第785話 裏謀躍王
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一莵達の軍勢がディオス達を待ち構えていた。
そして…
ディオス達は、鋭い視線で一莵達を見つめる。
一莵達の後ろには、メルカバー内部と繋げた奈瑞菜の空間転移の編み目がある。
一莵は立ち上がり背を伸ばして
「本当に待ちくたびれましたよ。会議が好きなんですね」
一樹が
「一莵、頼む話を」
一莵の右腕が砲身に変貌して一樹を撃つ。
一樹が反応するより早い光速の弾丸が一樹に衝突して数十メートルも吹き飛ばした。
無様に転がった一樹を横に一莵が
「全く。ゾロアスもイタズラが過ぎる」
一莵側のアルファティヴァが笑み
「そこがゾロアスの面白い所だ。一莵くんも、自分を苦しめたクソ親父を痛めつけて楽しいだろう」
一莵が嬉しげに残酷な笑みを浮かべ
「ああ…楽しいよ。本当に楽しい。あのクソをなぶれるなんて…最高の快楽だ」
アマカスが両手を開き構えようとしたが、ディオス達の後ろから海が流れ込む。
巴が
「相手なら私がするわ」
流れ込んだ海の向こう側から旗槍を持った騎士隊の軍勢が現れ、ジャンヌが
「サタンヴァルデウス、お前達は内側に罪人地獄を持つなら、我らディジレーターは外に向かって地獄を放てる。胎内曼荼羅が勝つか、世界波動が勝つか…試してみるか?」
セイントセイバー達が構えると、アルファティヴァは指を鳴らす。
それは、遙かアースガイヤの宇宙域にあるメルカバーの格納扉群を開き、メルカバー内部に収納された光の巨人、神になろうとした実験体の成れの果てが放出される。
アルファティヴァが
「これと戦うのは楽しいぞ…ディスカードは一機でロアデウスに匹敵する性能を持っているからな」
アースガイヤにディスカードの軍勢が、天使の輪を持つ光の巨人達が降りて来る。
ディオスの視線が険しくなる。
それは殺気を伴っていた。
ディオスは、完全に一莵を殺すつもりだ。
一莵が首を傾げて
「ディオスさん。オレ…本当にアナタのような父親の元に産まれたかった。ティリオからたくさん、アナタの良い事を聞いていましたよ。家に帰ると何時も嬉しそうに話す父親、一緒に色んな事を学んだり教え合うお父さん、何より料理が好きで何時も…大切な家族の為に労力を惜しまず。何時も何時も…本当に尊敬できて大好きなお父さん。うらやましい」
北斗が
「今なら…まだ、間に合う。こんな計画…辞めてこっちに来ないか?」
一莵が悲しげな顔で
「ダメだ。ぼくには…もう、愛してくれる人が彼しか、ゾロアスだけなんですよ」
先輩の少女のディジレーターのユノが
「アタシは?」
一莵が肩をすくめて
「ユノも含めてさ」
ユノが頷き
「なら、許す」
一莵が奈瑞菜に手を差し向けると、その手にティリオを閉じ込めた空間宝石を置く。
それを一莵は砕いて、ティリオを開放した。
一莵の目の前に出現したティリオ。
「えええ…」
と、困惑するティリオ。
「ティリオ」と一莵が呼びかけて、ティリオが振り向く。
同時に動いている者達がいた。
ディオス、北斗、ルビードラゴンの三人だ。
三人は、光より早くティリオの直ぐ後ろへ駆けつけるが、それをユノに奈瑞菜とアルファティヴァが押さえる。
北斗をユノが、奈瑞菜がルビードラゴン、ディオスをアルファティヴァが。
北斗の力を阻害する力をユノは放ち、腕を押さえて地面に打ち付ける。
奈瑞菜は、ルビードラゴンを超える膂力でルビードラゴンを地面に押さえる。
ディオスは、ゴットディオンアーマーだがアルファティヴァがデウスマギウスで掴み押さえる。
ティリオが動こうとするそこへ、一莵が
「ごめんね。ティリオ、そして…」
ティリオが仰け反る。
胸部に結晶の刃が貫き、それを刺したのは一莵だった。
一莵の右腕が結晶の巨剣に変わり、それでティリオを刺した。
「君の超越存在としての力…貰うね」
「あああああああああ!」
ディオスは激怒して、力任せにアルファティヴァを吹き飛ばす。
そして、貫かれたティリオを掴むと同時に一莵が巨剣をティリオから抜く。
胸部に穴が空いたティリオを抱きかかえるディオス
「ティリオ! ティリオーーーー」
と、ディオスは急いで治療魔法と同時に医療修復ナノマシンの塊でティリオの胸部を覆う。
