第76話 復活の古代遺跡戦艦達
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あらすじ
ディオスは、この事態を防ごうと、エニグマのゴルドと対峙する。ゴルドは巨大な戦艦サイズのゴーレムを起動させ、ディオス達と交戦、そして、ディオス達は…
サルガッソーの中心に鎮座する二隻の戦艦。
その一つの甲板でゴルドは、楽しげに笑みを浮かべて、戦艦から動力を送っている大きな穴を見つめていると、唐突に周囲をカモフラージュする力を発生させている隣の戦艦が吹き飛んだ。
百五十メータもある鉄の塊が、空中に舞う。
それを吹き飛ばして空中に上げたのは、二柱の雷の神格だった。
その稲妻の神格の核となっているのは、クレティアとクリシュナで、二人はタケミカヅチ二式の更に上位バージョン、タケミカヅチ神式を発動させ、稲妻の神格を降臨、自身に付加させて、十数メータ近い稲妻の神格の魔神になっていたのだ。
空中を泳ぐ鋼鉄の戦艦。
そこへ
”グランギル・カディンギル・バベル”
光の螺旋の光線が直撃して、鋼鉄の戦艦をバラバラにした。
「ああ…」とゴルドは驚愕し、空から鉄くずが降り注ぐ。
その眼前頭上に、ベクトの瞬間移動でディオスが出現、その空中に浮かんで静止する。
「どうも…こんにちは…」
と、挨拶をするディオスの顔には、威圧が篭もっていた。
その両脇に、雷の神格魔神となったクレティアとクリシュナが付く。
そう…カモフラージュの戦艦を壊したのはディオス達だ。
ゴルドはそれが分かってフッと嘲笑い
「まさか…キサマが来ていたとは…」
ディオスは冷徹な視線で足下の戦艦にいるゴルドへ
「ああ…全く、妙な縁だな…」
ゴルドは睨み上げるような笑みで
「一体、どういうつもりだ? 戦艦を一隻、破壊して…」
ディオスは睨み
「それは、こっちが聞きたい。キサマこそ…どういうつもりだ?」
「はて…何の事かな?」
ゴルドは惚ける。
ディオスは淡々と
「もし、怪しい事でないなら、普通は…こんな隠す真似をしない…。ここ一帯を吹雪の防壁で隠し、あまつさえ…ワイバーンを周囲に発生させて、ここから人の目を背けさせた。怪しい事をしていますと言っているようなモノだぞ…」
ゴルドはフッと笑み
「ああ…そうさ…。ここでロマリアを転覆させる作戦を実行していたのだよ」
その言葉は、ディオスの魔導士のローブの中にある小型魔導通信機で、ヴィスヴォッチ達を経由させて聞かせていた。
通信を退却しているヴィスヴォッチ達に、経由させ、ロマリア帝国軍本部にも伝わっている。
ゴルドとディオスは対峙して
「くだらん事をするなぁ…エニグマ」
と、ディオスは威圧を込める。
「エニグマか…まあいい、勝手にそう呼ぶがいいさ」
と、ゴルドは嘲笑う。
ディオスは動力パイプが伸びる大穴を睨み
「その企み、潰させて貰うぞ…」
ディオスは、右手を大穴に向け魔法を放とうとしたが…
ゴルドが
「いいのか? そんな事をすると…その大穴の奥にある古代の戦艦の動力炉が大爆発して、ここから周囲数千キロは破壊されるぞ」
その言葉にクリシュナが
「ハッタリね。そんな強大な魔力を何処で得られるの? そんな小さな戦艦飛空艇じゃあ、ムリよ」
ゴルドは楽しげに笑み
「反粒子炉…。それが…その動力パイプに繋がっている戦艦の動力だ」
ディオスは驚愕の視線を向ける。
「キサマ…ふざけた事を!」
ゴルドは平然と
「お前達、魔法を使う連中には理解出来ないだろうなぁ…。だが…ディオス・グレンテル…。お前には理解出来るか」
そう…ゴルドはアズナブルから、ディオスが同じ者だと聞いているのだ。
ディオスは、大穴に向けた右手を下げる。
その行動に、クレティアとクリシュナは理解した。
相当にヤバい何かだと…。
ゴルドはフフ…と楽しげに笑いながら
「もう、反粒子炉に充填する反粒子の注入は終わっているんだ。後は…起動臨界を迎えるまで、僅かな時間を待てばいい」
ゴルドは、演者のように両手を振り上げ
「言って置いてやる。オレの慈悲に感謝しろ…。この下にある戦艦が起動すると、周囲にある戦艦も、その戦艦から動力を受け取って起動する。百二十隻近い無人兵器の大艦隊が…ロマリアを蹂躙する。無論、破壊しようとして攻撃しても一向に構わないが…。艦隊を動かしている主核の戦艦を破壊すると、その動力炉、反粒子炉の反粒子が解放されて、ロマリアの三分一に相当する国土が消滅する。無人兵器の艦隊に蹂躙されるのがいいか、要の戦艦を破壊してロマリアを崩壊させるのがいいか、選ぶといい」
ディオスは右手を空に翳して
「その前に、キサマを倒して、止めるだけだ」
”ダウンフォール・バベル”
ディオスの頭上に十メータの魔法陣が展開され、そこから巨大光線が昇り、ゴルドのいる戦艦へ落ちた。
ディオスの巨大光線魔法の直撃を受けた戦艦は、大爆発して炎上する。
だが、炎上するその場が震える。
『いやはや、血の気が多くて敵わん』
マイクの音声のような声が、炎上するそこから放たれる。
燃える戦艦から何かが蠢き、産まれる。
炎を被る鉄板が剥げ、そこから巨大な百メータ近い蠍型のゴーレムが出現する。
ゴギュオオオオオオオオオオ
蠍の戦艦サイズのゴーレムが唸る。
『やれやれ、まだ…起動臨界点までは時間があるので、少々、私が相手をしてやろう』
と、戦艦サイズの蠍ゴーレムからゴルドの声が放たれる。
そう、ゴルドが操縦しているのだ。
戦艦サイズの蠍ゴーレムにクレティアとクリシュナは身構えるが…ディオスだけは顔を引き攣らせる。
おい…ここは、魔法の世界だぞ!
