第756話 人型ゴーレム事案
次話を読んでいただきありがとうございます。
ティリオとリリーシャにゼティアの三人は、巨大なホールの講壇にいた。
ディオスの子供達、非合法組織の人型ゴーレムの欠陥を見抜いた三人は、世界王族会議の面々や政府関係者が一同に会する巨大なホールのステージで説明をさせられる。
子供達三人の目の前にいる万人の全員が真剣な視線を向けている。
ディオスの緊急事態宣言の号令と共に二時間の内に、バルストラン共和王国の王都ベンルダン大学にある巨大なホールに集まってきた。
その集まった全員が軍関係者、政府特別対策チーム、国家の中枢を担う者達や、アースガイヤ全土の財団関係を繋ぐ者達。
アースガイヤの治世を担う者達が勢揃いしていた。
そのホール全体の空気がヒリついている。悪い意味のヒリつきではない。
アリストス共和帝国やロマリア帝国で起こった人型ゴーレムの爆破事件を知り、それが自分達の国にもあるという危機感から、真剣なのだ。
ティリオとリリーシャにゼティアの三人は、そんな空気の中で全員に行き渡らせた資料の説明を開始するが会場の一人、魔族の男性が挙手して
「この会議を出席できない関係者、及びマスコミや、情報ネットワークでライブ配信をしたいが…よろしいですか?」
ティリオとリリーシャにゼティアの三人は、隣にいる父ディオスを見つめるとディオスが
「三人とも、それでも良いか?」
ティリオとリリーシャにゼティアの三人は、顔を見合わせて頷き合いティリオが
「大丈夫だと思う」
ディオスが頷き
「許可します」
と、許可した瞬間、会場の扉から魔導カメラを持った集団が入り込んで、会場の外縁に並んで撮影を開始した。
ティリオが息を呑むと、父ディオスが
「説明を開始してくれ」
「は…はい」とティリオとリリーシャにゼティアの三人は、説明を開始する。
最初は、ティリオのリアクターに関する欠陥の説明だ。
なるべく分かりやすいように簡略化して説明を開始する。
出力重視の安全装置なしのリアクターが使われている事によって爆弾化している。
その説明を終えて、次にリリーシャにゼティアの説明が始まる。
人工知能システムの欠陥、それによって爆弾化しているリアクターから高出力を放ち、爆発する危険性があるという説明をする。
リリーシャが
「以上が…説明です。ご質問は?」
と、尋ねると、一斉に会場の者達が挙手する。
ティリオ達は困惑するも、リリーシャが前方の人物を示し、その人物が立ち上がり
「この爆弾と化した人型ゴーレムを止める方法は?」
ティリオが
「この人型ゴーレムに使われているリアクターは、ある程度の低温、凍結させる事で機能が停止するようになっています。それに該当する凍結魔法を使えば…」
質問が終わり、それでも挙手が下がらない。
今度は、ゼティアが中程の人を示し、その人物が立ち上がり
「それだと、押さえるか、確保する必要性があります。その前に瞬間的に止められる方法は?」
リリーシャが
「そのリアクターを、人型ゴーレムだけを凍結させる特殊な魔導弾頭を作る技術を私達が持っています。それを製造して配れば…確保する必要もなく停止可能です」
次の質問の挙手が上がり、ゼティアが後方を示しその人物が立ち上がり
「この人型ゴーレムは、近年、相当に精巧になって判別が難しくなっています。それを判別する手段は?」
ティリオが
「ぼくが、それに関しての判別する技術を持っています。それを…提供すれば見つけられるはずです」
ディオスが子供達の隣に来て
「質問は、ここまでにします。各所関係者は、この事態に対する関係者及び、各所の責任者とのパイプ役の派遣、等の手配をお願いします」
前方の一人が
「今回の事件で、重大な発見をしたディオス様のご子息も、本事案に参加しますか?」
ディオスが渋い顔をするも
