星光 第26話 ファクドの頼み
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ファクドからの依頼は、ファクドの傍人達である彼女達五人のマキナの改修であった。
そんな話をするお茶会で、ティリオがファクドに告げた話とは?
ティリオは、ファクドのホームに来てお茶会をしていた。
ホームにある庭園ドームに設置された喫茶店のようなテーブルで、ティリオとファクドは対面でお茶を交えて話す。
ティリオが
「で、キミのマキナを改修して欲しいって?」
ファクドは微笑み
「オレじゃあない。オレの傍人達のマキナを頼みたい」
ティリオが額を抱えて
「それって相当な人数じゃあ…」
ファクドが笑みながら「五人だよ」と告げると、庭園ドームの扉から五人のゴールドジェネシスの乙女達が来る。
一人は、最初の時に顔を見たアルドと、他の四人は知らない。
アルドが他の四人の事を紹介する。
「右から、ルアラ、ラアーラ、アルヤ、ミアラだ」
アルドと同じ騎士のような雰囲気を持つルアラが
「初めまして、ルアラです」
次におっとりした感じのラアーラが
「ラアーラです」
何処かイタズラな感じがするアルヤが
「アルヤだよ! よろしく!」
大人しそうな感じのミアラが
「み、ミアラ…です。よろしくです」
ティリオが頭を下げ
「こちらこそ、よろしくお願いします。で、なんでキミは…?」
ファクドのマキナを改修しない理由を尋ねる。
ファクドが
「必要ないからだ」
ティリオが暫し考え
「それは、キミのマキナが…実戦仕様だから?」
ファクドが真剣な顔で
「気付いていたのか…」
ティリオが
「ぼくは、君達のサポートマネージャーだよ。デュエロタクトする前にチェックをしているのは、ぼく達だからね」
ファクドは溜息交じりで
「そう、オレのマキナは…マキナという皮を被った兵器さ」
ティリオが
「だけど、その力の一端が出た。それは…グランナの新たなガイオの時に…」
ファクドは嫌そうな顔で
「アレは、本当に失敗だった。だから、もっとリミッターを増やして出ないようにするさ」
ティリオが「そう…」と告げた次に
「どうして、ゴールドジェネシスの実戦仕様を持っているんだ?」
ファクドが遠くを見る感じて
「身を守る事の必要性もある…という事だ」
ティリオが
「ゴールドジェネシスの民、ファーストエクソダスの間にある権力闘争?」
ファクドは首を振り
「違う。むしろ、オレ達の力を欲して…誘拐する事があったからね」
ティリオが
「確かに…空間を操作してエネルギーを生み出す力…凄まじい」
ファクドがティリオを見つめ
「ティリオの超越存在としての力は、超越存在の力を持ってしないと押さえられない。だが…オレ達の力、ゴールドジェネシスは、ある程度の物理法則を操作できる文明なら対処が可能だ。そういう事だ」
ティリオが複雑な顔をする。
エネルギー資源のようにされる。人類悪の一つ、奴隷という言葉よぎって嫌な気分になる。
ファクドがそれを察して話題を戻し
「まあ、とにかく…頼むよ」
ティリオが気分を変えて微笑み
「ああ…やってみるさ」
「ありがとう」とファクドは微笑んだ次に
「一つ、聞きたい事がある」
ティリオが首を傾げ「なんだい?」
ファクドが手を組んで前のめりになり
「どうして、カレイドと手を組んでいるだ?」
ティリオが視線を横にする。
ファクドが
「キミが偶に接触する他校の女子生徒の二人、カレイドの使者だろう?」
ティリオが額を抱えて
「まあ、利害の一致ってヤツで、協力し合っているんだよね…」
ファクドが真剣な顔で
「自分達の時空、ラジアータ時空の統治の為なら、どんな人物でも抹殺する機関と?」
ティリオが渋い顔をして
