星光 第4話 デュエロタクトの戦い
次話を読んでいただきありがとうございます。
ついに始まったティリオの補佐によるエアリナのデュエロタクトの戦い
しかし、相手のグランナは相当な操縦者で…それに二人は…
別の頃、シュルメルム宇宙工業学園の外周にある宇宙港に一隻の千メートル級の時空戦艦が着岸する。それは…機神型時空戦艦要塞エルディオンであった。
その主は、ティリオの父親、聖帝ディオスであった。
ディオスが共を連れて渡ると
「ようこそ!」
理事長のヴィルガメスが出迎える。
ディオスがヴィルガメスと握手して
「どうも、この度は息子ティリオの事で…感謝いたします」
ヴィルガメスはディオスを連れて
「さあ、話はこちらで」
ディオスが
「ティリオは?」
ヴィルガメスが
「今は、学園内の案内をしているので…それが終わったら…」
「そうですか」とディオスは無事にティリオが入学できたと思っていた。
ティリオが問題に巻き込まれているなど、一欠片も思っていない。
◇◇◇◇◇
ティリオを副操縦士としてエアリナが操縦するゼウスリオンが荒野の戦闘試験区域に到着する。
空に張り巡らされたレールから降りて来るゼウスリオンのカーゴ。
同時に別の人型機体マキナも到着して、ゼウスリオンとそのマキナが睨み合う位置にカーゴ達が着陸して、ゼウスリオンとそのマキナがカーゴから降りる。
そのマキナは赤と黒に包まれた重装備のマキナ…グランナの機体ガイオだ。
ティリオは、その黒と赤いデザインのマキナ…ガイオが鎧武者型のクガイと同じに思えて仕方ない。
やっぱり桜花の時空にあるクガイと似ている。
グランナが通信で
「今なら、ケガをしないで済むぞ」
エアリナが息巻いて
「冗談、アンタが覚悟しなさいよ!」
グランナが笑み
「その減らず口、折ってやる」
そこへティリオが割り込み
「あの…一つ…聞いて良いですか?」
グランナが訝しい顔で
「なんだ?」
ティリオが冷静に
「その機体…いや、マキナ…。セレソウム時空のクガイと似ているような…」
グランナが得意げに
「そうさ、オレはセレソウム時空の宇宙王の系譜に並ぶ者! グランナ・アルド・親王! このマキナはクガイ技術から作られた。オレの為に調整、用意されたマキナなんだよ」
ティリオは「ああ…」と納得するも、それ以降は目立つまいと静かにする。
グランナがマキナ・ガイオの指さしで
「さあ、始めようぜ」
対峙する二機の間にデュエロタクトのデータ画面が出る。
ファクドの音声が響く。
「両者、各々が提示する契約を復唱する。グランナ・アルドはエアリナ・シュルメルムを許婚にする権利。エアリナ・シュルメルムは、グランナ・アルドを配下にする権利。そして…武装だが、各々のマキナのエネルギー限界値は無しという事で。勝敗は、マキナの完全沈黙か、頭部の破壊で勝利。ただし、操縦者が操縦できないダメージを蓄積したら、それで敗北。無論、操縦者を殺害した場合は、当然だがデュエロタクトは無し。以上だ」
「おう」とグランナが、「ええ…良いわ」とエアリナが了承した。
ファクドが
「では、両者、対戦を開始!」
グランナのガイオが動く。
右手の装甲と一体化する武装から光線を放つガイオ。
それにエアリナが操縦するゼウスリオンも動き飛ぶ。
飛翔して回避するも
「バカが!」とグランナはガイオで追撃する。
遮蔽物のない上空は絶好の標的だ。
エアリナが思考制御で防護する。そのアシストをティリオが行う。
ゼウスリオンが光線攻撃拡散のシールドを展開。
ガイオからの攻撃を防ぐもグランナが
「ほう…やるじゃあいか!」
と、ガイオの地面高速ホバーで、着陸したエアリナのゼウスリオンに迫る。
そこへ
「これは耐えられるか!」
と、グランナのかけ声と共にガイオの強烈なキックがゼウスリオンの腹部に入る。
「あああああ!」とエアリナが叫ぶも、ティリオは冷静にゼウスリオンを操作して、吹き飛ばす勢いをバックで転がしながらブレーキを掛ける。
◇◇◇◇◇
それをデュエロタクトのラウンジで見るファクドが
「へえ…エアリナの操縦技術ではないなぁ…」
隣にいるレリスが
「ああ…多分、エアリナと一緒に乗っている彼のお陰だ」
ルビシャルが
「おてんば娘様が上手く扱えるのも、同伴者の彼のお陰って訳ね」
◇◇◇◇◇
三人の言葉通りだ。
操縦技術に関して明らかにグランナの方が上だ。
グランナは定番で最も強い戦法を使っている。
グランナの操縦するガイオの遠距離武装兵器で、距離を詰めつつゼウスリオンに攻撃する。
エアリナが操縦するゼウスリオンは、様々な装備があるにも関わらず、装備の距離感をつかめていないのか、近距離で遠距離の光線兵器を使ったり、遠距離なのに近距離のソード兵器を使ったり、明らかな素人の動きだ。
グランナの方が攻撃で押しているにも関わらず、エアリナにダメージの蓄積は少ない。
卓越したティリオの操縦技術が素人のエアリナを救っている。
グランナのガイオに攻められるエアリナが「ねぇ!」と前の席にいるティリオに呼びかけ
「アンタも手伝って!」
ティリオは淡々と
「手伝っている。それに…この戦い。君の操縦で勝たないと意味はないだろう」
「う、ぐ…」とエアリナは当然の事を言われて黙る。