「ええ…させます。この子達の方が…この件に関して優れていますので」
そして、ホールから人が出て行くと同時に、様々な機関と繋がる通信機達と、それを置くテーブルや、話し合いをする為のホワイトボードと、話し合った結果を全て記録する魔導具達が並び、あっという間にホールは作戦会議場になった。
その元へディオスが降りると、その降りる両脇の階段にアーヴィング、洋子、阿座を筆頭にユリシーグ、ラハトア、愛、朱里、悠希、奈々、綾妃といったセイントセイバー達と、充人を筆頭にマジックギガンティス達、そして…ルビードラゴンも並ぶ。
ディオスが子供達を引き連れて、その花道を進みながら
「事態は、混迷を極めている。気を引き締めて掛かるぞ!」
「は!」と全員が声を放つ。
ディオスの子供達、ティリオとリリーシャにゼティアの三人は、普段とは違う厳しい父親の姿に困惑する。
普段は、柔らかく大人しい感じの父が、威厳があり王のような風格を放つ姿に、これが聖帝ディオスの姿であると知った。
作戦会議場から、各機関のパイプ役と関係者がディオスの元へ集まり、ディオスが
「本件の名称を、人型ゴーレム災厄事案とする。各員、連絡の密を、些細な情報でも聞き逃す事がないように、事案開始を宣言する」
「は!」と全員がかけ声を放つ。
一斉に全員が散会して、各々の仕事と責務を始める。
ディオスの傍にいるアーヴィングとラハトアが
「ディオスさん、ラハトアと共に各国々の詳しい状況の再度、説明と権限の連絡へ回ります」
と、アーヴィングが告げてラハトア共に出て行った。
ユリシーグが
「自分は、各地区の宗教関係への通達と共に協力、騒ぎが広がらないように連絡を開始します」
洋子が
「私達、ネオデウス組は、チームを二つに分けて、非常時の即時派遣チームと、この会場警備のチームの編成をして、行動を開始します」
各々の仕事を始めるセイントセイバー達にディオスが
「頼む、ムリはするなよ」
向かっていくセイントセイバー達は頷いた。
充人は
「オレ達、マジックギガンティス達も即時に各地へ派遣できる準備をする」
と、マジックギガンティス達を連れて行った。
ディオスがその背に
「何時もありがとう。期待している」
ルビードラゴンが
「自分は、ティリオ達と共に人型ゴーレムの対処方法の研究を補佐するが…」
ディオスが真剣な眼でルビードラゴンに
「頼む。子供達はこの事が初めてだ。よろしくお願いする」
ルビードラゴンが頷き、ティリオ達を見て
「では、行くぞ…回収された人型ゴーレムの調査をして…何か分かる事があるかもしれない」
「う、うん」「ああ…はい」「ええ…」
と、ティリオとリリーシャにゼティアの三人は、ルビードラゴンに続くと、そこへ会場にいた各所関係者が近づき
「初めまして、先程のご説明、素晴らしかった。以後、よろしくお願いします」
「お噂は兼々、聞いております。どうぞ、今後とも…」
「聖帝の血筋、行く末が頼もしくてなりません。以後、お見知り置きを」
その全員が手に直通用の通信魔導プレートをティリオとリリーシャにゼティアに渡す。
三人は、あっという間に両手に収まらない程の連絡先を手に入れた。
呆然とするティリオとリリーシャにゼティアの三人にルビードラゴンが
「行くぞ」
と、告げると三人は静かに続く。
作戦会議場のドアを潜る時に、三人が後ろを振り向くと、忙しなく判断して指示をする聖帝ディオスである父の姿があった。
それは、今まで見た事もなかった聖帝としての父の姿だった。
そんな中でもディオスが、子達の視線に気付くと微笑み手を振る。
それが子達にとって、父であると分かる仕草だった。
ディオスの子供達も加わる大事件。
その護衛をするルビードラゴン。
だが、護衛で帰宅する最中に…
次回、人型ゴーレム事案、出会い