第748話 再開の場 その二
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マキナは、とある四人の女性達を前にニヤニヤと微笑んでいる。
その四人とは、ディオスの妻達だ。
クリシュナとクレティアは、マキナと同じ百七十の背丈を持つ。
ゼリティアとソフィアは、それより少し低い百六十だ。
マキナが
「いやぁ…アナタ達と話して見たかったんだよね」
クリシュナが
「どんな話を聞きたいの?」
と、言葉にするとクレティアとゼリティアにソフィアは微笑む。
彼女達がいる場所は、ディオスの屋敷だ。
王都には、ディオスの屋敷と繋がるオルディナイトの邸宅があり、ディオスの屋敷は、王都から離れた外縁の中にある。
外縁の周囲にある四つの町、フェニックス町、近くに湖があるブルードラゴン、飛空艇空港が近くにあるホワイトタイガー、北の山脈を抱えて、そこから取れる鉱石を運ぶ途中にあるアースドラゴン町、アースドラゴン町と王都ベンルダンの間にオルディナイト財団が抱える工業地帯がある。
そんなノンビリとした風景が広がる平原にあるディオスの屋敷だが、最近は子供達も増えて改築に及ぶ改築が加わって、何かの施設のようになっている。
最初は、大きな洋風の旅館だったのが、あれよあれよと、部屋が欲しいので一棟と増え、更にディオスが魔導関連の研究や開発をする為に、その研究施設のドームが増え始め、警部の為として、自動操縦のゴーレムが周囲を囲み。
前から見ると洋風の屋敷なのに、背後に何かを開発するドームが幾つも見える近未来と中世風が混じる、摩訶不思議な建造物になっていた。
ちなみに開発や研究をするドーム達は、六角形の金属板が重なった特別な構造で、近未来的な感じを更に加速させて、更に…その周囲にはゼウスリオンというアースガイヤの機神が動いたりしている。
そんな風景が見える窓の部屋でマキナが
「アンタ達は、どうやって…あんな凄い旦那を落としたの?」
それを聞いてクリシュナは首を傾げ
「落としたねぇ…どう? クレティア?」
と、隣にいるクレティアを見る。
クレティアがイタズラな笑みで
「いやぁ…落としたって…アタシとクリシュナの二人は、ダーリンがねぇ…奥さんだって言って来たからねぇ…ゼリティア、ソフィア」
ゼリティアは顎を摩り
「そうじゃのう…妾達は、まあ、告白という感じじゃったからのぅ…ソフィアよ」
ソフィアも首を傾げ
「まあ、勢いかなぁ…」
マキナは考えながら
「勢いって…そんな事をすれば、アイツ…論破しそう」
『ああ…確かに…』とディオスの妻達は、論破する我が夫ディオスの姿がよぎった。
ソフィアが
「なに? アンタ…夫の五人目になりたいの?」
マキナが
「まあ、五人目っていうか…側でもいいから、ちょっと子種を貰いたいかなぁ…って」
呆れた顔の妻達四人があり、ゼリティアが
「それでは、我が夫は絶対にお主の通りにならんぞ」
クレティアが
「ダーリンにとって、伴侶って、奥さんって…深い繋がりだからねぇ…」
ソフィアが
「能力や力を求めて、欲しいだけって、多分、アイツなら…ブチ切れて軽蔑するわよ。止めな」
クリシュナが
「確かに、夫の血族としての力は凄いわ」
と、外を見るとゼウスリオンを作っている子供達や、他の魔導機神を具現化している子供達の風景を見て
「でもね。力だけ求めては、結局は、ダメになるわ。それを夫は一番に分かっているのも…」
妻達は、ディオスが戦ってきた者達の姿をよぎらせる。
アズサワ、ヘオスポロスのネオデウス・ウェポン、今までに戦って来た者達。
その誰しもが強大な力を持っているが、それは幸せそうに見えない。
彼らにとって幸福なんて意味は無いだろうが…。
それでも…いや、それだからこそ、思う。
力だけでは、何時かそれよりもっと大きな力に打ち負かされて終わる。
マキナが
「でも、さあ…力って欲しいじゃん。それがあるから世の中が維持されている訳だし」
ソフィアが
「じゃあ、何でも力があるヤツが正しいって世界が良いと思うの? 貴女は…」
それを聞いてマキナは口が重くなる。
それでは、かつて苦しめられたダーク・デス・スターの時と同じだ。
そう、ダーク・デス・スターだって、結局は力に負けた。自分より更に大きな力で、あっという間に消えた。
そして、使えていた者達は、全員が罪人となり…。
クレティアが
「自分を磨くために鍛えるってのは、アリよ。でも、心が未熟のまま、力だけってどうなのよ?」
ゼリティアが
「お主の言う通り、夫ディオスとお主が通じたとして子を成して、その子に力しか期待しないとは…それは、産まれた子にとって良い事なのか?」
ソフィアは
「貴女の事は、ディオスから聞いているわ。力を取り込んで強くならなければ、生き残れなかった一族だって、でも、さぁ…それって、そういう環境が問題じゃあないの?」
クリシュナが
「ずっと同じ事を繰り返す。それって良い事なの? 命って前に進んでいるのよ」
マキナは愚かではない。薄々は、分かっている。
だが、今までその環境ではなかったが、ディオス達が助けてくれた事で変わりつつある。
「アタシ、結構…古い考えに取り憑かれていたのか…」
ゼリティアが
「それを否定する必要はないが、その昔と今は違うという事も分かるべきでは?」
聖帝ディオスが関わると、その時空は大きく流れが変わる。
良きも悪しきも、変化が流れ込む。
マキナは、説得されてしまい
「そうだね。こんな考えじゃあ、いくら、落とそうとしてもダメか…」
と、納得して微笑んだ次に
「でも、それに気付かせるなんて、やっぱり…アンタ達は凄いよ。流石、あの男の奥さん達だわ。どうして、聖帝ディオスが…アンタ達を妻にした理由が分かった気がするわ」
クレティアが笑みながら
「アタシ達もそれに気付かせてくれたのも、ダーリンのお陰だからね。お互いに助け合って生きている。それが夫婦、家族だよ」
マキナは、帰って行く。
自分の世界、メリンダス世界への時空戦艦に乗って帰る途中、ディオスのお見送りを受けて
「じゃあね。ディオス様」
と、マキナは手を振り時空戦艦へ向かう。
ディオスが
「何か、困った事があったら協力する。達者でな」
マキナが振り向き
「アンタの奥さん達、大事にしなよ。あんないい女達は、どこにもいないから」
ディオスが頷き
「分かっている」
マキナとの再会が終わり、次の再会が待っていた。
それは、あのエメロード姫達との…
次回、再開の場 その三