第77話 アルジャンナ緩衝地帯 包囲作戦
次話を読んでいただきありがとうございます。
ゆっくり楽しんでいってください。
あらすじです。
復活した遺跡戦艦達に向けて、ディオスはとある作戦を、ロマリア皇帝に提案する。
その時、ディオスは? ロマリア皇帝は?
ディオスはクレティアをクリシュナと共に、空へ飛翔する復活した古代遺跡戦艦達を見上げる。
完全にこの世界の飛空艇の原理で動いてはいない。
大地を威嚇するように唸っている古代の艦隊。
その艦隊が向かう先は…北東だ。
ディオスは顔つきが鋭くなる。
「マズいな…あの方向…」
クリシュナが
「ええ…ロマリアの首都、モルドスへ向かっているわ…」
ディオス達を残して先に、サルガッソーの麓にある村落に帰ってきたヴィスヴォッチ達は、急いで、ロマリアの西方を担当する西方軍へ連絡する。
「こちらは、遺跡探査部隊所属、ヴィスヴォッチ・ウィシャラス少佐です。現在、サルガッソーに埋まっていた戦艦達が復活して、活動しています。戦艦達が向かっている方角は…おそらく、首都モルドスではないかと…。指示を請う」
ザザザ…とノイズの後
『こちら、ロマリア西方軍、通信部隊。了解した。貴殿の部隊はそこで待機をしてくれ』
ヴィスヴォッチが通信機のマイクに齧り付き
「それでいいのか! 本当に大変な事態なんだぞ! ここには、あのアーリシアの大英雄がいる。助力を扇いだ方が良いのではないのか!」
『待ってくれ、今…司令部で検討する。待機だ、少佐』
ヴィスヴォッチは「チィ」と舌打ちした次に
「分かった。待機する」
投げるように通信機を切ったそこへ、空からタケミカヅチ化したクリシュナに運ばれてディオスとクレティアが到着する。
ディオスはタケミカヅチから降りて、直ぐにヴィスヴォッチの元へ走り
「どうでした?」
ヴィスヴォッチは、苛立った顔をして
「待機せよ…だと…」
ディオスは顔を顰めて
「その時間が命取りにならなければいいが…」
ロマリアの軍部は、直ぐにヴィスヴォッチの連絡を受けて、天の目の衛星でサルガッソーを捉えると、サルガッソーから移動する古代遺跡の戦艦艦隊を発見した。
直ぐに、皇帝城に士官達が集まり、皇帝ライドルも大きなドームの作戦室に入り、士官達と作戦の検討を始める。
ライドルが
「情報通りなのか?」
「はい」と士官が答え「現在、所属不明の艦隊が…首都モルドスへ向かっております」
ライドルの左右には将軍達がいて
「皇帝陛下…ここは、その艦隊を破壊した方がよいのでは?」
ライドルは士官を睨み
「どこの国にも属していない艦隊なのだな!」
「はい、それは確定です」
と、士官が返事をする。
ライドルは直ぐに手を翳し
「所属不明の艦隊を、領土侵略を行っていると認定して、直ぐに撃墜せよ」
「は!」
と、士官達が敬礼する。
ディオス達にその連絡が入る。
それをヴィスヴォッチが聞き終えた背中へ
「どうなるんだ?」
ディオスが問う。
ヴィスヴォッチは
「これから…西方、北方軍合わせて、遠距離魔法攻撃を行う。それで撃沈させるそうだ」
ディオスは渋い顔をして
「いいのか? エニグマの連中がいうには、その艦隊を動かしている主軸戦艦が破壊されると、とんでもない広さの地域が消し飛ぶぞ」
ディオスはヴィスヴォッチの隣に来て通信機を手にして
「こちらは、侵攻する遺跡艦隊を調べていたディオス・グレンテルだ。聞こえるか?」
ザザザとノイズの後
『聞こえています。こちらは、西方司令部通信部。ディオス・グレンテル殿…どのような用件で?』
「侵攻する遺跡艦隊を復活させたヤツの言い分では、遺跡艦隊を動かしている主軸の戦艦が破壊されると、その動力炉に蓄えてあるエネルギーが解放されて、ロマリアの広範囲が破壊されると言っていたぞ」
『その情報は。本当なのですか?』
「本当である可能性は高い」
ディオスが告げると、通信相手は暫しの沈黙の後
『了解しました。その事を伝えて置きます』
「頼む」とディオスは通信を切った後、ヴィスヴォッチから離れ
「動いている艦隊の様子を見てくる」
と、告げるとその両脇にクレティアとクリシュナが付く。
そこへ、ナルドが来て