そこへグランナの通信が入り
「無様だな…エアリナ。お前と一緒に戦っているヤツが、お前のヘボい操縦でのミスを助けているのにも関わらず、オレに勝てない…。よちよち歩きの赤ん坊と同じだ」
エアリナがハッとする。
ティリオが
「相手の挑発に乗るな」
と、冷静に警告する。
グランナが「しまいだ」と告げた次にガイオが光を放つ。
ガイオの肩や脚部、胸部からフィンのような開きが現れて、そこから光の粒子を放つ。
「ハイパードライブ」
と、グランナが告げた。
グランナは、超越存在…宇宙王の系譜ゆえにその力の一端を召喚できる。
二十メートル級のマキナのガイオが赤き光に包まれる。グランナのハイパーグレードの力が付加される。
二十メートル級の巨人が持つスピードを超えた攻撃がガイオから放たれる。
それにゼウスリオンは回避できず直撃する。
「ああああああああ!」と操縦席で叫ぶエアリナ。
ティリオは黙って防御の作業を続ける。
◇◇◇◇◇
デュエロタクトのラウンジでは、ルビシャルが両者の操縦者が負うダメージの立体画面を持ちながら
「これは、もう…エアリナが持ちそうにもないわね」
その隣にファクドが来て
「エアリナは、40%を超えたか…。仕方ない」
レリスが
「彼は? エアリナの補佐をしている…」
ルビシャルが笑み
「タフよ。10%未満。多分、相当に鍛えているのかも」
ファクドが
「当然だろう。素人に合わせられる技量があるんだから。ウチに欲しいなぁ…」
ルビシャルが手を上げて
「アタシも欲しい」
レリスは沈黙だ。
◇◇◇◇◇
グランナが権能を使って強化したガイオの攻撃の衝撃が、操縦席にいるエアリナに襲いかかる。
エアリナは自分のダメージが蓄積する画面のバー表示を見る。
見る見る上がっていき、それと同時にエアリナの意識も薄れていく。
「やだ…私…そんな…母さんを…助けたい」
と、涙を零す。
悔しさと自分の弱さが嫌になる。
それを前の操縦席で聞くティリオは「はぁ…」と溜息を漏らし
「今回だけだからな」
グランナがガイオの拳に極大の力を乗せて
「おおおおおお!」
紅蓮の光球の一撃が迫る。
それにゼウスリオンの手が伸びる。
「バカが!」とグランナが勝ち誇る。
だが…次の瞬間、起こったのは信じられない事だった。
圧倒的なエネルギーの一撃を何もないゼウスリオンの片手が止める。
操縦席のティリオが赤く瞳を輝かせる。
その後ろに席にいるエアリナが驚愕に黙ってしまう。
ティリオの両腕と背中から黄金の陽光が昇り操縦席を包む。
◇◇◇◇◇
デュエロタクトのラウンジでは、ルビシャルが持つ両者のステータス画面に異常が現れる。
それは、ティリオとエアリナが乗るゼウスリオンのエネルギー値がデタラメに上昇する。
ルビシャルが驚き、ファクドが
「何が起こっている!」
◇◇◇◇◇
グランナがガイオの操縦席で驚愕する。
「な、何が…起こっているんだ?」
目前にいるゼウスリオンの装甲が爆散して外れる。
その素体となっている機神のそれが様々な箇所に何かを伸ばす。
黒い機神の素体が白銀に染まり、黄金の翼を伸ばす。
それと同時に膨大なエネルギーが噴出して、グランナのガイオを吹き飛ばす。
巨大な爆発の爆心地となるティリオの機神。
黄金と白銀の甲冑のような装甲に黄金の翼を伸ばす機神が吠える。
ヴォオオオオオオオ
それだけで、このシュルメルム宇宙工業学園の百キロの金属大地が震える。
ゼウスリオンは、オメガデウス・ゼノディオスになる。
ゼノディオスになった機神は、光の速度を超えてグランナのガイオに迫り、黄金の翼から黄金の光の一閃を放ち、ガイオの両手足を粉砕、そして頭部を一撃で掴み千切る。
「ぐああああああ」
グランナが何が起こったのか理解できずに操縦席の転がりに襲われて倒された。
圧倒的な力で勝利したゼノディオスの操縦席からティリオが出てくる。
ティリオは、周囲を見るとクレータのように地形が変わっている荒野だった戦闘試験区域を見渡して
「やってしまった…」
と、青ざめて額を抱える。
エアリナも出てきて
「アンタ…何者…なの?」
ティリオは淡々と
「普通の留学生だよ」
エアリナがティリオに掴みかかり
「そんな訳ないでしょう!」
と、ティリオに迫るが、エアリナは内心で
この人なら…。
そこへ頭上からマキナの部隊と、別の部隊が降り立つ。
その別の部隊とは、ゼウスリオン達だ。
そのゼウスリオンの手に乗っているのは、ティリオの父親であるディオスだ。
ティリオは父ディオスを見つけて
「ああ…父さん…」
ディオスを手に乗せるゼウスリオンがティリオのゼノディオスの隣に降りて、ティリオがいる操縦席のドアにディオスが降りて
「ティリオ…事情を…説明して欲しい」
ディオスの部隊と共に来たマキナの部隊がグランナの保護へ向かい、グランナが操縦席から救出されつつ、ディオスと並ぶティリオの姿に
「お前…まさか…聖帝の血族なのか!」
ティリオは項垂れる。
穏やかじゃない学園生活が始まる予感しかない。
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次話を出すがんばりになります。
次回、隠れた有名人