第741話 激怒する父親 後編
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その怒りは、セレソウム時空に巨大な時空の穴を開けて出現した。
灰色の巨大な星系サイズの星艦と、惑星サイズの兵器達がセレソウム時空に現れる。
それは、たった一人の父親の怒りによって動かされた大軍勢だった。
その中心には、ディオスがいた。
怒りで全てが振り切れたディオス。
大切な娘を奪われた怒りで、全てを破壊しても娘の桜花を取り戻す。
それだけが、ディオスの行動原理だ。
星艦と惑星サイズの兵器達から、無限に思える程の無人兵器達が放出される。
機械的な筒状のドローンから、昆虫型、円盤形、人型、竜型、翼を持つ巨人型。
その無限数に近い兵器達が、セレソウム時空へ広がる。
あっという間にセレソウム時空の人々が暮らす惑星達を覆い尽くす兵器達。
それは、セレソウム時空の防衛システムを遙かに凌駕している。
セレソウム時空の惑星達に降り立つ兵器達は、その身からセレソウム時空のネットワークに繋がる端子全てに接続して、一斉にセレソウム時空内を調べ尽くす。
セレソウム時空の中枢、防衛システムの担うリュウセイ将軍達の防衛都市省では、膨大な数のハッキングにセレソウム時空の職員達が悲鳴を上げる。
ネットワークに防壁や、物理切断を行うも。
侵攻する兵器達と繋がるディオスの力、アディスト・ギガティスの力によって、ネットワーク内で上位空間が形成され、防壁や物理切断を越えて一気にネットワークを掌握していく。
リュウセイ将軍は、静かに両手を組んで執務デスクに座っていると、副官が
「リュウセイ将軍、このままでは、セレソウム時空の超空間ネットワークが敵方の手に落ちます。ご指示を!」
出現したディオスの軍勢達に、攻撃する許可を!と…。
リュウセイ将軍が静かにディオスが先頭の切っ先に構える星艦を見つめて
「アレに、どうやって勝てるのだ?」
副官が
「しかし、このままでセレソウム時空が侵略されて…」
リュウセイ将軍が目を閉じて
「侵略? その程度で済むなら…楽だったろう」
ディオスは、ヘオスポロスの大軍勢を使ってセレソウム時空内の超空間ネットワークを手中にして桜花を探すも痕跡がなかった。
ネットワーク外の場所にいるのか…それとも…。
ディオスは、娘の桜花を探し出す為に更なる行動を開始する。
ヴォオオオオオオオ!
怒りの雄叫びを上げるディオス。
そのディオスがいる星艦の上に巨大なエンジェルリングが出現する。
ディオスが召喚した高次元と現実世界とのゲートだ。
そして、更なるオーダーをヘオスポロスに要請する。
それにヘオスポロスは、遺憾なく答える。
更なる星艦達が何十艦もディオスがいる星艦の周囲に時空転移してくる。
一個の銀河系さえ制圧可能な艦隊。
それをディオスは、エンジェルリングから降臨する高次元の力と、自分の超越存在の力を融合させて、呑み込む。
全長三百万光年の光の渦が誕生する。
その光の渦から紅蓮装甲の翼達を伸ばす、龍の機神が出現する。
ヴォオオオオオオオ!
全長三百万光年サイズの紅蓮翼機神が雄叫びを上げるだけでセレソウム時空が揺らぐ。
幾つも銀河達が周辺に誕生する。
そのコアにいるのはディオスだ。
ディオスは、同じ超越存在であるメルディオルの力をサードアイで視た程度で構造と成り立ちを理解して、メルディオルのデスピアを越える力を顕現させた。
ディオスの破壊特化の超越存在の力、レドディス
ヴォオオオオオオオ!
