表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
746/1109

第745話 必要な事

次話を読んでいただきありがとうございます。


 セレソウム時空に誕生した超越存在の力の存在、星系サイズの花弁の結晶、セレソウムの花星は、桜花の超越存在の力によって動いている。

 ディオスと共に、セレソウムの花星のコアへ向かう。


 桜花は、そのコアで自分が力を操作する場を作る。

 そこは、花々や花を咲かせる木々が広がる大地だった。


 桜花は、その場に手を伸ばすと花々の大地が花開き空へ木々や草花が伸びる。


 ディオスは、娘の操作方法を見つめる。

 機械的な方法が主流のディオスにとって、感性的な方法での操作を好む桜花の作業は不思議だった。

 この大地に広がる花々や草木達の瑞々しい成長が、セレソウム時空やその周辺時空へのエネルギー供給を表している。

 つまり、このコアの大地が瑞々しく美しい状態であれば、問題なくエネルギー供給が行われている証でもある。


 花々の世界で両手を広げて、大地に淡い光の雨を降らす桜花は、作業を終えて

「これで当分の間は、問題ないけど…」


 ディオスが顎に手を置いて

「後の細かい操作は、ゲイオル達の力に任せるか…」


 桜花は頷き

「うん。ゲイオル兄さんやレイシュン兄さん達の操作に応じるようにはしたけど…」


 ディオスが難しい顔で

「足りない部分があるのか?」


 桜花が困った顔で

「あくまでも、この力は元となるエネルギーを供給するだけで、それを形にしたりするのには、別の力が必要なの」


 ディオスが娘の桜花に

「その力を持つ者が誰か…分かるか?」


 桜花が頷き

「うん、でも…」


 ディオスが

「協力してくれるか?という問題か…」


 桜花が「うん」と答えた。


 桜花が必要としている人物とは?



 ディオスの屋敷に戻ると、桜花はその人物を前にする。

 ルビードラゴンだ。

 ルビードラゴンは、ディオスと桜花の二人が目の前にいる状況に

「何か…用か?」


 桜花がためらい気味に

「少し、話があるの…」


 ルビードラゴンが桜花を見つめて

「もしかして、セレソウム時空に出来た超越存在の力に関してか?」


 ディオスは鋭いと思った。

 ルビードラゴンは、バカではない。

 先読みが出来る程に頭が回る。

「娘の手伝いをお願いしたい」

と、ディオスの直球の答えにルビードラゴンは黙る。


 桜花は、父親の発言は直球すぎると思った。

「ごめんなさい。パパが迷惑な事を言って」


 ルビードラゴンは笑み

「気にしていない。そのぐらい直球で言われても問題ない」


 ルビードラゴンとディオスは、視線を交わす。

 それは二人だけの先読みのアイコンタクトだ。

 ディオスがどう言うだろうか?とルビードラゴンはシミュレーションして

 ディオスは、ルビードラゴンがどう返答するのか?の何万通りを考える。


 そこへティリアが来て

「あれ? パパ、桜花、ルビーおじちゃん。三人してどうしたの?」


 ティリアが入ってきた。

 ルビードラゴンがティリアに

「ディオスから、桜花の力があるセレソウムの花星の手伝いをして欲しいと言われた」


 ティリアが

「え、良いでしょうルビーおじちゃん。桜花を手伝ってあげても」


 ルビードラゴンは、ティリアからのコントロールを許している。

 ティリアの加勢があれば、ルビードラゴンは頷くはずが


「それはダメだ」とルビードラゴンは答える。


 ティリアが

「どうしてなの? 何も問題ないでしょう?」


 ルビードラゴンが真剣な顔で

「確かに私の力が加われば桜花にとっても、セレソウム時空にとっても良いだろう。だが、それは…再び何かに依存してしまうという事だ。それは、今回の事案の発端にも通じている」


