星光 第15話 忍び込む罠
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ティリオがデウスマキナの生徒へサポートマネージャーとしての役目をしている裏側では…
学園への食料搬入のコンテナ達に、スラッシャーが密かに仕組んだ罠が入り込む。
コンテナの中には、二メートル前後の様々な食料の原料が入ったカプセルのタンク達があり、そのカプセルのタンクの幾つかが壊れて、そこから蠢く黒い影がコンテナから出て行く。
それは黒い装甲に包まれたマシンで、マシンはステルスに身を包んで移動していく。
向かう先は、様々なマキナの素材がある素材格納庫だ。
黒いマシンは、二メートル近い躯体をステルスに包んで隠して、素材格納庫へ到着すると、全身から様々な端子を伸ばして素材達を取り込む。
この一連の出来事は、スラッシャーが侵入した時に隠して設置したネットワーク端末によって学園内のシステムから隠されていた。
そして、スラッシャーは…とある人物にメールを送信した。
それを受け取ったのは、学園内の生徒だった。
生徒は、メールを受信した端末を握り締めて震えていた。
スラッシャーは、メール送信の後に楽しげだった。
「さあ、どうする英雄の呪詛持ちさん…」
と、ティリオが映る画面を見つめた。
◇◇◇◇◇
ティリオは、ルビシャルのデウスマキナの生徒のマキナ訓練を続けていた。
「そう、それが機神の最も有効な戦い方だ」
ティリオがゼウスリオンのコクピットにいながら、用意したゴールドジェネシスのマキナの模擬機体を遠隔操作して、六人のデウスマキナの生徒が乗るマキナ達と訓練戦闘をしていた。
デタラメな方向に動く関節に惑わされるデウスマキナの生徒だが、ティリオの指摘の通りに体の中心を見定めて大きく動きを読むと、縦横無尽で操り人形のように動く模擬機体の攻撃を避けられるようになる。
ティリオは模擬機体を操作しながら訓練するデウスマキナの生徒達を見つめて
「なるほど、おべっかを使われたのか…」
ティリオの両隣と前の操縦席に座るジュリアとナリルとアリル。
前の席のジュリアが
「どういう事?」
ティリオが厳しい顔で
「自分達の方へ引き込む為に、優秀な人物達を訓練に参加させて好印象を持たせた…そう見るべきだろう」
アリルが
「本当に? 私にはそう思えないんだけど…」
ティリオは
「でなければ…これ程に早く訓練の成果が出る訳がない」
ジュリアとナリルとアリルの三人が顔を見合わせる。
それってティリオの教え方が上手いからじゃあないの?と思うが…
ナリルが
「なら、いいじゃない。無駄にならなかったし、受けてくれた人達も成長できて良かったじゃない」
ティリオが
「う…ん、まあ、そうだな…」
◇◇◇◇◇
訓練を終えたティリオ達は、昼食をデウスマキナの生徒のホームで取る事になった。
そこにルビシャルもいて
「いやぁ…流石、戦闘のプロだね。ウチの生徒のレベルを上げてくれて、感謝、感謝」
と、ルビシャルは微笑む。
大きな食堂のテーブルにティリオ達四人と、ルビシャルに訓練を受けた六人がいた。
ティリオが食事が乗るパレットをつつきながら
「六人とも、それなりに戦いのセンスがある。今回、訓練した各々の特徴を伸ばすのをして欲しい」
そこへ訓練を受けた六人の一人、男子生徒が
「あの…それだと欠点をそのままになって、良くないのでは?」
ティリオに訓練を受けた全員の視線が集中する。
六人とも長所を伸ばす訓練ばかりを受けていた。
だからこそ、それで良いのか?と…。
ティリオは冷静に
「それでいい」
と、返事をした後に
「もし、欠点を無くそうとして長所が消えたなら、それは意味が無いという事だ。欠点も長所もないという事は、つまり…平均的という事だ。それはつまり…簡単に攻略されるという事になる」
六人は驚きを向ける。
ティリオは冷静にかつ的確に
「逆に言えば、自分の欠点が分かっているという事は、それに陥らないように戦えば良いという理解でもある。デュエロタクトは、互いにぶつかる戦術でもあるが、その全体的な動きは戦略でもある。戦術で上手くいかないなら、戦略を使えばいい。その逆もしかりだ」
ルビシャルが
「要するに、ゴールドジェネシスのマキナの戦いは戦略に近いのよ。そして、アタシ達、デウスマキナの戦いは戦術なのよ。アンタ達六人は戦術は得意でも戦略は下手って訳なのよ。そういう事」
六人は納得して一人の女子生徒が
「分かりました。ティリオ様、今回の訓練、ありがとうございました」
ティリオは首を横に振り
「これもサポートマネージャーの仕事ですから、気になさらずに」
◇◇◇◇◇
ティリオは、サポートマネージャーとしての仕事である訓練の手伝いを終えて、夜の時間帯である学園を散歩していた。
そこへ「よう…」と呼びかけるファクド。
ティリオが立ち止まり
「次は、そっちの訓練の手伝いかい?」
ファクドが微笑みながら
「それもお願いしたいんだけど。少し話さないか?」
ティリオが頷き
「構わないが…」
ファクドが
「なんなら、オレのホームに来ないか?」
ティリオが考えて端末を取り出すと自分のホームにいる嫁達に連絡する。
「連絡したから、問題ない」
ファクドが呆れ気味に
「別に学園内なら連絡なんて問題ないだろう」
ティリオが
「色々とあるんだよ」
ティリオは、ファクドと共にファクドのホーム、ゴールドジェネシスのホームへ向かった。
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次回、ファクドのお茶会