第782話 廃棄女神の贄
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ディオスと一樹がメルカバーで遭遇、そして先輩の少女のディジレーターが現れ一触即発の事態に
見下ろすディジレーターの先輩の少女を前に、ディオスと機械兵士となった一莵の父親である一樹が睨み上げる。
先輩の少女は怪しげな笑みで
「アレ? 何? そんな顔をして…私、何か悪い事を…やったか!」
と、告げた後にアハハハハハ!と乾いた笑い声を上げる。
ディオスは装備するデウスマギウス・アミダライオウを戦闘モードへ移行させる。
一樹はコクピットの中へ戻り人型機体マキナのブラック・デスの操縦桿を握る。
先輩の少女が肩を解しながら
「おじさん達は、せっかちだなぁ…ああいや、片方は違うか。不良品だもんね」
ディオスは、超光速でデウスマギウスを動かし、それに一樹のブラック・デスも続く。
先輩の少女が軽く手を上げた瞬間、その場、周囲百キロの法則が入れ替わる。
光速は光速のままで、超えられない壁ではなくなった。
デウスマギウス・アミダライオウの突貫と、ブラック・デスの斬撃を軽やかに先輩の少女が避けながら
「さて、アタシも頑張らんとね」
先輩の少女が舞った真空の宇宙空間から、プロペラ機が飛び出す。
プロペラで動く第二次世界大戦に出てきた飛行機が光速でディオスのデウスマギウスに衝突する。
真空の宇宙で動く事など不可能な筈のソレが光速で突進する。
無論、その程度のダメージ、問題ないはずが…。
デウスマギウス…創世神機とされるイチ文明でさえも宇宙文明に変えられる程の存在が吹き飛ばされる。
ディオスが「な!」と驚愕して装備するデウスマギウスの体勢を直そうとするが、そこへ次々と発生するプロペラ戦闘機がぶつかり後退する。
一樹のブラック・デスがそれ等を回避して先輩の少女に迫るが、突然に重力に襲われて大地に叩きつけられる。
一樹のブラック・デスは、泥まみれの大地に落ちた。
何度でも言おう、ここは宇宙だ。
それが、突如として泥沼の大地が出現し、そこは、髑髏の兵士達が戦い合う第二次世界大戦の戦場だった。
その戦場の災禍にブラック・デスが襲われて翻弄される。
「あははははははぁ!」
と、その全てを発生させている廃棄女神の先輩の少女が嘲笑う。
ディオスは、プロペラ戦闘機と戦艦空母の軍勢に
一樹のブラック・デスは、泥まみれの激戦区に
法則も時間もデタラメな攻撃に翻弄される。
ディオスはデウスマギウス・アミダライオウの雷撃光線でプロペラ戦闘機を墜とす。
そのプロペラ戦闘機を操縦しているのは、髑髏の兵士で哄笑しながらディオスと装備されるデウスマギウス・アミダライオウへ向かう。
ディオスは苦々しい顔の後、デウスマギウス・アミダライオウからゴットディオンアーマーのマハーカーラーへ装備を変える。
そして…
「邪魔だぁぁぁ!」
と、ゴットディオンアーマー・マハーカーラーの破壊する神格波動を放つ。
それによってプロペラ戦闘機の悪夢の攻撃は霧のように消え、一樹のブラック・デスにも届き髑髏の兵士の戦場も消えて、元通りの宇宙になる。
それを先輩の少女が見て
「さすが…聖帝様。私達の事を分かっているんだ」
深紅のゴットディオンアーマーのままディオスが
「信じられん技術だがなぁ…」
先輩の少女が両手を広げて
「技術じゃあないんだよ。存在、場所、視点なんだよ。分かるでしょう? アースガイヤの魔導文明を発達させた聖帝様なら…」
ディオスが厳しい顔で
「神格を人の形に填めて、固定化する。信じられない」
先輩の少女が
「でも、アタシ達ディジレーターは存在する」
ブラック・デスから一樹が