「ディオスさん。私達は…」
心配げに見つめるナルドと、その後方にいるラチェットにリベルとハンマーの三人。
ディオスはナルドに
「ナルドさん。急いでこの事態をリーレシアに伝えてください。ナルドさん達は、安全な場所へ」
「分かりました」とナルドは頷いた。
ディオスが不意にナルドの脇に携えているマーキングの魔導銃を見つけ
「これ…持って行きます」
と、ナルドから引き抜いて持つ。
「お気を付けて」とナルドが案じた後、ディオスは「はい」と頷いた次に
”タケミカヅチ神式”
と、自身を神格の核として雷の神格魔神となり、その中にクレティアとクリシュナもいた。
三人を乗せたタケミカヅチ神式は、稲妻のように空に昇り遺跡戦艦達に向かって駆けていった。
タケミカヅチ神式で古代の戦艦達へ向かうディオス達、前方数キロ先に戦艦達が見えた。
だが…戦艦達が、葉巻型の船体から砲身を伸ばして、ディオス達に向ける。
そして、轟音の光線が放たれる。
それをディオス達を乗せたタケミカヅチ神式は、避けて距離を取る。
一度、上空へ逃れるタケミカヅチ神式。
雲を越え遙か上空一万メータまで来ると、戦艦達が一望出来る。
自分達に攻撃を加えているのは、後方にいる数十艦だけで、その半分以上は全く反応していない。
その百二十に及ぶ戦艦達の中心、他の百二十メータサイズの葉巻型船体とは違う、コの字型である三百メータ前後の戦艦が見えた。
アレが…この艦隊を動かしている主要艦か…
ディオスは睨む。
高度が一万二千メートルになると、攻撃が止みディオス達はそこで戦艦達を監視していると、東側の空から無数の流星群が見える。
そう、ロマリア軍による超長距離魔法砲撃だ。
流星群の魔法砲撃が、戦艦達に降り注ぐ。
戦艦達は、それに向けて防護壁を展開したが…魔法砲撃は、その防護壁を透過して戦艦達に迫る。
おそらく、防護壁を張られると分かっていて、防護壁を貫通する魔法をエンチャンして砲撃したのだろう。
だが、戦艦達も黙ってはいない。
防護壁を抜けた魔法砲撃に向かって、砲身を向けて攻撃を開始した。
無数の戦艦達の砲撃と、流星雨の如き魔法砲撃の飽和攻撃は相殺され、戦艦達にはダメージがない。
「成る程…しっかりとした防御システムがあるのだな」
と、ディオスは忌々しいという顔をした。
次に戦艦達の右側半分が、変形を始める。
真っ二つに割れて、巨大な砲身を何と…超長距離魔法砲撃が来た方向へ向ける。
「まさか!」
そうディオスの嫌な予感は的中した。
戦艦達の巨大砲身から、強力な光線が空へ昇る。攻撃した場所への反撃だ。
ディオスは直ぐに、通信機を取って
「こちらは、戦艦達の様子を窺っているディオス・グレンテルだ! 戦艦達が、魔法砲撃をした方向へ反撃したぞ!」
その知らせが千キロ以上、離れたロマリア軍基地に伝えられ、基地内にある防護壁を張る戦艦飛空艇や、魔導操車が大急ぎで展開して、防護壁の魔法を発動。
基地を覆う魔法防護壁が完成すると、そこに戦艦達の反撃が届いた。
戦艦達の光線が防護壁に衝突した瞬間、巨大な爆発が起こった。
その規模、熱核魔法グランヴァイン級。
基地の周囲は消滅、基地は何とか防護壁で守られたが、衝撃によって運用困難な状態だった。
上空より戦艦を監視するディオスの魔導通信機が
『こちらは、ロマリア西方司令部。そちらの様子はどうですか?』
ディオスは通信機を手にして
「こちらは監視をしているディオス・グレンテル。戦艦達は…」
攻撃をした戦艦達は、フォルムを元に戻して通常にすると、戦艦達が、中心にある旗艦に接近して、何かのパイプを旗艦に接続した。
「マジかよ…」
と、ディオスは唸り
「こちら、監視をするグレンテル。攻撃をした戦艦達が、エネルギー源である旗艦と接続している。何かをやるつもりだ…。その前に攻撃を加えた方がいい」
『了解した。だが…一番近い基地が先程の攻撃で運用困難となった。別の基地からの超長距離魔法砲撃が開始されるには、時間が…』
「分かった。何とか…こっちでも時間を稼いでみる」
『申し訳ない。アーリシアの大英雄殿』
ディオスは通信を切ると、遙か上空で展開するタケミカヅチ神式の中で
