星光 第16話 ファクドのお茶会
次話を読んでいただきありがとうございます。
ティリオは、ファクドのホームでお茶会をしつつ
ファクドがティリオの事を様々に聞き出す。その真意とは?
ティリオがファクドのホームに来ると、玄関に数名のここの女子生徒が待っていた。
ファクドがホームの女子生徒に
「お客さんを連れてきたよ」
女子生徒達がティリオを見つめる。五人と視線が交わるティリオ。
そして、直ぐにティリオが
「もしかして、ここは君以外…全員が女性なのか?」
ファクドが頷き
「そうだよ。そして…」
ティリオが
「その全員が君の傍人か…」
傍人、ゴールドジェネシスの民の連れ添いという意味だ。
ファクドが驚きを向けて
「へぇ…理解があるのかい?」
ティリオが鼻息を荒く吐く。ゴールドジェネシス、ファーストエクソダス民の事についてはアヌビスから色々と聞いている。
ゴールドジェネシスの民は、男女比が1対100の圧倒的な女性世界だ。
そうなれば、おのずと…結ばれる男女が1対1という事ではなくなる。
ファクドが
「よく女性が、こんな差別的な扱いで大丈夫なのか?って聞かれる事があるんだよ」
そう、ゴールドジェネシスの婚姻は男性一人に対して100人の女性が結ばれるハーレムなのだ。
ティリオが
「自分なりの理解として、男女の恋愛より、家族というチームのような方式を採用している…と」
ファクドが普段は隠している光輪を表して
「ぼく達、ゴールドジェネシスは万年の寿命と、その権能によって万能に近い事が出来るからね。だから、こういう男女の形でも問題ないのさ」
ゴールドジェネシスの特徴である光輪、それは様々な空間を操作する力を生成する。
まさに神族のような者達なのだ。
ティリオが冷静に
「様々な選ぶ自由はある。それを選択するのは個人の自由だ」
ファクドが
「じゃあ、ぼく達の側へ来るかい?」
ティリオが
「それを強制する自由はない」
鋭い返しにファクドは苦笑いして
「そうかい。じゃあ、中でお茶でもしながら話そうじゃないか…」
◇◇◇◇◇
ファクドとお茶会をするティリオ。
ティリオとは右にあるソファーに座るファクド。
金髪で褐色の好青年なファクドだが、どこか浮世離れしている感じは、アヌビスや自分の故郷で宇宙規模のコングロマリットをしているヴィクターと通じている。
ファクドがティリオの視線に気付いて
「何か顔についているのかい?」
ティリオがお茶を飲みながら
「別に、何となくアヌビスおじさんと同族だから、雰囲気が似ているなぁ…って」
ファクドが微笑みながら
「ぼくの父は、アヌビス様の甥っ子オシリス様なんだよ。だから、近い関係だね」
ティリオは「ああ…」と頷き
「なるほど…」
ファクドは少し悲しい笑みで
「それでも…アヌビス様とは違う」
ティリオが
「それは…ハイパーグレードとして…」
ファクドは頷き
「その通りさ。同じゴールドジェネシス、ファーストエクソダス民であっても存在している領域、その越境する力の深度。それが根本的に違う」
ティリオは
「ゴールドジェネシスは、万能に近い力を持っているはずだ。それでも…違いを感じるのか?」
ファクドは
「ああ…まるで違う」
ティリオは黙る。
ある程度のゴールドジェネシスの民に関しての話はアヌビスから聞いている。
神族のように万能な力を振るい、様々な星系を開拓して管理する神の如き所業。
他の宇宙民や時空民からは羨望を向けられる程だが、それでも超越存在には届かないらしい。
それが今一、ティリオにはピントこない。
ファクドが
「君は生まれながらにしての超越存在だ。見えるよ…君の回りには存在力達が数多に寄り添っている。超越存在は無意識に運命や宿命を変える力を行使する。どんなに悲惨な運命や宿命があっても、それを乗り越えて変えてしまう力を持っている」
ティリオが渋い顔で
「買いかぶりすぎだ」
ファクドが背を伸ばして
「その運命や宿命さえも変える力…万能とされる空間を操るぼくらにはない。いくら、物量や環境を変えても、自ら背負う運命や宿命から、因果から逃れる事はできない」
と、呟く目には鋭さが籠もっている。
ティリオは、それを察して
なにか、事情でも抱えているのか?