「その体は、オレと同じ作り物だろうが! 人の形を取る為に人の形をした器に入る。その根源は、所詮は…高次元の存在、神格。いくら人らしい形や行動をしても根本は違う。アリと人が違うようになぁ…」
先輩の少女があざ笑い気味に
「アタシ達は人形遊びなんかじゃあない。ちゃんとした人さ。交わって命を残せる女さ」
と、自分のお腹を両手で触る。
ディオスがその腹部をサードアイ、高次元知覚で観測した瞬間
「まさか…子供が? そんな、バカな…」
先輩の少女がニヤニヤと笑みながら
「アタシ達は、元は廃棄された女神、高次元の存在だけど、今は…命を宿せるヒトになったのさ。アンタみたいな不良品とは違う」
一樹が
「そんな筈はない。お前は人外だ! オレと同じ機械、マシンの体でしか存在できないバケモノだ!」
ディオスが鋭い視線のまま黙っていると、先輩の少女が
「アンタなら、この命の父親が分かるだろう? 救済の権化、聖帝様…」
ディオスのサードアイがディジレーターの先輩の少女を透過する。
超絶な程に複雑複合的な存在が、その体内に男と交わって子を宿し産む力、子宮を備えている。
それは、紛い物ではない。本当に命の永続を作り出せる母なる力だ。
生命だけが持つ命を繋げ続けるソレがある。
先輩の少女が
「アタシ達を構築する理論は、アルファティヴァが作ったけど。この命を繋げる奇跡は、ゾロアスが作ってくれたんだよ。魂を産む苗床をね…」
一樹が
「そんなの、ナノテクノロジーや、他の技術が作る紛い物だ!」
先輩の少女が
「じゃあ、聖帝様に聞きなよ。コピーだけを作り続ける培養槽だろうってね」
一樹がディオスに
「聖帝様、アレは…」
と、答えを求めようとするがディオスが口を固く閉じて鋭い顔をしていたのを見て、自分の考えが間違いだと気付き
「そんな、じゃあ…」
そして、先輩の少女が言った父親という言葉を聞いて嫌な予感が…。
先輩の少女の両隣に漆黒と黄金の装甲を待とう一莵とアルファティヴァが現れる。
一莵が先輩の少女に
「無茶をするな。お前一人の体じゃあないんだ」
先輩の少女が
「ごめんね。パパ」
と、お腹を摩る。
一樹が呆然となる。
一莵が哀れみで一樹のブラック・デスを見下ろして
「オレは、アンタみたいなクズにはならんよ」
アルファティヴァがフフ…と笑み
「まさに道化が必要とは、この事だな」
状況がメチャクチャなそこへ、ディオスと一樹のブラック・デスの下に海水が雪崩れ込む。
二人は何かの世界に囚われる。
そして、流れ込んだ海水の先から無数の騎馬兵が向かってくる。
その全員が土色の肌をした鎧武者や騎兵隊の大軍勢だ。
その先頭にいるのは、巨大な黒き馬に乗るディジレーターの巴だ。
ディジレーターの巴が構築した世界にディオスと一樹は呑み込まれて果てまで飛ばされる。
「クソぉぉぉぉぉぉぉ!」
と、一樹が叫び。
ディオスは防御に奔走する。
ディオス達が消えると、それを追跡する為にディオスが乗ってきた自動運転の魔導戦艦が動き離れていく。
ディオス達がいなくなったそこで、一莵が
「ホントに無茶はしないでくれ」
先輩の少女が一莵の頭を撫でて
「ごめんごめん」
アルファティヴァが咳払いして
「見せつけるのは、そこまでにして、アソコへ…」
と、ジャンヌとセイントセイバー達が戦っているメルカバーを指さす。
一莵が
「メルカバーを壊されては堪らんからな。ユノ…」
先輩の少女は名前を告げられて喜ぶ笑みの次に
「はいはい、行きますよ旦那様」
アルファティヴァが
「私は、巴の援護を…必要ないと思うが…行ってみるよ。それと…」
一莵が
「聖帝への揺さぶりを頼む」
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次回、ディジレーターとの戦闘
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