 桜花は、俯く。

 そう、セレソウム時空は、何かに依存していた。

 そのツケが来たから…あの結果になった。


 ルビードラゴンが冷静に

「依存には、良い依存と悪い依存がある。良い依存とは、共に何かを出し合って、お互いが余裕がある時に助け合う事だ」


 ティリアが

「悪い依存は?」


 ルビードラゴンが鋭い目で

「何もかも、何か一つに押しつける事だ。例えば…とある正義がある。それを維持する為に悪を作る事だ」


 ティリアが

「でも、悪い事は悪いんでしょう?」


 ルビードラゴンが渋い顔で

「では、どうして…その悪い事が起こったんだ? その理由は?」


 ティリアは考えて

「え? だって、悪い人が現れたから…悪い事が起こって」


 ルビードラゴンが

「どうして、悪い人が現れたんだ?」


 ティリアが考えて腕を組み

「いや、悪い人だから悪い場所から…」


 ルビードラゴンが

「そう、その悪い人を生み出す悪い場所は、自分達が生きている世界が、社会が助けられなかった人達が集まって出来ている」


 桜花は、黙って聞く

 それにディオスは、腕を組んで静かに見守る。


 ルビードラゴンが

「ティリア、世界は、人が営む社会は完璧じゃない。全てを救うなんて出来ない。ティリア達がいるここは、そういう完璧じゃあない場所から遠いから見えないだけで、今…この瞬間にも、その完璧じゃあない場所から悪い人達が現れている。悪い人達も、最初から悪ではない。その悪い人を生み出す場所にいたから、悪い人になって社会に、人に迷惑をかけてしまう」


 桜花がハッとする。

 それは、そう…セレソウム時空の不条理のツケをセレソウム時空の超越存在達に押しつけていた構図と同じだ…と。


 ルビードラゴンが

「確かに、オレの力を桜花に貸せば、桜花の助けになるだろう。だが…それは、超越存在となった桜花にとって良い事なのか?」


 ディオスは、それを聞いて頭を押さえる。

 そう、桜花の為にならない事をしてしまった。

 桜花には、力がある。ルビードラゴンに頼らなくも、その力を育めば良い。

 適正はあるだろう。だが…それは、育てた後に見極めればいい。

 血の繋がる子供達や、アリストスの子供達と同じように、桜花に色々と教えて育てればいい。

 同じ超越存在だからといって、特別な事はない。

 同じ自分の子供なのだから…。


 桜花が真っ直ぐとルビードラゴンに

「ありがとう。教えてくれて…」


 ルビードラゴンは微笑み

「いいさ。で、どうするんだ? 桜花…」


 桜花は、父ディオスを見て

「父さんの下で、色々と勉強して力を付けてみたい。それからでも…遅くはないよね」


 ディオスは頷き微笑み

「ああ…そうだ。そうだな。ごめんな桜花、父さん…変に気を回してしまって」


 桜花は首を横に振り

「いいの。私が気付くべき事だったから」


 ディオスは、再びルビードラゴンを見る。

 ルビードラゴンは、ティリアの言う事を何でも聞く存在ではない。

 ティリアと対等な存在として接している。


 ティリアが

「じゃあ、アタシも将来、桜花を手伝う為にもっと勉強するかな…」


 ルビードラゴンが

「焦る必要は無い。若いと焦る、早く、早くって生き急ぐが…ゆっくりと時間を掛ければ良いんだ。駆け足で登ると…何処かで躓いて大怪我をするからな」


 ティリアがルビードラゴンの手を握り

「ありがとう。ルビーおじちゃん、気付かせてくれて…」

と、微笑む。


 ルビードラゴンは頷いた。


 ディオスは、改めてルビードラゴンの評価を変える事になる。

 力だけの存在ではない。何か長い年月を経て色々と経験したり知っている賢者であると…。


 だが

「やっぱり、将来はルビーおじちゃんと結婚する」

と、ティリアがルビードラゴンの腕に抱き付く。


「えええ?」とルビードラゴンが戸惑う背後。


 笑顔で額に青筋を浮かべるお父さんのディオスがいた。

「それだけは、認めんからな」


 ティリアがイタズラ笑みで

「そうなったら、ルビーおじちゃんと駆け落ちするもん」


「えええ…」と青ざめるルビードラゴンの右肩をディオスが鬼のように握りしめて

「そんな事をしたら…覚悟…して置けよ」

と、ディオスがルビードラゴンの右肩が握りつぶされるような握力で握り締めた。


 ディオスの親馬鹿、父バカは治りそうにない。


ルビードラゴンから教えられた桜花は、父ディオスの元で研鑽を続ける事になった。

何時も日々がディオスに訪れるなか、懐かしい面々が来る。


次回、再会の場

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