第781話 魂の器
次話を読んでいただきありがとうございます。
死んだ筈の父親の出現、そして加速する事態。
ディジレーター、廃棄女神の真なる力が…
アースガイヤは大混乱だった。
突如、出現したヘイムダムガッツオーを元にして現れた七色の歪みと、その中心に555と刻まれたクリスタルの聖櫃が浮かび、アースガイヤの空を一定の周期で回ってる。
その不気味な存在に近づく者達がいる。
ゼウスリオン部隊と、ネオデウスギアスの機神、マジックギガンティス達の機神の混合部隊だ。
その部隊は、とある者達と繋がっている。
聖帝の威光ネットワークで繋がった世界王族会議の面々、つまりアースガイヤの首相及び大統領、王達の通信ネットワークと接続されている。
各国家のトップ達が各々の官邸で、七色の歪みに近づく部隊の映像を見つめる。
その中にディオスもいるのは、当然であり。
その部隊の長であるは言うまでもない。
ディオスはエルディオンの艦橋の巨大画面を睨む。
現在、エルディオンはその七色の歪みから数十キロの距離を保ち移動している。
苛立つディオスへ隣にいるナトゥムラが
「落ち着け、苛立った所で…判断を」
ドンとディオスは手すりを打ち付けて
「そんな事は分かっている!」
声が荒い。
息子ティリオを誘拐されて、何時もの冷静なディオスがそこにはいない。
ナトゥムラは、マズい…と思っていると、同じく隣にいる充人が
「ディオス、下がれ…ここはオレがやって置く」
ディオスが苛立ちながら
「息子の手がかりを」
と、充人に詰め寄ると、充人がディオスの頬を軽く叩き
「落ち着け、何時もの冷静なお前がなければ…ティリオは救えないぞ」
それをディオスは聞いて頷き
「ああ…すまない。その…代行を頼む」
と、艦橋から去っていた。
ナトゥムラがそれを見つめて
「何時もなら恐ろしい程に頭が回るのに…」
充人が艦橋の前に行き
「仕方ないだろう。ディオスにとって子供は自分の命より大切だからな」
ナトゥムラが
「そういう親としてバカになる所があるから、信頼もできるんだけどな」
充人が
「そこの足りない所は、オレ達が補えばいい。それと…セイントセイバー達は?」
ナトゥムラがニヤリと笑み
「宇宙域に出現した巨大な建造物へ、ルビードラゴンが一緒に向かっているぜ」
充人がフッと笑み
「あのクソ強い戦闘民族もセイントセイバー入りか…」
ナトゥムラが
「ディオスの子供達と馴染んでいたしな」
充人が顎を摩り
「確か、メルカバー…天の車とルビードラゴンは言っていたな。ディオスも知っていたが…」
ナトゥムラが鋭い顔で
「ヘオスポロスの記録には…神を作る装置とあったらしい」
充人が眉間を寄せて不愉快そうに
「神を作る。あまり良い響きでは無いな」
ナトゥムラが頷き
「同感だぜ」
二人は艦橋の画面を見つめる。これから調査が始まろうとする七色の歪みを前に何が起ころうとも判断をする覚悟を決める。
ディオスは艦橋から下がり、一人通路を歩いているとドンと通路の壁を叩く。
「クソ、もっと早ければ…」
自分が間に合わなかった事を後悔する。
そして、額のサードアイを開いてティリオの気配を探るも全く見えない。
色んな不安が襲いかかる。
ティリオは、もう…とその不安に震えるも、気持ちを奮い立たせて集中するメンタルを取り戻す為に、静かな部屋へ向かう事にするが開いたままのサードアイが、メルカバーから飛び出た存在を知覚する。
メルカバーを見通そうとしてもメルカバー内が見えないので内部は分からないのだが、その不可視のメルカバーから飛び出した存在を見つけ
「イヴァン」
と、呼び出し
「はい」とイヴァンの立体映像がディオスの隣に立ち
ディオスが
「イヴァン、メルカバーから何かが飛び出したが…」
イヴァンが
「ミリオンで探索します。ありました」
と、それをディオスの前へ立体画面として映す。
それは、あの人型機体だ。
ディオスが鋭い顔で
「これは…」
イヴァンが
「アインデウス様のドラゴニックフォース右翼部隊から報告にありました。事態を密告した人物の機体と思われます」
ディオスが
「イヴァン、彼と接触するぞ」
イヴァンが
「了解しました。移動の魔導戦艦を用意します。それと」
ディオスが
「ナトゥムラさんと充人にも、伝えて置いてくれ」
イヴァンが
「かしこまりました」
ディオスはエルディオンに格納されていた小型魔導戦艦に乗って、メルカバーへ向かった。
セイントセイバー達は、ステルスに身を包みメルカバーへ近づく。
ネオデウスの全力装備展開であるエクセレント・アーマーの彼女達六人。
ゴットディオンアーマーのユリシーグとラハトアにアーヴィング。