虚ろな視線になるティリオは、貫かれた胸部から結晶が広がりティリオを包み混んでいく。
「なんだ、これは!」
と、ディオスは急いでサードアイで解析して対処するよりも早く、ティリオが結晶に包まれて
「と、父さん…」
と、告げ終わる頃には、全身が結晶となって砕けた。
「あああ…」
我が子を失ったディオス。
その砕けた結晶の光は、一莵に降り注ぎ吸収されて一莵に黄金の光を灯す。
一莵は…ティリオをトリガーに超越存在へ覚醒した。
吹き飛ばされたアルファティヴァがディオスの隣に戻り
「裏謀躍王…許されざる者の覚醒だな」
ティリオが砕けて消えたディオスの元に、一莵…裏謀躍王が来て
「お悔やみも仕上げます」
ディオスが一瞬にして嚇怒となり
「お前がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
一莵を殺そうと超越存在の力を全開にした。
ディオスから溢れ出す黄金の粒子の柱、それに一莵も呼応して黄金の光柱を伸ばす。
そして、その黄金の光の柱からディオスを核として惑星サイズの赤と黄金の超龍帝を顕化させる。
一莵も同じく黒と白のドラグラーを権化させる。
深紅の翼、深紅の全身に黄金の脈動模様を持つディオスのドラグラー
黒き巨体に白の多脚を持つ一莵のドラグラー
事態は一気に混戦した。
アースガイヤの宇宙域でアースガイヤ惑星サイズのドラグラーの二柱がぶつかる。
その衝撃波で、宇宙が、真空が揺らいで爆発が起こる。
怒りという感情に支配されたディオスのドラグラー。
それに対応するのは、冷静な一莵のドラグラーだ。
二柱の惑星級の存在達の衝突を背に、メルカバーから降臨するディスカード、光の巨人達。
ディオスの屋敷では、サタンヴァルデウス達とディジレーターの四柱がぶつかる。
セイントセイバー達は、空へ昇りメルカバーから降臨するディスカード達を倒す。
ルビードラゴンは、アルファティヴァと対峙する。
北斗は、メルカバーへ向かい飛翔する。
アヌンナキ・ゾロアスの覚醒を防ぐ為に。
一樹は呆然として何も動けない。戦いのレベルに追いつけない。
サタンヴァルデウス達とディジレーター達。
ディジレーター達が広げる世界波動を、サタンヴァルデウス達が両手に喰らい尽くす喰手触手の力を宿して世界波動を喰らい破壊するが、ディジレーター達の広げる世界波動が押している。
ディジレーターの巴とジャンヌが、同じ騎士や武士の世界を広げる。
ディジレーターの奈瑞菜とユノが、世界大戦の戦場と幾つもの都市群の世界を広げる。
アースガイヤの上空で世界波動の浸食と、それを喰らい尽くして壊すサタンヴァルデウス達の攻防、その上には…。
セイントセイバー達が全力の形態となったゴットディオンアーマーとネオデウスの武装を使って降臨するディスカード…光の巨人を粉砕する。
世界波動の攻防と、光の巨人達の迎撃の合間をルビードラゴンがアルファティヴァと戦いながら進む。
まさに神域に達している戦場があった。
北斗は、メルカバーへ向かうが…何かに引っ張られる引力で止まる。
「え?」
と、北斗が自分を引っ張る引力の発生源、七色の歪みを放つ聖櫃を凝視すると、その聖櫃が開く。
聖櫃には、メルカバーから照射される光が届き、その光が聖櫃の中で収束して存在を構築する。
「そんな…」と北斗は絶句する。
聖櫃から出現する存在は、全長が十メートル前後の黒き竜人だ。
その胸部のコアには、腕を組んで眠るティリオがいた。
その黒き竜人の隣に黒と金の頭髪を持つ男性の幽体が出現し
「一莵がティリオくんの超越存在としての力をトリガーとした時に、私が…ティリオくん存在をサルベージしたんだよ。聖帝を止めたければ…コレから救い出すしかないなぁ…神越存在」
その幽体の男性はゾロアスだった。
「クソ!」と北斗は構えて、ティリオを閉じ込める竜人と対峙する。
北斗はティリオを救い出す為に、ゾロアスが作った竜人と戦う。
メルカバー内のゾディファール・セフィールと同化しているゾロアスが笑む。
これで…全てのコマが揃った…と。
そして、聖帝ディオスと一莵の、ドラグラー同士の衝突が…このアースガイヤの上に超高次元との穴を構築し始めた。
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次回、ゾロアスの過去