ディオスのレドディスが、背中に高次元のゲートを光輪のごとく背負うと、その光輪から無数の黄金の端子達が伸びて、セレソウム時空全体へ広がり始める。
それは、セレソウム時空を作り替える力だった。
ディオスは、セレソウム時空を破壊して作り替えてしまっても桜花を取り戻す。
たった一人の家族を奪われた怒りで一つの宇宙、時空が破壊されて再創造される事態になっていた。
ディオスのレドディスがセレソウム時空の破壊と再構成の最中、エピオン達六名のネオデウス・ウェポンがセレソウム時空内を疾走する。
ディオスが手中にしたネットワークに残る痕跡を辿って桜花を探す。
エピオンが頭上に広がるディオスのやっている事を見上げて
「全く…宇宙、時空一つより、自分の子供の方が大事か…」
その隣にウィングゼロが来て
「それが、聖帝ディオスだ。ヤツにとって、どんな権力だろうと、富だろうと…自分の大切な家族には変えられない。家族を守る為なら最悪な悪魔にだってなるのさ」
エピオンが頷き
「なるほど、人だな…。良き部分も愚かな部分も合わせて、人らしい」
エピオンは、桜花の捜索を続ける。
桜花を連れ去ったラハン達は、呆然とする。
たった一人の超越存在、宇宙王が、セレソウム時空を全て支配しようとしている。
その目的は、桜花を取り戻す。
それ以外に一切の不純物が存在しない。
純粋な思いが、更なる超越存在の力を引き出して、セレソウム時空を破壊と再構成に覆い尽くしている。
ラハンは、覚悟を決める。
桜花と共に双極超越存在に成らなければ…おそらく、自分達が新たに誕生させた時空へも乗り出して、同じ事をする。
セレソウム時空の果ての惑星で、ゼキスが用意したビルサイズの装置と、惑星の施設を連結させて双極超越存在となる仮設システムを急ピッチで組んでいた。
槍先のような鋭いビルの機械システムを上に円形の施設が下にあり、それを繋ぐ回路の陸橋が構築されて、繋がりテストが行われる。
それを見つめる赤王家と碧王家の頭領二人。
エジャムが
「どうして、こうなってしまったのだろうか…」
ルエルが
「新王派の権威集中を止めようとしたのに…我々は、間違っていたのかしら?」
エジャムが厳しい顔で
「我らは、我の正しいと思う事を成してきた。それなのに…」
ルエルが
「考えるのは後にしましょう。今は…ん?」
と、ルエルが施設の遙か遠くに見える六つの光に注視する。
次の瞬間、その六つの光が施設目前に迫る。
ルエルとエジャムが外を見つめる巨大な窓を破壊して、その六つが飛び込む。
エジャムはルエルを守るように抱き被さり破壊された破片から、ルエルを守った。
エジャムが体を起こして、ルエルが
「大丈夫? アナタ…」
エジャムとルエルは、共に違う二つの家の頭領でありながら夫婦だ。
エジャムがルエルを守り破片を退けた隣に、エピオンが破片を踏みしめて立つ。
エジャムとルエルが、エピオンを見つめると、エピオンの冷徹な視線がそこにあった。
エピオンが
「答えて貰おう…。シュンカ殿は…どこだ?」
と、告げる口調は冷徹で感情が完全に消えている。
それが余計に背筋が凍る程の殺気を感じて、エジャムが
「我らの目的」
と、次を言う前にエピオンがエジャムの首を軽く片手で持ち上げ絞首刑のようにして
「必要以外、答えるな」
と、告げて手を離して落とした。
エジャムが息を荒げて尻餅をつき、その隣にルエルが来てエジャムを支え
「どんな事があっても、私達は…言わないわ」
エピオンが冷たい眼で、夫婦である頭領の二人を見下ろしていると
「エピオン」
と、その背にアルトロンが呼びかける。
エピオンがそれに続くと、アルトロン達五人がビルのような浮ぶ構造物を見つめている。
エピオンが解析して
「なるほど、あれが…例の双極超越存在を作り出すシステムか…」
ネオデウス・ウェポンの五人が見つめる先。
地面から浮かぶ槍先のビルと、それに繋がる大地にあるリング型の施設。
双極超越存在を作るシステムに桜花とラハン、ゼキスがいる。
怒りによってセレソウム時空を破壊して自分のモノにする程の力を発揮したディオス。
桜花を見つけたエピオン達
だが…
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