第778話 DISORDER
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ディオスはルビードラゴンからの報告を聞いて頭を抱えた。
自分の屋敷の玄関広間のソファーでディオスは両手で頭を抱えて苦悩する。
「どう、ティリオに説明すれば良い?」
ルビードラゴンからもたらされた一莵が黒であるという事実。
実は、ディオスが帰還してからゲーティアの神々の報告をディオスは受け取っていた。
ゲーティアの神々の報告では、曙光国の飛空艇空港の一件で、一莵が候補に挙がっていた。
アースガイヤからズレている存在として…。
その二つが確実に一莵を…。
ルビードラゴンが
「ティリオには、一莵が…行方不明になった…として」
ディオスが鋭い顔をして
「ふざけるなよ。そんな事…できるかよ…」
ルビードラゴンが鋭い目で
「では、どうする!」
ディオスが頭を抱えて
「私が…一莵くんと話してみる。それで…」
ルビードラゴンがディオスに一歩近づく。
頭を抱えるディオスは、ルビードラゴンを見上げると、ルビードラゴンが鬼迫のある形相で
「そんな甘い事で、何とかなると思うか?」
ディオスはルビードラゴンの胸を押して遠ざけて
「とにかく! 自分が! 一莵くんと話す。それからだ!」
ルビードラゴンは、呆れのように鼻息を荒げて
「知らんからな。オレは…傷は、浅い方がいいと助言だけはしておく」
と、告げてルビードラゴンが二階へ上がると、その隠れた角にアーヴィングと阿座に洋子の三人がいた。
三人にルビードラゴンが
「今日…一杯、飲みに行かないか?」
それを聞いて、アーヴィングと阿座に洋子の三人が頷き、洋子が
「ネオデウス組と男子組を合わせて、全員で良いわよね」
ルビードラゴンは深く頷き「ああ…頼む」
ディオスは、一人…夜の書斎で頭を抱えていた。
そして
「クソ! クソ! クソォォォォォォ!」
何度もの机を両手で叩いた。
「クソ、なんでこんな事になるんだ…」
ティリオにとって気の許せる友人がやっとできたのに…。
ティリオは、成長していくに従って自分の立場が分かるようになっていた。
それは無論、リリーシャとゼティアもそうだ。
だが、ティリオは…聖帝ディオスの長男であるという無意識の周囲の視線を理解している。
だからこそ、ティリオは許嫁の彼女達しか繋がりなく、他の繋がりが薄かった。
それが…年は上だとしても…友人が出来た。
それがこんな結果に…。
ディオスは、父親として苦しんでいた。
息子ティリオの大切な友人を無くしたくない。いや、裏切るなんてさせたくない。
「クソ!」と机を叩くディオスの前、ドアを開けて静かに見つめるクリシュナがいた。
それにディオスが気付いて
「ああ…すまん。つい…その…」
クリシュナが近づき
「何があったの? アナタ…」
ディオスは苦しそうに頭を掻き上げて
「クリシュナ、ソフィアもゼリティアもクレティアも呼んでくれ。自分じゃあどうも…ムリだ」
クリシュナは頷いてソフィアとゼリティアにクレティアの三人を呼びに行った。
その頃、アースガイヤ星系を守るイージスシールドを突破する一機の人型機体があった。
黒い翼を生やし、紅蓮のフレアを纏って宇宙を疾走する黒き人型機体。
強大な防壁であるイージスシールドを突破した黒き人型機体は、真っ直ぐとアースガイヤへ向かう。
それをアインデウス達が察知していた。
アインデウス達は、急いでそれに対処しようと魔導戦艦を発進させ、軌道エレベーターコロニー・ミリオンに配備されているゼウスリオン部隊にも通達する。
アインデウス達の魔導戦艦艦隊とゼウスリオン部隊が併走して、黒き人型機体へ向かう。
アインデウスの魔導戦艦艦隊の一隻にいる右翼部隊長のリュートが
「イージスシールドを突破する程の力を持っている! 全部隊! 警戒して当たれ!」
リュートの隣にいる士官が
「ディオス様にご連絡を…」
リュートがそれに頷き
「直ぐに」
周囲のオペレーター達が
「こちらへ向かう存在より、通信です!」
リュートが「出せ!」と告げる。
リュートがいる艦橋で、立体映像が投影される。