「カレイドの成り立ちって知っているかい?」
ファクドが
「資料には、かつてラジアータ時空に巨大な力を持った存在、最悪の邪神とされているが。それを使ってラジアータ時空を統一し、その統一を維持する為に作られた…と」
ティリオが
「そう。それが建前の理由さ。本来の理由…それは…その最悪の邪神とされる人物が超越存在だった事。そして、その人物がとあるシステムに変えられて…いや、変貌して。そのシステムを探し出す為に…組織が維持されている」
ファクドが訝しい顔で
「それは初耳だ。その最悪の邪神が超越存在だったのも驚きだが…それをシステムに変えるってどういう事なんだ?」
ティリオが
「その人物が変貌したシステム。それの名を聖櫃というらしい。この聖櫃には、取り入れた存在を超絶に進化させる力がある。それは…超越存在や、完璧な者達、神人に神化させるね」
ファクドが驚きの顔で
「それは…本当なのかい?」
ティリオは頷き
「ああ…事実だ」
ファクドが頭を抱えて
「全く、ティリオと話していると何度も驚愕する事に出会う。そんなのが知られたら」
ティリオが
「知られたとしても、その聖櫃が手に入るとは限らない。なぜなら…その聖櫃は、絶えず別時空へ転移して移動している。どこに流れ着くかは…分からない」
ファクドが顎を摩り
「なるほど、カレイドが求める聖櫃をティリオが求めていると…」
ティリオは頷き
「ああ…そういう事だ」
ファクドがティリオを見つめて
「もしかして、ティリオは…その聖櫃を発見する…」
ティリオが固い顔をして
「それは、時期が来たら言うよ。今は…その時期じゃあないし…多分、キミのファクドの力を借りる事になるような予感がする」
ファクドは笑み
「是非、協力に加えてくれよ」
ティリオは「時期が来たらね」と…。
◇◇◇◇◇
ファクドとのお茶会 兼 ゴールドジェネシスのマキナの改修を頼まれたティリオは、自分のホームへ帰る途中、グランナと遭遇した。
グランナとティリオは並んで歩きながら
「ファクドの方も改修するのか?」
と、グランナの問いに
「ああ…」とティリオは頷く。
グランナが
「じゃあ、ファクドのヤツが安心してデュエロタクトできるマキナでも作ってやってくれよ」
ティリオがグランナを見つめて
「もしかして…気付いてた?」
グランナが
「すまし顔のアイツ…色々とあるだろうから。どうしても…そういう機体を持つ事になっているのは理解できる。でも、さあ…ここは学園だ。少しくらい羽目を外すくらいは、問題ないだろう」
ティリオが
「以外と鈍感じゃあないだね」
グランナが学園のドーム天井の夜空を見上げて
「ここには、それなりの覚悟を持って来ている奴らが多い。そういう事さ」
ティリオが
「それなりの覚悟を持ってかぁ…」
と、噛みしめるのであった。
◇◇◇◇◇
とある宇宙のとある場所で、スラッシャーが円筒の培養液のポッドを受け取っていた。
それを渡したのは、聖ゾロアスと繋がる裏謀躍王の青年だ。
スラッシャーが訝しげに培養液のポッドの中身を見つめて
「マジか…これをゾロアスが使えって?」
裏謀躍王の一莵は頷き
「ああ…ゾロアスが再構築して置いたから…使えって」
スラッシャーは額を抱えて
「おいおい、ゾロアスは…悪魔か?」
裏謀躍王の一莵は、フッと皮肉に笑み
「そんなのが小手先の三下に見えるくらいゾロアスは…恐ろしいのさ」
スラッシャーは培養液のポッドに浮かぶ少女を見て、青ざめる。
「死者を弄ぶか…」
裏謀躍王の一莵は平然と
「それが聖ゾロアスだ。神であり人であり、完璧な者達…アヌンナキであり、真理を理解する神人だ」
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次回、シャナリアの事件の後