第772話 協定と戦争
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なぜ、人を好きになるのだろうか?
それは本能? それは性? いいえ、人は人だから人を好きになる。
相手と自分を深く繋がり合う為に。
でも、世の中には、簡単に男女だから、夫婦だからの
インスタントな軽い愛が多くなった。
人同士の深い関係。それが恋愛、愛の本質。
―マリア・エージリット―
牧山は車両に乗って指令された場所へ向かっていた。
その後をステルスに隠して武装するアーヴィング、奈々、綾妃が飛行していく。
車内で牧山は溜息を漏らす。
中山を説得する為に行動しているのに…中山に会える事が嬉しかった。
どんな形であれ。
牧山は考え続ける。
本当に中山が雅人が…こんな事をするのだろうか?
雅人がそんな事を考えているとは思えなかった。
確かにアースガイヤでの事はショックが大きかった。でも…それほど?
ずっと、雅人の心に寄り添っているつもりだった。
でも…。
三週間前の、ちょっと仕事で遠くに行く…という連絡以降、全く連絡がなかった。
そして、今回の事件。
「何があったの?」
と、牧山は心の中にいる雅人に呼びかけた。
だが、それは返事が無かった。
牧山を乗せた車両がとある町に到着すると、そこから牧山は徒歩で歩く。
無論それをステルスで完全迷彩化したアーヴィング達三人が飛行して追っていく。
中山が指定した場所。そこは…海辺が見える立体交差が張り巡らされた海岸沿い公園だ。
ここは、牧山と中山にとって定番の場所だ。
色んなショッピングセンターや遊ぶ施設が近くにあり、多くの家族連れや散歩をする人達が交差していく。
もし、こんな事件が無ければ何時ものように遊びに来ていた筈。
牧山は、とある交差する架橋の上に来て海を見つめていると、そこは日がゆっくりと降りる夕暮れが近かった。
牧山がそれの海を見つめていると、隣に
「何時も君は…この風景が好きだな」
と、男が立つ。
中山 雅人だ。
長めのコート、顔を隠すかのように黒いサングラス。
そして、少しだけくすんだ黒髪。
牧山は声と雰囲気から、中山であると分かり。
「ええ…強くて暖かな光が好きだし、何より…みんなが待っている人がいる家に帰るって事も好き」
中山が
「そうか。私もそういうのが好きだ」
二人の上に完全ステルスのアーヴィングと奈々、綾妃が来ると
「動くな」
三人が展開するネオデウスのエクセレクト・アーマーの上に乗る彼女達。
ジャンヌ、巴、先輩の少女の三人。
ジャンヌは綾妃、巴は奈々、先輩の少女はアーヴィングと分散していて、奈々が殺気を高めると巴が
「良いのか? 我々が暴れると…この周囲にいる人々が犠牲になるぞ」
綾妃が
「卑怯者!」
先輩の少女が笑み
「いいね。卑怯者、最もらしい台詞で楽しくなっちゃく」
ディジレーターである三人の腕には装甲と体一体化した武器が装備されている。
ジャンヌはガトリング砲、巴は幾つもの刃が生えたモーニングスター、先輩の少女は人間の胴体幅もある砲身、それは高射砲の如き巨大さだ。
ジャンヌが
「このまま、黙って見ていれば無事に帰してやる」
アーヴィングが
「お前達は…何者だ?」
その問いに、先輩の少女がイタズラ気味な笑みで
「アタシ達は、廃棄られた女神様って所かな?」
ジャンヌが
「余計な事を言うな!」
と、釘を刺す。
先輩の少女が
「おお、怖い怖い。ごめんね」
アーヴィング達は動けない。
牧山と中山が並んで話す事は無かった。
牧山が夕日を見ながら
「どうして、こんな事…やるの?」
牧山から二メートル離れて見つめる中山が
「止めてとは言わないのだな…」
牧山が
「私が言えば止めてくれる?」
中山が「いいや」と首を横に振る。
牧山が
「私は、アナタとずっと一緒に歩んでいると思っていた。それは、私の独りよがりだったのね」
中山が淡々と
「人は誰だって、人を見ているようで、自分しか見ていない。他人の為と言って自分の為なのさ」
それに牧山が涙して
「そうか…私、アナタと一緒にいるつもりになっていただけで、アナタと一緒にいなかったのね」
中山が
「お別れを言いに来た。これで…もう、会う事はないだろう。今までありがとう」
と、背中を牧山に向ける。
涙する牧山が
「一つだけ、ワガママを言っていい?」
中山が立ち止まる。
牧山が
「何もかも捨てて、私とアナタだけで…何処かに逃げましょうか」
中山は無言で去って行った。
中山がある程度、移動した後に中山が小規模空間転移して消える。
同時にアーヴィング達の上にいたディジレーターの三人も消えた。
アーヴィングは溜息を漏らす。
結果は見えていた。それだけだ。
結果をディオスに伝える。
「ディオスさん」とアーヴィングはディオスの通信を開き
「申し訳ありません。相手の方が上手で…捕まえる事が出来ませんでした」
通信で事情を聞いたディオスが
「分かった。帰投してくれ」
と、返事をしたそこは、とある人物を前にする会議場だった。
ディオスが椅子に座って目の前にいる男性、日の本星系区の首相に
「説得の望みは、無くなりました」
首相は厳しい顔で
「では、例の話を…」
ディオスが厳しい顔で
「エルディオンに帰投後、結果を伝えますので…」
首相は「よろしくお願いします」と頭を下げる。
ディオスは苦しそうな顔で
「こんな事になって残念です」
思いは通じず、事態は流れて
次回、派遣される者達