「クリシュナ! クレティア!」
「了解! 任せてダーリン!」
と、クレティアは親指を上げて、ディオスのタケミカヅチ神式から出ると、自身も同じタケミカヅチ神式を纏って戦艦達に走る。
「じゃあ…言ってくるわ」
と、クリシュナも離れると、タケミカヅチ神式とは別の神式を展開する。
炎で構築された神格魔神、カグツチ神式を纏ってクレティアの後に続く。
ディオスはタケミカヅチ神式を解除して、飛翔魔法で浮かびながら
「行くぞーーーー」
周囲に膨大な数の魔法陣を展開させ、攻撃を開始する。
”ダウンフォール・バベル”
”セブンズ・グランギル・カディンギル”
”アドレイド・フレア”
”セブンズ・ゲート”
膨大な量の魔法攻撃を戦艦達に浴びせる。
七色の輝きを持つ魔法攻撃の豪雨が、戦艦達に迫るも、戦艦達は陣形を崩さず。
その上部へ向かって防護壁を展開。
防御に集中している合間に、タケミカヅチ神式のクレティアと、カグツチ神式のクリシュナが来て、戦艦達を襲撃するも、戦艦達は器用に防護壁を展開しながら、砲身を動かしてクレティアとクリシュナを迎撃する。
それを回避するクレティアとクリシュナ。
ディオスは攻撃魔法を放ちながら、それをサポートする為に
”サウダージ・ウェイブ・フィールド・オーバー”
戦艦達を包み込む程の妨害魔法を放った。
一瞬、戦艦達が動きを止めたが…直ぐに動き出し、ディオスの攻撃とクレティア、クリシュナの迎撃をする。
それにディオスは眉間を寄せた。
おかしい、探知を狂わせる妨害をしているのだか、反応が悪くなる筈だが…。
自分とクレティアにクリシュナに対する反応の良さに疑いの視線を向ける。
そこへ
『こちらは西方司令部、攻撃の準備が整った。退却をされたし』
「分かった!」
ディオスは、二人を繋げる呪印でクレティアとクリシュナに呼び掛け
「攻撃が来る。退避してくれーーー」
クレティアは「あいよ!」
クリシュナは「分かったわ!」
二人は直ぐに戦艦達から離脱する。
そして、そこへ、ディオスは攻撃の効果を増す為に妨害魔法を更に強めに放つ。
”オーバー・サウダージ・トリプル”
戦艦達の周囲が暗転、更に探知能力のあるレーダーを狂わせる力場で包み込む。
そこへ再度の超長距離魔法砲撃が降り注ぐ。
ディオスはそれを見て、これで粗方の雑魚は始末出来ると思っていたが…。
暗転の中で戦艦達は、向かって来る魔法砲撃に反応して防護壁を展開、防いだ。
「な!」
ディオスは驚愕する。
そして、戦艦達はさっきと同じようにフォルムを変化させ、攻撃してきた方向へ反撃した。
「また、反撃が来るぞーーーー」
ディオスは通信機に吠える。
そのお陰で、何とか魔法砲撃をした別の基地は守られるも、衝撃にて運用困難となった。
ディオスが眉間を寄せているそこへ、クレティアとクリシュナが来て
「どうするダーリン?」
と、クレティアがクリシュナが見つめる。
ディオスは鋭く戦艦達を見下ろして見つめていると、脳裏に屋敷の傍にあるフェニックス町であった魔力に反応して攻撃したティーポッドの事が過ぎった。
「まさか…」
ディオスは、急いで戦艦達の正面へ飛翔、そして再び戦艦達を包み込む妨害魔法を発動させた次に、自分から膨大な量の魔力を放出させた。
妨害魔法に包まれている戦艦達がディオスに反応して、そこへ攻撃を向ける。
ディオスはそれを回避して再び離れる。
そして、クレティアとクリシュナのいる場所に戻ってきて
「どうしたのアナタ?」
と、クリシュナが尋ねる。
ディオスは嫌な顔をして
「面倒クサい仕様をしているぞ…あの戦艦達は…」
ディオス達は一旦、ヴィスヴォッチ達の元へ帰って来た。
タケミカヅチ神式で戻って来たディオス達にヴィスヴォッチは
「なんだ? 何かマズイ事でも起こったのか?」
ディオスは嫌そうな顔をして…
「ヴィスヴォッチ殿…提案がしたい。ロマリアの皇帝…ライドル皇帝陛下と話が出来ないか?」
ヴィスヴォッチは戸惑いの顔を見せたが
「分かった。何とかしてみる」
通信機を手に司令部へ語りか掛ける。