阿座は、全員を運んだ機神型戦艦とドッキングしていて、遠方からの援助として衛星型に機神型戦艦を変形し九人の背後にいる。
ルビードラゴンは、全身を深紅の装甲に包み鋭い形相で近づくメルカバーへ向かう。
近づく巨大な装甲の大地に洋子が
「デカい…」
アーヴィングが
「このくらいのサイズの物体とは、何度も対峙して来たのに…なんだろう。威圧を感じる」
悠希が
「この強い感じ、まるで…」
ラハトアが
「アヌンナキ…ですよね」
ユリシーグが
「なぜ、そんなモノを入れた物体がアースガイヤに…」
ルビードラゴンが
「中に入って調査をすれば、分かるだろう」
と、メルカバーに全員が着地した。
アーヴィングが
「さて…と接続するポイントを…」
「無断で侵入とは、無礼、極まりない」
と、全員がいる後ろからディジレーターのジャンヌが声を掛けた。
阿座の通信が
「そんなバカな!」
阿座は、全員を遠方から援護する為に離れた所から機神型戦艦の衛星モードとして浮いていた。その阿座の様々なセンサーにジャンヌが現れたのが捉えられなかった。
空間転移して来たのなら、それなりの反応があるのに、まるでそこに自然と出現したかのようにジャンヌが現れた。
ネオデウス組の彼女達が反応してジャンヌに向かっていく。
奈々が剣の翼を纏ってジャンヌへ攻撃する。
その速度は光に達しているが。
「やれやれ」
と、ジャンヌが消えて奈々の背後にいた。
そして、ジャンヌの背中から幾つもの光の槍が発射され、それが奈々と追随する洋子、綾妃、悠希、朱里、愛の五人を襲う。
それにネオデウスで防壁を展開する彼女達だが、光の槍が防壁を透過して六人の胸部、ネオデウスのコアに刺さる。
ネオデウスのコアは、強固な装甲に守られて露出していないのにも関わらず、その装甲を通り抜けてコアに刺さる寸前に、ルビードラゴンとユリシーグ、ラハトア、アーヴィングの四人がネオデウス組の彼女達に刺さる寸前に破壊した。
ユリシーグとラハトアにアーヴィングは、神格の力を鎧にしたゴットディオンアーマーだ。
それが、ジャンヌの攻撃を粉砕した。
ジャンヌが笑み
「ほう…神格、神の力か…」
ルビードラゴンはゴットディオンアーマーではないが、胸部に疑似神格炉の小型コアを装備している。
ネオデウス組の彼女達がゴットディオンアーマーである仲間の元へ来る。
セイントセイバー達十人とディジレーターのジャンヌが対峙して、ルビードラゴンが
「前の時にようには行かないぞ…」
ジャンヌが髪を掻き上げて
「あの日の本星系区の時は、ルールがあったから行儀良くしていたまで…今回は…」
と、ジャンヌの背後に無数の光の槍と、その光の槍を握る光の人型が膨大に出現する。
「正真正銘、実力を見せてやるさ」
廃棄女神たるジャンヌの使徒達が現れて、ジャンヌの加護を受けた槍を握り光の速度でセイントセイバー達に襲いかかる。
メルカバーの表面で強大な閃光と爆発が連続する。
それは、ディジレーターとセイントセイバー達がぶつかる現場だった。
光の速度で迫るジャンヌの使徒達を粉砕していくセイントセイバー達だが、ジャンヌは無限に使徒を召喚して放つ。
ジャンヌは使徒を無限に生成召喚する曼荼羅を背負い。
セイントセイバー達は、各々の超魔導兵器でそれを粉砕するが、それには限界がある。
無限の兵力と、一騎殲滅の存在との戦い。
それは…。
ディオスは魔導戦艦に乗って、彼の元へ向かう。
あの人型機体が宇宙空間で立ち止まり、ディオスを乗せた魔導戦艦が近づき、ディオスがデウスマギウスを装備して出て
「すまない。驚かせて…」
と、人型機体の前に来ると、そのコクピットが開き人型機体を操縦する彼が姿を見せる。
全身が黒い装甲に両脇の腰に剣を並べて装備している彼とディオスは対面する。
彼が顔のバイザーを上げると、ディオスが
「ええ…そんな、アナタは…」
彼は笑み
「ええ…オレは死にましたよ。でも、こうして怨念となっても復活した」
と、告げて自分の手を見つめて
「こんな兵器の体になってもね」
ディオスが眉間を寄せて
「名前を聞いても良いかな?」
彼は答える。
「佐々木 一樹、佐々木 一莵の父親です」
死んだはずの一莵の父親が…いた。
その名乗りを上げた瞬間、ディジレーターのジャンヌとセイントセイバー達がぶつかる光と衝撃がディオス達に届いた。
そして
「あああ…こんな所に不良品がいやがった!」
と、ディオス達を見下ろす位置に、ディジレーターの先輩の少女が現れた。
「ゴミは片付けないとね」
と、ディジレーターの先輩の少女が残酷に笑む。
次回、廃棄女神の贄
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