第789話 理由
次話を読んでいただきありがとうございます。
聖ゾロアスの事案は、聖ゾロアスの覚醒という最悪な結果に終わった。
動き出す聖ゾロアスの謀略の前に一莵が…ティリオの前に現れて…
目の前に現れた一莵達に、ティリオの隣にいた彼女達三人は、すぐに反応する。
両手に魔導剣を握り構える前に、一莵の周囲にいたディジレーターのジャンヌと巴が消えて
「おっと、戦いに来た訳ではない」
と、ジャンヌと巴がジュリアとナリルとアリルの三人の背後に立つ。
ジュリアとナリルとアリルの三人は、背後から放たれる人外の威圧に動きが止まるしかない。
ティリオは、静かに一莵を見つめていると、一莵が
「あそこの喫茶店に行こう」
と、歩み出す。
それにティリオが続き
「ティリオ!」
と、ジュリアが止めて、ナリルとアリルが従わないで…と懇願していたが
「分かった」
と、ティリオは一莵に続く。
大きな通りが見える喫茶店のテラス席で、テーブルを挟んで一莵とティリオは座る。
一莵は大通りの風景を見つめて、ティリオはジッと一莵を見つめる。
ディジレーターの四人と、ティリオの彼女達三人は別のテーブルに座って睨み合っている。
その中で先輩の少女のユノが
「まあまあ、美味しい食べ物を食べて楽しみましょうよ。すいませーーん」
と、店員を呼んで色々と頼む。
一莵を見つめるティリオが
「どうして、こんな事をしたの?」
一莵は視線をそのままで
「必要だったからだ」
ティリオが悲しい顔で
「だから、ぼくを…殺したの?」
一莵は目を閉じて
「後で…ゾロアスが生き返らすのは決まっていた」
ティリオが俯き
「それでも…ツラかった」
そこへディジレーターの先輩の少女ユノが来て
「聖帝の息子くん。一莵は…実は…君を傷つける作戦に最後まで反対していたんだよ。でもやるしかなった。それだけは分かって欲しいかな」
ティリオが
「それでも…なんでアヌンナキなんて…」
一莵が
「それが…運命だったから、宿命だったからだ。オレの命が進むべき道だった」
ティリオの目が潤みながら
「それは、ぼくと同じだったって事? 聖帝ディオスの子として生まれた、ぼくと…」
一莵は真剣な瞳を向けて
「ああ…そうだ。君は血縁、オレは…あらゆる絶望的な可能性の果てに…」
先輩の少女ユノが
「聖帝ディオスの子である君は、祝福された血縁の未来があった。一莵は、全ての絶望の先に…世界に進化をもたらす悪を生産する未来があった」
ティリオが静かに涙しながら
「ぼくは、弱い…一莵を救えなかった。何も出来ない子供だ」
一莵がその涙を拭いて
「いいや、そうでもない。オレは…ティリオと過ごした日々がとても楽しかった。きっと生涯で最後の友人は、ティリオだけだ。今後…友人は永遠にティリオ以外、現れないだろう」
ティリオが泣き続けると、一莵が優しく
「君は君の優しい運命を生きてくれ。オレは…数多の悪を生産して世界を進化させる絶望の道を行く。そこで、オレ達が生産した人工養殖の悪とぶつかるかもしれない。でも、君は絶対に負けない。君は光だ。ありがとう、我が生涯の友よ」
と、ティリオの頭を優しく撫でて
「ティリオが一番大好きだった」
と、告げて立ち上がり
「隠れてないで出てこい」
周囲の店の影、屋根、木の陰からアーマーゼウスリオンに身を包む軍団と、セイントセイバー達、そしてディオスと充人、北斗、ゴールドジェネシスの部隊、更に一莵達がいる喫茶店の屋根の上にヘオスポロスのエピオン達が現れた。
その全員が殺気立っていた。
ジュリア達三人とお茶をしていたディジレーターが席を立ち、巴が
「これほどの戦場の殺気、気持ち良い」
奈瑞菜が
「冗談、言わないで面倒よ」
一莵達を完全包囲する軍団からディオスを筆頭に完全武装のルビードラゴンと北斗、充人、ナトゥムラの最強の五人が歩いてくる。
ディオスがティリオの隣に立ち、ティリオを抱えて
「わざわざ、捕まりに来てくれてありがとう」
と、皮肉を込めて口にする。
一莵が溜息交じりに
「まあ、最初から接触した時にバレているのは…分かっていたけどね」
殺気がみなぎるルビードラゴンが右手に赤き剣と左手の斧の手甲をギラつかせながら
「さて、抵抗するなら容赦はしないが…このまま捕まるなら…身の保障はする」
放たれる雰囲気から、明からに潰したいという気が満ちている。
一莵が
「残念だけど、我々は争いにも捕まりに来た気もない」
と、告げた瞬間、一莵とディジレーター達の背後に蜘蛛の巣のような歪みが広がって、一莵とディジレーター達が瞬間移動して消えた。
その寸前にルビードラゴンと充人にナトゥムラが手を出していたが…空振りに終わった。
一莵達は逃走したが…ディオスはティリオに
「大丈夫か?」
ティリオは静かに頷くだけだった。
一莵達は聖ゾロアスの元へ帰還する。
数多の宇宙空間を投影する神座の王席に着席する聖ゾロアスが目の前に帰ってきた一莵達に
「お帰り…言葉は紡げたかね」
一莵は頷き
「ああ…もう、お別れを済ませた。これで…心残りはない」
聖ゾロアスが微笑み
「嫉妬するなぁ…一莵にそれほどの気持ちを持たせるなんて」
一莵が
「饒舌になったなぁ…ゾロアス」
聖ゾロアスが楽しげに
「そうさ、私は人、ホモデウスなのだからね」
と告げて、聖ゾロアスは立ち上がり
「さて、我々のやるべき事をしよう。あまねく全ての時空達に存在する生命…知性体に進化を、その為の作られた悪を生産しよう」
聖ゾロアスは予言者のように
「全ては進化という愛の為に…」
ここまで読んで頂きありがとうございます。
続きを読みたい、面白いと思っていただけたなら
ブックマークと☆の評価をお願いします。
次話を出すがんばりになります。
次回 新たな光