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第761話 息子の成長

次話を読んでいただきありがとうございます。


 ティリオは悩んでいた。

 一莵の家庭事情にショックを受けていた。

 それは…自分の周りでは一切、起こらない程の不幸な出来事だ。

 ティリオの能力は高い。だが、まだまだ子供の部分もある。

 いくら超魔導兵器ゼウスリオンを作ったり、今回の人型ゴーレム事案で解決策を編み出す程の高い能力があろうとも…十三歳の子供だ。

 肉体的にも長身で武術も免許皆伝レベルまで得ていても。


 このショックを家族にも言えない。ましてや、大切な彼女達三人にも言いたくない。

 どうしたら…と思っていると、ルビードラゴンが目の前を通る。

 オルディナイト邸宅にティリオがいて、その前を偶然にもルビードラゴンも通りかかった。


「ルビーおじさん」とティリオが呼び止める。


 ルビードラゴンがティリオを見て足を止めて

「どうした?」


 ティリオが

「少し話をしない?」


 ルビードラゴンは頷き

「構わないが…」


 ティリオは、自分の気持ちをルビードラゴンに話す。


 ルビードラゴンはティリオの悩みを聞いて

「そうか…」

と、一言…。


 ティリオは

「ぼくは、ショックだった。だって…そんな事、ありえないと思っていたから」


 ルビードラゴンがティリオを見つめて

「そうだな…確かにティリオの周りは、そういう事は一切ない。それが当たり前の普遍的で大多数の優しいの世界だからなぁ…」


 ティリオがルビードラゴンを見つめ

「ルビーおじさんは、違うの?」


 ルビードラゴンが渋い顔をして

「んん、少しそうかもしれないし、違うかもしれない。複雑だが…でも、その一莵くんの家庭事情の理解はある」


 ティリオが悲しい顔で

「ルビーおじさんも…同じように苦しんでいたの?」


 ルビードラゴンは空を見上げて

「色々とさ」


 ティリオは俯き

「ぼく、まだまだ、世界の事を知らない」


 ルビードラゴンが微笑み

「まだ、ティリオは十三だ。仕方ない」


 ティリオが苦しそうな顔で

「ぼくに、いや、ぼく達…聖帝の血族にとって、アースガイヤの全ての場所が気軽に行ける程に近いんだよ。機神や色んな、ぼく達の作る移動の魔導具や装置を使えば、アースガイヤの反対側まで三十分くらいで行けてしまう。それくらい、ぼく達にとってアースガイヤの全部が身近なんだ。だから…ぼく達、聖帝の血族としての能力以外は、みんな似たような感じだと思っていた。そこだけは…」


 ルビードラゴンが

「ティリオは、どうしたい? 答えが欲しいか?」

と、見つめる顔に慈愛がある。


 ティリオが押し黙る。


 ルビードラゴンが

「オレと話した事で少しでも気持ちが軽くなるなら…それは良かったと思うが。オレの答えは、オレだけの答えだ。それをティリオに押しつけても良くない。だから、じっくりと考えなさい。でも、誰かを傷つけるのは間違いだからな」