それってメタ○ギ○・ラ○ジ○グのラスボスのロボットそのままじゃあないかよーーー
世界観ぶち壊し状態にディオスは頭を抱えた。
それにクレティアとクリシュナは気付いて
あれ? なんか…(ダーリン)(夫)がショックを受けている…
と、察していた。
蠍型のロボ…いやゴーレムは、その尾部に伸びる砲身を空中にいるディオス達に向け
『くらえ。荷電粒子砲だーーーー』
稲妻を伴った光線が発射される。
うわーーーーーーー
もう、魔法の世界で言ってはいけない単語を言っているよーーーーーー
ディオスは内心で叫びつつ、ゴルドの蠍戦艦ゴーレムから発射された荷電粒子砲をベクトで避ける。
荷電粒子砲は、天を貫き、大きな空の晴れ間を作った。
稲妻の早さで避けたクレティアとクリシュナは、直ぐに、ゴルドの蠍戦艦ゴーレムに突撃する。
稲妻の神格魔神の攻撃を加えるも、その攻撃全てが反射された。
「え」と戸惑うクレティア、クリシュナは苦い顔をする。
クレティアは「チィ」と舌打ちして「まさか…」
ゴルドの蠍戦艦ゴーレムが吠える。
『キサマ等の魔法攻撃なんぞ、反射して効かないのだよ。お前等の世界にあるエンチャン系の魔導金属で作られた。このアンタレスは、無敵なのだよ。はははははははは』
クリシュナとクレティアは空中へ行き
「マズいわね…」とクリシュナがぼやく。
ディオスは平静に
「はぁ…つまり…。魔法の力じゃあなくて、物理的な作用で攻撃すればいいのね」
と、ディオスは右手をゴルドの蠍戦艦ゴーレムに向ける。
そして、とある魔法を発動させる。
”マテリアル・マジック・クリエイト”
ディオスの周囲の空間が歪んで透明な物体になると、それが幾つも組み合わさって、ディオスの腕を中心として、筒状のアンテナのような何かとなった。
その照準を、蠍戦艦ゴーレムに向け
「さて…ブリューナクの槍とでも命名しようか…」
そう、これはアリストス共和帝国の時にエルギアの力を参考にして作った魔法装置の魔法だ。
筒状のアンテナから紫電が溢れ、筒状の中心に収束すると、紫電色の光線が蠍戦艦ゴーレムに衝突、蠍戦艦ゴーレムの左多脚を溶断した。
『な! なんだとーーーーー』
と、驚きの声を上げるゴルド。
ディオスは淡々と
「お前…オレの得意分野がなんだか…分かるか?」
『キサマは! 魔法しか使えない筈だーーーーー』
ゴルドの怒声。
「はぁ…オレは…魔法で物理的作用をコントロール出来るんだ。もっとオレの事を調べてから、色々と吠えるんだなぁ…」
『クソーーーーーー』
荷電粒子砲がディオスに向かって走るも、ディオスの魔法で物理作用をさせる魔法装置が、その荷電粒子砲の電撃光線を呑み込んで、自身の力に替えて充填する。
「はい、残念」
と、ディオスは紫電の光線を発射して、蠍戦艦ゴーレムの右多脚を溶断した。
その隣にクレティアとクリシュナが来て、楽しげにディオスの肩に両手を乗せる。
「さすが、ダーリン」
と、喜ぶクレティア
「ええ…最高よアナタ」
と、楽しげなクリシュナ
妻達に褒められディオスはフフ…と嬉しげに笑み
「さあ…これでフィナーレだ」
と、ディオスはブリューナクの槍の光線で、荷電粒子砲の砲身尻尾を破壊した。
魔法の世界観をぶち壊しにした存在が、何も出来ない状態にして
「さあ…降参するなら今の内だぞ」
と、ディオスは降伏を促す宣言をする。
『ふ…』と蠍戦艦ゴーレムからゴルドの笑う声が漏れた次に『時間だ』
地面が揺らいで亀裂が走り、閃光が空に昇る。
「まさか!」とディオスは吠える。
そう、起動したのだ。地面に埋まっている無人兵器を動かす戦艦が。
『ははははははははは』
ゴルドの笑いが響いた後。
『では、また何時か…』
と、ゴルドが告げた瞬間、サルガッソーは爆発した。
ディオスはクレティアとクリシュナをベクトの瞬間移動で捕まえて抱え、その場からベクトを連続使用して退避した。
爆炎と土煙があがるサルガッソー。
その土煙の中から百二十隻近い古代の戦艦が出現して、空へ昇る。
それを避難した遠くで見つめるディオス達。
「クソ…厄介な事に…」
と、ディオスはぼやいた。
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