星光 第29話 死者蘇生
次話を読んでいただきありがとうございます。
スラッシャーが持って来た災い、蘇生という死者を弄ぶ行為から生まれた彼女は?
スラッシャーを押さえたカレイドの千華と紫苑。
千華の銃口がスラッシャーの背中にピッタリと付けられている。
「アンタ…なんで、こんなモノを…」
と、千華はスラッシャーが運ぶシャナリア・エリストが入る円筒の液体槽を横見する。
紫苑が円筒の液体槽を調べる。
円筒の装置の端末に触れて
「生きてる…」
スラッシャーが
「乱暴に扱わないでくれよ」
千華がスラッシャーの背中を銃口で押して
「お前等…何時から、こんな外道に」
スラッシャーが両手を挙げて降参のポーズで
「オレじゃあねぇ。アイツだよ…聖ゾロアスだよ」
千華の顔が忌々しげに
「ホント、最低だわ…」
スラッシャーが
「なぁ…帰っていいか? オレは、これを置いてくるように頼まれた使いっ走りであって…」
更に千華が銃口でスラッシャーの背中を押して
「お前は、アタシ達が連れて行くんだ。おいそれと」
”それは、こまる…”
と、千華と紫苑、スラッシャーの脳裏に言葉が転送される。
同時に、円筒の液体槽にいるシャナリア・エリストが淡く光っている。
そして…ビキッと液体槽の透明な素材の表面に亀裂が
「え?」と紫苑が下がった瞬間、一瞬で液体槽が割れて中身の液体が噴出する。
「紫苑!」と千華がスラッシャーから離れて、紫苑を抱えて脱兎した。
液体槽が割れて中身の液体が広がり、その割れた液体槽からシャナリア・エリストが立ち上がると光を放って裸の体にシュルメルム宇宙工業学園の制服を構築して着る。
スラッシャーが「じゃあ、そういう事で!」と脱兎する。
千華に守られて抱えられる紫苑が
「待て!」
と、スラッシャーへ発砲するも、スラッシャーは軽やかに飛び跳ねて何処かへ消えた。
千華が紫苑を離しながら
「まずい事になかったかも…」
と、千華と紫苑は、佇んでいるシャナリアを見つめる。
紫苑が
「どうします?」
千華が考えている間に、シャナリアの背中から電子回路のような翼が広がり、電子回路の翼が明滅した瞬間、シャナリアが短距離の瞬間移動を繰り返して移動して、このポータルから出て行った。
◇◇◇◇◇
そんな事があった裏では、ティリオとグランナが話をしていた。
二人はトレーニング機器があるトレーニングジムが密集する地域に来て、緩やかにランニングしながら
「え? じゃあ、エアリナを許婚にしようとしたのは、エアリナの母親を助けるのを手伝う為に」
と、ティリオはグランナと併走している。
グランナが頷き
「ああ…」
ティリオが
「じゃあ、なんで悪役みたいな感じで、エアリナとデュエロタクトをしようとしたの?」
グランナが遠くを見るように
「売り言葉に買い言葉だよ。なんか…自分が上じゃあないと納得しなくて、エアリナが…自分の下に付け!って、うるさくて…」
ティリオは「ああ…」と納得してしまう。
自分の事を嫁にするとかしないとか、本当に自分が相手より上でないと…。
そういうエアリナの幼い部分を見ているので…そういう声が出てしまった。
そうして、会話しながら二人はランニングを終えて、汗を流して自分達のホームへ戻ろうとした矢先、二人の端末に連絡が入る。
グランナとティリオは、お互いに端末を手にすると相手は、ルビシャルだ。
グランナも同じルビシャル。
つまり、多数との通話だ。
ティリオとグランナが端末を開くと、立体映像の画面が出て、そこはデュエロタクトのラウンジだ。
ルビシャルが
「ちょっといい。二人とも…これを見て」
と、別画面を転送する。
その画面に映っていたのは
「ええ…」とティリオは驚きを。
その別画面には、電子回路の翼を広げて空中静止するシャナリアがいる訓練大地があった。
グランナが
「な、どういう事だ?」
ティリオは青ざめて
「まさか…」
◇◇◇◇◇
彼女は空中に浮かんでシュルメルム宇宙工業学園の訓練大地を見ていた。
「ここは…」
彼女の目には、淡い光が宿っている。
それは命の息吹でもある。
彼女は、訓練大地を見渡す。
「そうだ…私…ここで」
脳裏の無数の映像が過る。
誰かを狙った。それが…その後には雑音と砂嵐のように視界が歪む。
その後…
”どうしたの? 何かあったの?”
マルスの顔と心配する姿が…
「ああ…マルスに会わないと…」
彼女、シャナリアは背中から伸びる電子回路の翼を使って瞬間移動を繰り返して消えた。
消えたそこに小型宇宙艦で来た紫苑と千華が通りかかり
「消えた…」
と、千華は宇宙艦の窓から外をのぞく。
宇宙艦を操縦する紫苑が
「一体、何が起こっているんですか?」
操縦する紫苑の隣にいる千華が腕を組み
「んん…攻撃する意図も無いし…」
復活したシャナリアの意図が読めなかった。
◇◇◇◇◇
ティリオは急いでホームに戻ってゼウスリオンの操縦席に入り
「ナリルとアリル、ジュリア!」
と、ホームの管制室にいる彼女達三人に呼びかける。
様々な立体映像のタッチパネルを操作するアリルとナリルにジュリアの彼女達が
「今、シュルメルム宇宙工業学園の全システムにアクセスして、探しているわ」
と、ジュリアが
「ねぇ…」とナリルが
「もし…再び彼女、シャナリアさんと戦うしかないってなったら?」
ティリオが苦しそうな顔で
「分からない。でも…放置するよりは…探し出して、行動する方がマシだ」
と、ティリオはゼウスリオンを操縦してホームから飛び立つ。
◇◇◇◇◇
グランナは、小型電動バイクに乗って自分のホームへ戻っていた。
このヤバい事態に、ホームの仲間達と力を合わせて…
そう思っている目の前に、マルスの後ろ姿があった。
「おい!」
と、マルスの背中に呼びかける。
マルスが立ち止まり声のした方を振り向くと、血相を変えて迫るグランナが見えた。
「ええ…」
困惑するマルスの前にグランナが止まって
「おい、アンタ、今、大変な事が」
「マルス」と二人の背後で声がした。
グランナが青ざめて、マルスが名前を呼ばれた方向を見つめると…
「ええ…シャナリア?」
グランナとマルスの少し離れた所に、電子回路の翼を広げるシャナリアが立っていた。
「マルス…」
ここまで読んで頂きありがとうございます。
続きを読みたい、面白いと思っていただけたなら
ブックマークと☆の評価をお願いします。
次話を出すがんばりになります。
次回、再臨