ロマリア皇帝城、皇帝の間にいるライドルと、その仕官達、アルミリアスとその親衛隊が、ヴィスヴォッチ経由で、ディオスと通信していた。
ライドルが
「つまり、復活した古代の戦艦達は、魔力を辿って動いていると…」
通信機越しにディオスが
「おそらく、その確証は取れました」
ライドルは右手を顎に当てた後
「成る程…戦艦達が向かっている首都モルドスの活動を抑えれば…別の大きな魔力動力がある場所へ行くという事か…」
ディオスが
「その通りです。ですから、それ込みで…作戦があります」
ディオスは作戦をライドル達に話す。
それを聞いて仕官達が
「ふざけるな! それでは皇帝陛下の権威に傷がつく」
「そんな事を…アルジャンナ緩衝地帯にある我らの艦隊を犠牲にするという、大損失を見過ごせなど出来ない」
否定の意見が飛んで来る。
アルミリアスが父ライドルを見つめ
「お父様…」
ライドルが目を閉じて
「グレンテル…それが最善の策なのだな…」
ディオスが
「現在、ある限りでは…」
ライドルが目を強く開き
「分かった。その作戦、我の責任で実行する」
「皇帝陛下ーーーーーー」
仕官達が叫ぶ。
ライドルは叫んだ仕官達に
「皆の者…皇帝とはなんだ? 皇帝とは民と国があって初めて皇帝となる。皇帝は、民と国を守る責任と義務に権利がある。その為なら多少の泥なんぞ問題ではない!」
英断したライドルは仕官へ
「直ぐに、フランドイル王ヴィルヘルムに繋げ」
フランドイル王宮、ヴィルヘルムがいる王執務室では、ヴィルヘルムがライドルから説明を受けた。
それを聞いたヴィルヘルムは肯きながら
「よくぞ、ご決断をしてくれた。その英断に感嘆を申し上げる。ライドル皇帝」
『では…頼むぞ。ヴィルヘルム殿』
ライドルとの通信を終えて、隣には息子のヴェルオルムと、次男で王位継承第二位の強いジンを持つアウグストスがいた。
ヴィルヘルムはヴェルオルムに視線を向け
「ヴェルオルム、ワシと一緒に行くぞ」
「はい」とヴェルオルムは頷いた。
アウグストスが
「父上、私も兄上と共に」
ヴィルヘルムは首を横にして
「お前は、ここで待て。お前は次期王だ。ここで後顧の憂いを絶つようにしろ」
アウグストスが…
「また…自分は置いてけぼりですか…」
ヴェルオルムが
「違う。そういう事ではないのだ…」
アウグストスが
「良いですよね。兄上はあの大英雄の師事を受け、グランスヴァイン級魔法運用者となって前線で守る為に戦える。自分は何時も、ここで置物にされる」
悔しくて泣き出しそうなアウグストスにヴィルヘルムが
「いいか、アウグストス…。後方の守りこそ…一番大事なのだ。それがあるから前線で心置きなく戦えるのだ」
アウグストスが背を向け
「私も、父上を兄上と共に戦いたかった」
執務室から出て行く。
それを見ていたグラディウスが
「陛下…」
ヴィルヘルムは
「すまん。頼む…」
「は…」とグラディウスはアウグストスの後を追った。
ディオス達は急いで、タケミカヅチ神式の稲妻の速度で、アルジャンナ緩衝地帯に向かった。
到着すると、早速、ロマリアの部隊がアルジャンナ緩衝地帯に埋まっている戦艦飛空艇達を連結操作する作業に取りかかっていた。
「どうですか!」
と、作業する者達に近付くディオス。
作業者がディオスに気付き
「おおおお、アーリシアの大英雄様ですか!」
ヘルメットを取って頭を下げる。
ディオスは
「進捗は?」
「もう…連結作業が終わります。元から、魔導エンジンの魔導制御回路へ接続するだけの単純作業なので。後はフランドイルが…」
低いエンジン音と共に、数隻の戦艦飛空艇達がこちらへ向かっている。
フランドイルの、グランスヴァイン級魔法運用者達を乗せた戦艦飛空艇だ。
飛空艇がディオス達の傍に降りて、中からヴェルオルム達グランスヴァイン級魔法運用者が降り立ち
「グレンテル殿!」
ヴェルオルム達が駆け付ける。
ディオスは魔導収納から、あの遺跡都市群で使用した魔導書を取り出して
「この中に、基本の魔法陣の設計図が入っています」
十名のグランスヴァイン級魔法運用者達は、同じく魔導収納から魔導書を取り出して、ディオスの魔導書と繋げて中のメモリーにある魔導書の設計図をコピーした。
