第79話 ディオスの夫として
次話を読んでいただきありがとうございます。
ゆっくりと楽しんでください。
あらすじです。
ディオスは何時も通りの日々を過ごし、王宮にてゼリティアと一緒に楽しく昼食を取っていた…。
そして、身重のゼリティアに変わり、ヴァルハラ財団会長の誕生日パーティーに行くのであった。
その日、ディオスは王宮に来て新しい法律や、制度を精査する日だった。
身重のゼリティアの手を取ってディオスは、王の執務室で並べられたイスに、隣にゼリティアを座らせて自分も座り、話し合いが始まる。
資料が皆に行き渡り
「今回は、コレを協議するわ」
皆の正面、王執務デスクにいるソフィアが声を掛ける。
資料を捲り、様々な話し合いをする。
特に、ディオスが絡むような案件もなく。何時も通りに終わって昼食。
ディオスはゼリティアと手を繋ぎながら、食堂へ向かう。
その後ろ姿に、ナトゥムラが
「全く、ベタベタで、見ているこっちが恥ずかしいよ」
隣のスーギィが
「ああ…全くだ。一応は、王宮内だ。節度は守って欲しいモノだ」
ナトゥムラが
「でも、まあ…ゼリティアのお陰でぶっ飛んだ事をしないようだから、いいけどよ」
フッとスーギィは苦笑して
「まあなぁ…」
ディオスは、ゼリティアと共に、昼食を食べていると、食堂にある大型魔導通信水晶の立体画面に、緊急ニュースと出る。
「なんだ?」とディオスは興味深そうに見つめる。
「何じゃ? とくに大きな動きは聞いておらぬぞ」
と、ゼリティアも首を傾げた。
立体画面のアナウンサーが
『本日、アリストス共和帝国の皇帝、アインデウスより。緊急の記者会会見が行われるようです』
画面が、アリストス共和帝国の政府用記者会見の場を映し出す。
そこに、ディウゴスが姿を見せ
『国民の皆さん。おはようございます。念のために言っておきますが…。わたくしは不老不死ではありません。様々な昔の写真が世に出回っていて、昔のドラゴニックフォース左翼軍団長が同じ姿である故に、不老不死等という都市伝説が出回っていますが…。全くのウソです。過去の写真は全て、同じ血筋の左翼団長達なのです。その子孫であるわたくしがそっくりなのは当然です。いいですか! 変な都市伝説に踊らされぬように…』
『はははははは』
と、記者達の笑い声
『まあ、冗談はここまでにして、本日の言葉に参ります。皇帝閣下』
ディウゴスの声と共に、会見の幕裏からアインデウスが姿を現す。
ディウゴスは一礼して、会見のマイクの場所をアインデウスに譲り
『ああ…親愛なる帝国の皆よ。おはよう…』
アインデウスが話す。
『今日、集まっていたのは他でもない。数ヶ月前に南で起こった事件についてだ。優秀な記者諸君達だ。何となくは察しがついているだろうが…。我が帝国で南と北を分断する争いがあった。その原因は、北と南の格差が原因だった。非常に重要な事であると…私は認識している。南の独立を訴えた者達は…千年前に開発された超魔導兵器エルギアを持ち出した。エルギアはまさに強大な魔導兵器だ。大きな争いに発展する筈だったが…とある人物によって未然に防がれた』
ザワザワ…と記者達がざわめく。
アインデウスは冷静に…
『その争いを治めてくれたのが…。かの、アーリシアを平和に導いた。ディオス・グレンテルである。彼の活躍によって、復活したエルギアは押さえられ、無事に反乱は収まった。この発表をするに当たって遅れた事を詫びたい』
アインデウス皇帝は、軽く頭を下げ
『そしてだ。この功績を讃えて、ディオス・グレンテルに、私から勲章を授けたい。ついては…今、現在…バルストラン共和王国の王に連絡を取っている最中だ。是非とも受けていただきたい。以上である』
記者達が質問が始まった。
手を上げた記者をディウゴスが指さし、質問に丁寧に答えている。
反乱を起こした者達にはどのような処分が?
確かに許されないでしょうが…。彼らが起こした理由も理解出来るので、寛大な処置を検討中です。
どうして、秘密にされていたのでしょうか?
事の大きさを考えて、秘匿にしなければならなかったのです。
記者達の質問する光景を映す、バルストラン王宮の食堂では…。
食事をしていた全員の視線が、ディオスに集中する。
となりにいるゼリティアは、呆然としている。
ディオスは、両手で顔を隠して
何で、こんな事に…
もの凄い絶望に近い念を放っていると…その肩に手を置く人影
「ディオス…」
と、マフィーリアである。
「陛下が呼んでいるぞ」
その夜、ディオスはゼリティアの城邸にいて、ゼリティアの私室にいて、ゼリティアの大きなお腹に頬を寄せて虚空を見ていた。
結局の所、アインデウス皇帝の勲章を受けるとなって、何が狙いなのだろうか?