と…推察するも、踏み込む事はしない。
無作為に無闇に聞くのは、人を傷つける。
それを…知っているから…。
ファクドが黙るティリオに
「どうして、そう考えるんだい?って聞かないのかい」
とイタズラに笑む
ティリオは鼻息を荒げて
「別に話したくないなら、構わない。そこまで土足で踏み込む事はしない」
ふふふ…とファクドは笑み
「ここの理事長の娘様に見習わせたいくらいだ」
エアリナの事を言う。
ティリオは呆れ気味に溜息をした後
「まあ、確かに彼女なら、ハッキリというから…そうするだろう」
ファクドが
「気が合うね。じゃあ、同じ考えを持つ者同士、意見を交換しようじゃないかい? 君は…聖帝ディオスが学園に提供した超越存在へ覚醒させる理論を使えるのかい?」
ティリオはファクドを見つめる。
ファクドは穏やかな笑みでティリオを見つめる。
ウソか、事実を…。
どうするか?の判断をティリオは考え
「ああ…その理論、使えるといえば使える」
ファクドが笑み
「そうかい。どういう感じなんだい?」
ティリオが息を吐き
「ジェネレーターとして使えるけど、父さんのように超越存在への覚醒は出来ない」
ジェネレーターとして使えるは真実だ。そして、超越存在への覚醒は、ウソだ。
ファクドが紅茶のカップを持ち
「そうか、動力炉として使えるしか、ないのか…」
ティリオが「フン」と鼻で笑う。
おそらく、当たりを付けている。
真実を交えて反転させたウソを混ぜているのを分かっている。
ティリオは、超越存在としての入口まで持ってくる力を持っている。
その方法も一つではない。ある程度は、父ディオス以上に持って行ける。
あえて、それをティリオは父ディオスに言ってはないが、父ディオスは感づいている。
だが、尋ねない。
それが分かっているからこそ、このシュルメルム宇宙工業学園へ父ディオスが構築した超越存在への覚醒の理論を提供した。
全ては息子ティリオの為に…。
ファクドが
「もっと君と友人になりたいな」
ティリオが
「そうだね。時間を掛けて…ね」
ファクドが笑み
「ああ…たっぷりと時間を掛けてね」
◇◇◇◇◇
お茶会が終わった後、ディリオはファクドのホームを去る最中
「今日はファクドにつき合ってくれて感謝する」
と、一人のゴールドジェネシスのホームの女子生徒が声を掛けた。
ティリオが手を振り
「ああ…またな」
女子生徒が
「何時でも気軽に来てくれ」
◇◇◇◇◇
ファクドはお茶会をした部屋で天井を見上げる。
そこへファクドの傍人であり、ティリオを見送った女子生徒のアルドが隣に座る。
百八十近いファクドと近い身長の二人が並び合って座り、アルドが
「収穫はあった?」
ファクドが顔を押さえて笑み
「ああ…あったさ。十分すぎる程だ」
アルドが
「そう、じゃあ…二年前にここへ私達が来た甲斐もあったわね」
ファクドが
「二年前、突如として…ここだけに聖帝ディオスが構築した超越存在への覚醒の理論が提供された。その真意が読めなかったが…。それが分かったよ」
アルドが
「私達も動く?」
ファクドが
「いや、こればかりは…おれの誠意でぶつかるしかない。そうでなければ…応えない。ティリオ・グレンテルはそういう男だ」
アルドが笑み
「分かったわ。私達は、アナタの…ファクドのサポートに徹するわ。それが…ファクドの傍人である意義だから」
ファクドが
「すまんな。みんなには迷惑を掛ける」
その頭を優しくアルドが抱き締めて
「良いのよ」
その優しさにファクドは甘える事にした。
◇◇◇◇◇
ティリオは帰る最中、色々と考える。
ファクドとルビシャルは、相当な覚悟と考えがあってこの学園に来ている。
それはグランナも同じだ。
他の生徒達も…。
この学園に来ている生徒達の事情を知り考え込むティリオの前に、小型モービルで通りかかるエアリナ
「アンタ、こんな時間まで何やっているのよ?」
ティリオが淡々と
「散歩だ」
エアリナが一人乗りようのバイクのような小型モービルから降りて
「そう、じゃあ…ちょうど良かった。話したい事があるの」
ティリオが微妙に嫌そうな顔で
「明日にしてくれないか?」
「直ぐに済むわ」
と、エアリナが胸を張って腰に手を置き
「アタシの嫁さんになりなさい」
ガクンっとティリオは体勢を崩した。
「いや、オレ…既婚者なんだけど…」
エアリナがティリオを指さしながら
「知っているわよ。アンタには嫁さんが三人いる。でも、問題ないわ。
アタシが婿で、アンタが嫁になれば、アンタはアタシの嫁になるの。だから重婚じゃあない」
ティリオは頭を抱えてしまう。
ファクドとの高度な読み合いの後に、このようなアホ理屈をかざされて頭痛がしてきた。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
続きを読みたい、面白いと思っていただけたなら
ブックマークと☆の評価をお願いします。
次話を出すがんばりになります。
次回より、新たな章になります。
次章、表裏一体編、シャナリアの言葉