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第768話 過去の思い 前編

次話を読んでいただきありがとうございます。

 人は過去に縛られる。成功、過ち、失敗、罪。どんな事をしても過去に束縛されてしまう。だからこそ、人は過去を変えようとする。だが、それは不可能だ。神でさえも…


               ― ジークハルト・ファーレス ―



 アースガイヤ星系へ侵攻する宇宙艦隊に彼がいた。

 それは、かつて…アースガイヤに侵入した特殊潜入部隊の宇宙戦艦によって引き起こされた宇宙戦艦の艦隊派遣だった。

 その宇宙艦隊の攻撃型艦の操縦者として彼はいて、彼の攻撃型艦の周囲に彼女、牧山 明菜の乗る攻撃型艦と、他の仲間達の攻撃型艦達もいた。


 三千億にも及ぶ艦隊。完全な超過剰戦力だった。

 惑星一つ、それも…一万年前に航行が不可能になった惑星、地球…アースガイヤの占領。

 

 誰しもが…この戦争は一方的に終わる。

 簡単に勝利して片付くと…。


 相手は、まだ宇宙にも出てこないレベルの低文明だと、アースガイヤの事を彼ら彼女達は思っていた。

 誤った情報で。


 アースガイヤ星系へ到着、そのアースガイヤを覆うシールドを彼らは見た。

 星系全域を覆う百二十億キロにも及ぶ巨大シールドを見た時にその情報が本当に正しいのか?と疑いを持つ。

 星系サイズの建造物を構築できるのは、自分達と同等かそれ以上の文明だけ。

 アースガイヤを守るイージスシールドは、その証拠である。


 そして、唐突に待機命令が言い渡される。

 その待機を命じたのは、上層部ではなくDIだった。

 だが、上層部が強行して、一部の百億の宇宙戦艦達を動かした。


 そこからが悲劇だった。


 アースガイヤ星系が幾何学模様の円陣の光を放つと、全ての宇宙戦艦達が停止した。

 宇宙戦艦に備わっている真空転移エンジンが動かなくなった。

 原因は、真空転移エンジンの内部に発生した未知の物質だ。

 

 戦う前に敗北した。

 そして、彼は操縦席の全体スクリーンから、輝く機神が飛んでいくのを見た。

 アースガイヤのゼウスリオン達だ。

 物理的な推進ではなく、未知の力を使って飛んでいく機神達を見て、彼は脅威を感じた。

 自分達以上の力を目の当たりにしての当然の反応だ。


 回収されていく宇宙戦艦達、その光景を彼は航行不能になった自分の攻撃型艦の甲板から見つめていた。

 何をされたのか?

 分からなかった。

 空間の変化を察知センサーもナノテクノロジーも通用しない力。

宇宙民となり、生まれながらに真空の宇宙でも平然と暮らせるガイバードの装甲を持つ自分達が負けた。

 自分達の知らない未知の力を持つ者達…。


 彼がガイバードの装甲で宇宙の外にいると、その近くにゼウスリオンが来た。

「どうしました? 何か、問題でも?」

 ゼウスリオンから気遣う声が響く。


 彼は、カタい笑みで

「何でもありません…」


 ゼウスリオンが背を向けて

「何か異常がありましたら、直ぐにご連絡を」

と、ゼウスリオンは魔方陣を展開し、一瞬で光速を突破して消えて行った。


 彼は俯いた。

 何でもありません…ではない。傷ついた気持ちを隠して返答したのが情けなかった。



 帰還して直ぐに…アースガイヤに関する暴露が起こった。

 エニグマ事項。

 衝撃は凄まじかった。

 彼のいた西方連合軍が叱責と追及、それに関係する企業達も同じで。

 そして、その艦隊派遣に関係した彼らさえも追求された。


 彼は…中山 雅人は考えた。

 何が間違っていたのだろうか?

 軍人として命令遂行は当然であり、仕方ない事だ。

 その為に組織があり責任形態も存在する。

 なのに…中山 雅人は西方連合軍解体と再構築によって日の本星系区へ戻り、軍人ではなく防衛隊という日の本星系区の守備へ回された。

 それは、彼女達…牧山もそうだった。

 現在、天の川銀河連合内では、戦争という戦争は存在しない。

 高度な人工知性体…DIによる宇宙文明社会の管理、人間自身も進化して宇宙空間に完全適応している。

 他の銀河との戦争も…多少は小競り合い程度であって、大きな戦争はない。

 そればかりか…アースガイヤの存在が…もっと大きな存在、別時空との交流を開示させ、今やアースガイヤは、別時空との窓口のような存在だ。


 そうなれば、なるほど…あの艦隊派遣に関係した者達の風当たりが強くなった。

 存在意義を問われる日々に牧山が

「いいじゃない。平和で…私は好きよ」


 それに中山は微笑み

「そうだな。争いは無い方がいい」


 それは中山にとって本心ではなかった。

 英雄に成りたいという子供じみた願望が心の底で疼いてしまう。


 そんな日々の中でアレが接触してきた。

「初めまして」

 ゼキス・マーキスが接触してきた。

 その両隣には、スーツの女…奈瑞菜と青年に変装した一莵がいる。


 中山は三人を見て

「何でしょうか?」


 ゼキス・マーキスが

「貴方は…納得しているのですか? アースガイヤの事を…」

 

 中山の心が掻き毟られた。


 そして、中山は…

 現在…とあるステルスの時空戦艦内の艦橋で

「しかし、馬鹿な男だったな」

と、中山に偽装した一莵が告げる。


 隣に立つ奈瑞菜が

「ちょっと、心残りを刺激してやったら。私達の思う通りに動いてくれて助かったわ」


 先輩の少女が

「ホント、楽勝だよね。英雄願望を持つ馬鹿って」


 中山の偽装を解いた一莵が皮肉な笑みで

「仕方ないだろう。それが男の子ってヤツなんだから」


 奈瑞菜が

「現実を見て生きていれば…利用される事はなかったのに」


 一莵が肩をすくめて

「仕方ない。そういう性を持って生まれたのだから。それよりも、保管の方は大丈夫なのか?」


 先輩の少女が

「大丈夫だよ。ちゃんと時間凍結装置の中で時間が止まっているから」


 一莵が中山の偽装をまとい

「ミスをするなよ。最後の仕上げに使う。大切な小道具だからな」


 奈瑞菜が

「時間凍結で遺体の腐食はないし、特に宇宙民の遺体は、分解が進みにくいから多少くらい時間がずれても問題ないでしょう」


 一莵が

「それでも、慎重さは大事だ。それよりも先行した二人は?」


 奈瑞菜が

「ジャンヌと巴は、そろそろ、あの施設を襲撃するけど…例の聖帝様がいるみたいね」


 一莵が

「多少の応戦は許可する。ある程度、衝突した後、即座に逃亡しろ…と伝えろ」



様々な思いと思惑が交差して


次回 過去の思い 後編


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