第771話 思惑の推測
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牧山の話、それは…今回の事件の首謀者であろう中山 雅人と恋人関係だった話だった。
牧山が
「私が説得をしてみようと思います」
ルビードラゴンが腕組みして渋い顔で
「説得可能だと思うか?」
牧山が少し悲しい顔で
「それでも…やらないよりは、マシです」
阿座が
「接触する方法は? 相手は連絡を絶ったのでしょう」
牧山が真剣な眼で
「私と雅人の二人だけの秘匿のプライベート回線があります。それにアクセスできるのは私と雅人だけです」
阿座とルビードラゴンが視線を交差させる。
本当に信用できるのか?
ディオスは黙っていたが…
「分かった。君を信じてみよう」
え?と阿座とルビードラゴンはディオスを見つめる。
ディオスが
「現状は、悪化の一途を辿っている。少しでもマシな方法があれば、それを手にするのも悪くない。だが…」
牧山が
「失敗した場合は、私を切り捨てても結構です」
ディオスは、エルディオンの艦橋の椅子に座って考えているとナトゥムラが来て
「あの提案、信じてみたくなったのか?」
ディオスが少し目を閉じて
「ああ…それだけさ。だか…結果は…」
と、目を開ける眼光は渋い。
ナトゥムラが
「結果が最悪だったとしても、オレ達が出来る事は限られている。オレ達は、ここでは他国の軍隊だ。ここのやり方に文句を付けては、後々…問題になる」
ディオスが天井を見上げて
「宇上陛下から頼まれて、何とかしようとしたが…ムリだ」
と、告げて傍らにある端末に触れると、立体映像が出現してそこに日の本星系区の被害の様子が投影される。
ネットワークの報道が破壊された施設を映す。
動力施設、ネットワーク中継所、食料生産プラント、多数の公共システムが破壊されている様子にディオスは頭を抱えて
「今は、まだ…生活は維持できるが…」
ナトゥムラがディオスの隣に来て
「この惑星にある宇宙港は、あと三つ。その全てが破壊された場合…」
ディオスが端末を触って別のデータを投影させて
「自分達がいた宇宙戦艦関係の施設にあった宇宙戦艦達も破壊されている。残りの軍事施設か治安システムが破壊された場合、ここは…」
ナトゥムラが
「混乱のドツボって事か…」
ディオスが
「自分達が持つ兵装では対応できない存在の攻撃。いくら警戒しても…」
ナトゥムラが腕を組み渋い顔で
「本当に、こんな事をしてアースガイヤに矛先が向くと思っているのか?」
ディオスが額を抱えて
「分からん。だが、相手はそう思っているのだろう…と思いたい」
ナトゥムラが
「別の目的があるって事か…」
ディオスが別のデータを開示するとナトゥムラが
「このデータはなんだ?」
と、ディオスに尋ねる。
ディオスが
「天の川銀河連合へ伝わっている。現状の報告内容だ」
ナトゥムラが驚きの顔で
「日の本星系区の超空間ネットワークは破壊されているんだろう? ってかなんでディオスがそんな報告のデータを持っているんだ?」
ディオスが
「非常時用の通信の為の超空間ネットワークは破壊されていない。それと、これはメルディオルさんから送られたデータだ」
ナトゥムラがそれを見て
「現状の敵勢力は不明、攻撃の種類も不明、か…。で、自分達で対処すると…」
ディオスが
「あくまで、自分達で何とかするのが日の本星系区の考えだ」
ナトゥムラが
「対処できないのに?」
ディオスが淡々と
「そうしないと、この日の本星系区の独立自治は維持されない。力が無い組織…システムは、ただのゴミと同じ。日の本星系区は自分達で自分達を守る力があるから認められている部分もある。それによって西方連合軍とも協調できていた…が」
ナトゥムラが笑みで
「いた…が? その後は…」
ディオスは鋭い視線で
「統治するシステム、組織に欠陥、力が無いすれば…より大きな天の川銀河連合が入り込む。そうなれば…日の本星系区の強制的に男女比率半々にする独立は消失するだろう」
ナトゥムラが頭を掻いて
「それが目的なんじゃないのか?」
ディオスがナトゥムラを見つめて
「革命とする内乱でもなく、アースガイヤへの再侵攻を画策でもなく、この日の本星系区を…天の川銀河連合に組み込む為に起こしていると?」
ナトゥムラが真剣な顔で
「その方が利益が大きくないか?」
ディオスが嫌そうな顔をして
「確かに、これ程の事件を起こして…逃げられるとは、到底…思えない」
ナトゥムラが
「単純な話だ。この日の本星系区の特別自治、独立が気に入らないヤツがいる。それに踊らされている」
ディオスが
「それに、ゼキス・マーキスが関係すると?」
ナトゥムラが
「利害の一致ってヤツだろう」
ディオスが顎を摩りながら考え
「つまり、ゼキス・マーキスは…この宇宙での足掛かりが欲しい。そして、この日の本星系区の特別自治を気に入らないヤツがいる。その特別自治を無くす手伝いをして、ゼキス・マーキスは、この宇宙とのパイプを持つ…か」
ナトゥムラが
「それでどうだ? ディオス…」
ディオスが渋い顔で
「筋としては通っている。だからこそ、アースガイヤの再侵攻を考えているヤツをコマとして狙った」
そこへ洋子が入ってきて
「あの…ディオスさん」
ディオスが洋子を見つめて
「どうしたんだ?」
洋子が近づき一枚のデータ端末をディオスの渡して
「日の本星系区の関係者からです。これを踏まえてお会いしたいと…」
ディオスが「ああ…ありがとう」と受け取ってデータを見た瞬間、座っていた椅子から飛び立ち
「はぁ?」
ディオスの様子にナトゥムラが
「どうしたんだ?」
ディオスが
「今から直ぐに会いに行く。場所は?」
洋子が
「お迎えが来ています」
ナトゥムラが
「どこに行くんだ?」
その問いにディオスは
「日の本星系区の首相に会ってくる」
ナトゥムラが「はぁ?」と驚きディオスに続きながら
「ど、どういう事だ?」
ディオスがナトゥムラに受け取ったデータ端末を見せて
「はぁ?」とナトゥムラも驚きの声を出す。
ディオスがそれを取り
「そういう事だ。洋子、これを直ぐにアースガイヤのアインデウス様やライドルおじ…ライドル様とヴィルヘルム様、ソフィアに転送してくれ」
洋子は再び受け取って
「分かりました。でも、どうしましょう?」
と、答えるという事はデータ端末の内容を知っている。
ディオスが荒く髪を掻き上げて
「ああああ! 厄介ごとばかりだ! やれやれだ」
ディオスは、護衛にナトゥムラとルビードラゴンを連れて、日の本星系区の首相の迎えに乗った。
そして、牧山がエルディオンの個室で静かに立体画面を見つめてベッドに座っていると、その立体画面に返信のマークが付いた。
中山 雅人からの連絡だ。
それを牧山は、開いて返信をした。
一分もしない内に中山から返信が届いた。
牧山は部屋から出ると、そこにアーヴィングを筆頭にセイントセイバーの奈々、綾妃がいた。
牧山が苦しそうな顔で
「接触する場所を指定されました」
アーヴィングが
「オレ達は、アンタの説得の邪魔はしないが…身の危険が迫ったら護衛させてもらう。それまでは、隠れている」
牧山が頭を下げ
「ありがとうございます」
奈々が
「貴女の説得で全てが良くなる事を願ってはいる」
それぞれがそれぞれで解決を模索するも
次回 協定と戦争