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第763話 予兆 後編

次話を読んでいただきありがとうございます。


 リリーシャとゼティアの言う通りに凹んだ海で、違和感がある部分の海水を機神を使って回収して、それを龍機戦艦に乗せてきた魔導関連の分析装置で解析するリリーシャとゼティア。


 それをティリオとディオスが凝視して見つめ、メルディオルだけが真剣に見ていた。

 装置が解析したデータを凝視するリリーシャが

「ティリオ、ちょっと来て…」


「え、何?」とティリオがリリーシャの見ている画面の傍にきて、リリーシャが数値を指さして

「これ…分かるわよね」


 ティリオがそれを凝視した瞬間、固まった。


 そこへディオスが来て

「何が分かったんだ?」


 ティリオとリリーシャがディオスを見つめ、ティリオが

「父さんヤバい、このデータを聖司兄さん達に送って見て欲しい」


 ディオスが困惑しつつ

「おお…ああ…良いが」


 

 数時間後、聞き込みへ行ったラハトアを乗せた小型宇宙戦艦がディオス達のいる龍機戦艦へ帰還する。


 ラハトアがディオス達のいるホールへ来て

「いやぁ…とくに目撃情報はありませんでした…ん?」


 頭を抱えるディオスと、データをにらめっこするティリオとリリーシャにゼティアの三人に、厳しい顔のメルディオルがいた。


 ラハトアが

「どうしたのですか?」


 ディオスがラハトアに

「大変な事になったかもしれない」


「はぁ?」とラハトアは首を傾げた。


 ディオスは、調べた結果を日の本星系区の統治関係者に報告していた。


 巨大なホールに幾つもの官僚達の立体映像が並び、ディオスから提供されたデータを見る官僚達が

「つまり、この食料生産プラントが消えた現象は、何かの未知の兵器による作用だと…」


 ディオスが頷き

「間違いないです」


 官僚達は、複雑な顔をして

「この現象が起こった周辺の海水をサンプルとして取り、解析した結果、海水を構成する原子にエネルギー的な変異が起こっていた。だから、これは…この時空の物理や、アースガイヤの魔導技術以外の、別時空の世界の何かの力で消失した…と」


 ディオスが

「信じられないでしょう。ですが…事実です」


 官僚達が

「では、無人の自動生産をするプラントを破壊して何の意味があるのかね?」


 ディオスが困惑して

「それは…その、意味は分かりませんが…」


 官僚達が

「確かに幾つもある食料生産プラントの一つが破壊されて、ここの食料自給率が下がったが…それもごく僅か程度、当日中には新たな食料生産プラントが到着して、食料の自給率は元に戻る」


 官僚達が

「確かに犯罪と言えば、犯罪だが…。もし、これ程の事を起こす兵器があるなら、それは相当に巨大な装置になるのではないかね?」


 ディオスが

「ええ…そうだと思います」


 官僚達が

「だが、我々の監視システムからは、何も検知されていない」


 官僚達が

「もし、我々の監視システムを妨害するなら、システムに痕跡が残るはずだが…システムを管理している人工知性体(DI)達から何も報告が上がっていない」


 官僚達が

「我々の持つ監視システムを騙す程のステルスを使うとしても、それなりの痕跡が残るはずだ」


 ディオスが官僚達に

「貴方達は、この事件をどう判断しているのですか?」


 官僚達が

「かつて、そう…千年以上前に日の本星系区の近くで星間戦争があった。その時に重力子を固めた、重力子爆弾というモノがあった。それは日の本星系区へも落とされたが…幾つかは今も不発弾として日の本星系区に残っている」


 官僚達が

「つまりだ。その未だに発見できていない重力子爆弾の不発弾が、偶々…食料生産プラントの下で爆発、それによって食料生産プラントが消滅、あのように海が凹む事になった」


 官僚達が

「かつて、重力子爆弾が爆発して同等の施設が消えた時も同じような現象があった」


 ディオスが

「では、どうして我々が呼ばれたのですか?」


 官僚達が

「重力子爆弾の不発弾も反物質爆弾と同じ高エネルギーの爆弾だ。不発弾として見つかる時には、相応の高エネルギーを探知するが…それが出来なかった」


 官僚達が

「最近、アースガイヤとの物質輸入で、高エネルギー粒子を安定的に貯蔵する物質が、こちらへ来るようになった。そのアースガイヤの物質を使えば、高エネルギーの反応を抑える事ができる」


 ディオスが鋭い顔で

「つまり、その高エネルギーを安定的にする物質が見つかる事を…」


 官僚達が

「我々では見つけるのが困難だからね。君達なら見つけられると思ったが…」


 ディオスが溜息を漏らし

「結果ありきで我々を呼んだと…」


 官僚達が

「この日の本星系区は、色々とテロの標的にされやすいのだよ」


 ディオスは呆れて言葉が無くなる。

 要するに自分達、アースガイヤの者達を呼んだのは、自分達がそうであろうとする決定の更なる足掛かりにする為に。


 官僚達が

「君達の言う通り、この事態が…何処かの別時空の特別な力を持った兵器だとしてだ。それをここで使う意味は? 皆無だ」


 官僚達が

「もし、そのような巨大な力を秘めた兵器がテロリストの手に渡ったとして、食料生産プラント程度を破壊して何の意味があるのかね?」


 ディオスは、呆れた溜息を吐く。

 明らかに自分達の意見へのまとめに入り出した。

 ディオスがホールに背を向ける。


 官僚達が

「まだ、報告は終わっていないぞ。ディオス・グレンテル殿」


 ディオスが

「私がどんなに報告しても、そちらの結論になるのでしょう。だから、ハッキリ言います。後でとんでもない事になっても知りませんよ」

と、告げてホールから出て行った。




 ディオスは、龍機戦艦が停泊している港へ戻り、龍機戦艦へ帰還する。


 龍機戦艦の司令室でラハトアが呆れた様子のディオスに

「どうした?」


 ディオスが首を横に振り

「ダメだ。自分達が決めた結論で全てを進めている。話にならん」


 ラハトアが俯き

「そうですか…」


 ディオスが

「子供達は、先に帰還させたが…こちらも直ぐに…」


 ラハトアが別時空の兵器であると知って、直ぐにティリオとリリーシャにゼティアの三人をアースガイヤへ帰還させた。危険から遠ざける為に。

 その帰還にメルディオルが協力して、子供達三人の送り届けをしている。


 ディオスが司令官に椅子に座って

「我々も帰るぞ。ここにいたって意味は無い。勝手にしてくれ」


 ラハトアが心配げに

「もし、大変な事になったら…」


 ディオスが呆れ気味に

「そうなれば、ここの連中の失態だ。後は野となれ山となれ…だ」


 ディオス達を乗せた龍機戦艦がアースガイヤへ向けて帰還する。

 その最中に、ディオスはとある報告を受けた。


 龍機戦艦の司令室でディオスは、その報告が載った端末を見て

「はぁ…アースガイヤから天の川銀河連合、外宇宙への密航か…」

と、呟いた後、密航者達の名前を見て眉間を寄せる。

「よりにもよって、ティリオの友人の、あの父親か…」

 ディオスが見ている密航したであろう者達のリストには、一莵の父親の名前があった。


 アースガイヤから出て、トラブルが連続していた。 

陰謀錯綜する者達。

その行動は?


次回、裏側サイド 前編

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