ソフィアにカメリア、ゼリティア、レディアンにディオスと五人で話し合っていると、ゼリティアが
「もしかしたら…ロマリア皇帝が、非公式で来た事が原因か…」
ソフィアが
「どうして?」
ゼリティアは、扇子を広げ
「おそらく…ロマリア側に引っ張られていると思われたのじゃろう。と…なると…アリストスには面白くない」
レディアンが
「はぁ…。つまり…こっちにも引っ張りたいとして…極秘にする事を出したのか…」
ゼリティアはレディアンを見て
「そうじゃ。極秘にするより、こうして、夫殿を引き込む方が得だと、判断したのじゃろう」
レディアンは苦々しい顔をして
「まどろっこしい…」
ソフィアが親指の爪を噛んで
「ロマリアとアリストス、両方に引っ張られる。とんでもないシーソーね」
ゼリティアが
「いいや、悪くない状況じゃ…。つまり…我らアーリシアは中立でいよ。そういうメッセージでもある。上手く渡れば、得は大きいぞ」
レディアンが
「変わったなゼリティア。前だったら、道を邪魔するモノなんぞ蹴散らせではなかったのか?」
ゼリティアが赤ん坊がいる大きなお腹を擦り
「もうすぐ、妾も母親になる。やや子の為にも、こういう搦め手も使わんとな…」
レディアンは「ほぉ…」と唸った。
母は強しか…とレディアンは思った。
そう、ゼリティアがディオスとくっついてから、その雰囲気が変わった。
大公の貴族のような強い威圧ではなく。大きく安心感のある包み込んでドッシリとした安定感に、それはさながら…賢母の女王のようである。
レディアンは、とある噂を思い出した。
ソフィアの王位が終わった後、次に来るのはゼリティアだと…。
まあいい、自分は大きく守護の力があるアーリシア統合軍の将軍だ。それで良しとしよう…。
城邸でゼリティアのお腹にいる赤ん坊の感触を確かめているディオスの頭に、ゼリティアが触れ
「そんなに心配するな、大事にはならんから…」
ディオスは「はぁ…」と溜息を漏らし
「なんで、こんなに面倒クサい事が来るかなぁ…」
「そうじゃの…。なら…将来は、オルディナイト財団の理事長にでもなれば、そのような事に巻き込まれないやもしれんぞ」
「ふ…」とディオスは鼻で笑った。
実は、ディオスはゼリティアとの結婚式の時に、宣言した。
「オルディナイト大公であり、将来、オルディナイト財団理事長のゼリティアを、一生、支えていきます!」
そう、言い放った後、招待客のお酒回りで
「なんで、ディオス様は、そんなにも野心がないのですか!」
「そうですよ! 将来は、ディオス様がオルディナイト財団の理事長となって、ゼリティア様を支える! 素晴らしいではありませんか!」
「ディオス様、オルディナイト一門は、貴方様が、理事長になっても、誰も文句はないのですよ!」
みんなから、散々、野心がないのが困るだ! もっと欲をもった方がいい! そんな事を言われた。
だって、オルディナイトは、オルディナイトの人達のモノなんだから、それを横から来てかっ攫う真似なんて出来ないよ。
そう、ディオスは思っていた。
「いいんだよ。オレはゼリティアを支えるって決めたんだ。それでいいの」
と、ディオスは告げる。
「はいはい」
と、ゼリティアは微笑むと、私室のドアがノックされる。
「ワシじゃ…」
バウワッハの声だ。
「どうぞ、お爺様」
バウワッハが入る頃には、ディオスはお腹から離れてゼリティアの隣に座る。
バウワッハが、ディオスの左にあるソファーに来て
「少しいいかのぉ…」
「はい」とゼリティアは頷く。
バウワッハは言い辛そうに
「実は…明後日なぁ。ヴァルハラ財団のエレオノーレ会長の誕生日のパーティーがある」
「ああ…もう…そんな時期ですか…」
ゼリティアは頷く。
バウワッハが
「それでのぉ…。まあ、ゼリティアは身重だから行かせられないが…」
と、ディオスを見る。
ディオスはキョトンとして自分を指さし
「え…もしかして、自分が…」
「ああ…まあ、是非、呼んで欲しいという声もあってのぉ…」
「分かりました」とディオスは快諾した。
「すまんのぉ。お主はこういう華やかな場所が苦手なのは、分かっている。だから、ワシの後に付いてくるだけで良いぞ」
「いいですよ。そんな…ゼリティアの夫なんです。ゼリティアの為ならなんでもします」
「そう言ってくれるとありがたい」
屋敷に帰り際、城邸の門の所で、ディオスが
「あ…セバスさん」
送り迎えをしてくれるセバスにディオスは、金貨五枚を返す。
「これ…前の賭のお金です」
「ああ…」とセバスは受け取る。
そう、セバスとはゼリティアと結ばれるという賭をしていたのだ。
セバスは金貨を握りながら
「次の賭けをしたいのですが…。もう…ゼリティア様のお腹には、お子が…」
「ああ…」
そう、結ばれた後、子供が出来るという事をゲン担ぎにしたかったが…直ぐに出来てしまったし…
「では…ゼリティアとの間に、二人目の…」
セバスは微笑み、新しい金貨を取り出してディオスの渡した。
ディオスはニヤニヤと笑み
「これ、強力だから…直ぐに…」
「ええ…楽しみにしております」
そうして、ディオスは屋敷に帰った。
二日後、昼過ぎにディオスは屋敷で、スーツに身を詰んでいた。
「これでいいかなぁ…」
スーツに魔導士の正装である魔導士のローブを纏い。
「うん、決まっている!」とクレティアは喜び。
「やっぱり、そういう礼服が似合うわ」とクリシュナは頷く。
ディオスは二人に
「なぁ…二人とも…。こういう時みたいな事が、二人にもあるなら…オレは喜んで二人の支えになるぞ。だってクレティアとクリシュナはオレの妻なんだぞ。妻を支えるのは夫の当然の仕事だ」
クレティアとクリシュナは微笑んだ顔を向け合い
「はいはい、分かったから。ダーリン」
「さあ、時間でしょう」
クレティアとクリシュナに背を押されて、屋敷の前で待っているバウワッハの乗る黒塗りの高級魔導車に乗せられた。
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