を、死者蘇生を可能としている。だが、それで何か? 変わるのか? お前達は自分達…人の事を過大評価し過ぎだ。所詮、お前達は世界の数多にあるピースでしかない。ああ…そうだったな。ティリオも汝も、そのピース達の頂天にいる者達だったな。失敬”
グランナとティリオは苛立ちを抱える。
聖ゾロアスは、それを感じながら嬉しげに
”そうか、お前達は真理を知らなかったな…人は、格差、差別、偏見、貧困を絶対に生み出す。それが人たる由縁。お前達のような全てに恵まれた階級にいる者達には、奪われて恵まれなく死んでいった敗者や弱者の気持ちを理解できないだろうな…”
ティリオとグランナの目の前に苦しんでいるシャナリアの姿がおぼろげに見えた。
聖ゾロアスが続ける。
”良かったなぁ…弱者を食い殺して、お前達は満足だろう。人の上に立つ者は、皆、奪うだけの簒奪者なのだから…。良かったなぁ、また一つ真理を知る事が出来て…”
グランナが
「お前は! どうなんだ!」
聖ゾロアスがハッキリと堂々と
”我は違う。神人であるぞ! 真に与える事が出来る。お前等、人の上に立つ人とは違う!”
ティリオが食い縛り
「ふざけるなよ! お前だって!」
聖ゾロアスが
”私が何時、奪った? 与えただろう。今回も、昔も、これからも。だから、いただいて置け”
目の前に再臨したシャナリアは、聖ゾロアスが容易した何かの晩餐だった。
何かを与える。それが聖ゾロアスの力だった。
ティリオが悔しさに震えていると、グランナが
「おい! ティリオ! 何か方法はないか! このままヤツの言う通りに…なるのが…悔しい」
ティリオは、グランナを見つめて
聖ゾロアスの思惑を超える為には…と考えた矢先に、とある考えがよぎる。
それは、一応は揃っている。
でも、賭けでしかない。
でも…
「グランナ…力を貸してくれ」
グランナが頷き
「ああ…どうすればいい?」
ティリオが真剣な目で
「ぼく達がいる場所まで来てくれるかい?」
グランナが暫し困惑した次に、ハッとして
「それってつまり…」
ティリオが厳しい顔で
「賭けになる」
グランナは迷わず
「やってくれ。絶対にオレは、お前の…お前達の場所まで来てやる」
と、自信の笑みを向ける。
ティリオは頷き「オメガデウス・ゼノディオス発動」とゼウスリオンの装甲がはじけ飛び白銀に輝き翼を伸ばす機神へ変貌する。
ティリオが乗る操縦席が、黄金の粒子、エネルギーに包まれる。
そのエネルギーに耐えられるのはティリオ達、超越存在だけ。
グランナは
「うおおおおおおおお!」
エネルギーに呑まれて超越存在の極天へ導かれる。
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