 ティリオを「うん」と頷く。



 その夜、ティリオはディオスの屋敷の二階にある書斎に来る。

 そこで本を読んでいる父ディオスに

「父さん…」


 ディオスは本を置いて

「どうしたんだ? ティリオ…」


 ティリオは、ルビードラゴンに話した悩みを父ディオスに告げる。

 ディオスは、真剣に聞き

「そうか…ティリオはどうしたい?」


 ティリオは悩みながら

「分からない。でも…」


 ディオスが息子ティリオの

「でも…何だ?」

と、優しく促す。


 ティリオは

「一莵くんとは、友達でいたい」


 ディオスは微笑み

「そうか…」

 息子の優しい成長を見るも、父として

「ティリオ、それは間違いじゃあない。ティリオが友達でいたいなら、友達で居続ければ良いが、相手の事を考えないといけない」


 ティリオはそれを聞いて苦しい顔をして

「相手の事…」


 ディオスが優しく

「人によっては、そこまで踏み込んで欲しくないかもしれないし、友達とも思っていないかもしれない。人はね、お互いに付き合い易い距離感が必要だ」


 ティリオが複雑な顔をする。

 どうすれば…?と悩んでいた。ティリオにとって、何時も身近にいた彼女達、ジュリアとナリルにアリルの距離感は、ゼロに近い。

 だからこそ、他の人達の距離感は他人のような感じになっている。

 彼女達三人の関係は、生まれ持っての特別な関係であって、他は違う。

 でも、始めて一莵は…。


 ディオスが悩める息子に

「ティリオ、人には、どんな事をしたって失敗がある。ティリオだってあるだろう? 魔導素材や技術に関してな」


「うん」とティリオは頷く。


 ディオスは、息子ティリオを優しく見つめて

「だからこそ、ティリオはティリオなりの人生、人との関わりを学んで欲しい。それで間違っても止めてくれる人達がいるだろう」


 ティリオは「うん」と頷いた。


 ディオスがティリオの頬に触れて

「焦らず、ゆっくりと時間を掛けて答えを探せばいい。ティリオなりのな」


 ティリオは微笑み

「ありがとう、父さん」


 ティリオは満足して部屋を出た後、ディオスが

「成長しているなぁ…ティリオ」

と、息子の成長を実感して嬉しかった。

 その後、ティリオの悩みを妻達、ソフィア、クリシュナ、クレティア、ゼリティアに話して、ソフィアが

「そう…でも、まさか…アンタに相談するなんて…こういう事はママの役割な筈なのにね」と、少し嫉妬があるも、妻達はティリオの成長を喜んだ。



 その後、ティリオは大切な彼女達三人に自分の悩んでいる事を話、気持ちを共有する。

 そして、その答えを四人でゆっくりと探して行こう…と。

 ティリオ達は、優しく成長して行く。

 それで良い。世界の大半は優しい人達なのだから。



 だが、そうではない事も世界の真実だ。

 一莵は部屋にいた。

 ベッドに腰掛けて静かに端末を操作していると、外に通じるベランダから一人の少女が降り立つ。

 一莵の家は高層マンションで、十階の高さにある。

 魔法世界であるアースガイヤでは、空を飛ぶ魔法があるので、空から降りて来る事は、それ自体は珍しい事ではないが…少女は魔方陣を展開していないで、空から降りてきた。

 そして、閉めてある窓を幽霊のごとく通過して

「よう、選ばれし者、アンフォーギブン」


 一莵は呆れ気味に

「普通は、ノックするはずなんだけどなぁ…」

と、少女を横見する。


 少女は、革ジャンにミニスカ、頭にゴーグルという傾いた格好だ。

 少女が笑み

「いいじゃんか、お互いに知らない仲じゃあないんだし…ねぇ…」

と、告げて一莵が座るベッドに腰掛けて、一莵の首筋の匂いを嗅いで

「どうした? 少しイライラしているのか? 匂いで分かるぞ」


 一莵が

「勝手に入ってきたからだろうが…」


 少女は、イタズラに笑い

「はははは! ごめんごめん、でも、これでも人生では先輩だぞ」


 一莵が

「周囲から先輩と呼ばせているだけで、本当は…どうだかねぇ…」


 先輩と呼ばれている少女、先輩は

「本名は、言いにくいんだよ。だから、許せ」

と、一莵を押し倒して

「そして、お前の発情期の管理をしながら、経過を報告するぞ。お前は若いから性欲を持て余してアホな選択をして欲しくないからなぁ…」

と、先輩は一莵と交わりながら何かの説明した。


 二時間後、一莵はベッドで上半身を起こしていた。

 それは裸で、隣には服を周囲に脱ぎ捨てた先輩の少女も裸で眠っている。

 そんな時、志甫から端末にメッセージが届く。

 それを一莵が確認していると、先輩の少女が起き上がり一莵の首に両手を回して

「あら、お気に入りの彼女?」


 一莵が

「違う、友人だ」


 先輩の少女が

「お気に入りなら、彼女、アタシ達と同じディジレーターにしても良いわよ。まあ、お気楽だから、フェイク型の…」


 一莵がその口を口づけで塞ぎ

「関係ない。ただの知り合いに近い友人だ」


 先輩の少女は、再び一莵の口を唇で塞いだ後

「デットルのヤツはどうする?」


 一莵が

「放置してもいいが…」


 先輩の少女が

「駒としては使えるわ。ゼキスと同じくね」


 一莵が「任せる」と。


 全ての歯車は、回り出していた。  

ティリオは父やおじさんに相談しつつ、自らの歩みを始める。

だが…一莵は…

次回より、新章、完璧な悪 が開始。

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