ディオスは後ろにいるクレティアとクリシュナに
「クレティア、クリシュナ! 後は…」
二人は右手にマーキングする魔導銃を掲げ
「任せてダーリン!」とクレティア
「ええ、大丈夫よ」とクリシュナ
「よし」とディオスは唸り「準備は整った」
首都モルドスの傍にある皇帝城では、ライドルが静かに皇帝の座に座って作戦が整うのが終わるまで待つ。
そこへ仕官が走って来て
「皇帝陛下! 準備が整いましたーーーー」
ライドルは立ち上がり
「よーし。始めろーーーー」
首都モルドスの明かりが消える。そればかりか、周囲の工場の活動も停止する。
モルドスの大都市の機能が全て最小限になった。
そして、次に、アルジャンナに埋まる艦隊の魔導エンジンがフルで動く。
「壊れてもかまわん!」
作業者達は、連結させた戦艦飛空艇の魔導エンジンを壊れるまで動かし、ここの魔力活動量を増やす。
モルドルに向かっていた戦艦達は動きを止めた次に、暫し迷ったような動きを見せた後、方向をアルジャンナ緩衝地帯へ向けた。
アルジャンナ緩衝地帯では、とにかく魔導エンジンをフルで回し続け、夜になった所で、戦艦達が姿を見せた。
戦艦達がアルジャンナ緩衝地帯に入ると同時に、ロマリアの作業員達が全員脱出、そこは無人で魔導エンジンが回るだけの場所になり、戦艦達は、魔力活動が活発な埋まる戦艦飛空艇に向けて攻撃を開始する。
戦艦飛空艇達を攻撃する遺跡戦艦達の合間を飛翔している者がいる。
クレティアとクリシュナだ。
二人はタケミカヅチ二式で、遺跡戦艦達にマーキングをして回る。
その全てにマーキングを終えた頃、遺跡戦艦達は大方、埋まる戦艦飛空艇をくず鉄にしてしまった。
別の目標を探っていると…ロマリア側の直ぐそばにある山に膨大な魔力反応を感知した。
その山には、ディオスとグランスヴァイン級魔法運用者が集結して、魔導書を片手に魔法陣を展開していた。
「もう、遅い!」
と、ディオスは吠えた。
遺跡戦艦達の下に、巨大な魔法陣が展開される。
それは、遠方に物体を飛ばす空間発射魔法の巨大番レド・ルーダだ。
一気に、遺跡戦艦達は、遙か上空へ飛ばされた。
世界が地図のようになり、そして、星のようになった距離まで来た遺跡戦艦達だが…、真空の宇宙でも活動出来るので、世界に戻ろうとしたが…。
ディオスとグランスヴァイン級魔法運用者達は、次の魔法を発動させる。
大合同魔法
”インパクト・フロム・デウス”
ディオス達の頭上に直径五百メータ近い、大魔法陣が展開されると、そこから熱核魔法級の魔法が幾つも発射され、正確な誘導と共に、宇宙にある遺跡戦艦達に襲来する。
数キロサイズの巨大エネルギー達に圧し潰される遺跡戦艦達、その旗艦である反粒子炉を備える遺跡戦艦にも当たって爆発した瞬間、全長数千キロの巨大火球を形成したが、世界より遙か数万キロ宇宙にいる為に、その影響を及ぼす事はなかった。
その爆発の光景は、ディオス達まで届き、夜を一時、昼に変えるも、それ以外、何もなかった。
「成功だ…」とディオスは胸をなで下ろした。
そして、周囲が歓声に包まれる。
マーキングをしたクレティアとクリシュナも来て、クレティアが
「ダーリン!」
と、右手を挙げる。
ディオスも右手を挙げ、クレティアと共に叩き合わせて
「いぇーい」
成功を祝った。
ディオスの作戦はこうだった。
魔力の引き寄せられる遺跡戦艦達を、別の大きな魔力で引き寄せて、そこに誘導。
そこに留めた後、多くの強力な魔導士達、グランスヴァイン級魔法運用者達と共に、遙か宇宙へ打ち上げる。誘導マーカーをつけたまま。
そして、宇宙に打ち上げた後、誘導作用に長けた大規模破壊魔法によって倒すというモノだった。
ライドルも皇帝城で、成功の様子と知らせを聞いて、肩の力を抜いて皇帝の王座に腰を下ろした。そして…
「フランドイル王ヴィルヘルムに繋いでくれ…」
感謝の言葉を告げるために、連絡を入れる。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
次話があります。よろしくお願いします。
ありがとうございました。