それは黒き人型機体に乗る人物だ。
その者は黒きフルフェイスのバイザーを上げると電子回路模様の顔が人の顔になる。
「オレは…」
と、その者が語った言葉にリュートが驚愕する。
同時刻、軌道エレベーターコロニー・ミリオンの傘型に広がる巨大コロニーの一つにある分析を主にする区画で、十キロサイズのヘイムダムガッツオーの分析が行われていた。
分析官の一人が
「しかし、まあ…こんな構造物を作る存在って」
と、ヘイムダムガッツオーの周囲を飛ぶ魔法型探査レーダーアーム達、円盤形に幾つものアームが生えた装置達から送られてくるデータとにらめっこして
「物質じゃあなくて、エネルギーで構築されているのかぁ…」
別の分析官が
「下手をしたらメガデウスと同じ方法で建造されているかもしれないぞ」
分析官が
「つまり、法則性を編んだエネルギー体、アースガイヤでいうなら魔方陣の集合体って事か?」
別の分析官も頷き
「ああ…つまり、こいつ自身が法則性を持った装置なのかもしれない。気を引き締めて調べるぞ」
分析を受けているヘイムダムガッツオーの中核が怪しく光を放つ。
ティリオは一人、フォルトゥナ空中魔導道路を機神を使って飛び、曙光国へ向かっていた。
あと三十分くらいで到着する。
出たのは、バルストランで午前半ば、曙光国では時差で八時間の戻りがあるので前の日の夕方が曙光国だ。
フォルトゥナ空中魔導道路は一時間で反対の国まで行ける。
こういう時差を考えて行動しないと、バルストランでは夕方でも、反対側の曙光国では真夜中の午前三時なのだ。
ティリオは、一莵から借りた映画の解説本を返すために向かう。
向こうの曙光国では夕方なのでノンビリできるが、バルストランでは午前の始まりなので少しだけしか時間がない。
ティリオは…一莵をお喋りする時間がない事が残念だが、仕方ない…また、時間が合う時にと思いつつ
「世界が平面だったらなぁ…」
そう、世界が一つの平面だったら、こんな時差とかを気にする必要はないが、時差がある事がアースガイヤが球体である証拠だ。
そんな事実を受け入れつつティリオは、本を返しに曙光国へ到着する。
家族には友人の元へ行くと連絡はしてある。
それは、ディオスがルビードラゴンから話を聞いた前の事だったので、ディオスは知らない。
ティリオが一莵のいるマンションに来ると機神を広い駐車場に止めて体内へ収納して、一莵の部屋へ向かいドアの呼び鈴を鳴らす。
一莵が出てくるとティリオは思っていた。
だが、ドアを開いたのはディジレーターの奈瑞菜だった。
ティリオは「え?」と困惑する。
奈瑞菜は笑み
「こんにちは、救世全煌帝の息子さん」
と、告げた瞬間、ティリオの胸に手を当てた。
ティリオは反応する前に意識を失い奈瑞菜に倒れ込んだ。
それを奈瑞菜が受け止め
「ほんと、ちょっと衝撃を伝播させただけで気絶するなんて、警戒していなかったのね」
と、奈瑞菜は後ろにいる一莵を横見して笑み
「この子、アナタの事…本当の友達と思っていたみたい…」
一莵は鋭い顔で
「関係ない。全ては聖ゾロアスを創世するコマでしかない」
ディオスは、屋敷の書斎で一莵に関して妻達四人、ソフィアとクリシュナ、クレティアにゼリティアに話していた。
それを聞いたソフィアが
「待って、さっきティリオが…一人で一莵くんの元へ行くって」
それを聞いたディオスが青ざめて書斎から飛び出した。
急いで一莵がいるマンションへ向かう。
デウスマギウス・アミダライオウをディオスは展開して超光速で空へ飛び出して、曙光国へ向かう。
額のサードアイをディオスは開いて息子ティリオを探し出して姿ある場所へ。
僅か一分でディオスは曙光国へ、一莵のマンションへ到着する。
ディオスはマンションの窓をデウスマギウス・アミダライオウのまま衝突して突き破り、室内へ入る。
そこには、ティリオを抱える奈瑞菜と隣に一莵がいた。
ディオスは一莵を凝視して
「一莵くん。君は…」
一莵は冷たい目で
「オレも、アナタみたいな人が父さんだったら良かったです」
一莵達がその正体を現し、ディオスは…
次回、聖櫃と天の車